2つの保証債務という勘定
この記事には改訂版がございます。改訂版は2つの保証債務という勘定をご覧下さい。
保証債務という勘定は今まで2つ出てきています。
1つは手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務、もう1つは他人の債務を保証したときに行う保証債務です。
これら2つについてお伝えします。
2つの保証債務は全然違う
手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務と他人の債務を保証したときに行う保証債務は似ているところもありますが、本質的には全く異なるものです。
手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務は、手形を裏書したり割引したりした手形が不渡りになったときに支払わなければいけない債務を時価評価したものです。
性質としては貸倒引当金に近いものです。
それに対して他人の債務を保証したときに行う保証債務は偶発債務です。
今はまだ確定していないけれど、将来もしかしたら支払わなければならなくなるかもしれない債務です。
性質としては、備忘仕訳(忘れてしまわないように記録しておく仕訳)です。
手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務は確定債務です。
債務を時価評価しているということは、その債務を他人に肩代わりしてもらうときに、その相手に支払わなければならない金額を意味しているということです。
1,000,000円の損失が1%の確率で発生する債務を肩代わりしてもらうためには1,000,000円×1%=10,000円を支払わなければならないという考え方になります。
そして、その債務を自分で引受けているということは、その金額(10,000円)の債務を負っているといえるのです。
それに対して他人の債務を保証したときに行う保証債務は偶発債務です。
現時点では債務は発生していません。
このように2つの保証債務は似てはいますが、本質的には全く異なるものです。
全く異なるものを同じ勘定科目で処理するという方法は個人的には全く納得できるものではありません。
しかし、そのように処理するので仕方がないと考えざるをえません。
もし2つの保証債務が混ざって出てきたら…
2つの保証債務が1つの問題で出てきたらどのように処理すればいいでしょうか。
あまりに意地が悪い問題なので、出題可能性が低いですが確認しておきましょう。
ポイントは「保証債務見返」という勘定科目にあります。
偶発債務は必ず借方と貸方が同じ金額になります。
例えば、他人の債務を保証したときに行う保証債務で言えば、
(借)保証債務見返 ×××/(貸)保証債務 ×××
という仕訳か
(借)保証債務 ×××/(貸)保証債務見返 ×××
という仕訳しかありえないからです。
ということは、保証債務見返の金額と保証債務の金額が違う場合には、その違う分は手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務であると考えられます。
このように考えれば2つの保証債務が混ざっていても解くことができます。
ちなみに、保証債務見返の勘定科目がなければ、全ての保証債務は手形の裏書や手形の割引にともなう保証債務です。
また、保証債務見返の金額と保証債務の金額が同じであれば、全ての保証債務は他人の債務を保証したときに行う保証債務だということになります。
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簿記(TOP)>商業簿記2級>保証債務(その2)の取引と仕訳
この記事には改訂版がございます。改訂版は偶発債務における保証債務の取引と仕訳をご覧下さい。
保証債務(その2)の取引と仕訳についてお伝えします。
債務の保証を行った
「当社はA会社の借入金500,000に対して保証人になった」場合の仕訳を考えてみましょう。
保証人になったことで、もしA社が借入金を返済しなかった場合には当社が代わりに支払わなければなりません。
これは偶発債務にあたるので仕訳を切らなければなりません。
この偶発債務「保証債務」という勘定で表します。
よって『(貸)保証債務500,000』となります。
また、この偶発債務が現実のものになった時点で、A社に対して代わりに支払った金額を請求する権利が発生します。
この権利を「保証債務見返」という勘定で表します。
よって『(借)保証債務見返500,000』となります。
まとめると、
(借)保証債務見返 500,000/(貸)保証債務 500,000
となります。
手形の裏書や手形の割引を対照勘定法で記入した場合の仕訳と考え方は同じです。
ちなみに、保証債務においては評価勘定法はありません。
保証していた債務が返済された
「当社が保証人となっていたA社の借入金500,000をA社が返済したという連絡を受けた」場合の仕訳を考えてみましょう。
債務を保証した時点で、
(借)保証債務見返 500,000/(貸)保証債務 500,000
という仕訳を切っているはずです。
保証していた債務が返済された時点で偶発債務は消滅します。
よって、
(借)保証債務見返 500,000/(貸)保証債務 500,000
という仕訳も消滅します。
