楽器は手で持つものではない? | music-geek

楽器は手で持つものではない?

楽器を演奏する時って無駄な力が抜けてることが大切だと考えています。が、トランペットって楽器の形状上「力を入れて握ることが簡単いできる楽器」なのです。金管楽器の中でも特にそういう形になっています。その一方でほとんどの楽器は「持ってない」んですよね。例えば弦楽器。ヴァイオリンであろうがギターであろうがベースであろうが、左手でフレットーワークをして右手で弾くわけですから、「持つ」ことはできません。ヴァイオリンやヴィオラは顎で支え、チェロやコントラバスはピンで支えています。エレクトリックなギターやベースはストラップで支えます。木管楽器も両手のフィンガリングで音程を操作するわけですから手で持つことはできません。金管楽器は左手(ホルンは右手)で楽器を下から支えてもう片方の手でバルブやスライドを操作します。が、トランペットだけは左手でナックルを握り、右手にフィンガーフックをかければ「がっちりと持つ」ことができてしまいます。最近でこそほとんど言われなくなりましたが、「フィンガーフックはオクターブキー」とか言ってプレスが過剰になって上唇を傷つけるなんて人も結構いたのではないかと思えます。トランペットを吹く時に両手でがっちり固めて持っちゃうようなやり方は他の楽器と比べてもかなり異常に見えます。

クラークやゴードンなど20世紀の著名な指導者は「楽器を持つのは左手で右手を関与させてはならない」「右手はバルブコントロールに特化すべき」と書いています。翻って、古いコルネットを見ると、フィンガーフックがついていないものが多いです。つまり右手で持つことを想定していないデザインになっていた、と言えます。フィンガーフックがデフォルトになったのがいつ頃からかはわかりませんが、フィンガーフックはプランジャーミュートの操作や演奏しながらのキュー出しのためにつけられたのではないかという気もしてきます。何れにしても、左手で下から支える体制になって上唇に大きな負担がかかりにくい感じになるので、上唇を過剰に拘束しないで演奏することができるはずです。無駄に力を入れて握る必要はなく、楽器を軽く支える感じでホールドすると良いのではないかと思えます。

 

10年前に動画作ってたのでリンク貼っておきます。