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辛酸なめ子のブログ連載

最近面白かったもの:

1)辛酸なめ子のブログ連載
辛酸なめ子さん 、前もブログやってたけど(もう終わった?)
いつの間にかこんなの始めてたんだね。
相変わらず文章キレキレです。
この「ハロマグ」というウェブマガジン、作原文子さん とか渋谷慶一郎さん大宮エリーさん も連載していて
なかなか将来性を感じるセレクションですね。

2)BRUTUSの「西海岸ビジネス」特集と「イームス」特集
http://magazineworld.jp/brutus/713/read/
西田編集長になってもう3年くらい?
西田エラになってからのブルータスは当たり外れが多いけど、当たりの号はすごい破壊力。
イームス、西海岸ビジネスと、この2冊は2号続けて内容的に大ヒットだと思う。
(追記)
…と思ったらどっちの号もぜんぜん売れなかったそうですね。
高いレベルの読者に向けて作った雑誌って、売れない時代なんだね。
5年ぐらい前とは、雑誌づくりに必要な考え方やスキルはだいぶ違うのかも…。

3)70年代アメリカ映画
映画は70年代映画をDVDでひたすら見てた。
映画自体のデキはまったくどうでもよくて、70年代のアメリカの空気を
ただただ吸い込みたくて見続けてるかんじ。
特にぐっときたのはこのあたり。
激突!スペシャル・エディション 【ベスト・ライブラリー 1500円:アクション特集】 [DVD]/ジャクリーン・スコット,エディ・ファイアストーン,ルー・フリッゼル
¥1,500
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帰郷 [DVD]/ジェーン・フォンダ,ジョン・ボイト,ブルース・ダーン
¥1,800
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アリスの恋 特別版 [DVD]/エレン・バースティン,クリス・クリストファーソン,ハーベイ・カイテル
¥980
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ハードコアの夜 [DVD]/ジョージ・C・スコット,ピーター・ボイル,ディック・サージェント
¥1,480
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カー・ウォッシュ [DVD]/リチャード・プライアー,フランクリン・アジェイ,サリー・ボイヤー
¥980
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藤原ヒロシだからって敬遠しないこと

少し前に買った藤原ヒロシさんの伝記「丘の上のパンク」を読み終わった。
高いけど、それ以上の価値がきっとある素晴らしい一冊だと思う。
丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記/川勝 正幸
¥2,940
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ヒロシさんはストリートファッション業界のフィクサーだと思われがちで、まあ実際にはその通りなんだけど、
その立ち位置のためか、ヒロシさんを嫌っていたり敬遠していたりする人はとても多い。
客観的に見ればたしかに非常にうさんくさい立ち位置だよね。

でも、そんな理由でこの本を見過ごしてしまうのはとてももったいないと思う。
ヒロシさん周辺で起きた80年代から90年代カルチャーの移り変わりを、
関係者への膨大なインタビューで綴った本なんだけど、
時代の空気がとてもリアルに再現されていて、当時のカルチャーの熱気というか衝動というか、
なんか荒々しいものがかなりダイレクトに伝わってくる。超すぐれた80年代文化史だと思う。

80年代の文化史といえば、おたくサイドから80年代文化を語った
大塚英志の「おたくの精神史」もとても緻密でよくできた本だったと思うけど、
おたくである大塚さんの個人的な視点で語る歴史だから、
当然おしゃれサイドの歴史は完全に無視されていて、
「おたくだけが80年代じゃなくね?」的な不満は残って、
おしゃれサイドから見た80年代を誰かが書かないと不公平だよ!と
個人的には怨念を抱いていたから、
大塚さんへの「反撃」という意味で、個人的にはこの出版はとてもうれしいよ。
「おたく」の精神史―一九八〇年代論 (朝日文庫 お 49-3) (朝日文庫)/大塚 英志
¥798
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ぼくはヒロシさんに憧れて何かを買ったことはたぶん一度もないと思うし、
彼のフォロワーでは全然なかった。
それどころかむしろ毛嫌いしていたほうだと思うけど、
彼が暗躍していた頃の原宿をいつもうろついていたし、
きっと間接的ではあるけれど、ヒロシさんからは多大な影響を受けて育ったハズだから、
自分が栄養を与えられて育ったカルチャーが
どんな背景、どんな美意識で成り立っていたのかをきっちりと確認させてもらえたのは
非常にいい経験になった。個人的だけど。

