フロシキさん アヤさん ゼータさんを残し、ボクチンたちは武道館の中心を目指す
急がなくては・・・
メインホールのドアをあけ、侵入したボクチン達の目にうつったのは
エントランスで見たものより、さらに異様な光景であった
ホール内には、照明がついていなかった
眼が暗さに慣れ、みえてきたのは
メインホール最奥に、コンサートでよく見かける ステージが設営されていた
ステージから真っすぐのびた、大きな花道
その花道を放射状に、ホール一面を埋めつくすように並べられたパイプイス
そして、それらのイスには、すべて
人がすわっていたのだ
何千・・・何万人!?
しかもその一人ひとりが、しゃべりごえも、しわぶきひとつさえ いっさいしていない
いや・・・ちがう・・・
これは・・・
眠っているのだ!!
この武道館コンサートは、眠り人で満員になっているのだ!
なんという異常さだ・・・
ボクチンは、おもわず身震いした
ボクチンが、あぜんとして 仲間たちをふりむきかけた時
バシャッ!! と
ステージがスポットライトで照りだされた
そこに・・・奴が立っていた
瞬間!ボクチンの頭は沸騰し、
怒りメーターはゼロからゲージを振り切り
心よりさきに、体を反応させた
「ごりっぺええええええええ!!」
飛びだそうとするボクチンを、部長がとどめた
「ドクロさん ダメだ! いくんじゃない」
しずかに、だが ウムを言わさぬ迫力をこめた こんな声は、出会ってから初めて聞く
部長の一喝に、かなしばりにあったように ボクチンは動きを止めた
「ドクロさん、僕のそばを離れてはいけないよ? 忘れないで」
そ・・・そうだった
この建物に入る前に ひとつだけ約束させられていたのを思い出した
どういう意味があるかは、教えてもらってはいないが・・・
ごりっぺは
バー「なんと」で見せた、怪人の姿ではなかった
人間の姿に戻っていた
「ようこそ、みなさん」
ごりっぺは、芝居がかった身振りで、ふかぶかと頭をさげる
「エントランスホールでの戦いで・・・」
「もう、あと 一人か二人は脱落すると、踏んでいましたが」
「さすがですね、さすがはヒーローといったところですか」
ごりっぺは、皮肉のかかった言葉をはく
ボクチンも 他の皆も、部長の背中を見守り、部長の言葉を待つ
「ごりっぺさん、君たちの目的を聞きたい」
「今日、ここに集まった人たちを、今ここで眠っている人たちを」
「『機械』にかけようというのか?」
「それが『彼』の意向なのか?」
「彼は・・・今ここに?」
ごりっぺは、言葉を選ぶようにゆっくりと 部長の質問に答えた
「『彼』はここに、きていません」
「どこに、いらっしゃるのか 私達は、わかりません」
「だけど・・・これは」
「今日のこのコンサートは、彼の意志の表現なのです」
「私たちが、かわって実行するのです」
部長の質問は続く
「喜びも悲しみもなく、ただ生きて命令に従うだけのキノコ人間・・・」
「それで幸せだと言えますか?」
なんさん、ミコシさん、たまねぎさん、みながうなづく
まけじと声をはりあげ、ごりっぺは答える
「もしも、力を得ることがかなわず、キノコ人間になったとしても」
「やはり、その人は幸せを感じるでしょう」
「人の世の苦しみは、感情をもつ人間だからこそ、逃れられないのです」
「動物は感情ではなく、本能に従って生きるので、苦しむことはない」
「そこにいる・・・カナリヤのように・・・」
ごりっぺは、なんさんの鳥かごを指さす
「心を締め付ける感情のない、穏やかな世界で植物として、キノコ人間として」
「永遠に近い時間を生きる・・・」
「それもまた『しあわせの形』だと、『彼』は説いたのです
部長は、我慢しきれずという感じで、叫んだ
「喜びも悲しみも、怒りも!人を前に進ませる動力となるんだ!」
「それで人は、成長することができる」
「何も感じないで、ただ生きていくことに幸せがあるとは、思えない」
「ましてや、キノコ人間として生き、その人を愛する人たちに、悲しみをまきちらして どうなるのですか!?」
部長は、ごりっぺだけでなく その背後に居るであろう
ニジさんや『彼』に向けているように話した
ボクチンだって・・・
「ごりっぺ!!アナをキノコにかえられて どれだけボクチンが悲しんだと思っているんだ!!」
「・・・!?」
「アナ・・・さんが?」
「アナさんがキノコに・・・そんな話は、きいていない・・・」
あきらかに ごりっぺの表情に動揺の色がうかんだ
ごりっぺは、それを振り払うように答える
「と・・・とにかく」
「みなさんが私達と、相いれないということは、先ほどの訪問でわかりました」
「このステージまで、押しかけてきたということは」
「もはや、問答は不要です」
ごりっぺは、ゆっくりと右手をあげ
「こうなることは、わかっていたはずだ・・・」
「さあ・・・見せてください」
「どうやって切り抜けるつもりだったかを!!」
ごりっぺが、かかげあげた右手をサッ!!と振り下ろすと
それを合図に、ステージは大きく振動を始め
巨大な機械音が轟き始める!!
