しゃちょを のブログ
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2018-01-04

言いたいことも言えないそんな世の中じゃ、ポイズン

テーマ:ブログ
元日から三日間連続で東上線では人身事故だったらしい。
電車の人身事故に「迷惑だ」と言ってはいけない、という意見が正論だが、同情するのも、迷惑だと素直に言うのも、自由だと思うんだよな。「こうでなきゃ人でなし」という風潮が危ない。
自殺してしまった人に同情はするけど、別の話で、迷惑は迷惑だ、と思う人もいて当然なのに、「迷惑だ」と口に出す事が許されない世の中は危険。
言いたいことも言えないそんな世の中じゃ、ポイズン。
2017-10-29

すごい責任感

テーマ:夢の実現へ-BIGになる-
先日のことです。
社長室に社員が真剣な表情で入ってきて
「社長、言いたいことがあります。」と、お、なんだ?と思っていたら
「○○のこと(失敗)ですけど、改めて事の重大さを感じます。そこで、勝手ながら宣言させてください!あれを挽回できるまでは、自分の給料をゼロにしてください!」
と。
驚いたよ。今どきこんな若者がいるんだなぁと。こんなに責任感強い若者がね。

すごいなぁと思ったのは、そうすることにより、自分を奮い立たせて、なんかエネルギーが充ち満ちているんだよね。

俺は改めて思ったね。俺もさらに頑張ろうってね。

彼は、失敗(その人だけの責任ではない)をしたんです。それでいいんです。一時的に数百万円の損害が出ていても取り戻せばいいだけです。

失敗をしていない人は挑戦をしていない人です
。新たに何か挑戦すれば失敗の可能性も高いんです。

俺は、数ヶ月前に、なんの経験も無いその社員にある部門の責任者を任せた。
そいつに任せて良かった。間違っていなかったと改めて思ったんですよ。

p.s.給料没収については、気持ちだけにしておけ、と踏みとどまらせた。
なぜなら、失敗をしたらその責任を取らされる、みたくなってしまうのは、わが社としては本意では無いし、そんな文化になってしまったら良くない、と。
そもそも、失敗の責任は皆にあり、一番の責任者は、社長である俺なんだからさ。
2017-10-19

リーダー向きか,参謀向きか。

テーマ:ブログ

[リーダー向きか、参謀向きか]
ランニングをしたいのに雨が降っていたとする。


1.「雨なので今日は筋トレにしよう」と思う人は、よき参謀になれる素質があるかもしれません。代替案や斬新な考えでリーダーの決断を補助する大切な役割になれるかもしれません。
 

2.雨でも関係なく雨ガッパを着てランニングをするという人は、先頭に立ち突き進むリーダーになれる素質があるかもしれません。
 

3.「雨だから今日はランニングできない」と思う人は、環境に従順で素直ですね。環境によっては堕落してしまいますので、余計な御世話ですが、注意が必要だと思います。

2017-05-11

誰だよ将来の選択肢を拡げるために大学には行けとか、言ってたの

テーマ:教育一般
「誰だよ将来の選択肢を拡げるために大学には行けとか、言ってたの」

おれは、国立大で小中高校の教員免許とった。
「それなのに、塾に就職なんてもったいない。」と、何度も言われた。いろんな人に何度も。
その度に、よーし、この道が正しいと証明してやろう!と燃えた。しかし、もっと親孝行で良い子は、説得に負けてしまうだろう。

これって。選択肢なくしてない?

誰だよ「将来の選択肢を拡げるために大学には行け。資格はとれ」とか言ってるのは。

真逆になっちゃってる人も多くみてきたよ。

資格や学歴があるから、「もったいないから」とか思っちゃうし、周りからのプレッシャーもあるし、選択肢がなくなってるじゃんか。

国立大出たのに、飲食店に就職なんてもったいないとか、

理工学部出たのに、何々はもったいないとか、

女子なんかもさ「せっかく四年制大学まで出たのに」とか、就職先選ぶときに言われるし自分も思うし、結婚して家を守りたいなんて言おうものなら、「もったいない」とか

選択肢なくしてるじゃんか。


あ、、一番選択肢多いのは、中卒のエネルギッシュな夢見る奴かもなー。笑

2017-05-10

やる気はスイッチみたくパチっとオンにできるもんじゃねー

テーマ:ブログ

保護者様から「やる気スイッチを押してください。」と言われることが増えてきた。

 

しかし、勉強の「やる気」というのは、スイッチみたくパチっとオン・オフを簡単に切り替えられるものではない。

(アドラー心理学的に言うとスイッチがオフになっているだけという「可能性の世界」に逃げ込んで責任転嫁しているわけだが、それについては長くなるので今度)

 

やる気というのは、そうだなー、マッチ棒に火をつけるようなイメージだろうか。

マッチの先を発火させるにはコツが必要なんだよね。

ゆっくりこすっても火がつかないし、マッチ棒の角度も大事だ。

子どものやる気を出させる(出させるという表現が適切ではないんだが)のも同じく、コツが必要だ。

 

実際、塾には、我々も悔しいが、なかなか勉強ができずに結果も残せていない生徒もいるのも事実。

マッチになかなか火がつかない生徒がいる。

例えるなら、湿ってしまったマッチだ。

湿ったマッチに火をつけたいなら、いきなりこすっても火はつくはずがない。まずは、乾かすなどの作業が必要だ。

それなのに、いきなり摩擦で火をつけようと焦ってしまう保護者様もいらっしゃる。それではマッチを駄目にしてしまう。

 

また、マッチ自体は湿っていなくても、こする方に問題があることも多い。

「ガミガミと勉強しろと言ってしまう」ことで、マッチを湿らせてしまうことが多い。

勉強のやる気においては、

 