この仕訳を消滅させるため、逆仕訳を切ります。
よって、
(借)保証債務 500,000/(貸)保証債務見返 500,000
となります。
保証していた債務が不履行となった
「当社が保証人となっていたA社の借入金500,000をA社が返済できず、債権者が当社に返済を求めてきたため、小切手を振出して支払った」場合の仕訳を考えてみましょう。
保証していた債務が不履行になった時点で偶発債務が確定債務に変わります。
そこで、偶発債務の仕訳である
(借)保証債務見返 500,000/(貸)保証債務 500,000
を消滅させるため、
(借)保証債務 500,000/(貸)保証債務見返 500,000
という仕訳を切ります。
そして確定債務の仕訳を切ります。
債権者に対する債務は「未払金」になります。
よって『(貸)未払金500,000』となります。
また、債務者に支払いを請求する権利は「未収金」になります。
よって『(借)未収金500,000』となります。
まとめると、
(借)未収金 500,000/(貸)未払金 500,000
となりますが、債権者に対しては即座に小切手を振出して支払っているので、
(借)未払金 5000,000/(貸)当座預金 500,000
という仕訳も同時に切ることになります。
よって、
(借)未収金 500,000/(貸)当座預金 500,000
となります。
偶発債務消滅の仕訳とまとめて、
(借)未収金 500,000/(貸)当座預金 500,000
(借)保証債務 500,000/(貸)保証債務見返 500,000
の2行が切るべき仕訳となります。
ちなみに、「未収金」を「立替金」としてしまわないように気をつけてください。
立替金勘定は、本来支払う義務はないけど、本来の支払義務者が(その場にいないなどの理由で)支払えない場合に代わりに支払ったときに使う勘定です。
この場合は債務を保証しているため、その債務が返済されなかった時点で当社に支払う義務が発生しています。
そのため立替金勘定は使えません。
A社に対する請求権を表す未収金勘定を使います。
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偶発債務における保証債務についてお伝えします。
偶発債務
偶発債務とは、今はまだ確定した債務(確定債務)ではないけれど、将来もしかしたら発生するかもしれない債務を言います。
「買掛金」や「借入金」などは確定債務です。
現金などを引き渡す義務が既に発生しているからです。
それに対して手形の裏書や手形の割引の対照勘定法で出てきた「手形裏書義務」や「手形割引義務」などは偶発債務です。
これらの債務はまだ発生していません。
これらの債務が発生するのは裏書・割引した手形の手形支払人が手形代金を支払えなかった場合です。
現時点ではこの出来事は発生していないのでこの債務はまだ発生していないのです。
このような債務を偶発債務といいます。
偶発債務は偶発債務が確定債務に変化する出来事が起きない限り資産・負債・資本が変化しないので簿記上の取引とはいえません。
しかし、将来債務が確定する危険があるため、その危険に備えた仕訳をしておく必要があります。
保証債務
他人の債務を保証した場合、その債務者が債務を支払えなかった場合には保証人が代わりに債務を支払わなければなりません(支払ったあとに債務者に支払いを請求することはできます)。
よって、他人の債務を保証した場合は偶発債務が発生することになるので仕訳が必要になります。
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簿記革命メルマガ「簿記革命通信~簿記1級にラクラク合格する方法~」に興味がある方はリンクをクリックしてください。取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められない場合
簿記(TOP)>簿記(コラム)>取得価額と債券金額との差額が金利の調整と…
この記事には改訂版がございます。改訂版は取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められない場合をご覧下さい。
取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められない場合についてお伝えします。
金融商品に関する会計基準16には、「取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときには償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする」とあります。
「金利の調整と認められる」の意味については満期保有目的債権の期末の評価(4)でお伝えしました。
今回は金利の調整と認められない場合とはどんな場合なのかについてお伝えします。
取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められない場合
取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められない場合は、その債券がジャンク債(ハイイールド債)の場合です。
ジャンク債(ハイイールド債)とは…
その社債を発行している企業の倒産のリスクが高い場合、通常の金利では誰も買ってくれません。