ドゴン!! ドゴン!! ドゴン!!
ゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
まるで、動き出した心臓が 体中に血を送り出すかのような音が、ホールに響き渡った
そして
ガガガガガガガガガガ
ステージの中央の床が、にわかに スライドを始め
中央に真っ暗で巨大な穴
「奈落」が開いた
そこから、ゆっくりと
せりあがってくる
巨大な・・・
そう・・・これこそが・・・・
『天使を呼ぶ機械』が・・・・その姿を現した
つづく
「みんな~アヤさんが気がついたよ!」
なんさんがよぶ
ボクチンたちは、かけつけた
たまねぎさんだけ ゼータさんをゆっくりと床におろし
ゼータさんが投げ捨てた帽子をひろうと ゼータさんの顔がかくれるように
ふかぶかとかぶせた
アヤさんは、ヒーローたちやガンダムとの戦闘で
体中にダメージを負っていた
しかし なにより精神的なキズのほうが深かったのかもしれない
なんさんに抱えられ、痛みを押し殺すように目をふせていた
「アヤさん・・・だいじょうぶですか?」
部長が気づかう
「・・・ハイ・・・・私は・・・・」
「私は・・・大丈夫です・・・」
「あの・・・ゼータさんは・・・?」
たまねぎさんが答える
「ゼータさんは、だいじょうぶよ 今ちょっと気をうしなって寝てるの」
「おきたら、アヤさんにあやまってくれるそうよ」
「そ!そうなんですか!?」
アヤさんの声色に、明らかな安堵と喜色がうかがえる
たまねぎさんは、こくりとうなづき
皆にむけてウィンクをした
それをうけ なんさんが提案した
「アヤさんとゼータさんを急いで病院に運ばないといけないんだけど~」
・・・・・?
ん?
ボクチンは疑問に思ったことを、つい
なんさんをさえぎって、聞いてしまった
「あの・・・ケガとかなら たまねぎさんが持ってた、仙たまねぎを食べたら回復するんじゃ?」
玉ねぎさんが、頭をぼりぼりかきながら答えた
「あの仙玉ねぎは、収穫した分 全部たべちゃったのよね~」
「ドクロっちが食べたのが、最後だったのよ~」
「次の収穫まで、あと2~3週間かかるよのね~」
ええ~~~・・・・・
なんて都合よく品切れになること・・
まるでどこかの少年誌の「なんとかボール」じゃないか・・・
アヤさんは
「あの・・・私、まだ闘えます」
「この程度のキズ・・・イタッッ!!!」
なんさんは、アヤさんをさえぎり アヤさんの体をつっついた
「ほら~ アナタ重症なんだから! ダメよ~~!」
「そ、そんな!いま、なんさんが・・・」
「イタイッ!」
なんさんは容赦なくアヤさんをグリグリした
「ダーメー 病院いかないとゆるさないー!!」なんさんの目がつりあがる
「ヒィッ!!」
アヤさんが、やや大げさなアクションで悲鳴をあげる
・・・・なんか、なんさんに対してトラウマでもあるのか?