具体的には、適切な目標設定、スケジュール管理、具体的な学習内容のアドバイス、モチベーションの維持のサポート

などなど、いくつかのコツが必要だ。

 

簡単ではない。

いかにも簡単に思わせるような「やる気スイッチ」などと言うのは、俺は嫌いだ。

2016-03-23

本当だね「起こったことは、振り返ってみればみんな良いこと」

テーマ:夢の実現へ-BIGになる-
まゆにシワを寄せる、しかめっ面の自分を見つけた。「こりゃいかん」


夜のガラス窓には自分が映り込む。普段はそんなこと当然過ぎて気づかないもんだ。


なんだか、最近の俺は、少し変だな。と感じていた去年の今頃である。

半年以上、苦しい時期が続いた。

夜も睡眠薬を毎日飲むが深い眠りは訪れず、酒を飲めばもっと目は冴える。

夜はネガティブになりやすい。早く夜が明けろ、と毎日願っていた。

胃腸の調子もずっと良くない。

経営者になって8年目、全国の中小零細企業が苦しむように資金繰りで苦しんだ。

いや、他と少し違った。うちの会社は、売上も好調、現場は必死に頑張ってくれていて、利益も十分出ていた。

だが、経営の「負の遺産」のために苦しんだ。

「今月末までに2000万円は必要ですね。まずいですね」会計士さんに急に言われた。

「え?」俺は一瞬理解できなかった。

その債務は、我が社や俺個人がしたものではなかったので、無視することもできた。

しかし、我が社がお世話になった人のために、無視するわけにはいかなかった。

銀行に行っても、新規校舎のため融資してもらった直後であり、追加融資は難しいと何度も断られた。

俺は必死にカードローン枠を取得しまくり、1000万を調達。高い利息なんて気にしている場合ではなかった。

銀行にも毎日相談に行き、頭を下げ続けた。
メインバンクが、借り換えという名目で1000万円の追加融資をしていただき、これで乗り越えることができた。

今だから言えるが、当時はギリギリのところで格闘していた。誰に相談できるわけでもなく、もがいていた。

去年は「ダイエットで8キロやせた!」とか言っていたけど、心労のためでもある。

(気を紛らわせるために毎日10キロ走ってキツめの筋トレもしてはいたが)

しっかしこの時期には、相当鍛えられた(筋肉も本当についた。笑)し、経営者としての武器も増えた。

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「起こったことは、振り返ってみればみんな良いこと」
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本当だね、この言葉。
2016-02-21

