転移の3パターン
今回はこういうお題でいきます。ただし、自分は占い師で医学者では
ないので、間違っていることもあるかもしれません。そのことを初めに
お断りしておきます。また、この話は言葉の定義がけっこう曖昧なんです。
それは、外国と日本で考え方が違う場合もありますし、
医師が患者にわかりやすいように学術的な言葉をかみくだいて
説明している場合もあるからです。
まず、再発、転移、浸潤の違いを考えてみたいと思います。
再発とは、例えばある臓器のがんがあって、手術で取ったとしても、
その周囲には目に見えない大きさのがん細胞が残っていて、
原発と同じ臓器内で大きくなっていくことをいいます。
肝臓がんが転移する一例
次に浸潤ですが、これはがんになった臓器と隣り合った血管、臓器などに、
がんが染み込むように広がっていくものです。直接そのがんの近くに
がん細胞が移動したといっていいでしょう。
これに対し、転移とは、遠隔した臓器にがん細胞が血管などに入って
移っていくものです。この場合、例えば肺がんが他臓器に転移したとしても、
それはあくまで肺がんの細胞であり、肺がんの性質を持っています。
「転移性〇〇がん」と呼びます。〇〇は転移した先の臓器の名前です。
これには大きく3つの種類があると考えられています。
さて、ある人ががんと診断されたとして、およそその3割には転移が
発見されるとされています。もし膵臓がんと診断されたとして、
多臓器に転移が見つかればその時点でステージⅣ、手術はできないと
言われることが多いです。
これは全身に見えない膵臓がんが散らばっていると考えられ、目に見える
転移巣だけ取っても、手術のダメージだけが残って意味がないと考えられる
からです。ただし、最近は抗がん剤の併用などによってがんの総量を減らし、
コンバージョン手術ができる事例も多くなってきました。
また、最近はオリゴメタ(少数転移)という考え方も出てきました。原発巣
からの転移が少数で、転移巣を切除すれば治癒する可能性があるのでは
ないかと考えられる場合です。これはたんに目に見えるがんをなくすという
話ではないんです。あくまで、その転移以外にがんないだろうと
予測されることが大切。
自分が以前読んだがん闘病ブログで、オリゴメタとは目に見えるがんが体の中に
存在しないことと考えていて、次々に出てくる転移をすべて切り取って、
どんどん弱っていった方を見たことがあります。
さて、転移はいつ起きるのか。最近の研究では、がんが原発に発生した
ごく初期に、同時多発的に起きるのではないかと考えられるように
なってきました。もしそうだとすると、これは防ぐのは難しいですよね。
ただし、長期間にわたって転移が見られないがんもあります。
研究の進展が待たれます。また、転移巣から新たな転移が発生することは、
ないわけではないものの、少ないという報告が出ています。
では、転移の3つのパターンは何かというと、
① 血行性転移 がん細胞が原発巣から血管に入り、血流に乗ってほかの
臓器等に転移することをいいます。がん細胞は、一般的には静脈を通って
移動するため、例えば大腸がんが原発巣の場合には肝臓に、
腎臓がんが原発巣の場合は肺などに転移しやすいと考えられています。これは
その臓器を通っている血管が、次にどの臓器に流れていくかということと
関係があるんです。また、いつ心臓を通るかどうかということとも。
ちなみに心臓がんということはまずありません。心臓の細胞は入れ替わらない
からですね。これらのことは主治医の先生に確認しておくとよいかもしれません。
② リンパ行性転移 がん細胞が原発巣からリンパ管に入り、リンパ液の流れに
のってリンパ節に転移することをいいます。リンパ行性転移の場合、まず原発巣
近くのリンパ節に転移し、そこから遠くのリンパ節に広がっていくという、
一定の規則性があることが特徴です。また、原発巣近くのリンパ節に引っかかって、
そこで止まっている場合もあります。つまり、遠くのリンパ節までがん細胞が
広がってるほど、そのがんは治りにくいと一般的に考えられます。
がん 腹膜播種の画像 小さいうちはCTに
写らないこともしばしばあります
③ 播種性(はしゅせい)転移 播種とは「種を播くこと」という意味です。
原発巣からがん細胞が剥がれ、胸腔や腹腔と呼ばれる身体の隙間に
散らばるように広がることを指します。このような状態を播種性転移と呼びます。
胃がんや膵臓がん、大腸がんなどで起こりやすい腹膜播種が典型例ですが
胸膜播種というのもあります。
内臓は一つの大きな袋の中にあるようなものなので、腹膜播種を手術で
取りきるのは容易ではありません。昔、アナウンサーの逸見政孝さんが
やったような大がかりなものになることが多く、結果もけしていいとは言えません。
さてさて、ということで転移・再発についての基礎知識を書いてきました。
ただ、現代の医学は日進月歩であり、再発・転移が見つかったといって
絶望することはありません。ステージⅣからの回復の例もかなりあるんです。
特に大腸がんは穏やかな性質で、都知事選にも出たジャーナリストの
鳥越俊太郎さんは大腸がんの原発巣、肝転移、肺転移2つをすべて切除して
84歳の今もお元気です。
ここに書いたようなことは、主治医はみな知っています。ただ、患者側の
知識がどこまであるかによって、説明のしかたが変わってくるんですね。
ですから、基礎知識をしっかりたくわえておくことは大切です。
詳しい説明がない場合は、主治医が、患者に誤解されることで治療に支障が
生じることをおそれ、あえてしないこともあるんです。ですから、患者は知識を
身につけると同時に、医師や看護師とどうやりとりするのかの
コミニュケーション能力も磨いておく必要があるでしょう。
では、今回はこのへんで。