青パパの無限増殖ver.187 -8ページ目

せつない努力

マイケル・ナイマンの音楽に弱い橋本治は「ガダカ」を見たらあんまりいいので「トゥルーマン・ショー」を見てしまったと書いていて。音楽ならハワード・ショアとは思いつつ、DVDを借りて見る。
「トゥルーマン・ショー」は同名のテレビ番組で四六時中その一挙一動を映し出される主人公(ジム・キャリー)が架空の街でエクストラと共に人生を過ごしている「からくり」に気付いて、逃げ出そうとする。真実の人生を得るために…
「ガダカ」は遺伝子の優劣で適性・不適性を決められた未来社会で、宇宙飛行士の夢を諦められない不適性者の主人公(イーサン・ホーク)が半身不随の適性者(ジュード・ロウ)の遺伝子を借りて夢を叶えようとする。主人公が勤めるNASA的会社内で殺人事件が起こって…
どちらも自分の理想を追い求める主人公が冷酷な現実を突き付ける社会と対峙して、悲しい真実を知ってもなお努力を続ける。その努力を橋本治は「なんとせつないものなのか」と。
「努力」の結果は認められるけれど「努力」そのものは正しく評価されない。「正しさ」を社会は求めていないから。でも「努力」なしには前に進めないので「努力」する。やっぱりどこかせつないのかも…
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
トゥルーマン・ショー

海辺のマキューアン

眩しい陽射しを避けて海辺のチェアで読書。活字から離れてしばし目を閉じる。瞼に舞い降りるオレンジの原初の光、彼方から打ち寄せるさざ波の響き、鼻孔をくすぐる潮の香り…
リゾートの読書についてSちゃんMちゃんご両人と話していると。辻仁成「サヨナライツカ」が挙がる。私が同系列として宮本輝を挙げると否定的な答え。確かに私は「恋愛小説」でさえ構造から読む人間ですけど…
その文脈で村上春樹が登場。海外で訣別したはずの「過去の恋愛」と再会する小説。かつての恋人そのもの、或いは形見の息子・娘、当時の共通の友人…様々に姿を変えて。
個人的にはイアン・マキューアン「贖罪」を原書で再読、マキューアンの処女短篇集を原書で持っていますから。積ん読から選ぶと橋本治「源氏供養」、ドストエフスキー「白痴」、ドナルド・バーセルミ「死父」、ミラン・クンデラ「別れのワルツ」…
あまりリゾート向きではないような…五年前のフーコック島で読んだ渡辺淳一よりはましですが…ホテルにあった唯一の日本語の本。
選択肢の多い贅沢?Sちゃんとのコラボレーションで中沢新一・山田詠美「ファンダメンタルな二人」を連想しましたけど、悪くないチョイスかも。

イアン マキューアン, Ian McEwan, 小山 太一
贖罪
イアン マキューアン, Ian McEwan, 宮脇 孝雄
最初の恋、最後の儀式

紅いカーテンの奥深く

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
ツイン・ピークス ファースト・シーズン ― スペシャル・コレクターズ・エディション DVD BOX

バストショットの小泉首相が紅いカーテンをバックに「郵政民営化は国民の皆さんとの約束です」。
初めて見た印象は「ツインピークス」の一場面、雷が鳴り響く中、小人と巨人が現れクーパーFBI捜査官に、解決しないローラ・パーマー殺人事件の糸口を示唆する。四方が紅いカーテンに囲まれ、ソファーしかない異様な空間。
デヴィット・リンチは好きな映画作家でレーザーディスクで全巻持ってます…現実と夢の境界線に位置するその空間は普段は決して顕れない「人間の邪悪な心」を象徴しており…
「約束」を繰り返す小泉首相より、鮮やかな紅いカーテンの奥ばかり気になるなんて。「邪悪な心」の化身が突如襲いかかってくるとでも。
隠れているのは森元首相、青木参議院幹事長くらいでしょうけど。ひと昔前なら鈴木宗男とムルアカですね。「マルホランドドライブ」にも出演してる小人もやたら恫喝して怒っていたような。
「邪悪な心」の化身がローラの父親に宿り、ローラ・パーマーを殺したはずですが、名前がジョージっていうのは悪い冗談?カーテンの奥ではなく、ソファーの陰で中途半端に隠れてますけど。未解決なまま嫌な謎解き。。