学校の先生に吐き捨てた「塾の先生として話をしてねぇよ」埼玉のビリギャルの話

テーマ:塾にて
第4章【学校の先生に吐き捨てた「塾の先生として話をしてねぇよ」埼玉のビリギャルの話】
映画ビリギャルの、坪田先生が高校の先生と話すシーンを観て思い出した。数年前に同じようなことあった。
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これは実話を元にしているが、本人が特定されないように名前、学年、性別などを変えて、多少の脚色をしている物語なので、フィクションということにしておく。
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いつも通り平日の昼間、俺は塾で夜の授業の準備をしていた。
平日の午後1時だというのに、中学2年生のアサミが学校指定のジャージ姿で、塾に泣きながら飛び込んできた。
何事かと思ったが、当時、アサミは少し反抗期で、学校の先生には反抗し、気に食わない友達にも態度で示し、少し荒れた状況だった。
学校も休みがちになっていた時期もあったが、なんとか学校に行き始めていた時期だった。
「おいおい、アサミ、学校はどうした?なんで泣いてんだよ?」
「・・・・もう学校なんて行かない」
「どうした、急に。友達とうまくいかなかったのか?」
「ちがう」
「だったら、学校の先生とうまくいかなかったのか?」
「・・・うん。むかつく。私のことばかり悪者扱いで、言い分をまったく聞いてくれない」
「あー、よくあるな。学校の先生へのよくある批判。(笑)単にお前のワガママ、お前の言い分が全て正しいのか?ん?」
俺は笑顔で、茶化すようにアサミに言った。
アサミも高ぶっていた気持ちが、茶化されたことで、少し落ち着きだしたようだ。
「確かにわたしも悪いよ。でも、なんで私だけ怒られるの!?意味分かんない。学校の先生はわかってくれない。」
「あはは。お前、それ中二病じゃん!!(笑)」
「・・・・だって、中二だもん。」
「そりゃそうだ。とにかく、学校戻ろう。俺が付いて行ってやるから。」
校門につくと、数人の先生たちが慌ただしくしていた。生徒が学校を途中で抜け出してしまうというのは大問題なのだろう。
若い新任の女性の先生が駆け寄ってきた。
「アサミ!どこ行ってたの!?心配させないで!」
新任の女性の先生は俺を怪訝そうにみた。
「あの、私、エイメイという塾の代表の坂上と申します。アサミが急に塾に来てしまったので連れて来ました。」
「そうでしたか。すみませんでした。ありがとうございます。」
そんな会話をして、アサミと新任の女先生は教室の方へ歩いて行った。
後ろにいた、教務主任の体格のいい角刈り先生が
「あの~、エイメイの先生?お時間よろしければ、中でお話でもいかがです?」
「そうですか。それでは、少しだけ。失礼します」
この学校の2年生は150人以上いるが、うちの塾に通う生徒は40人ちかく。3~4人に1人はうちの塾生という状況だったので、学校との連携も必要だと思った。
また、俺はアサミの今の抱えている問題を保護者様とも深く話し合って、方針を共有していたので、学校とも話せるのは良い機会だったので、主任の先生と話した。
節電で蛍光灯が半分抜かれた薄暗い会議室に通された。
俺は塾名と肩書のはいった名刺を差し出したが、当然、学校の先生というのは名刺は持ち歩いてはいないようだ。
「担任の先生から聞いたんだけどね、アサミはね何人かで掃除をサボってお喋り会をしていたんだよ。それで、担任が叱ったら、教室を飛び出して行ってしまったらしいね。」
「そうでしょうね。想像できます。」と俺は言った。
「もう、本当に苦労しているんだよね。この学年は問題が多くてね。」
教務主任の先生は首を横に振りながら言った。
「学校の先生方も大変ですね。」
和やかな会話が続いていたが、次の教務主任の言葉は聞き捨てならなかった。
「アサミのお兄ちゃんは優秀だったのに、なんであの子はあんなふうになってしまったんだろうな。」
俺は耳を疑った。
こういうことを平気で口にする先生が未だにいるとは。
失望を隠さず俺は言った。
「・・・・先生、それは少しひどい言い方ですよ。アサミの兄もうちの塾生でしたが、ふたりとも良い子たちですよ。」
なるべく、なるべく角が立たないように、それでも抗議の意味が少しでも伝わるように言葉を選んで言ったつもりだ。
「いや~、塾の先生なら知っているでしょう。アサミのお兄ちゃんは、通知票オール5だよ。それに比べアサミは。」
笑いながら教務主任は言った。
「先生、それは冗談でおっしゃっているのですか?それとも本気で成績なんかで人間性までを評価しているのですか?」
俺はムキになってしまった。
「半分冗談で半分本気だよ。成績ばかりでなく、問題行動の面も含めて言っているんだよ私は。真面目な生徒たちにも迷惑をかけていてね。生活指導の先生たち全員でアサミには注意してきたからねぇ。」
アサミは学校の先生に問題児のレッテルを張られ、目をつけられていた。
「アサミの気持ちが分かります。これじゃ、学校の先生を信頼なんてできるわけないですね。成績で人間性を判断するなんて、くだらない。」
教務主任の先生は不機嫌になり、だまってお茶を飲んだ。
険悪なムードになってしまったついでに、俺は言いたいことを言っておこうと思った。
「先生たちから目を付けられていたのは本人も自覚しています。アサミは頭ごなしに叱られると反発してしまう。なんでもかんでも厳しく叱れば良いわけではなく、あの子の性格を考えて叱って欲しい。」
教務主任の先生は目をそらしたが、俺はどうしても伝えたかった。
実は、アサミは中1の夏から、不良グループと付き合うようになって、学校も休みがちで、塾にも来ない日もあった。俺は何度も何度もアサミと話をした。
正しい行動をするよう約束をしたが、すぐには良くならない。何度裏切られても信じ続けた。
学校には行かなくても、保護者様の希望で昼間から塾で過ごしていた日もあった。一緒に花に水をやり、掃除をしていたこともあった。
中2になり、きっかけなんてないのだろうが、だんだんと彼女は良くなり始めていた。その矢先のことだったのだ。
俺はそんなことを考えながら、教務主任との話を続けた。
「確かに、今までのあの子は優等生とは言えない。でも、過去を見ずに、今のあの子をみてほしい。一生懸命かわろうとしているじゃないですか。」
すっかりヒートアップしていた。
そして、次の言葉に俺は完全にキレてしまった。
「ま、塾の先生という商売だからねぇ」
このセリフは学校の先生の伝家の宝刀だった。
生徒の話をしているのに、このまったく意味のない批判を含む言葉。
もう我慢して穏やかに話す必要ない。この相手に礼儀などいらない。と、そう思った。《若気の至り》
そして、教務主任の目の前においてあった、俺の渡した名刺を無造作に取り、目の前で破った。
「塾の先生として話をしてねぇよ」
この言葉に教務主任は唖然としていた。
学校の先生たちが嫌う《不良》の言葉遣いである。
「一人の生徒が一生懸命立ち直ろうとしているから、もう少しだけ繊細に接してあげることはできませんかね。
あの子は今が大切な時期なんだ。先生だってそれくらいわかるでしょう?」
教務主任は、しばらく黙っていたが、斜め下を向き、何度か小さくうなずきながら言った。
「あなたのおっしゃることは正論だ。私も同意見ではあるが、学校という場では私たちの方法でやりますよ。」
「はい。もちろん、方法に口出すつもりはありませんが、私はあの子のことが本当に心配なんです。先ほどは失礼な言い方をしてしまいました。お詫び致します。」
「いやいや、いいよ。塾でもこんなに熱い先生がいるんだね。驚いたよ。」
「うちの塾にはこんな先生しかおりません。生徒たちのためにも、何かあれば学校とも連携をとっていきたいです。」
「それはいいね。来年、何かやろうか。学校と地域の塾の連絡会議とか。来年も俺がこの学校にいられればだけどなぁ。」
と、教務主任は頭を掻きながら言った。
直後に握手をして別れた。
塾への帰り道、俺はいろいろ考えた。
「熱い先生」か。うちの塾は「学習塾」というカテゴリーとされるのは好きではない。
勉強だけ教えているわけではないから。勉強は、たまたま必要だから教えているだけ。生徒に伝えているのは「なぜ頑張るか、なぜ学ぶか、どう生きるか」
うちの塾では、勉強や受験を通して、生徒たちの人間としての成長を目指している。
ひとりひとりの生徒を何よりも大切にしている。
それが落ちこぼれとレッテルを貼られた生徒でも、偏差値70以上の生徒会長でも、上下の差は無い。
後日談だが、この教務主任の先生は、残念ながら教育委員会の方へ移ってしまわれたので、学校と塾の連携というのは実現しなかった。
さらに後日談だが、学校サボったり先生に反発していたアサミが、今は自分なりの夢を持ち、いきいきと頑張っていると聞く。うれしい限りだ。
2015-12-17

