しょっぱい梅干し。
車で長野スタジオへ向かう道中に、美味しい豚ロース生姜焼き定食のお店があります。老夫婦がやっているお店です。ひと月かふた月に一度くらいの頻度で顔を出していたのですが、この年末からこれまでがちょっと忙しくて立ち寄る時間がありませんでした。昨日、久しぶりに伺ったら、いつもと違うスキンヘッドのお兄さんがお出迎え。『おかあさん、お久しぶり~♪』なんて言おうとしてニコニコして店に入ったのだけど。『何名様で?』のコワモテの言葉に、ちょっと戸惑う。。。とりあえず席に座って、スキンヘッドのいかついお兄さんが注文を取りに来るのを待ちます。『あれ?おかあさんはどうしたんだろう?』その場にいたスタッフは、全員そう思ったと思います。注文を取りに来たところで、『今日は、おかあさんは?』と聞いてみると。およそ一か月前に亡くなられたとのこと。。。それも急死だったって。。。驚きのあまり、自分の目から涙が出ていることにも気付きませんでした。一緒にいたスタッフは、号泣。それほど深い仲だったわけではないのに、なぜか涙が止まらない。たまにしか立ち寄らない私たちに、おかあさんはいつもいろんなお惣菜をオマケしてくれました。いつだったか、『世の中の梅干しは甘すぎる』と話すと自分がつけている梅干しはショッパイから食べてみてと。本当にショッパくて、まさに求めていた梅干しでした。『とても美味しい』と伝えると、それ以来、店に行くたびに梅干しを出してくれました。言うなれば、それだけの関係です。身内が死んだって、振り絞っても涙なんか出なかったのに。ポロポロとこぼれる不思議。調理場から現れたおとうさんは、『とても残念だ』と悔しがっていました。『もう、あのしょっぱい梅干しも食べられないのかな』と言うと、おかあさんがつけたと思われる梅干しを持ってきてくれて。『どうぞ、全部持ってってください』って。もう、涙が止まらないし。。。たぶん、この梅干しを楽しみにしている人は私たち以外にもいると思うので、半分だけもらってきました。この梅干しが無くなったら、もうしょっぱくて美味しい梅干しを食べられないんだな。ご冥福をお祈りするとともに、働き者だったおかあさんが天国でゆっくりと休めますように。