そこで、社債を発行する企業は社債の額面金額より大幅に低い金額で社債を発行します。
このような社債をジャンク債(ハイイールド債)といいます。
また、社債を発行したときは倒産の危険はほとんどなかった場合でも、その後経営状態が悪化して倒産の危険が上がった場合、債券の価格が暴落することもあります。
このような場合も倒産の危険が相当に高い場合はジャンク債(ハイイールド債)になります。
ジャンク債(ハイイールド債)に償却原価法が適用できない理由
例えば、満期まで3年の社債があって、その社債を発行する企業がその3年の間に倒産する確率が50%あるとします。
この場合、単純に考えて、その社債の取得価額が債券金額の50%以上であれば買うことはないでしょう。
確率的に割に合わないからです。
逆に言えばその社債の取得価額が例えば債券金額の25%であれば買うという判断もありえます。
- 50%の確率でほとんど0になる
- 50%の確率で4倍になる
このように考えれば、かなり割に合うギャンブルだと考えられるからです。
このように考えて社債を取得した場合、取得価額と債券金額との差額を償却原価法を使って帳簿価額を債券金額に近づけていくのは理にかなっていません。
債券金額を回収できる確率が低いからです。
償却原価法を適用するということは、ほぼ確実に債券金額で回収できることが前提にあります。
回収できることがほぼ確実だからこそ、まだ満期が来ていない社債から有価証券利息という収益を計上することができるのです。
回収できる確率が低いのに、有価証券利息という収益を計上するわけにはいきません。
収益にはある程度の確実性が必要なのです。
このような理由により、ジャンク債(ハイイールド債)については償却減価法は適用されません。
ジャンク債(ハイイールド債)かどうかの判断基準
具体的には格付け機関が行う格付けが低い社債をジャンク債(ハイイールド債)と言います。
しかし、格付けだけで金利の調整と認められるか認められないかを決めるわけではありません(たいていは格付けに従いますが…)。
格付けそのものがされていない社債も存在します。
資産運用の手段として金利を受取る目的でその社債を買えば金利の調整と認められますし、割に合うギャンブルだということで社債を買ったのであれば金利の調整とは認められません。
これは客観的な判断基準とはいえないため、検定試験でこの判断が問われることはありません。
それどころか金利の調整と認められない場合が出題されたこと自体ほとんどありません(少なくとも私は見たことはありません)。
検定試験では特に気にする必要はないと思います。
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簿記革命メルマガ「簿記革命通信~簿記1級にラクラク合格する方法~」に興味がある方はリンクをクリックしてください。簿記検定で打歩発行がほとんど出題されない理由
簿記(TOP)>簿記(コラム)>簿記検定で打歩発行がほとんど出題されない理由
この記事には改訂版がございます。改訂版は簿記検定で打歩発行がほとんど出題されない理由をご覧下さい。
簿記検定で打歩発行はほとんど出題されない理由についてお伝えします。
平価発行と打歩発行
満期保有目的債権の期末の評価(4)で平価発行と打歩発行も本質的に同じだとお伝えしました。
ちなみに簿記検定では打歩発行はほとんど出題されません。
そもそも打歩発行は現実に行われてているのでしょうか。
利払いのタイミング
- 額面100円・取得原価104円(打歩発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン20,000円(利払い年1回)
- 額面100円・取得原価100円(平価発行)・10,400口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)
この2つの社債について考えてみます。
この社債はどちらも
- 社債取得原価…1.040,000円
- 1年間の有価証券利息勘定…10,000円
となります。
この2つの社債は本質的には同じものです。
しかし、違う点があります。
それは発行会社の利払いのタイミングです。
「額面100円・取得原価104円(打歩発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン20,000円(利払い年1回)」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは、
- 発行時…1,040,000円の現金増加
- 発行1年後…20,000円の現金減少
- 発行2年後…20,000円の現金減少
- 発行3年後…20,000円の現金減少
- 発行4年後(満期)…債券金額1,000,000円+利払い20,000円=1,020,000円の現金減少
となります。
それに対して、「額面100円・取得原価100円(平価発行)・10,400口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは、
- 発行時…1,040,000円の現金増加
- 発行1年後…10,000円の現金減少
- 発行2年後…10,000円の現金減少
- 発行3年後…10,000円の現金減少