第3章(1)「『俺は今日限り教師を辞める』~塾の存亡の危機~」

テーマ:夢の実現へ-BIGになる-
第3章(1)「『俺は今日限り教師を辞める』~塾の存亡の危機~」
夕方、授業の合間の時間、塾の入口自動ドアが開いた。

そこに立っていたのはスーツの男性だった。保護者様にしては少し若い。異様な雰囲気であった。

少しシワのついたスーツに、足元は革靴ではなく、スニーカーだった。その組み合わせが異様な雰囲気を出していた。

『私服刑事は、いざというときのために革靴は履かない。スーツにスニーカーという組み合わせだ』と、昔マンガか何かで読んだことがあったが、まさかねぇ。。

「こんにちは」

この間0.5秒くらい、俺は一瞬おかしなことを考えたが、スーツにスニーカーの男性に、来客者として、すぐにいつも通り挨拶をした。

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これは実話ですが、本人が特定されないように設定をいろいろ変更しております。また多少の脚色もしています。ということで、フィクションということにしておきます。
これに関わった卒業生も見ているかもね(^^)v 裏ではこんなことがあったんだよ。思い出しながら読んでね。笑
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俺は大学卒業後、塾に正社員として就職をした。

一言では言い表せないほどのことがあり、早くも1年後には、俺は正式に塾をすべて任されるようになった。

23歳とは若い塾長である。対外的には若いというだけで安心感がなくなると思った俺は、塾長であるとは発表をしてはいなかった。名乗るときは「主任」とか「任されています」とか、意図的に曖昧にするようにしていた。

昼から夜まで多い日には6クラスも授業をする春期講習。
毎日、クタクタになり、授業後にはは翌日の授業準備をする。睡眠を極限まで削り生徒たちのために命を削る。そんな春期講習は授業以外他のことに構っている余裕はない。
しかし、その最終日に大事件が起きた。

忘れもしない4月6日。2年生の授業を終え、次の3年生の授業までは1時間の空き時間があった。準備をしながら、遅めの昼食のサンドイッチをかじっていると、自動ドアが開き、、、、、冒頭部分の話である。


スーツにスニーカーの男性が丁寧に言った。
「塾の責任者の方はいらっしゃいますか?」

「はい、私です。」
23歳の若い俺を塾長だとは思わなかったのだろう。一瞬たじろぎ、男性は声に出して名乗ることはせずに名刺を差し出した。

そこには『東○○警察署 少年課 巡査部長 (スーツにスニーカーの男性の名前)』と書いてあった。

スーツにスニーカーの男性が声に出して名乗らなかったのは、周りに生徒や先生たちがいたから、気を遣ってくれたのだ。

俺は警察官の名刺を見るのは初めてであったが、警察の旭日章(キョクジツショウと読む、星みたいなあの紋章)からして本物だろう。

あ~、当然、何かなければ刑事さんが塾に来るわけはないよな。そう思い、周りには生徒たちや先生たちがいたので、とっさに、奥の個室に通した。

個室でソファーへ腰掛けていただくように促すと同時くらいに刑事さんが言った。

「単刀直入に申し上げます。おたくの塾にこの子たちが在籍していますよね」

刑事さんのヨレヨレのバッグからテーブル上に出されたA4のコピー用紙に名前が8個、カタカナで、なんとも冷たく事務的に列挙されていた。

間違いない、うちの生徒の名前だった。

あいつら、何かやらかしやがったな。

「はい。全員うちの生徒たちです。あの~、こいつら、何かしたんですか?」

「実は、近くのホームセンターで集団万引き事件がありまして、防犯カメラや聞き込みで、この子たちが関わっている可能性が高いと判明したんです」

俺は顔色一つ変えなかった(と思う)。
「証拠写真か何かあるんですか?見せてください。」

俺は、生徒たちのことを信じたい。刑事さんを敵視したわけではないが、大切な生徒たちが捜査対象になっているのだ。冷静を装うので精一杯だった。

「捜査資料のためお見せはできませんが、内偵捜査はほぼ終わっています。あとは、彼らに直接話を聴くため、警察署に来ていただくことになります。そのため、彼らの住所と電話番号を教えてもらいに来ました。」

たんたんと言う刑事さんのセリフは、まるでテレビドラマのワンシーンのようだった。

「そこまで捜査が進んでいるなら、学校とかで住所はわかるでしょう。」

俺は、非常識だとは自覚しながらも、堂々と生徒たちをかばっていた。すべて何かの間違いであってほしかったが、おそらく間違いないのだろう。あいつらが法を犯したのだろう。

だが、俺は捜査に協力する気にはなれなかった。

刑事さんはたんたんと言った。
「それが、今は春休み中なので、学校では対応してもらえず、塾に来ました。」

俺は、迷った。常識的に正しいのは、刑事さんに住所と連絡先を教えることだろう。しかし、俺は俺のやり方でやりたかった。

「刑事さん、すみませんが、彼らの住所と連絡先は教えられません。」

刑事さんは驚いたようだ。

少し間を置いて、刑事さんが強い口調で言った。

「いいですか?この子たちは、犯罪を犯しました。あなたは先生なのに、その肩を持つのですか?その前に、いち市民として、警察の捜査に協力していただきます。捜査妨害をするつもりですか?」

「妨害するつもりはありませんが、そう受け取られても構いません。彼らの住所と連絡先は絶対に教えられません。」
刑事さんは困ったように、手帳をペラペラめくっていた。そして言った。

「そうですか。それならば、明後日まで待って学校に問い合わせればいいだけです。」
なんとも冷たい言い方だった。

「刑事さんは、彼らを逮捕してどうしたいのですか?」

(※中学生の場合「逮捕」とは言わないのだろうか?詳しくはわからないが、そんなことはいちいち考えている余裕はなかった。)