「そいじゃ フーちゃん アヤさんとゼータさんをつつんで~」
「あ はーい」
比較的壊れていないゼータさんのヒーローフィギュアをさがしていた
フロシキさんは、なんさんにしたがい
まず、ゼータさんにフロシキをかぶせた
ゼータさんの姿が、手品のように消えた
つぎにアヤさんをつつもうと、近づいたとき
アヤさんはボクチンを呼んだ
「ドクロさん・・・」
「これを・・・」
と、アヤさんは聞き取りにくい、小さい声で言うと
身に着けていたゴスロリスカートを外し
ボクチンに渡した
スカートの裏には、武器や秘密の道具がどっさりと仕込まれていた
「使ってください」
アヤさんの申し出を受け、ボクチンは素直にうなずく
「気をつけて・・・」と
最後に言い残し アヤさんは、フロシキにつつまれ消えた
「それじゃ、ふーちゃん キノコの人たちを集めたら、そのまま病院に直行でよろしく~」
「あ・・・やっぱり?たまさんやアヤさんのすごいとこ見て」
「私もメラメラきちゃってるんですけど・・・」
部長がわざとらしく、倒れているキノコ人間たちを見回す
「ハハハッ・・・ですよね~」
「キノコさんたちも、連れて行かないとだし~」
「じゃあ、まあ 分かりました 残念だけど」
「うん、おねがいね ふーちゃん」
なんさんは、フロシキさんにお願いした後
たまねぎさんを見て
「たまちゃんは、どう?」
「ケガしてない?」
「うん、私は大丈夫!ケガしてないし・・・?」
「ドクロッチ・・・何をしとるの?」
「・・・ヘンタイ?」
はっ・・・気付かれた
ボクチンはアヤさんからもらった、スカートをどうしたらいいか悩んでいた
腰につけられないので
ポンチョ風に着てみようと、スカートをかぶろうとしていた
「って いやいや!ちがいますよ!」
ボクチンは、あわててスカートをドチャリ!と床に置き
ひとつだけ、これは!という武器を取ってポケットにねじ込んだ
「じゃあ、そろそろ行こうか 急がないといけないようだし・・・」
「フロシキさん、キノコの人たちとアヤさん ゼータさんをよろしく頼みますね」
部長の言葉に
「は~い、さっそく!」と
フロシキさんは、キノコ人間の回収を再開した
「じゃあ、みんな・・・・いこうか!」
ボクチンたちは、エントランスホールの激戦を突破し
いよいよ
ごりっぺやクッキー にじさんが待ち受ける
物語の最深部に向かう
メインホールのドアに手をかけた
つづく
小説「機械」決戦・破 終章
次回より 物語は、いよいよ最終章に!
お楽しみに!!
なんさんがよぶ
ボクチンたちは、かけつけた
たまねぎさんだけ ゼータさんをゆっくりと床におろし
ゼータさんが投げ捨てた帽子をひろうと ゼータさんの顔がかくれるように
ふかぶかとかぶせた
アヤさんは、ヒーローたちやガンダムとの戦闘で
体中にダメージを負っていた
しかし なにより精神的なキズのほうが深かったのかもしれない
なんさんに抱えられ、痛みを押し殺すように目をふせていた
「アヤさん・・・だいじょうぶですか?」
部長が気づかう
「・・・ハイ・・・・私は・・・・」
「私は・・・大丈夫です・・・」
「あの・・・ゼータさんは・・・?」
たまねぎさんが答える
「ゼータさんは、だいじょうぶよ 今ちょっと気をうしなって寝てるの」
「おきたら、アヤさんにあやまってくれるそうよ」
「そ!そうなんですか!?」
アヤさんの声色に、明らかな安堵と喜色がうかがえる
たまねぎさんは、こくりとうなづき
皆にむけてウィンクをした
それをうけ なんさんが提案した
「アヤさんとゼータさんを急いで病院に運ばないといけないんだけど~」
・・・・・?
ん?