砂丘の涯てまでも

亜熱帯のシャワーをくぐり抜け進む、昨夜の東海道線では「大雨のため、大船より先横須賀線の運転を見合わせおります」とのアナウンス。地球は温暖化し、首都圏は亜熱帯化しているのかも。
いつも通りランチを始めて間もなくMちゃんから電話、「なんとかなるよね」「ならないと困るね」などと話しているうちに店の電話が鳴り。「なんとかなった」と旅行代理店から報せ。
やっと「調整」が終わりと思いきや、そうは問屋がおろしてはくれず、サイゴン並びに新興リゾート、ムイネーのホテルの手配を開始。オーナーのなき父上の地元から程近いファンティエット故に。結局は母堂にお願いする。ロケーションや値段を伝えて、車のレンタルも手配していただく。
代わりに急ぎの翻訳をこなす約束を。等価かどうかは別として非常にプリミティブな人間関係。お互いに相手の出来ないことあるいは相手より得意なことをして「補完」しあう訳ですから。
ムイネーの砂丘についてはサイゴン在住の友人からもベトナムを年間数度訪れる常連の方からも伺っていて。フーコック島以来のリゾートかも。リゾートの読書についてご両人とも話ましたが、またの機会に。
タン・ホック・ベン, 郷司 陽子
アジアンリゾート

亜熱帯の新宿

相変わらずチケットが確定しないまま、旅行の打ち合わせに新宿へ。天気予報通り、不穏な曇り空が電車の窓から見え、大崎では雨がちらほら。新宿は今にも天の滴が零れ落ちんばかりに灰色のカーテンが。SちゃんMちゃんご両人が現れるまでジュンク書店、紀伊國屋で本の波を泳ぐ。
近くのカフェで打ち合わせを終えてSちゃん行きつけのお店へ向かう途中にぽつりぽつり、と。軽いつまみを注文し、ビールで乾杯した頃には、スコールではなく、本降りになりそうな気配。飲んだら真剣な話はなし、と決めているわりに、話題は自然と総選挙に。
田中康夫から靖国、共産主義、地方の投票行動について。説明の至らなかった部分があったようなので補足すると「天安門事件、ベルリンの壁の崩壊は、ユートピア的な共産主義の「終焉」ではなく 、それに基づく支配の「限界」の顕れ」です。
「マジョリティーを得るのは困難な状況にあっても確固とした存在意義はある。」=新党日本へのシンパシーの根拠。
毎回、楽しそうな食事の光景をブログに書いているSちゃんの「空間」選びに敬服。和む食事の後、雨宿り。バンコクに較べたら微々たるもの、と雨の中、亜熱帯の新宿を駆けゆく…

リービ英雄, LevyHideo
新宿の万葉集

ハーフでも満足を!

ランチは比較的一人で来られるお客さんが多いものの、夜は家族連れやグループ、グループが大半で、一人で食事する雰囲気ではないかな?とかなり長い間誤解していました。飲みがメインの常連の方は別として。
最近になって一人で食事される女性のお客さんが増えつつあり、認識を改めている次第です。一人では複数のメニューを頼めないのでサラダやスープ等をハーフサイズで提供しています。
ファミレスでも同様の試みをしている記事を読んでから半年近く経っているような。客層が拡がってると好意的に解釈?しましょう。
休日は一人で食事しているのに意外と自分自身は見えていない証明。量は食べられないし、野菜以外はいろいろ食べたい欲求が少ない。実家の食卓の影響?。
一人で食事もその空間の居心地のよさが前提にあって。その中身を吟味し、ドゥドゥサンで対応しうる範囲で始めてみよう。漫画読みながら携帯電話の液晶を見つめながら食事する私なりの視点で。「ながら」だと神経が半分半分になって…でもサービスはそのまま!
星里 もちる
ハーフな分だけ

埋まる「風景」

em

オーナーの友人であるOさんが美容院「em」をオープンされました。白を基調とした静かな美意識が漂う空間。戸塚バスセンターから歩いてすぐ。お店に置いてあるカードを持参した初めてのお客様のみ20%オフ。