- 発行4年後(満期)…債券金額1,040,000円+利払い10,000円=1.050,000円の現金減少
となります。
打歩発行の場合の方が現金が減少する時期が早いのです。
打歩発行のメリットはない
発行会社の立場からは打歩発行のメリットはありません。
できるだけ現金の流出は遅らせたいからです。
また、社債を買う立場でもメリットはありません。
特に買い手が日本の個人投資家の場合、打歩発行はデメリットだらけです。
- 取得原価より戻ってくる金額の方が少ないため、金利に対する意識が薄い日本人は買いたがらない
- 日本の所得税法は打歩発行の債券に対して非常に厳しい
といったデメリットがあります。
日本人は金利に対する意識が薄い
日本人は金利というものに対して意識が薄いです。
給料が翌月払いであっても、受け取るまでの金利を意識する人はほとんどいません。
金利に対する意識が薄いので、上の例で言えば「なぜ1,040,000円で買った社債が満期になって1,000,000円しか戻ってこないんだ。損するじゃないか。」となるのです。
打歩発行の方がクーポン金利が高いことはあまり気にしないのです。
このように考える人が多いため、打歩発行の債券を買う人はほとんどいません。
日本の所得税法
日本の所得税法では金利収入に対する費用は認められていません。
そのため、上の例で言えば、
- 「取得原価-社債金額」である1,040,000円-1,000,000円=40,000円は損失だが、これは費用として認められない
- 毎年20,000円の利息収入には利息収入として20%課税される
ということになります。
そのため、実際の利息収入は10,000円なのに所得税が20,000円×20%=4,000円かかってしまうのです。
実質の税率は4,000円÷10,000円=40%にもなってしまいます。
打歩発行はほとんど行われていない
このような事情により、打歩発行はほとんど行われていません。
そのことを反映しているため、簿記検定でも打歩発行はほとんど出題されないのです。
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この記事には改訂版がございます。改訂版は割引発行を行う理由をご覧下さい。
なぜ割引発行をするのかについてお伝えします。
平価発行と割引発行
満期保有目的債券の期末の評価(3)で割引発行と平価発行は本質的には同じだとお伝えしました。
では、なぜ発行会社は割引発行をするのでしょうか。
全て平価発行するようにすれば、償却原価法のような複雑な仕訳を切る必要もなくなります。
割引発行するにはそれなりの理由が発行会社にはあるはずです。
利払いのタイミング
- 額面100円・取得原価96円(割引発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン利息なし
- 額面100円・取得原価100円(平価発行)・9,600口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)
この2つの社債について考えてみます。
この社債はどちらも
- 社債取得原価…960,000円
- 1年間の有価証券利息勘定…10,000円
となります。
この2つの社債は本質的には同じものです。
しかし、違う点があります。
それは発行会社の利払いのタイミングです。
「額面100円・取得原価96円(割引発行)・10,000口取得・4年満期・クーポン利息なし」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは、
- 発行時…960,000円の現金増加
- 発行1年後…現金に動きなし
- 発行2年後…現金に動きなし
- 発行3年後…現金に動きなし
- 発行4年後(満期)…1,000,000円の現金減少
となります。
それに対して、「額面100円・取得原価100円(平価発行)・9,600口取得・4年満期・クーポン利息10,000円(利払い年1回)」の社債を発行した場合、発行会社の現金の動きは、
- 発行時…960,000円の現金増加
- 発行1年後…10,000円の現金減少
- 発行2年後…10,000円の現金減少
- 発行3年後…10,000円の現金減少
- 発行4年後(満期)…債券金額960,000円+利払い10,000円=970,000円の現金減少
となります。
平価発行の場合の方が現金が減少する時期が早いのです。
割引発行しなければならない事情
日本国内において最も安全な債券は国債です。
この国債より金利が低い社債を発行しても誰も買ってくれません。
この社債を買うくらいならみんな国債を買うからです。
そのため、金利を国債より高く設定しなければなりません。
しかし、金利を高く設定すれば、その分毎年の利払いが苦しくなります。
そこで、毎年の利払いを少なくするために割引発行するのです。
割引発行することで実質的な利率(実効利子率といいます)を高くすることができます。
クーポン利率は低くても、金利調整差分の利息で補えるのです。
金利を高く設定しなければ買ってもらえないけれど、利払いの負担は軽くしたいときに割引発行するといえます。
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簿記革命メルマガ「簿記革命通信~簿記1級にラクラク合格する方法~」に興味がある方はリンクをクリックしてください。満期保有目的債券の期末の評価の取引と仕訳(打歩発行)