「私は警官ではありますが、少年課です。子どもが間違いを犯したならば更生させることが目的です。」

「刑事さん、僕も同じ気持です。彼らが犯罪を犯したならば、被害者に対して謝罪させ、償わせ、反省させたい。でも、僕なりのやり方でやりたい。」

「そのお気持ちはわかります。しかし、被害届けも出ていて、捜査も進んでいますので、、、」

「すみません。今日はお引き取りください。」

しぶしぶ帰り支度をしながら刑事さんが
「何かありましたら、その名刺の番号にお電話ください。先生、お若いのに、肝が据わっていますね。」

と言って帰っていった。

その瞬間、その名簿の一番上にあったキヨシに携帯メールを送った。
「すぐに電話をくれ。」と、俺の携帯電話の番号を送った。

1分もせずにキヨシから電話がかかってきた。

「先生、なに?どうしたの?」

「キヨシ、今どこにいる?」

「○○の家」

「そうか、すぐに塾に来い。」

「え?」

「緊急だ。すぐに来い。」

キヨシは無言だったが、タダ事ではないと察し、電話を切った。

その後、同じように『万引き犯名簿』に書いてあった名前に電話やメールをした。

真っ先にキヨシが塾に到着した。平然としていた。
「なに?俺、何かした?叱られんの?」とあっけらかんと言った。

個室に招き、刑事さんが来たことを話した。

「・・・まじ?」

キヨシは顔面蒼白になった。

「なんの件か心当たりがあるのか?」

「・・・・・」
キヨシは下を向いていた。

「そうか。心当たりがあるのか。お前、本当に万引きやったのか?」

「・・・・・」
キヨシは下を向いたままだったが、否定をしなかった。

彼の反応から、やったことは確かだった。

「馬鹿野郎が」

俺は失望を隠さずに力ない声で言った。

「・・ごめん。先生、どうしよう。親には言わないで」

涙目で彼は助けを求めてきた。

「アホか。そんなレベルじゃねーだろ。でも、何かできることはあるかもしれない。関わったやつ全員呼べ。今すぐ。」

それから、15分以内には全員が塾の教室に集まっていた。

空いている教室に全員座らせた。全員が下を向き無言で俺が話し始めるのを待った。

「お前ら、念のために確認しておく、万引きの件で刑事さんが塾に来た。その万引きに関わっていない奴はすぐに帰ってよい。」

全員が下を向いたまま、座り続けていた。それは、万引きを認めたということである。

真面目だがお調子者のコウタが、涙と鼻水を垂れ流しながら言った。
「先生、高校もダメかな?俺の人生もうダメかな?」

コウタは嗚咽していた。


「お前らは馬鹿野郎だ!」
俺は怒鳴った。

怒鳴ったものの、すでにやってしまったことだ。いかに謝罪して償って反省するか、が大事だと冷静に考えていた。

「全員、ここに親を呼べ。事情も聞かれるだろうから、自分の口でしっかりと伝えろ。」

中でもコウタは一番動揺していて、声にならず親に説明できなかったので、俺が電話を代わり説明して塾まで来てもらうように言った。

生徒8人と、急に来られた保護者様5人が教室に入った。

急に呼びだされた保護者様は、買い物袋を持っている方や、家着のまま駆けつけた方もいた。

そのうちの一人の母親が、息子を平手打ちした。

他の三人の母親は最初は取り乱していたが、やっとのことで状況を把握してきたようだ。

もう一人、コウタの母親は一人だけ、実に冷静で、ずっとコウタのことを見つめていた。


お母さんのうちの一人が、甲高い声で俺に言い寄ってきた。
「塾の責任ですよ!どうしてくれるんですか!?」

「塾外で起きたこととは言え、塾の仲良しメンバーが集まってやったことです。責任を強く感じております。すみませんでした。」

深く深く頭を下げた。


そして、生徒たちの前に立ち、深呼吸をしてから言った。

「俺は今日限り教師を辞める。世間に許してもらえないのなら、塾も今日限り閉鎖する。」

---------------------------第3章(2)へ続く
2015-12-17

第2章 「過酷なイジメから生徒を救ったもの」

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第2章「過酷なイジメから生徒を救ったもの」

「ぼくは学校に来たくない イジメはどんどんひどくなる  ぼくがたえればいいんだ でも もう つかれたんだ  らくになりたい」

クシャクシャに丸められた作文用紙に殴り書きされたその言葉。

その作文は,中学2年生のまだ幼い彼の,助けを求める心の叫びだった。

俺はそれをお母さんから見せられたときに、何も言えず、頭の中が真っ白になってしまった。

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【これは実話であるが、プライバシーに配慮し、登場人物の設定(性別や名前)を意図的に変更してあるため、フィクションということにしておく】
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学校でひどいイジメを受けていたのは、サトルという少し小柄の勉強も運動もそんなに得意ではない生徒だった。

俺はとても悔しかった。彼が学校でイジメられていたことに気付けなかったからだ。しかも、ここまで追い詰められた状態だったとは。

お母さんは涙を浮かべ,俺に話してくれた。

「イジメのことは学校には何度も相談したんです。これは、学校の授業の作文で書いたんです。当然、先生たちは把握していますよ。でも『様子を見ましょう。』『ただの悪ふざけでしょう』と、学校は何もしてくれません。こんな相談を塾にするのは変かもしれませんが、もう、誰に頼ったら良いのかわからなくて・・・」

「お母さん、相談してくれてありがとうございます。学校でのこととは言え、サトルくんは僕にとって大切な生徒です。僕でよければお力になります。作戦を立てて,すぐに実行します。」

そうは言ったものの、イジメ問題はそんな単純ではない。

はっきり言って、イジメをやめさせることは簡単だ。親が学校に怒鳴り込んだり、相手の家に押しかけて騒ぎにすれば、イジメる加害者たちは、面倒だからと、すぐにやめて、標的を変える。
しかし、これは根本的な解決ではない。

