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ジャズインプロビゼーションのあり方について最近考えたこと、もしくはソロとアンサンブルのバランス。

先日父親が亡くなりました。会場で流す音楽のコンパイルをしました。選曲していくとジャズというよりはイージーリスニングに近い、インプロヴァイズはあってもさほど長くないものがメインになりました。インプロヴァイズの長いものは冗長になってしまうし、よくアレンジされたアンサンブルの上で簡潔に歌うスタイルの方がゆったりした感覚があって会場の空気を優美で柔らかいものにしてくれました。このゆったりとした感覚というのは以前ジョー.ニューマンのアンサンブルを再現した時にも感じたことでした。音楽の中に寛ぎみたいなものがはっきりあるんです。これがいわゆるビバップ以降のモダンジャズではすっかり影を潜めてしまうんです。演奏している方も聴いてる方もスリリングではあるんだけど、冗長で一本調子になってしまっているのではないか、という感覚を持ちました。もちろん複雑で高度な技法をふんだんに散りばめた音楽というのもエキサイティングで素晴らしいんだけど、それを追いかけているだけだと見落としてしまうものがあるのではないか?というようなことを葬儀の時にぼんやり考えていました。これは今まであまり考えていないことでした。自分が音楽に向き合う時の感覚が少し変わっていくかもしれないなぁ、と漠然と考えています。

延命措置は誰のため?

今年に入ってから父親の衰えが進み、この2ヶ月で更にそのピッチが上がってあっという間に終末医療状態になりました。大きな病気を抱えているわけではないので純粋に老衰です。意識というか頭脳の方はほとんどボケてないので、話すことができなくなってはいますが意思表示ははっきりしています。訪問診療を担当してくれる先生からは持ってあと○日くらいではないか、という見解が示され、治療云々ということと並行して我々が受容するためのイニシエーション的な内容もかなりありました。私としては「なるようにしかならないのだからなるようにしかしないつもりである」ということを伝えました。良寛の「災害に遭う時分には災害に遭うがよく候。死ぬ時分には死ぬがよく候。これはこれ、艱難辛苦を乗り越える妙法なり」という手紙を書いたエピソードがあるのですが、すなわち現実を見据えてそこで最善を尽くせ、と。延命措置をしてもらいたい心情もなくはないですが、老衰という自然現象に抗うことの意味とは何か?延命措置を頼むのは誰のエゴなのか?ということを冷静に考えないといけないのではないかと。かつて昭和天皇が崩御したとき、最後の方は下血した分を輸血する、みたいな対応でしたが、それでも最後は訪れるわけで、崩御させてはならない、ってのは誰のエゴだったのかって思うに本人じゃないと思うんですよね。良寛のエピソードはイスラムの「神のご加護を」にも少し通じるような気もします。Live until die.で良いのではないか、というかこれ以外の選択肢はないのではないかと。斯くして禅問答は続くのでありました。

楽器は手で持つものではない?

楽器を演奏する時って無駄な力が抜けてることが大切だと考えています。が、トランペットって楽器の形状上「力を入れて握ることが簡単いできる楽器」なのです。金管楽器の中でも特にそういう形になっています。その一方でほとんどの楽器は「持ってない」んですよね。例えば弦楽器。ヴァイオリンであろうがギターであろうがベースであろうが、左手でフレットーワークをして右手で弾くわけですから、「持つ」ことはできません。ヴァイオリンやヴィオラは顎で支え、チェロやコントラバスはピンで支えています。エレクトリックなギターやベースはストラップで支えます。木管楽器も両手のフィンガリングで音程を操作するわけですから手で持つことはできません。金管楽器は左手(ホルンは右手)で楽器を下から支えてもう片方の手でバルブやスライドを操作します。が、トランペットだけは左手でナックルを握り、右手にフィンガーフックをかければ「がっちりと持つ」ことができてしまいます。最近でこそほとんど言われなくなりましたが、「フィンガーフックはオクターブキー」とか言ってプレスが過剰になって上唇を傷つけるなんて人も結構いたのではないかと思えます。トランペットを吹く時に両手でがっちり固めて持っちゃうようなやり方は他の楽器と比べてもかなり異常に見えます。

クラークやゴードンなど20世紀の著名な指導者は「楽器を持つのは左手で右手を関与させてはならない」「右手はバルブコントロールに特化すべき」と書いています。翻って、古いコルネットを見ると、フィンガーフックがついていないものが多いです。つまり右手で持つことを想定していないデザインになっていた、と言えます。フィンガーフックがデフォルトになったのがいつ頃からかはわかりませんが、フィンガーフックはプランジャーミュートの操作や演奏しながらのキュー出しのためにつけられたのではないかという気もしてきます。何れにしても、左手で下から支える体制になって上唇に大きな負担がかかりにくい感じになるので、上唇を過剰に拘束しないで演奏することができるはずです。無駄に力を入れて握る必要はなく、楽器を軽く支える感じでホールドすると良いのではないかと思えます。

 

10年前に動画作ってたのでリンク貼っておきます。