今回はこういうお題でいきます。これはきわめて難しいというか、
空想に近いような話なので、そのつもりでお読みください。自分も正しいことを
書いてるのか、あまり自信はないです。さて、時間が局所的に減速する現象は
よく知られています。相対性理論ですね。
ある物体、例えばロケットなどがあるとして、どんどん加速して光の速さに
近くなっていくと、その物体の長さは縮み、重さが増し、ロケットの中では
時間の流れが遅くなるとされています。でも、質量のある物体は絶対に光の速さに
到達することはできないので、ある程度のところでそのロケットの動きは止まり、
凍りついたようになってしまいます。
このことはよく知られていて、実際に観察もされていますね。例えばみなさんが
飛行機に乗ると、その間 時間がゆっくりと進みます。ですから、みなさんが
空港で飛行機を降りたとき、ほんのわずかですが未来に来ていることになります。
ただし、光の速さは飛行機と比べてずっと速いので、未来に来ているといっても
わずかすぎて体感することはできないでしょう。じゃあもし、光の速度の
10%とか、非常にスピードの速いロケットができたとして、
それにずっと乗り続けていれば寿命が延びる? そうですね、
地球上に帰ってくるとすると理論上はそうなります。
ですが、一生ずっとロケットを操縦している生活ってどうなんでしょう?
けっして面白いものではないと想像できますので、やる人はいないんじゃないかと
思われます。ここまで書いたことは正しいんですが、今回のテーマはそういう
話じゃないんです。もっと宇宙全体にかかわる大きなものです。
さて、みなさんは今使っている時間はどうやって決まったかご存じでしょうか。
時も分も秒も、ついでに言えば1日も、全部地球の自転の長さをもとにして
決められてるんです。地球1回転で夜と昼ができるので、これを1日とする。
それを24等分したのが1時間、1時間を60に割ったのが1分、
さらに1分を60で割ったのが1秒。
ということで、時間というのは地球人類の都合によって決められているんです。
ですからもし、宇宙人と会うことができたとしたら、その宇宙人が使っている
時間の体系は、地球人のものとはまったく違っている可能性が高いでしょう。
で、今回はそういう話でもないんです。宇宙の時間全体の流れが、
同時に加速したり減速したりするなんてことはあるんでしょうか。
・・・この宇宙はビックバンで始まったといわれますね。あるとき突然、
なにもないところに小さな高温高圧のかたまりがポッと出てきて、それは急速に
膨張した。このときに時間と空間が同時にできた・・・とするのが
ビッグバン宇宙論です。だれもそれを見た人はいないので仮説なんですが、
現在は多くの科学者によって信じられていますよね。
できた宇宙の物理定数(値が変化しない物理量)もこのときに決まって、
それが生物の生存につごうのよい値であったため、現在のわれまれがいる。
このことは偶然と考えられますが、そうではなく、物理定数が人間にとって
都合のいい数値になるように宇宙をデザインした設計者(神)
がいたのではないかという説を唱える人もいます。
神は「はじめに光あれ」といったことになっていますが、光の速度は不変で、
その他の定数もこれによって決まっているので、そんな馬鹿なと簡単に否定も
できないんですね。さて、2011年のノーベル物理学賞は3人の天文学者に
与えられましたが、その授賞理由は「宇宙の膨張速度の加速の観察」
によるものでした。
これは多くの科学者にとって意外な結果だったんです。ビッグバンで宇宙が
始まったとすれば、ふつうは爆発の勢いはだんだんに収まっていくはずです。
火薬による爆発はそうですよね。それなのに、途中からその勢いがさらに
速まっている。不思議です。この結果をもとに、いろいろなことが考えられました。
まず、ビッグバンは本当はなかったのではないか、という説。しかし、
さまざまな現象がビッグバン説を後押ししています。そこで、膨張速度が
速まる原因として、ダークエネルギーが考えられました。ダークエネルギーは
目に見えない大きな質量で、この質量によって速度が速められている。
推測はいろいろされているんですが、現在の科学ではダークエネルギーの正体は
不明です。さて、ここで、宇宙の膨張は加速していない、したがって
ダークエネルギーなどない。とするグループが現れたんです。スペインにある
バスク大学とサラマンカ大学の科学者グループは、宇宙膨張は加速しておらず、
宇宙全体の時間のほうが減速しているのだと主張したんです。
うーむ、たしかに時間が減速するなどという現象があれば、結果的に見かけとして
宇宙膨張が加速する形になるだろうと思われます。宇宙膨張は基本的に
相対性理論の範疇外ですから。しかし、時間の減速なんてちょっと
信じられませんよね。時間は永遠に同じペースで流れていると考えるのは当然です。
しかしもし・・・宇宙すべての時間がゆっくりになっていくのだとしたら・・・
みなさんは自分の時計が遅れているのをどうやって確かめますか?
テレビの時報に合わせる? 電話で117番の時報を聞く、
まあそんなところだろうと思うんですが、もしそれらもすべてが
減速してゆっくりになっているのだとしたら?
それだけではなく、人間の血液が流れる速度(つまり心臓の鼓動の速度)や、
腎臓が血液を漉しとる速度、脳神経を考えが伝わる速さまでが
遅くなっているのだとすれば、われわれには時間の減速を知るすべは
ないんですね。比較するものがないからです。
さてさて、ニュースによれば、この仮説は超ひも理論から出てきたもののようです。
研究チームは、時間は最終的に完全に停止する可能性があるとしています。
うーむ、われわれは茹でガエル状態になっていて、
ある日突然、この宇宙の終わりがくるかもしれないということですよね。
怖い話です。これから研究がどう進むか、続報を待ちたいと思います。