簿記(TOP)>商業簿記2級>満期保有目的債券の期末の評価…
この記事には改訂版がございます。改訂版は満期保有目的債券の期末の評価の取引と仕訳(打歩発行)をご覧下さい。
満期保有目的債券の期末の評価の取引と仕訳についてお伝えします。
償却原価法(定額法)「例題」
当社(決算日は3月31日)は、×1年4月1日に満期まで保有する目的でA社社債を現金で取得した。その内容は以下のとおりである。
- 取得原価:1,040,000円
- 債券金額:1,000,000円
- 満期日:×5年3月31日
- クーポン利息年4%
- 利払日:毎年3月末日
- 取得原価と債券金額の差額は、すべて金利調整差額として認められる
- 償却原価法は定額法を採用している
これについて取得時と決算時の仕訳について考えてみます。
×1年4月1日(満期保有目的での債券の取得)
現金1,040,000円を支払っているので、『(貸)現金1,040,000』となります。
また、満期保有目的で債券を取得した場合、勘定科目は「満期保有目的債券」を使います。
売買目的有価証券と同じ、資産の勘定です。
金額は、支払った対価1,040,000円を使います。
よって、『(借)満期保有目的債券1,040,000』となります。
まとめると、
(借)満期保有目的債券1,040,000/(貸)現金1,040,000
となります。
×2年3月31日(決算1回目、利払日)
この日は利払日でもあるため、まずは利払いの仕訳を切ります。
債券金額1,000,000円の4%が利息になります。
よって利息金額は1,000,000×4%=40,000円となります。
債券の利息は有価証券利息勘定を使います。
よって『(貸)有価証券利息40,000』となります。
また、この有価証券利息は期限到来済みの公社債の利札にあたります。
これは簿記における現金で学習したとおり、現金になります。
よって『(借)現金40,000』となります。
まとめると、
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
となります。
次は償却原価法の仕訳です。
「債券金額-取得原価」は取得日から満期日までの金利調整差額を表します。
この金利調整差額のうち、当期の分を計算します。
1,000,000円-1,040,000円=-40,000円が取得日から満期日までの金利調整差額です。
取得日から満期日までは、×1年4月1日から×5年3月31日までなので4年間(48ヶ月)あります。
よって1ヶ月分の金利調整差額は-40,000円÷48ヶ月=-833.333…円となります。
当期の期首から保有しているので、当期の保有期間は12ヶ月になります。
よって、-833.333…円×12ヶ月=-10,000円となります。
これが当期の金利調整差額です。
この金利調整差額は有価証券利息と全く同じ性質のものなので、勘定科目も有価証券利息になります。
金額は-10,000円なので、『(借)有価証券利息10,000』となります。
金額がマイナスなので借方になります。
問題は貸方です。
この10,000円という金額は、債券の取得原価から減らします。
償却原価=取得原価+保有している期間に相当する金利調整差額です。
金利調整差額がマイナスの場合は引かなければなりません。
そしてその償却原価を貸借対照表価額とするのです。
そう考えると、この10,000円という当期の金利調整差額を取得原価から引くことになることが納得できると思います。
よって、『(貸)満期保有目的債券10,000』となります。
まとめると、
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
となります。
また、上記2つの仕訳をまとめると、
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
となります。
これが×2年3月31日の仕訳となります。
ちなみに、この2つの仕訳を切る前の残高試算表は、
このようになり、決算整理後残高試算表は、
このようになります。
満期保有目的債券の帳簿価額が金利調整差額の金額だけ減っていることを確認しておいてください。
×3年3月31日(決算2回目、利払日)
考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」と同じです。
仕訳も全く同じになります。
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
です。
ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。
決算整理後残高試算表は、
このようになります。
×4年3月31日(決算3回目、利払日)
考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」と同じです。
仕訳も全く同じになります。
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
です。
ただ、決算整理後残高試算表の満期保有目的債券の帳簿価額がさらに10,000円増えるので、この点を確認しておいてください。
