なつのひかり 江國香織 | ほんのうみ

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「私」は来週21歳。ウェイトレスとバーの歌手という、2つのアルバイトをしている。「年齢こそ三つちがうが双生児のような」兄がいて、兄には、美しい妻と幼い娘、そして50代の愛人がいる…。ある朝、逃げたやどかりを捜して隣の男の子がやって来たときから、奇妙な夏の日々が始まった―。私と兄をめぐって、現実と幻想が交錯、不思議な物語が紡がれて行く。シュールな切なさと、失われた幸福感に満ちた秀作。



江國作品は暫く距離置くつもりでしたが、

21歳を迎えたフリーター少女の夏、

というあらすじに惹かれて読んでみました。

なにか共鳴できるのでは・・と淡い期待を持ち。

結論からいえば、かなりがっかりです。



異次元と現実の入り組む不思議な手法にトライして、失敗に終わったかんじ。



村上春樹なら巧く表現できるであろうに、と何度も思いました。

そういう村上ちっくな作風自体も好きではないので

村上春樹の小説を読んでもいろいろ難点はつけたけど

この作品を読んでから、反面教師的に村上春樹を尊敬しました。

(村上春樹の場合は、春樹ブランドの先入観もあるからズルいけど・・)

そういう意味では、唯一今作を読んで得た収益です。



やりすぎて、最後はごたついて終わっちゃったかんじ。

せめて短編集なら、ふっと不思議さを残したまま終えれたかもしれないですが

長い割にはまったくもって意味も空気感もない物語でした。

わりに評判が良いのもなぞ。展開も唐突すぎる。



やどかり程度の異次元物ならば物語の良い効果になり得たかも知れませんが

鶏がらのようなめぐみとか五月蝿い双子とかは

設定から言動、描写すべて嫌悪感しか持てず

いい人的に終わっていくのも気持ち悪かった。

キャラメルとかフランスとかまでいくと失笑しました。



だいたい主要人物の兄やその嫁、そして順子さんも、

常識を逸しすぎて人間的に魅力部分が見当たらなくて

必死に探す主人公についていけなくなります。