実は,サトルは小学校の時も、違うイジメっ子にターゲットにされ、イジメを受けていたらしい。

1000名以上の生徒をみてきての俺の持論だが,イジメられる子には、イジメられる理由が必ずある。

誤解しないで欲しい。当然、だからといってイジメを容認することはあってはいけない。卑怯で、被害者の心に傷を残すイジメはどんな理由があっても許されるべきではない。

が、本人が変わらなくてはいけないところもある。そうでなければ、また違うイジメっ子の標的になって、同じことを繰り返すだけだ。

俺は、考えた。
今回、俺や親御さんが守ってあげても、サトルは何も変わっていない。むしろ臆病になっている。またいつかイジメの標的にされるかもしれない。

見方を変えると、これは良い機会なのではないかと思った。とても過酷だが、彼に訪れた試練だ。この試練から逃げてはいけない。もちろんサポートは必要だが、大人が彼を守ってあげるのではなく、サトル自身に強くなってもらう。その際、俺や家族が味方なんだ、と伝えることが必要だ。

そして、その日の授業の最後に、俺はクラス全体に一か八か話をすることにした。

当然サトルにはクラスで打ち明けるという作戦の承諾を得た。そんな繊細な問題を打ち明けられるほど、塾での、サトルのいるクラスは、みんな本当に仲が良かった。

思い切ってサトルがイジメられている秘密をクラスに打ち明けることで、俺はあることを期待していた。

実は、塾の同じクラスにはイジメを乗り越えた生徒がいることを俺は知っていた。その子の話を聞かせたかった。そうすればサトルも勇気づくかと思ったわけだ。

しかし、予想外のことが起きた。
「みんな、ちょっと、一緒に考えてほしいことがあるんだ。」

いつになく真剣な表情で話し始めた俺に、みんな真剣な表情になった。

「実は、サトルが、学校でイジメられているんだ。俺は、お前らのことを自分の子どものように、弟のように思っている。そんな生徒の一人が苦しんでいるのは見ていられない。みんなはどうだろうか。イジメられた経験とか、それに似た経験で、それを乗り越えたって話があれば、サトルに教えてやって欲しいんだ。」

前に座っていたイジメを乗り越えたことのある「その生徒」は下を向いてしまった。

「マズイ!失敗だったか、、、」

そう思った瞬間、一番後ろの席の体格の良いオサムが机を強く叩いて立ち上がった。

「ふざけんな!俺がいってやるよ!!北中まで行って、俺がそいつらぶっ飛ばしてやるよ!なぁ、サトル!心配すんなよ!もう大丈夫だから!」

オサムは興奮していた。本当に今すぐにでも駆け出しそうだった。友達思いの優しいオサムは涙目で怒鳴っている。

「オサム、ありがとう。でも、それはやめておけ。お前が悪者になってしまう。しかも、お前がずっとサトルを守ってあげられるわけではない。でも、本当にサトルのことを想ってくれているその言葉、嬉しいな。ありがとうな。」

オサムは黙って席について机に突っ伏した。

それからしばらく,クラスの全員が黙っていた。具体的な解決策が出たわけでもなく,俺としては不甲斐ないと思っていたが,実はこれで良かったことがわかった。

その日、授業終了後、オサムとサトルは一緒に帰っていった。中学校は違い、家も正反対なのに。

それを見た俺は、心が熱くなった。

サトルには、いくつか具体的に有効と思われる対処を教えたが、あとは、本人が精神的に強くなり、自らの力で乗り越えることを願うしかなかった。

俺は無力感を感じていた。

しかし、その数日後、お母さんから電話をもらった。
「あの日、塾から帰ってきて、すごくスッキリした表情だったんです。次の日も嫌がらずに学校に行って、今は本当に普通になったんです。本人に聞いたら、イジメはほぼなくなったって。先生何をしてくれたんですか?」

お母さんには経緯をすべて話した。

「サトルのことをそこまで想ってくださるお友達がいたなんて。本当に幸せです。その子には感謝してもしきれません。先生、ありがとうございました。」

大人は、子どもたちのことを未熟だと思い、子どものすることを信用せず、子どもの失敗を考えて不安になり、すぐに解決を焦り、根本的な原因を隠してしまうことがある。

実は,子どもたちは思ったよりタフで、困難が訪れても、どうにかしようともがく。そして成長し乗り越えていく。それが、本来の姿なんだ。

親や先生の役割は、適度な距離感で、子どもを見守り、必要なら最低限のサポートをし、あとは子どもの行動を信じることなんだ。

それから一年が経ち、彼らが卒業間近になったとき、サトルにイジメをどうやって克服したかを聴くことができた。

「あの時は、本当に苦しくてさ、死んだ方がマシだと思っていた。でもね、オサムが、本気で俺のことを心配してくれて、涙を流しながら、『俺がそいつらぶっ飛ばしてやる!』って言ってくれたじゃん。めっちゃうれしかったんだよ。なんか、俺は一人じゃない。力強い味方がいるって思ったら、すごく気が楽になったんだ。偶然なのかな、その後から、イジメられなくなったんだ。」

世の中には、「仲間」とか「勇気」「夢」「情熱」「努力」とか、そういった事柄を胡散臭いと毛嫌いする人もいる。

しかし、俺は、生徒たちをみてきて、実感している。それらは胡散臭くない。しかも教育には欠かせない要素なんだ、と思うようになった。

教育現場には、夢とか努力とかを堂々と語れる先生が必要なんだ。

エイメイグループの教育理念「教育に夢と感動を。そして少しのユーモアを。」

俺はこの塾の教育を日本中に広めたいと思った。いや、「エイメイのおかげで」「エイメイに出会えて良かった」「エイメイで人生が変わった」生徒たちや保護者様から何度もおっしゃっていただき、この教育を広めていく使命感を持った。