ボクチンは疑問に思ったことを、つい
なんさんをさえぎって、聞いてしまった
「あの・・・ケガとかなら たまねぎさんが持ってた、仙たまねぎを食べたら回復するんじゃ?」
玉ねぎさんが、頭をぼりぼりかきながら答えた
「あの仙玉ねぎは、収穫した分 全部たべちゃったのよね~」
「ドクロっちが食べたのが、最後だったのよ~」
「次の収穫まで、あと2~3週間かかるよのね~」
ええ~~~・・・・・
なんて都合よく品切れになること・・
まるでどこかの少年誌の「なんとかボール」じゃないか・・・
アヤさんは
「あの・・・私、まだ闘えます」
「この程度のキズ・・・イタッッ!!!」
なんさんは、アヤさんをさえぎり アヤさんの体をつっついた
「ほら~ アナタ重症なんだから! ダメよ~~!」
「そ、そんな!いま、なんさんが・・・」
「イタイッ!」
なんさんは容赦なくアヤさんをグリグリした
「ダーメー 病院いかないとゆるさないー!!」なんさんの目がつりあがる
「ヒィッ!!」
アヤさんが、やや大げさなアクションで悲鳴をあげる
・・・・なんか、なんさんに対してトラウマでもあるのか?
「そいじゃ フーちゃん アヤさんとゼータさんをつつんで~」
「あ はーい」
比較的壊れていないゼータさんのヒーローフィギュアをさがしていた
フロシキさんは、なんさんにしたがい
まず、ゼータさんにフロシキをかぶせた
ゼータさんの姿が、手品のように消えた
つぎにアヤさんをつつもうと、近づいたとき
アヤさんはボクチンを呼んだ
「ドクロさん・・・」
「これを・・・」
と、アヤさんは聞き取りにくい、小さい声で言うと
身に着けていたゴスロリスカートを外し
ボクチンに渡した
スカートの裏には、武器や秘密の道具がどっさりと仕込まれていた
「使ってください」
アヤさんの申し出を受け、ボクチンは素直にうなずく
「気をつけて・・・」と
最後に言い残し アヤさんは、フロシキにつつまれ消えた
「それじゃ、ふーちゃん キノコの人たちを集めたら、そのまま病院に直行でよろしく~」
「あ・・・やっぱり?たまさんやアヤさんのすごいとこ見て」
「私もメラメラきちゃってるんですけど・・・」
部長がわざとらしく、倒れているキノコ人間たちを見回す
「ハハハッ・・・ですよね~」
「キノコさんたちも、連れて行かないとだし~」
「じゃあ、まあ 分かりました 残念だけど」
「うん、おねがいね ふーちゃん」
なんさんは、フロシキさんにお願いした後
たまねぎさんを見て
「たまちゃんは、どう?」
「ケガしてない?」
「うん、私は大丈夫!ケガしてないし・・・?」
「ドクロッチ・・・何をしとるの?」
「・・・ヘンタイ?」
はっ・・・気付かれた
ボクチンはアヤさんからもらった、スカートをどうしたらいいか悩んでいた
腰につけられないので
ポンチョ風に着てみようと、スカートをかぶろうとしていた
「って いやいや!ちがいますよ!」
ボクチンは、あわててスカートをドチャリ!と床に置き
ひとつだけ、これは!という武器を取ってポケットにねじ込んだ
「じゃあ、そろそろ行こうか 急がないといけないようだし・・・」
「フロシキさん、キノコの人たちとアヤさん ゼータさんをよろしく頼みますね」
部長の言葉に
「は~い、さっそく!」と
フロシキさんは、キノコ人間の回収を再開した
「じゃあ、みんな・・・・いこうか!」
ボクチンたちは、エントランスホールの激戦を突破し
いよいよ
ごりっぺやクッキー にじさんが待ち受ける
物語の最深部に向かう
メインホールのドアに手をかけた
つづく
小説「機械」決戦・破 終章
次回より 物語は、いよいよ最終章に!
お楽しみに!!
それはそうと・・・・だ
たまねぎさんは・・・
たまねぎさんはどこだ!?
どこにも姿が見えない
あの派手な道着?なので見逃すはずはない
なのに・・・
まさか、こっぱみじんに・・・・?
なんさんが結界を解く
ボクチンらが近づいた時
ぐらり・・・ガンダムは、音もなく倒れた
スローモーションのように、ゆっくりと
それに反して
床にぶちあたった音は、凄まじかった
ドッガアアアアアアアアン!!
