ジャズをはじめようとして最初にされたことは、練習会を立ち上げたことだと伺いました。その練習会とはどのような内容だったのでしょうか。
うーん、オレとしては、ギターアンプから音を出したかっただけなんだよね。家でアンプ使えないからさ。それで地元の情報誌に「歌と演奏を楽しむ会」という団体が募集を出していて、ジャズからポップスまで幅広く演奏を楽しみましょう!みたいな事が書いてあったから応募してみた訳。
それをHMCと改名したと。
そうじゃない。「歌と演奏を楽しむ会」の実状は当時のオレからしたらレベルが高すぎたんだ。一回だけ音合わせして、オレは遠慮してその団体を抜けた。メンバーはオレを含めて3人。ヤマハ講師の女性ピアニストと経験豊富なベテラン女性ベーシストの二人に対して、当時枯葉くらいしか知らなかった見習いギタリストのオレに何ができるっていうんだ?
何もできませんよね。
オレはそれでも音楽自体を諦めた訳ではなかった。その女性ベーシストにノウハウを学び、自分で、気軽に遊ぶための練習会グループを作ることにしたんだ。
普通に初心者向けのジャムセッションに行けば良かったじゃないですか。
いくつか行ったけど、遠かったり値段が高かったりで、なかなか敷居が高かった。あと、練習会ならともかく、ジャムセッションって基本飲み屋だろ?オレの目の前に酒があってジャズが流れてるってことは、ブロンドの美女が全裸でスラム街を歩いてるようなもんだぜ?(笑)結局飲んじゃって演奏できなくて、たまに喫煙しに店の外に出て、何しに来たんだか(苦笑)って。
最低ですね。
とにかく当時オレはプロのミュージシャンじゃなかったし、ギターで遊びたかっただけだったから「土曜昼間」「近場」「遊び感覚」この3つにこだわった。そんなのいくら探したってないんだよ。自分で企画するのが一番手っ取り早かった。
なるほど。
それからは、前にも言ったけどHMCが音楽学校代わりさ。元シンガーソングライターの女性ピアニストにサブドミナントマイナーを教えてもらったことから始まった。
図々しいですね。
「何でここEb7なのにサブドミナントマイナーと呼ばれてるのか分かりません(>_<)セブンスなのに何でマイナーなんですか(>_<)」
「それはね、Sくん、モーダルインターチェンジといって、、、」
アルトサックスの人には、
「このフレーズコピーしてみたんですけど、よくわかりませんでした(>_<)」
「ああ、そのフレーズは覚えておいた方がいい。OK。一緒にやってみよう。こうだ。バララララーバララー!!バララー!!!」
「こうですか!?ポペポペポペ〜」
「一拍目は弾かないんだ」
テナーサックスの人には、
「どうやったらそんなに上手くなるんですか(>_<)」
ストレートに聞いた。
「トレーニングは、チャーリーパーカーの音源に合わせて弾くだけでいい」
「例えば、テンポを落としてやるとか、一つのフレーズを切り取って何回も繰り返すとか、どっちがいいですか?」
「CDを流しっぱなしにして、チャーリーパーカーと同じフレーズを弾き続けてればいい」
「あ、、、はい、、、(そんなの無理だよ〜(>_<))」
ベースの人には、、、ベースの人には一番お世話になった。一緒にスケール練習をしてくれたり、ジャズそのもののリズムのことを教えてもらったり、基本的なスタンダードやレジェンド達の事を教えてもらったりね。本当にあの頃のオレは何も知らなかったから助かった。色んな思い出があるけど、
「コンファメーションの黒本バージョンはチャーリーパーカーのオリジナルバージョンと全然違うじゃないですか(>_<)誰を参考にしたらいいのか分かりません(>_<)」
「OK。例えばトミーフラナガンなんかどうかな?」
それで次回の練習の時にCD貸してもらったりして、いつもそんな調子で、オレはその人に甘えきっていたね。
ギターの人には、、、具体的な奏法やギターならではのことはギタリストじゃないと分からない。ボイシングとかギターそのものの考え方だな。
「えっ!?今の何ですか?」
「ああ、これはDrop2ボイシングといってね、、、」
他にも、参加してくれたミュージシャン達は全員色んな意味で素晴らしい影響をオレに与えてくれた。全てを吸収したかった。
例えば、トランペットの重鎮は、
「おい、S、お前はブルーズから始めないとだめだ。1年間、ブルーズの1曲だけを選んで、それだけを練習しろ」
と言ってきた。いや、さすがにそれは、、、と思ったけどね(笑)でも、彼の言いたかった事は今では分かる。
「僕はルート音しか弾けませんから、ルート音だけずっと弾きますね」
と言って、実際に4時間のセッションをギターでずっとルート音だけ弾いていた人もいた。この人の根性と勇気をオレは冗談抜きで尊敬している。オレと似てるなと思った。オレだって訳わからない状態でジャズに憧れて、めちゃくちゃなことをし続けただけだからな。