昨日だったかBSで「夕陽のガンマン」をやっていたので見ようとしたら、かみさんが、俺がしまい込んだマカロニウエスタンDVDの棚を指差し「これ、今観なくたってそこにあるでしょ?」とあっさり看破され、チャンネル権は数秒で剥奪されたのだが、ちょうど画面に映っていたリー・ヴァン・クリーフに「この人、毎回出ているよね」だって(笑)。
まあ、確かにマカロニ・ウエスタンに数多く出ているのは認める。だが毎回って何だよ(笑)。
正確には「彼が出ているマカロニを俺がよく見てるから我が家のモニターに映る回数が多い」というわけだ(笑)。
「よく見ろ!彼がONE PIECEの「鷹の目のミホーク」のモデルだぞ!」と自慢げに解説する俺に「おとーさん嘘ばっかりつくから怪しいけど、ほんとだと認めるわ」と娘たちも納得した、彼の鋭い視線の魅力炸裂のこの作品、 もう何回も観ているのだがレビューできていなかった大好きな本作、ブロ友のpunksさんも手に入れたようなので負けてなるものかと先に記しておきます(笑)
西部悪人伝 (1970 年) SABATA
監督・脚本 : フランク・クレイマー 製作 : アルベルト・グリマルディ 脚本 : レナード・イッツォ 撮影 : サンドロ・マルコーニ 音楽 : マルチェロ・ジョンビーニ
出演 : リー・ヴァン・クリーフ、ウィリアム・バーガー、ペドロ・サンチェス、ニック・ジョーダン、フランコ・レッセル、リンダ・ヴェラス、ジャンニ・リッツォ、アントニオ・グラドーリ、ロバート・ハンザー、カルロ・タンベルラーニ、ルチアーノ・ピゴッツィ、アンドレア・アウレリ、ロマノ・プッポ、スパルターコ・コンヴェルシ、ジョン・バーサ
昨年レビューしたユル・ブリンナーの「大西部無頼列伝 」の前作である、サバタシリーズの第一弾だ。
「大西部~」のユル・ブリンナー版サバタは「インディオ・ブラック」という別名もあり、クールで決して慌てない佇まいは似ているけど、貧しい者や子供の味方というちょっと義賊的な側面があった。だが、リー・ヴァン・クリーフのこの一作目は、つけもつけたりの邦題通り、言うなれば 悪の上をいく極悪(笑)。
俺が考えるマカロニ主人公の2大行動原理、すなわち「復讐」と「金」のうち、後者の方で動くこの アンチヒーロー、サバタが本当に魅力的なのだ。
全身黒づくめのダンディな洒落者、沈着冷静でニヒルな凄腕。ふらりと現れて、妙な武器を駆使しながら欲深い悪人どもを手玉に取って、最後には大金を奪って去っていく正体不明のガンマン、サバタ。
まあ、自分も以前は知らなかったんだが、 以前レビューした「サルタナがやってくる~虐殺の一匹狼~ 」のジャンニ・ガルコ演ずる「サルタナ」がまさに上記の通りで、サバタそっくりだったのだ(笑)
気になって調べたら、本作の監督フランク・クレイマーことジャンフランコ・パロリーニが サルタナ・シリーズの1作目『Se incontri Sartana prega per la tua morte(サルタナに会ったら自分の死を祈れ)』を監督していたんですな。
このサルタナ一作目が、これまでの暗い復讐譚ばかりのマカロニ・ウエスタンとは一線を画した、彼が監督していたスパイ映画同様、ある意味軽妙洒脱なマカロニ・ウエスタンとしてヒットしたそうで、これが’70年代初頭に次々と作られたコメディタッチのマカロニウエスタンの見本となったのは確かだろうと思われるのだ。
言わば、先日記事を書いた「風来坊/花と夕日とライフルと」に先駆けだったわけだ。これまでのキャラクターとは明らかに違うサルタナは魅力的だったのだろう。「ジャンゴ」や「リンゴ」などとともに名前がパクられるマカロニの人気キャラとなるのだから。