あと、この本の著者の川勝正幸さんは本当にいい仕事をしたと思う。
大塚英志の80年代おたく史観におしゃれサイドから対抗できるのは、
当時のカルチャーを熟知し、きちんと「カッコいい」ものと「ゴミ」を判断できる
川勝さん以外にはいなかったと思う。

ユニクロはネクストレベルに行くかもしれないよ

新宿駅構内でかなりクールなポスターを見かけて、
どこのブランドかと思ったらユニクロだよ!
写真のタッチもスタイリングもモデル選びも完全にド直球でモードだよ!
GAPあたりは裸足で逃げ出すくらいのレベルの仕上がりだよ!

このポスターは新宿西口にオープンする新店の告知で、
それこそ新宿駅ジャックぐらいの勢いで貼られてたんだけど、
ウェブで調べてみたら 、ポロキャンペーンの画像を流用していたらしくて
CMの音楽はコーネリアス(小山田圭吾)、ディレクターは辻川幸一郎というチーム・コーネリアスだよ!
映像も画像もウェブもホレボレするような質感の高さで、
かなり強引にハードルを上げているかんじがして、
はたして日本全国のユニクロ顧客にこの感じが伝わるのかはあまりわからんけど、
少なくとも「ユニクロ変わったね」感はどんな鈍い人でも感じるはずのデキだったよ。
超Good Jobだけど、これも佐藤可士和かな?もしそうなら見直したよ可士和。
田中ノリユキ時代は、どんなにモードっぽい感じを狙っても
必ずどこかで派手にずっこけちゃって、いつも残念な感じだったのに。

あとは肝心の商品と店内環境だね。
かっこいい広告につられてお店に行っても、
実際のモノは色も素材もディテールもかなり厳しくて、
結局ほしくもない靴下かなんかを買って帰ってくるはめになるんだよね。
スタイリストが上手すぎるからだまされちゃうだけなんだよね。
あと、ジャスコみたいな店内アナウンスはいい加減やめたほうがいいよ。

これからジル・サンダーがびしばしカッコいい商品をつくってくれたら、
日本の誇れる超クールなブランドになれるのにね。
がんばれユニクロ。

ヤンキーブーム、再び?

本屋をぶらついていたら、前著「創刊の社会史」がかなりの力作だった難波功士氏の新刊、
「ヤンキー進化論」を発見したので迷わず捕獲しました。
ヤンキー進化論 (光文社新書)/難波功士
¥945
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「ギャル」と「ヤンキー」は表現の方法こそ違うものの、
核にあるエッセンスはほぼ同一だとぼくは思っていて、
つまり幼少時に海外文化にあまり毒されることのなかった一般的な日本人は
割と自然に「ヤンキー」=「ギャル」な感じ方や美意識を持つようになるんじゃないかと。
おおざっぱにいえば非インテリ日本人の感性のベースはヤンキーだよ、ってこと。

都築響一さんが追いかけているラブホやパチンコ屋建築なんてあからさまにヤンキーだけど、
これは当然、潜在顧客層の美意識を建築に反映させてるからヤンキー風になるわけで。

でもたいていのインテリはヤンキーやギャルを下に見がちで、
日本文化の見えない主流であるヤンキーやギャルについて語ろうとする人は
つい最近までほとんどいなくて、
ひと月くらい前に出た五十嵐太郎編の「ヤンキー論序説」は結構な快挙だと思いました。
ヤンキー文化論序説/五十嵐 太郎
¥1,680
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数日前、ブルータスも驚天動地の「ギャル」特集 を発売し、
まあインテリオシャレ層が読者だと言っていいブルータスが
果敢に大衆文化に切り込んでそれなりの成果を挙げたわけですが、
今度は難波サンまでヤンキー!
BRUTUS (ブルータス) 2009年 5/1号 [雑誌]
¥580
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まだ1ページも読んでないですが、前著「創刊の社会史」 では物凄い切れ味で
日本の雑誌カルチャーを切り刻んでくれた難波サンのことだから、かなり期待できそう。

