薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木  江國香織 | ほんのうみ

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 ほんのやまにのぼったら ほんのうみにしずみたい  

情熱。ため息。絶望…でも、やっぱりまた誰かを好きになってしまう!恋愛は世界を循環するエネルギー。日常というフィールドを舞台に、かろやかに、大胆に、きょうも恋をする女たち。主婦。フラワーショップのオーナー、モデル、OL、編集者…etc.9人の女性たちの恋と、愛と、情事とを、ソフィスティケイトされたタッチで描く「恋愛運動小説」。



長い割にはうすっぺらいお話でした。

複数の登場人物が入り乱れても、混乱しないで物語にはいっていける、きれいな文章だと思いますが

それだけで、それ以上はなにもありません。


このひとのほんのキャラクターは往々にして、自分に甘いひとばかりだなぁと思います

しかし、そんな自己肯定に説得力が滲み出る文章をかけるので、すごいと思いました

女性のかきかたは上手、綺麗なひととか、魅力的なひととか、すごく伝わるけれど、男性は、いまいちです。

なんだかちょっといいところの奥様達のランチ会で、ほんとうに話題に出そうな男の表現ですよね。

でもそこが、女性からしたら面白いし、休み時間なんかに気軽に読むには最適なほんなのかもしれません

小難しい訳でもないのに新鮮な表現が多く、ページをめくるたびに素敵な香りが漂っています


[ここには自分の居場所がある、と陶子は思う。家のなかのこまごましたことは自分に責任がありながら、なおかつ庇護されている、というその感じが陶子は好きだった。]


陶子の洗礼された専業主婦のゆったりした感じとか、とても伝わってくる

けれど、綺麗なだけじゃないのが女

数多くのキャラクターでいちばん不誠実な女に豹変する

しかしそれは、さりげなくかかれている

そう、どんな女も江國ワールドでは肯定されるのだ,,,,


序盤に、素敵なフレーズが何度も出てきたのに、なぜか最初のほうだけに集中で、あとは綺麗な表現をたまにちらばせつつ、だらだらと日記のようにかいてあり、あっけなく終わっていました。なんとなくなげやり感、ブレを感じてしまい、残念でした。

読後感になにか考えさせられるようなあえてのなげだしをかくほんはたくさんありますが、このひとはよく使うわりにまったくなにも残らず、ほんとうにただの投げ出したほんのまま終わっている気がします



ただ、全体的にやはり言葉の綺麗なひとです。響くフレーズはひろいあつめたくなります


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花を買った日は、自分が丁寧に生活しているという気がして気分がいい。