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大学を卒業し、23歳で塾を任され、俺は正式に塾長になった。若さゆえ、情熱の塊で生徒たちと向き合っていた。そんな初年度、塾の存亡を揺るがす大事件が起こる。。。今でも鮮明に覚えている。4月6日、午後、私服の刑事が塾に来た・・・
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この話は第3章に譲る
2015-12-17

第1章 「夢の途中」

テーマ:夢の実現へ-BIGになる-
第一章「夢の途中」
「よし!やるしかない!」

左腕につけた「アナログ」の腕時計は7時25分。なんとも中途半端な時間であるが、この塾「エイメイ」の授業開始の時間だ。6年前に俺が生徒としてエイメイに通っていたときも当然7時25分であった。

俺は、緊張と不安と喜びと、複雑な気持ちで2階の教室へ向かった。教室の前でもう一度声に出して言った。「よし!やるしかない!」その3秒後、目の前のスチール製の安っぽく軽いドアを勢い良く開けた。

「こんばんは!」

そこには想定通り、中学2年生の総合クラスの生徒たち、7人の男子と4人の女子がいた。想定通り、生徒たちは緊張している。俺以上に。

例外なく全員の視線はこの俺に向けられていた。当然だ。俺は教師なのだ。あの、夢にまで見た教師なのだ。大学3年と、予定より少し早いが、俺はとうとう(塾の、ではあるが)教師になったのだ。

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【俺の塾の先生としての今までのストーリーを小説風に書いてみたくなった。
登場人物:主人公「坂上大也」。まぁ、事実をもとに、プライバシーに配慮しながら、登場人物は特定できないように、結構設定もアレンジしていますので、これはフィクションということにしておく。】
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「もう一度、こんばんはー!今日からみなさんの数学を担当する坂上といいます!よろしく!」
誰からも返事はなかったが、これも想定内。
俺は、この2時間の授業のために、授業直前まで合計15時間は準備をしたであろう。想定内のことしか起こらないくらいになるまでに準備をした。もう二度とあんな失敗はしたくないからだ。

次の瞬間、
あのスチール製の軽いドアが開いて、「遅れてすいませ~ん。。」男の子が照れながら下を向いて入ってきた。

「田岡裕太、だな?こんばんは!」ふっ、これさえも想定内。先輩の先生から情報は得ていた。田岡という生徒は必ず数分遅刻をするからね。と。

遅刻魔の裕太は初めて見る俺が名前を知っていたことに一瞬驚いたが、すぐに席についた。
俺は無言で教室から出た。生徒たちは、驚き、遅刻に対して先生が怒ったのかと、裕太は特に気になっていたようだ。俺としては、そんな意図はないので、急いで教室に入り直す。
勢い良く軽いドアを開け、
「こんばんは!今日からみなさんの数学を担当する坂上といいます!よろしく!」
と初対面を装って大きな声で同じ挨拶を繰り返した。

生徒たちは一瞬驚いたが、くすっと笑ってくれた。
「やりなおしたんだよ~。裕太が遅刻しちゃったからな~。今度からは一回だけにさせてくれよ!裕太!遅刻するなよ~!」
と言いながら
ホワイトボードに漢字で【坂上大也】と書く。

「この下の名前読める人いる?今までに読めた人は2人しかいないんだぜ!」この後半のセリフがポイントなのだ。そうすると生徒はゲーム感覚で当ててくる。ほら。元気な男子のひとりが早押しクイズかのように言った。

「タイヤ?」

「おい!俺は自転車のタイヤじゃねーぞ!」

みんなどっと笑った。中学二年生の笑いのツボなんてこの程度に浅い。と余裕に思ったが、それは初回だから生徒たちのテンションも少し高かったからだと後から知る。

「ダイヤ?」

「うーん。そんなに高価じゃない!」

実際この名前を読めた人は今までにも数少ない。高校時代なんて、担任の先生から入学式の後のホームルームで「サカガミ、、ダイヤ、くん」と言われ、よく間違われるので、少し面倒で訂正せず、「はい」と返事をしてしまったから、俺は高校の3年間、みんなからダイヤだと思われていたくらいだからな。

そんなことはどうでも良い。今は大事な生徒たちとの初対面のツカミの時間だ。塾長は何より大切にしろと念押ししていた。

「あれ~、正解はいないな。答えは、『ヒ・ロ・ヤ』」

ここまで全てのことは想定内であったが、次の裕太の発した一言は想定外であった。

「エロヤ?」

「おい!ちげーよ!誰がエロだ!」

生徒のみんなが大爆笑をする。

俺も、これはラッキーとばかりに、
「どうやったらエロヤなんだよ!ヒ!ロ!ヤ!いいか!絶対にエロヤなんて呼ぶなよ!」

裕太は期待通り

「エロヤ~~!!」

みんなも大爆笑。

想定外ではあったが、とりあえずツカミは成功か。ニックネームなんてあとからいくらでも変えられるだろうし、とその時は軽く思っていたのだが、それから現場で先生をしていた11年間は、ほとんどの生徒から「エロヤ」と愛情を込めて呼ばれ続けた。ちなみに多くの保護者様からも「エロヤ先生」と嬉しいことに愛称で呼んでもらった。

「みんなとは初対面なんだから、何か先生に質問はないか?」

「先生!あ、間違えた、『エロヤ』、きょうだいいる?」

「先生で間違ってねーよ!!おー、きょうだいいるぞ!超凶暴な兄貴と、10歳も上の姉がいる。俺は末っ子だ。」

「私もお兄ちゃんいる。ウザい。いらないよね~」と元気な女子が言ってくれた。

「お!俺も中学時代は兄貴いらないって思っていたよ!今では仲良いけど、あの頃は毎日ケンカ。あのね、みんなが想像するケンカじゃないぞ、もう、殺し合いだぜ」

「え~!うそ~!」

「本当だよ!一緒に食卓でご飯食べていても、ヒジが当たったという理由で殺し合いのケンカ。自分の領域を決めて、線を引いて、お互いが入ったら殺し合いのケンカ。もう、国同士の戦争と一緒だよ。空中でも入ったらケンカだもんな。殺し合いの。」

