タイ政府がビルマ難民の強制送還を計画
タイ政府がビルマ難民の強制送還の動きを見せているニュースです。
先月末、タイ外務省はビルマ難民の一部を強制送還する計画があることを発表した。11月のミャンマーの選挙後、タイに居住するビルマ人を退去させる方針であるという。
9月28日にニューヨークでAsia Societyに対し、カシット・ピロミャは次のように述べた。「バンコクに帰った後、私が行うことは、難民キャンプに居住する人々、バンコクやチェンマイのストリートに暮らす人々に対し、より包括的な対応を取ることだ。ミャンマー選挙後、彼らを本国へ送還する準備がある。」
タイ外務省は、カシットの発言は誤解されていると主張している。「本国の状況が改善する」まで保護を求めているビルマ人を送還することはしないという。しかしながら、その条件についてはあまり明確にされていない。近年、タイ当局は、人権団体や外国の団体の強い抵抗に遭いながらも、難民の強制送還する意向を示してきた。
タイは数十年にわたり、政治的・民族的・宗教的な弾圧から逃れてきたビルマ人リーダーや活動家を受け入れてきた。タイの国境に位置する難民キャンプでは15万人が居住していると推測されるが、そのうちの数万人は難民認定を受けていない。他にも200万から300万人のビルマ人が本国のひどい経済状況からタイに逃れてきている。そして、彼らはタイ社会の底辺の労働力となっている。
彼らの強制送還は、人道的な観点からすると大きな問題である。人権団体は強制送還の計画を、重大な国際法違反であるとして、激しく非難している。国際法では、身の安全が脅かされる場所に難民を強制送還することを禁じている。
カシットは、「ミャンマーが『半民主化』されることになれば、強制送還は可能だ」と述べた。しかし、ミャンマー(ビルマと呼ぶ人も多い)での反体制派の扱い、政府の独裁体制を見れば、選挙後に変化があるとは考えにくいというのがミャンマー国外の人々の大半の意見である。11月7日の選挙が近づいているが、2,100人以上の政治活動家が刑務所に拘束され、主に少数民族居住地域に住む数万人の人々が政府軍や他の民族との衝突を避けるため、避難生活を送っている。今年8月、アメリカはミャンマー政府による戦争犯罪についての調査依頼を出した。
「政治活動家や少数民族がビルマに安全に戻ることができるとは考えにくい。」と、バンコクに拠点を置くHuman Rights and Development Foundationのコンサルタント、アンディ・ホールは述べた。「選挙後にビルマ国内での対立が改善するとは言えない。」選挙では、軍が率いるUnion Solidarity and Development Party(以下USDP)が圧勝すると見られている。反体制派の多くの人たちは立候補を禁じられており、脅迫を受けている人たちもいる。抗議活動を行えば、脅迫はさらに強化される。USDPは国家資産を、立候補者の選挙活動に使用している。新憲法では、議席の四分の一は軍が占め、影響力のある大臣ポストも軍が占めることが認められている。
仮にタイ政府によるビルマ人の強制送還が行われれば、難民の保護政策は流れ星の命のような短い期間で終わってしまうことになる。2008年12月にこれを象徴する事件が起こった。タイ海軍がミャンマーやバングラデシュの数百人のロヒンギャ難民を乗せたボートに足を踏み入れたのである。そして、乗員の多くは殺されたと推定されている。2009年12月には、モン民族をラオスへ送還した。人権団体は、モン民族は歴史的にラオス政権に反対しているため、厳しい報復を受けると推測している。今年初めには、戦火のミャンマーから逃れてきた数千人のカレン難民を送還している。彼らはタイ軍から嫌がらせを受けたという。
「とはいえ、タイ政府の長期間にわたるビルマ難民の受け入れは尊敬に値する。」とHuman Rights Watchのミャンマー研究所長デイビッド・マチーソンは語る。タイは数十年間にわたり、カンボジア、ラオス、ミャンマーという当南アジア諸国の難民を受け入れてきた。「このことを考えれば、タイは寛容なビルマ難民政策を取ってきた。しかし、カシットの最近の発言は非常に危険で曖昧である。」とデイビッドは語る。「彼の発言内容を誰がどのように実行に移すのかが明らかになっていない。」さらにデイビッドはこう続けた。「彼の発言はタイに暮らす数十万人のビルマ人に深い懸念を抱かせている。」
【拙訳】
元の英文記事はこちら 。
ビルマの選挙はミャンマー軍事政権が管轄しており、およそ民主的な選挙ではありません。選挙後に、状況がよくなるということは考えられません。
タイには、難民認定を受けていないビルマ人も多くおり、彼らの身分は極めて不安定です。不安定な身分になってでも、本国を脱出したいというのが彼らの思いです。