決算整理後残高試算表は、
このようになります。
ちなみに、この時点でこの満期保有目的債券は1年以内に満期を迎えるため勘定科目を振り替える必要がありますが、償却原価法の理解とは関係が無いため、ここでは触れません(現時点ではこの文の意味が分からなくても構いません。分からない方は、スルーしてください)。
×5年3月31日(決算4回目、利払日、満期日)
考え方は「×2年3月31日(決算1回目、利払日)」「×3年3月31日(決算2回目、利払日)」「×4年3月31日(決算3回目、利払日)」と同じです。
仕訳も全く同じになります。
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
です。
ちなみに、この時点での残高試算表は、
このようになります。
今回は満期日なので、社債を発行会社に買い戻してもらいます。
満期保有目的債券の帳簿価額は、満期日には債券金額になります。
そして、この満期保有目的債券を売る(返す)ことになるので、『(貸)満期保有目的債券1,000,000』となります。
ここでは、現金で受け取ったことにしておきましょう。
というわけで、『(借)現金1,000,000』となります。
まとめると、
(借)現金1,000,000/(貸)満期保有目的債券1,000,000
となります。
また、上記の仕訳とまとめると、
(借)現金 40,000/(貸)有価証券利息 40,000
(借)有価証券利息10,000/(貸)満期保有目的債券10,000
(借)現金1,000,000/(貸)満期保有目的債券1,000,000
となります。
- 有価証券利息が社債の保有期間でおしなべられていること
- 償却原価がその期の金利調整差額分ずつ債券金額に近付いていること
を満期保有目的債券の期末の評価(8)の表と合わせて確認しておいてください。
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この記事には改訂版がございます。改訂版は満期保有目的債券の期末の評価の取引と仕訳(打歩発行)をご覧下さい。
この記事は、満期保有目的債券の期末の評価(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)の続きです。
満期保有目的債券に償却原価法(定額法)を採用した場合の具体例を考えてみます。
償却原価法(定額法)「例題」
当社(決算日は3月31日)は、×1年4月1日に満期まで保有する目的でA社社債を取得した。その内容は以下のとおりである。
- 取得原価:1,040,000円
- 債券金額:1,000,000円
- 満期日:×5年3月31日
- クーポン利息年4%
- 利払日:毎年3月末日
- 取得原価と債券金額の差額は、すべて金利調整差額として認められる
- 償却原価法は定額法を採用している
償却原価法(定額法)「考え方」
6,7より償却原価法(定額法)で仕訳を切るということが分かります。
また、1,2より「債券金額<取得原価」であり、打歩発行されていることが分かります。
この場合の利息と償却原価のスケジュールを表で表すと下のようになります。
| 年月日 | 各期の利息配分額 | クーポン利息受取額 | 金利調整差額償却額 | 償却原価(帳簿価額) |
|---|---|---|---|---|
| ×1年4月1日 | ― | ― | ― | 1,040,000 |
| ×2年3月31日 | 30,000※3 | 40,000※1 | -10,000※2 | 1,030,000※4 |
| ×3年3月31日 | 30,000※3 | 40,000※1 | -10,000※2 | 1,020,000※4 |
| ×4年3月31日 | 30,000※3 | 40,000※1 | -10,000※2 | 1,010,000※4 |
| ×5年3月31日 | 30,000※3 | 40,000※1 | -10,000※2 | 1,000,000※4 |
| 合計 | 120,000 | 160,000 | -40,000 | ― |
※1…債券金額×クーポン利息
クーポン利息は、取得原価ではなく、債券金額に対する利率で書かれます。
そうしないと、いくらで発行するか(割引発行か平価発行か打歩発行か)で利息額が変わってしまうからです。
※2…(債券金額-取得原価)÷満期日までの月数×12ヶ月
まず「債券金額-取得原価」と計算することで「満期まで保有している期間全体で受け取る金利調整差額」を求めます。
それを満期日までの月数で割ることで1ヶ月あたりで受け取る金利調整差額を求め、12をかけることで1年分の金利調整差額を求めます。
なぜ年数で割らないのかというと、会計期間の途中で社債を取得した場合は通常月割りしますが、月割りの場合にも対応できるようにするためです。
※3…※1+※2(クーポン利息も金利調整差額も利息と考えるため)
クーポン利息も金利調整差額も本質的には利息であると考えるため、各期の利息配分額と言われれば、これら2つの合計額となります。
※4…前期末の償却原価+金利調整差額償却額
償却原価は、前期末の償却原価に金利調整差額償却額を加えて求めます。
この金額が貸借対照表価額になります。
この金額が満期日には債券金額と同じになることを確認しておいてください。