「すげ~。エロヤも結構ケンカ強そうだけど、お兄ちゃんも強いの?」

「そりゃそうだよ。兄貴は地元じゃ有名な暴走族のリーダーやっていたんだよ。暴走族同志の抗争事件で少年院にまで入ってんだよ」

「え、マジ?こえー」

「いや、面白い話があって、その抗争事件の裁判があってさ、母親が見に行ったんだけど、兄貴の前にたくさんの仲間がすでに警察に捕まっていて、先に調書など取られてて、『坂上は武器は絶対に使わない主義だった』と全員が言っていて、罪も軽くなるかな~って思われていたんだけど、裁判のとき、裁判官が『坂上くん、右腕をまくって見せてみてください』と、兄貴はなんだ?と思いながら腕をまくると『異常なほどに太い右腕を凶器と同等とみなします』と言われたらしいんだよ。前代未聞だよな」

俺は腕をまくってみせ、兄貴は俺よりこんなに太いんだぜ!もう丸太!と言いながら大げさにしてみた。その後も兄貴とのエピソードをいくつか話し、大爆笑であった。

この10分で生徒たちの心は完全に掴んだ。このときは初めてではあったが、現場で11年先生をやった今だから分析できるが、この10分間のツカミの時間がそのあとの生徒たちとの関係に大きく影響するほど物凄い価値のある時間であるのだ。

「先生、なんで、金髪なの?そんなんでいいの?」もう一つ質問が出た。

「3年B組!キンパツ先生!って言いたくてな。」

「なにそれ。先生なのに、金髪で、いいの?」

生徒から言われて改めて思ったが、塾長はこんな俺の髪を黒に戻せなどと言わなかった。その非常識さが、この塾の特徴なのだ。

現に、この瞬間も隣の教室では生徒たちの大爆笑が聞こえる。

「お!こんな時間か!」わざとらしく腕時計を見た俺は言った。

「授業入らないとな!最後の質問だれか?」

「先生はなんで先生になったの?」とまた裕太からの質問。

この質問には、一言で答えることは無理だった。どこから話そうか。

小学校の頃、運動会のとき勝手に遊んでいたら、ガタイの良い先生から首をシメられ、恐怖を覚えて、こんなのが教育か?と思ったことか。

いや、中学1年のとき、兄貴の友達からもらったボンタンをはいて登校したときに生活指導の先生に呼び出され「お前は、みんなへの影響が大きい。リーダーになれる。お前は自覚をして、その力を正しい方向へ使うべきだ」と言われたことか。

でも、中学3年で、この塾「エイメイ」に入って、尊敬できる大人に初めて出会って、俺は先生を本気で志したんだ。その話を生徒たちにしてあげよう。

でも、そこからは簡単ではなかった。という話も生徒たちにはセットで話をしたい。
が、今日はさすがに勉強に入らなくてはならない。

「この話は今度にしよう!楽しみにしてろ!」

そういってから、自然な流れで数学の授業に入っていった。



--------------その3年前のこと

大学に合格したときに卒業した塾「エイメイ」へ中学ぶりに顔をだした。

塾長に「教育学部か?じゃ、大学生講師として、うちで先生をやってみろ」と言われ、軽い気持ちで採用試験の模擬授業に挑んだことはターニングポイントであった。

模擬授業は、先生たちを生徒に見立てて授業をするのだが、1歳や2歳くらい年上の大学生講師たちから、ものすごい指摘(当時の指導は職人に近く、キツイ言い方ばかりであった)を受けた。

一人の数学科の先輩から
「はっきり言って、準備不足。そんなんで生徒たちの大切な時間を奪うつもりだったの?先生には向いてないんじゃない?」

とまで言われた。俺は完全に自信を打ち砕かれ、呆然としてしまった。

反省をしている素振りを含めた作り笑顔をして全員の先生に頭を下げて「ありがとうございました」と言った。全員が教室から出終わる前に、俺の目には涙が溢れていた。

最後に教室には俺一人が残された。ホワイトボードを綺麗に消しながら、何も考えることができないくらいショックを受けていた。

数分が経ち、塾長が教室に入ってきた。「坂上。わかっていると思うが、不採用だ。今のままではお前を先生として大切な生徒たちの前に立たすことはできない。」

「・・・はい」

俺は、すべてが終わったような気がしていた。

部活動でも中学でも高校でも部長を務め、友達関係でも常にリーダーシップをとってきた俺は、先生に向いている。と信じて疑わなかったんだ。

しかし、今日それがすべて打ち砕かれた。

もちろん、俺の油断、準備不足がすべての原因。そう思いながら涙が止まらなかった。

塾長は
「坂上、もう一度やってみろ。すぐにとは言わない。今回、お前は良い経験をした。俺は、お前の中に光るものが見える。全員が不採用だと言っていた。当然だ。だが、俺は、お前のことを諦めない。必ず、このエイメイの力になってくれ。」
そう言った。

その夜は眠れなかった。俺は教師には向いていないのか。いや、ここから俺は這い上がるんだ。順風満帆な人生なんてドラマにならない。ここからが始まりだ。やっとのことで気持ちを整えることができた。

あのときの塾長の言葉がなければ、俺は教師という夢から逃げていたかもしれない。本当に当時の塾長には感謝している。

不思議な話ではあるが、一度、ボロボロな状態で塾の採用試験に落ちた、この俺が、数年後にはこの塾の塾長になり、会社化し、今は社長をやっているのだから、あのときの模擬授業で俺に「先生に向いてない」と言った先輩たちは驚いているだろうな。全員に感謝だな。

つづく・・・
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