間も無く、正午のミサが始まろうとしていた。
サンティアゴデコンポステーラのカテドラルは、われわれ巡礼者のゴールであるだけでなく、世界遺産でもあるので、一般の観光客も多く、大きな建物であるにも関わらず、かなりの人でひしめきあっていた。
かろうじて僕ら3人は空いている席を見つけ座れたが、すでに立ち見の人々が多数いた。
人々は興奮によりザワザワし始め、ソワソワ感が人から人へ伝わっていく。
そのたび、カテドラル側からは「シーッ。シレンシオ…」と静かにさせる声が響いた。祭壇に立つシスターにより聖歌の練習が終わり、正午を迎えた。
先ほどのシスターの美しく響き渡る歌声とともに、赤いマントに身を包んだ司祭たちが5人ほど列になって登場し、祭壇についた。
それから約1時間、司祭たちが何を言っているのかは全く分からなかったが、僕の背後にいた巡礼者のおじさんは感激で涙を流していた。
たしかに、この道を歩き出してから、ロンセスバージェスやカリオンデロスコンデス、サモスなど、何度もミサに参加してきたが、祭壇の豪華さ、カテドラル内の雰囲気、人々から伝わる緊張や感動など、このカテドラルのミサは総合的に群を抜いていた。
いろんな経験を思い出し、すでに充分満ち足りた気持ちになっていた頃、なかば諦めていた「ボタフメイロ」と呼ばれる大香炉が焚かれ、カテドラル内を左右に大きく揺れだした。
ボタフメイロは、毎日焚かれるものではなく、特別な聖日や、誰かが多額の寄付をした時にしか動かされないという。
それでも、僕らはこれを見たくて、ネットなどでいつやるのかいろんな検索していたのだが、情報が無く、完全に運まかせだった。
見れなくて当たり前、見れればラッキーだと。
それが最後の最後で、突然動き出したのだ。
カテドラル内のざわつきは尋常じゃなかった。
しかしもう、静寂を求める声は響かなかった。
もはや、どよどよするしかない雰囲気なのだ。
ある者はカメラのシャッターを切り、ある者は動画を撮り、またある者はじっと香炉を見つめる。
大香炉からは白い煙と共に香りが立ち込め、まるで映画を観ているようだった。
人々が陶然となったころ、「アディオス」の声を最後にミサは終わり、カテドラル内には拍手が響いた。
なんだかうまく感想を言い合えない状態で僕らは席を立った。
続く。




