ところが、何があったか知らないがパロリーニは 2作目以降は監督することなく、アンソニー・アスコットことジュリアーノ・カルニメオがシリーズを連続監督することになる。
俺が観たその時点では唯一の日本でDVD化されていた第4作「サルタナがやってくる~虐殺の一匹狼~」も彼の演出だったのだ。
余談だが主人公サルタナをジョージ・ヒルトンが演じたアスコット監督のサルタナシリーズ5作目「俺はサルタナ/銃と棺桶の交換」はDVD化されたんで欲しいのだなあ(笑)
まあそういうわけで自分が生み出したサルタナシリーズを1作で降板させられたパロリーニ監督が、「ちくしょう!俺が作ったキャラなのに!」と地団太踏んだかどうかはわからないが(笑)、サルタナのキャラクターをそのままコピーしたかのようなサバタを生み出し、もっとビッグネームのリー・ヴァン・クリーフに演じさせ 留飲を下げたのかもしれないな・・・などと考えるとちょっと楽しいのである(笑)
西部の町ドハティで、 軍の資金10 万ドルを周辺の土地買い占めのために手下を使って強奪しようとする町の有力者たち。
強奪成功と思えばふらりとやってきたサバタ邪魔され取り返されるわ、悪事の黒幕と気づかれたので懐柔しようとすればすかされ、それならばと殺し屋を差し向ければ返り討ちに合い 手も足も出ずに慌てふためく有力者たち。
ニヤニヤと都度口止め要求額を上げて 追い詰めていくサバタ。もう極悪というよりドSなんですな(笑)。リー・ヴァン・クリーフ、本当に楽しそうに演じています。
この映画が魅力的なのがそんなサバタをとりまく仲間の存在。
薄汚くてガハハと笑いながらサバタをサポートする カリンチャを演ずるペドロ・サンチェス。「大西部~」にも出ていたが、今思えば「待つなジャンゴ引き金を引け」でも同じような役をやっていたな。俺の中ではフェルナンド・サンチョ、バッド・スペンサーに続く「マカロニのよく見る第3のデブ」のイメージだ(笑)。
もう一人の仲間インディオ、通称 ネコはスタント出身のニック・ジョーダンが演じている。まあトランポリンが仕込んであるのだろうがよく飛ぶこと(笑)。
無口で金に汚くもなく、頼まれた仕事は危ない橋でもしっかりこなすなど、ルパンの石川五右衛門的立ち位置でカッコいいんだよな(笑)。
そして何よりウィリアム・バーガー演ずるバンジョー!(笑)。凄腕なのにすっとぼけていて最高!
サバタとは以前何か因縁があった仲。酒場女のヒモみたいな生活しているくせに常に持ち歩いているバンジョーにはライフルが仕込まれていて、いざとなったら5人の敵も一瞬で倒す素敵なキャラなのだ!
最後にサバタを出し抜こうとして失敗した時のしょんぼり顔がいいんだよな(笑)。一癖ある凄腕役の多い ウィリアム・バーガーの魅力爆発のキャラだといえよう。
そうそう、監督がスパイ映画を撮っていたせいかどうかわからないが、サルタナでも変な武器が出てきたが、本作もこの仕込みバンジョーの他にも上下左右の4つの銃口に加えて銃床からも3発撃てる7連発デリンジャーをサバタが愛用している。
加えてライフルに更に銃身取り付けて遠距離の敵を撃ったり、敵も仕込み杖もっていたりと、ガジェットがいちいち楽しいのもいいのだ。
マカロニ必須の音楽は、マルチェロ・ジョンビーニ。軽快なサバタのテーマ曲が色々アレンジを変えて出てくるけど、メキシコっぽいリズムが全体を通じてノリノリのマカロニ・チューンになっていてお気に入りなのだ。VIDEO
哀愁は控えめながら女性コーラスで「ルンルン・ル・ルン・・・」とはいってくるとことか、映画では使用されていないがサントラ盤では、 イントロで、男の声で「 EHI AMICO...C'E SABATA, HAI CHIUSO ・・・ Huhaaaaaa !」と、ムハハハハ高笑いする部分が最高にカッコいいのだ(笑)。
では予告編もどーぞ!VIDEO