マーケター的にこの傾向を分析すると、
「裏ハラ、代官山文化から新宿ルミネ文化へ」ってことだと思う。
つまり、もう「文化的であること」では周りのリスペクトが得られなくなり、
「文化的であること」の意味が薄れた結果、
ムリして最新カルチャーをキャッチアップする必要がなくなり
より居心地のいい、本能的に馴染める生活様式に回帰した、ってこと。
これはけっこう大きな文化的な変動だと思うよ。
でもこれ、長くなりそうなんでまた書きます。

「海外ばっかりおっかけてないで、日本にもスゴいものはたくさんあるんだから、
日本にももう少し目を向けてみなよ」
という、ぼくのリスペクトする都築響一さん的な感じ方が
市民権を得はじめているようでうれしいです。

あとヤンキー=ギャル文化に関しては、この本は必読です。
ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち/速水健朗
¥1,575
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BRUTUS「ギャル特集」

BRUTUS (ブルータス) 2009年 5/1号 [雑誌]
¥580
Amazon.co.jp

これぞ編集だよ、という見事な1冊だと思いました。
前号が「仏像」特集、最新号が「ギャル」って、
ふつうに考えたら節操なさ過ぎる無茶苦茶なラインナップなんだけど、
どっちの号も「ブルータス目線で見た仏像」「ブルータス目線で見たギャル」が、
きちっと抑制された編集で紹介されているから、きちんと筋が通っていると思う。

雑誌の編集スキルを分解すると:
(1)どのテーマを選ぶのか、にはじまって
(2)このテーマでやるとしてどのネタを載せるのか、というサンプリングの部分と
(3)選んだネタをどう料理するのか、というアレンジの部分、
おおざっぱにはこの三つのプロセスに別けられる。
このブルータスは(1)はともかく(2)(3)どちらもうまくいっているから、
無茶なテーマなのにとても上手に消化できていました
YO!

だからテーマの好き嫌いとは無関係に出来のいい一冊だなあ、と。

一つだけ不満を挙げるとすれば三浦展だな。
三浦、飲み屋でクダ巻いてる親父と同レベルだYO!





なんかあれだね。最近はカーサがダメすぎてブルータスとずいぶん差がついちゃったね。

ギャルについては興味があるので、近々また書こうと思います。

新創刊のファッション誌「GRIND(グラインド)」を読んでみた。

本屋に行ったら新創刊のメンズファッション誌<GRIND>が出てたので買ってみた。
キャッチコピーは
「遊び心を忘れない! 尖った大人のライフスタイル・ファッションマガジン誕生!!」…。
あぁぁぁ。
狙いとしてはおしゃれエリート御用達の(=それゆえに部数が伸び悩む)<HUGE>と、
ギャル男テイストを程よくブレンドして、マス層の支持を得ている<MEN'S JOKER>の
中間ぐらいを狙った雑誌なんじゃないかと思うんだが、あの、正直言えばかなりインチキくさい感じ。
10年ちょっと前、勢いのあった頃の<Smart>の劣化コピーというのか、
もう消えてしまった裏ハラの残滓を必死に追い求めたけど見つかりませんでした感、というのか。

テーマは奇しくも<HUGE>の最新号と同じ「不良」。
<HUGE>のほうは、
リアルに粗暴そうなアメリカの素人ブルーカラーモデルに、テンダーロインかワコマリア着せて、
1ページで断ち落しで、Avedonの"In the American West"な雰囲気の写真で…、
という作りが定型的というか自家撞着な感じがした。
「昔のカッコいいアメリカ」のコスプレは上手にこなせてるけど、
「今」の「東京」の空気がとても希薄というか。
まあ印象なんで人によって違うのかもしれないけど。
ということで、目新しさのない「不良」だと思ったけど、まあ筋は通ってる。

でも<GRIND>は狙いどころはなんとなくわかるんだけど、
(<HUGE>じゃ客層狭めすぎだからもうちょっとユルくって、感じでしょ?
勘違いかもしれないけど…)
狙いを具現化するためのエクゼキューションの粗さがとても目に付く。
 
ちょっとこのレベルのブツ撮りを掲載するのはないだろうよ、とか。
もうちょっとましなコピー書けなかったの、とか。
フォトグラファーもスタイリストも、他の媒体とはぜんぜん違う顔を見せてしまっている。いや悪い意味で。

そもそもカジュアルをこだわって買う「大人」の男子なんて、そんなたくさんはいないだろうよ。
そんな狭いところで過当競争をして、不毛な潰し合いしてもしょうがなくね?と思ったのでした。

GRIND vol.1 2009年 05月号 [雑誌]
¥650
Amazon.co.jp
HUgE (ヒュージ) 2009年 05月号 [雑誌]
¥700
Amazon.co.jp


ヨガやサーフィンは、なぜ人生を変えるのか?

