藤原ヒロシだからって敬遠しないこと | A View of dogbutt

藤原ヒロシだからって敬遠しないこと

少し前に買った藤原ヒロシさんの伝記「丘の上のパンク」を読み終わった。
高いけど、それ以上の価値がきっとある素晴らしい一冊だと思う。
丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記/川勝 正幸
¥2,940
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ヒロシさんはストリートファッション業界のフィクサーだと思われがちで、まあ実際にはその通りなんだけど、
その立ち位置のためか、ヒロシさんを嫌っていたり敬遠していたりする人はとても多い。
客観的に見ればたしかに非常にうさんくさい立ち位置だよね。

でも、そんな理由でこの本を見過ごしてしまうのはとてももったいないと思う。
ヒロシさん周辺で起きた80年代から90年代カルチャーの移り変わりを、
関係者への膨大なインタビューで綴った本なんだけど、
時代の空気がとてもリアルに再現されていて、当時のカルチャーの熱気というか衝動というか、
なんか荒々しいものがかなりダイレクトに伝わってくる。超すぐれた80年代文化史だと思う。

80年代の文化史といえば、おたくサイドから80年代文化を語った
大塚英志の「おたくの精神史」もとても緻密でよくできた本だったと思うけど、
おたくである大塚さんの個人的な視点で語る歴史だから、
当然おしゃれサイドの歴史は完全に無視されていて、
「おたくだけが80年代じゃなくね?」的な不満は残って、
おしゃれサイドから見た80年代を誰かが書かないと不公平だよ!と
個人的には怨念を抱いていたから、
大塚さんへの「反撃」という意味で、個人的にはこの出版はとてもうれしいよ。
「おたく」の精神史―一九八〇年代論 (朝日文庫 お 49-3) (朝日文庫)/大塚 英志
¥798
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ぼくはヒロシさんに憧れて何かを買ったことはたぶん一度もないと思うし、
彼のフォロワーでは全然なかった。
それどころかむしろ毛嫌いしていたほうだと思うけど、
彼が暗躍していた頃の原宿をいつもうろついていたし、
きっと間接的ではあるけれど、ヒロシさんからは多大な影響を受けて育ったハズだから、
自分が栄養を与えられて育ったカルチャーが
どんな背景、どんな美意識で成り立っていたのかをきっちりと確認させてもらえたのは
非常にいい経験になった。個人的だけど。

あと、この本の著者の川勝正幸さんは本当にいい仕事をしたと思う。
大塚英志の80年代おたく史観におしゃれサイドから対抗できるのは、
当時のカルチャーを熟知し、きちんと「カッコいい」ものと「ゴミ」を判断できる
川勝さん以外にはいなかったと思う。