こんな、とんでもないものとたまねぎさんは闘っていたのか・・・
ふと、顔をあげると
そこに、たまねぎさんがたっていた
「ぎゃあああああああああ!!」
「だっかっら!! なんで私の顔をみて悲鳴なのよ!ドクロッチ!」
「がんばったんだから、ねぎらいの言葉の一つも出ないのかなあ?」
たまねぎさんはホッペをふくらませる
「す、すいません」
よくみると
たまねぎさんの髪の毛は、爆風と熱でドリフのコントのようにチリチリで
自慢の道着もススで黒く汚れていた
が、どこにも怪我を負っては、いないようだ
右手に誰かを抱えている・・・・
ゼータさんだ!!
「びっくりしちゃった~」
「ロボットを投げて、壊したと思ったら まだ立ってくるんだもの・・・」
「そいで、中からゼータさんがポロッと落ちてきたのよ~」
ゼータさんは、額から血を流し、気を失っているのか
ダラリとうなだれていた
「たまさん 大丈夫?」
部長とミコシさんが駆けより声をかける
たまねぎさんは、ゼータさんをゆっくり床に下ろすと
着物の汚れを払い
「チョット予想外だったのよね~」
「こんな、すごく爆発するとは・・・思ってなかったから」
・・・そうだ!爆発だ!
ボクチンは疑問をぶつけてみた
「な、なんで大丈夫なんですか?あんなすごい爆発だったのに?」
たまねぎさんは、ふくれっつらで
「なによ~大丈夫じゃダメみたいじゃんか~ ひどいなあ」
「い、いや それはそうだけど・・・」
「そりゃあ、無事でよかったですけど」
たまねぎさんは、もう一度
深く長い呼吸をした
「コォォォォォォォ!!」
たまねぎさんの筋肉に体に「気」が
満ちあふれ
その強度は人間の限界を超えて増した
「これが『硬気功』 特別な呼吸とコントロールにより」
「体内の気を練り上げ 体を鋼鉄のように硬くする」
「たま仙流の奥義よ!」
たまねぎさんはドヤ顔できく
「もっかい、修業うけたくなった?ドクロッチ」
「い・・・いや それはべつに」
「なによーーーー!!もーーーー!」
部長がフォローする
「いやいや、すごかったよたまねぎさん、あんな大きなガンダムを
ぶん投げちゃうんだもの ねえ?ミコシさん」
「ええ、そうですよ~」
「私は入門したくなりましたよ?たま仙流」
二人は、あのデタラメな修行を知らないから・・・
ボクチンは思い出したくもない記憶を 押し込めようと苦笑いをした
部長は、ゼータさんを診て、まず いいきかせるように言った
「ゼータさんは・・・気をうしなっている」
「うん・・・致命傷になるような負傷はしてないようだ」
「一安心だ」
「・・・でも どうして彼は」
「ええ・・・」
部長の苦悶にミコシさんが、うなずく
たまねぎさんが言った
「ゼータさんはね」
「アヤさんを、これ以上闘わせたくなかったんだと思う」
「もともとは、それで力を求めたんだよ」
「でも・・・」
「ゼータさんは間違えちゃったのよ」
「ゼータさんが本当に勝とうとすべきなのは、私達やアヤさんではなく」
「・・・」
「自分自身だったのよ」
たまねぎさんは、つぶっていた目を開いた
そして
さっきの部長とおなじように だれかに言い聞かせるような口調でいった
「本当にゼータさんのスタンドは・・・ロボットは強かったよ」
「もしロボットだけだったら 私も勝てたかどうか わからなかった」
「ゼータさんが中に入って、いっしょに闘ったから」
「どんなに大きかろうが、パワーがつよかろうが」
「格闘の素人の 動きや息遣いをよんで投げるのは、カンタンだった」
「ゼータさんは、人形をいっぱいつくったり爆弾で牽制したりする前に」
「まず、自分自身の修行をするべきだったのよ・・・」
たまねぎさんは、とてもやさしい声でつづける
「ケガが治ったら、私がゼータさんを鍛えてあげるよ」
「すっごく強くなれるわよ」
部長がうなずく
「そうだね・・・これからも僕たちには、ゼータさんが必要だからね」
ミコシさんも賛成して
「ええ・・・はやく帰ってきてほしいですね」
たまねぎさんも
「うん・・・ちゃんとアヤさんにも、謝ってもらわないといけないしね!」
皆、ゼータさんの方をむいて ほほえみかけた
気絶しているはずの
ゼータさんの 硬くつぶられた目から
涙がひとしずく、こぼれおちた
つづく