4年近く遠のいていたヨガを最近になってまたやり始めたんだが、ああそうこの感覚。気持ちいい。
不自然なポーズを取って、日常ではまず使わないような筋肉を伸ばしたり力を入れたりしていると、
日常生活とは違ったチャネルに違った種類の刺激を受け、
稼動していなかった体内の何かが活性化し、活動をはじめたような感覚がある。

ぼくにとってヨガは有無を言わせずフィジカルに気持ちいい。
ジョギングや水泳もいいけど、ヨガにはかなわないと思う。

ただ問題なのは、ヨガには「人生を変えてしまう」力がありそうなこと。
ヨガだけでなくサーフィンもそうだけど、ある程度シリアスにやっている人の生き方や行動規範は
多かれ少なかれかなり似ている。
ヨガを続けていると好みやキャラクターがある類型に収斂されていくのか、
あるいはある傾向をもった人がヨガに関心を抱きやすいのか、これはどっちもあると思うんだけど、
まあいずれにしても、ヨガ好きには似たようなタイプが多い。

おおざっぱにいえば「平和を愛し競争を嫌い、人は人なんだかだから比べない」という哲学。
生活に関しても、タバコはぜったいにナシだけど、酒は割とOK、セックスもOK。場合によっては草もアリ。
肉は極力食べなくなり、ベジタリアンやヴィーガン化する。
「気づき」とか、「自分の内なるこころ」といった言葉を多用しがちで、
ヨガ(サーフィン)のおかげで「自然の偉大さに気づき」、
「あんなちっぽけなことで悩んでた自分がバカに思え」たりする。
まああれだ。典型的なロハスな人だ。

西洋医学的には証明されていないけれど、
ヨガやサーフィンで普段と違う刺激をカラダに与えていると、
感覚や好みや性格もゆっくりと変わっていく、というのは実際にあると思う。実感として。

ただ問題は、ぼくは別にヨガによって変わりたいとも救われたいとも「気づき」たいとも思っていないこと。
純粋にフィットネスとして気持ちいいからやってるのに、
そういう「ピュア」な感じの人に囲まれてやるのはなんとなく肩身が狭い。
「いや、別に変わりたいわけじゃないんだけど」って思いながらヨガをしてるけど、
「変わることの恐怖を取り除くことが気づきへの第一歩だ、云々」
みたいなこともヨガの教義にはビルトインされているから、なんだか余計厄介だ。
「肉も食いたいし、変わりたいとも思わない」なんて、
表立って口にしようものなら糾弾されそうなストイックな雰囲気なんだから。
もうちょっと自由でもいいのにね。


帰りの電車で、安いスーツを着た50代の頭の禿げた、
でも実直そうな男性が夢中で読んでいる本のタイトルを見たら
「いつか芽が出る人の法則」だった。
ちょっとせつな過ぎた。

STORY編集部には凄腕コピーライターがいるはずだ

今日届いた<STORY>のタイトルがすばらしいと思った。
”贅沢を知っているから、「安い」が楽しい”
景気が悪くなっていて、頼みのつなの旦那の収入もちょっと怪しくなってる人もいて、
できれば服もグレードダウンしたいと思っている。
でも邪魔なのはプライドや見栄。

そんなややリッチな主婦読者の威厳を損ねることなく、
「あえて」安い服を買うのよ的な言い訳を用意し、背中を押してあげている
とてもよくできたコピーだと思う。

ただ問題は、見栄を張りつづけて無駄な金を消費しつづけてきた40代は
小売業にとっての「最後の砦」だったはずなのに、彼女たちが陥落してしまうと
いよいよ本格的に何も売れなくなるんじゃないのかが心配。

20代の若い子たちが「消費による自己実現」に
あまり興味を持っていない(=余計なものを買わない)ことはとても喜ばしいことだけど、
カモになってくれるはずだったマダムまで消費から遠ざかってしまうようなことがあれば、
ちょっと事態は深刻なんじゃないか?
ともかく<STORY>はいつもコピーが上手だなあと感心しています。
”時には「買わない知性」もある私”、とかね。
読者の「なりたい自分」像を、さらっと嫌みなく描けていると思う。

STORY (ストーリー) 2009年 05月号 [雑誌]
¥800
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弱小ファストフードチェーンが勝つ方法?