アルファ企画, 全国美容理容サロン支援協議会
Salon design―ビューティサロンのインテリア&グラフィックス (’05)

ぐるりと回ってさらに半回転

ヘンリー・ジェイムズ, 蕗沢 忠枝
ねじの回転
残暑にも陰りが見えてきてやっと一息ついて二年ぶりのサイゴン行きについて、同行者の意見を絡めながら想いをはせる。頭の中にあるのは「調整」ばかりですけど。私の性分なのでお許しを。
その癖、三年前のサイゴンでは、往復のチケットの調達だけして友人二人と現地ではほとんど顔を合わせず完全に別行動!をする非常識。タン・ビン区にあるオーナーのお姉さんの家に泊まったため、レ・タン・トンの友人宅までの交通のアクセスに難があったこと、二日目に行ったビリヤード場でかつて世話になった女の子の妹二人に偶然会ったこと、馴染みのカフェで仲良しのマネージャーと昔話をしてる内にノスタルジーに陥ったこと、雨ばかり降って気分が落ち込んでいたこと、オーナーのお姉さんと毎日電話でかなりどうでもいい話を延々としたこと…Hさんとは行きと帰りの電車でしか話をせず…もっとも二人とも一人で行動出来ますからね。人間関係も微妙にずれていて、相手の心配する必要はない、とお互い考えていて帰国後もその話題はなく。
坂上がりする途中で脚の付け根を鉄棒に引っ掛けたまま、逆さの頭で校庭を眺める…頭に血が上る前に一回回った記憶を忘れないように。

Do the right thing.

八年ぶりに見始めてすぐ、主人公のトラヴィスは「四年」家族から消息を絶っている事実に気付き。確かブログでは「五年は長いかな?」と書いたはず。それは店がまる五年を迎えたからで、恣意的な事実のすり替えをしていた訳です。
「人生の半分」離れ離れだった八歳の息子と関係を修復していく過程に心打たれ…「ラブ・アクチュアリー」では子供がおいしいところ持っていくのは狡いなんて書いてるのに。
大いなる自己矛盾。反省するより先に呆れ返り。
「ハリウッド的」との訣別にヴィム・ヴェンダースはこの映画を撮り。その数年後スパイク・リー「Do the light thing.」はソダバーグの「セックスと嘘とビデオテープ」とパルムドールを争ったのでした。
「都会のアリス」から始まって「まわり道」へ続くロードムービーは車内(狭い「空間」)と地平線が見える大陸(広大な「空間」)が同時に画面に現れ、風景は瞬く間に消え去る…
受賞を逃し、審査員に悪態をついたスパイク・リーの映画を見直すのもまた「正しいことをする」なんでしょう。ハリケーンの被害を見るにつけそう感じる毎日。
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ドゥ・ザ・ライト・シング

夏の終わり

連日、サイゴン行きを巡ってMちゃん、旅行代理店と頻繁に連絡を取り合う。FM横浜では「終わらなかった夏休みの宿題の言い訳」についてリスナーの投稿が流れ。夏休み前に、日記・自由研究以外は終わらせてしまう子供だった私は先生にもそこそこ贔屓される優等生を演じていて。ぎりぎりまで引き延ばす悪癖はモラトリアムの大学時代から。
ここしばらく橋本治(くどいようでスイマセン)の「ああでもなくこうでもなく」という「時評らしきもの」を読み、自分がサイゴンにいた間(1997.12-2001.2)に日本で起こった出来事を確認する。
空白を埋めるというより、違った角度からサイゴン時代と対面する。ここ四年間、無意識に避けていた種類の読書。新聞を購読し始めたのはつい最近ですし。橋本治以外も読みますが思考に馴染んだ度合いを重視して、中沢新一、高橋源一郎…
サイゴンに足を踏み入れると、「日本から持ち込んだ宿題」と「サイゴンに置き忘れた宿題」が一遍に雪崩れ込み。「宿題」するにも「予習」が必要だという、夏の終わりに相応しい?教訓が。同時に「復習」もしているようなメビウスの環。
福江 純
アインシュタインの宿題