子どもの学力が落ちてきているという話はずいぶん前から言われています。
羊が寺子屋で子どもの学習を見ていた時にも感じていたことは、今でもまだ続いているようです。
全国学力調査のようなテストが行われるようになり、表面的には学力が回復しているように見えますが、教育現場では「何かがおかしい」と感じる先生がほどんどのようです。
そして学力の2極化がさらに進んでいて、自分でどんどん学ぶ力がある子と授業についていけない子と分かれて、後者がどんどん増えている。
また学校のテストができる子たちも、点数を取るための操作を覚えていて本当には理解していないことも多いのです。
ところが文科省の調査では子どもがどこでつまずいているのかがわからないから手の打ちようがないというので、広島県の教育委員会が学者と共同でその原因を探るプロジェクトを実施したそうです。
その結果生まれたのが単に知識が身についているかどうかを測るテストではなくて、知識が身についているかどうかを測るたつじんテストでした。
上のサイトに問題例が掲載されていますが、一例をあげると1から100までの数直線があって、23はどの辺が印をつけるという問題です。
物差しで23㎜はかって印をつける生徒が多く見られます。
100の半分が50でその半分が25だから、それより少し左に印をつけようと考えられるかがポイントです。
1---------------------------------------------------------100
↑23はこのあたりかな?
これは数の概念がしっかりと身についておらず、表面的な理解で進んできたから起こるのです。
たつじんテスト開発者の今井むつみ先生は、スキーマとアブダクション推論ができていないので記号接地の精度が低いせいだとおっしゃいます。
スキーマというのは「南は北の反対」という単なる言葉の意味ではなく、方角と言う概念とさらに自分の位置や向きを総合的に経験から裏付けたもののことで、経験から得た暗黙知のことです。
抽象的な理解なので言葉で説明できないことも多々あります。
アブダクション推論とは少数の事例から一般化して物事を理解する方法のことで、間違った推論をしてしまうこともあるけれども、常に検証しつつその精度を上げていくことが、人として生きていくうえで必須な作業のことです。
ここが大雑把で誤りが訂正されずにそのままになってしまっている子どもが多いので、知識の活用=知識のリテラシーが高まらないのです。
一例として教科書で丸いピザを半分に切った一方を1/2だという図を見て、「丸いものを2つに分けたものが1/2」だと思い込んでしまう子どもがあります。
図形だけでなく数や量にも適用されることは初めて学ぶ子どもには理解が及ばなくてもしかたないのです。
先ほどの数の概念ですが、羊が常々過去記事でも取り上げている通り、幼児期や低学年に「集める」「分ける」「数える」「配る」など、具体物を使って数を体験することの重要性はここにあるのだと思います。
生活の中でケーキを切り分けたり、ジュースを半分こしたりという経験があれば、1/2の概念もすんなりのみこめるでしょう。
子どもたちにとってはスマホやタブレット、テレビのスクリーンを通じて接するのもが外界であり社会の大部分になってしまっているので、余計に体験の機会の重要性が高まっています。
保護者の方々には実物教育のチャンスをできるだけ多くお子さんたちに与えてほしいなと思います。(羊)