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もう一週間前のNewYorkTimes なんだけど、
アメリカのファストフードチェーンのマーケティング戦略について書かれた記事がなかなかでした。
記事によると、ファストフードのターゲット層である若者がテレビやラジオを見なくなったため、
ここ数年で各チェーンとも従来のやり方とは異なる広告宣伝を模索し始めている、とのこと。

日本でも報道された「Facebook内のフレンズを10人外したらワッパーあげるよ」キャンペーンでバーガーキングが話題をさらうと、マックは自社のジングルをヒップホップ、カントリーにアレンジした音源を応募するコンテストをMy Space上で開催する、といった具合。
そんな中、3万店舗のマック、1万1千店舗のバーガーキングに物量作戦で勝負してもかなわない、西海岸が基盤の弱小チェーン「Carl's Jr.(カールズジュニア)」(1200店舗)が選んだのは、ニッチ戦略。何をしたかというと、 典型的なストリートカルチャーへのエンドースメントだったんですな。
MTVに番組も持つカリスマスケーターのRob Dyrdek(ロブ・デュディック)とコラボし、LAのスケートパークに資金援助を行って、同時にデュディック・モデルのマグカップを発売。
デュディックがカールズジュニアの店内でスケートする映像を、自らYou Tubeに投稿したことも手伝って、口コミの輪が勢いよく広がり、デュデック・モデルのマグカップは1ヶ月弱で350万個を売り上げる大ヒット商品に、という結末をむかえたという次第。ターゲットをぐっと絞ったことでメッセージが深く刺さり、そこから波及効果が現れて効果的なキャンペーンになった、という好例でした。

ストリートカルチャーと結びつくことでコアな若者のココロをつかみ、おまけでフォロワーもついてくる。これってまさにナイキの十八番な感じの手口だけど、ファストフードチェーンで通用した、というのがおもしろい。
大手と価格訴求で勝負しても、まあなかなか勝ち目は薄いだろうし、広告の投下量では到底かなわない以上、メジャー感&安心感も勝負にはならない。じゃあ味で勝負、といいたいところだけど、これだけ競争の激しい市場だと許された原価内で味で差別化をはかるのも、かなり難しいだろう、と。

コアなコミュニティの支持を得ようとする場合、うっかり適当なことをやると「オレらのことわかった顔してんじゃねえ」とか「あいつらオレらから搾取しようとしてる」とか、かえって反感を買いがちだから難しいんだけど、きっとカールズジュニアの広告を受け持っているインターパブリック社参加のInitiative(イニシアティブ)というファームは、このあたりの繊細なタッチをうまくやったんだと思う。

日本では元Appleの原田氏がCEOに就任してからのマックのコミニュケーション戦略の改善ぶりにはかなり驚かされたけど(やりすぎてクオーターパウンダーのサクラがばれちゃった事件もあったけど…)、それ以外のファストフードの広告戦略は意図がぜんぜん伝わってこない。
少ない予算で万人ウケを狙って大手の縮小コピーみたいなことするんなら、限定されたドメインを着実に確保する「カールズジュニア」的なニッチ戦略のほうがずっと効果的なんじゃないか?
どうせ正面からマックと勝負しても、勝つのはかなり難しいんだから。
たとえばリヴァンプ資本が入っても迷走が続いているロッテリアは、オタクに特化して「萌えバーガー」を開発する、とか。「ヤンキーバーガー」とか。
そういえば、かなり前だけど「relax」で「フレッシュネスバーガー」特集やら、「デニーズ」特集なんてあったですね。どちらも一発の特集で終わってしまっていて、継続的に「relax」読者カテゴリーを取り込むアプローチをやってたわけじゃないから、おそらく眼に見えた効果はなかったんじゃないかと思うけど、これはカールズジュニア作戦とちょっとだけ近いかも。

あと、近年のファストフードの広告の超重要人物は、以前にも書いた広告界の超新星Crispin Porter Bogusky(クリスピン・ポーター+ボグスキー)。 こちらはみんなに届く王道派。ターゲットが幅広い分、ニッチ戦略に比べると当然コミュニケーションの難易度は高い。それでも広告(だけじゃないけど)で勝負をひっくり返してしまった格好の例なのですが、やはり見事な仕事だと思うのです。

そろそろくるよ、「うつわ」ブーム

数年前からCasa BRUTUSやESQUIREでは何度か特集が組まれていたけど、
「うつわ」ブームがいよいよ本格化しそうな気配。
ファッションでもデザインでも、いまの気分は均質的でフラットでデジタルなものから、
アナログで手触りのあるハンドクラフトな風合いのものに大きくシフトしているわけで、
「うつわ」が注目を集めつつあるのも、当然これとシンクロして起きている動きです。
ここにいううつわは工場の名もない職工ではなく個人がつくったものであり、
なおかつ手作業ゆえにひとつひとつ微妙に違うもの、というのも流行のポイントです。
乱暴にまとめちゃうと、アンチ・マーケティング的というか、
産業化されていないブランド、とでもいうのか。

さらにいえば、日経あたりでも「巣ごもり消費」なんて言われるけれど、
消費のスタイルもこれまで長い間続いてきた
他者の視線を意識した「消費での自己実現(ヴィトン的)欲求」から
「自己充足的(ヨガ的)欲求」へと変わってきていて、
つまりは家で料理して気に入ったうつわに盛って食べる、というのはとても今っぽい活動なわけで、
うつわに興味を持つ人が増えたのは、ある意味必然なわけです。
今月号はクウネルもエルデコも「うつわ」特集。

ku:nel (クウネル) 2009年 05月号 [雑誌]
¥680
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ELLE DECO (エル・デコ) 2009年 04月号 [雑誌]
¥1,350
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最初はジジイみたいでかなり抵抗あったんだけど、
実際うつわを買うようになってみると、けっこう趣味として楽しめるんだよ。
安いものなら作家ものが2000円くらいで買えて、(リーズナブル)
基本的には期間限定の個展でしか手に入らないからタイミングを逃すと入手困難で(コレクション性)、
人気作家のものは個展初日で完売しちゃったりして(希少性)、
マニアックにこだわろうと思えば土やら釉薬やら無数のバリエーションがあって(うんちく性)、
ひとつひとつ表情が微妙に違ってて(ワンオフ)…、と
人気が出そうな要素は特盛り。
おまけに上に書いたように時代の追い風も吹いているから、
クウネルやエルデコよりもっとメジャーな媒体で、きちんと考えた「うつわ」特集組めば、
きっと完売号つくれるし、うつわブームに火がつくと思うんだよね。
(流行ってしまうことの弊害は否定できないけど…)
先日、六本木ミッドタウンの21_21DESIGN SIGHTのうつわ展 に行ったら、
たまたまっだたのかなあ、かなり人が入っててけっこう驚きました。
オーバーグラウンド浮上、一歩前な雰囲気なんです。
(「ルーシー・リィー」が正式表記なんですかね、「ルーシー・リー」じゃなくて?
「リィー」って日本語表記としておかしくね?)

残念なことに、最近のうつわシーンを網羅的にきちんとフォローした雑誌は
自分の知る限りまだつくられてなくて、オールドスクールな魯山人的な骨董中心だったり、
新しいものを扱っていても、取り上げる作家が偏っていたり、
メディア側でも視点が定まったあまり人がいないのが残念なところ。
いまのところ、うつわのことを知るならうつわノート という個人の方のブログがおすすめです。
(ここ数年出たうつわ系の特集の中では、完売になってしまったBRUTUSの2005年に出た
「濱田庄司」特集が個人的には断トツでベストでした)

そういえば、昨秋、陶器市の時期にはじめて益子に行ったんだけど、
陶器・磁器だけじゃなくて、ヘンプのアクセサリーとかガラス細工とかを制作している
アーシーな雰囲気の若手作家が益子にはいつの間にか大勢移り住んでるみたいで、
屋台でもやきそばとかじゃなくて豆のカレーなんかが売られてたり、
たまにガンジャ臭まで漂ってきたりして、
何年か前遊びに行ったことのあるオレゴンのヒッピーコミューンみたいな雰囲気で、
日本でもこんな場所があるんだ、とかなり驚きましたよ。すごく不思議な場所だった。
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