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明日のビッグバンドのライブは生音でやります。

明日は赤坂のjazz dining Bbで自分のビッグバンドのライブをやります。お題目は今年96歳で亡くなった巨匠、ビル.ホルマン。私の仕切るアンサンブルは8年前からギターをアンプで管楽器とバランスさせる以外は全ての楽器を生音で演奏しています。去年のthad jonesプログラムでも試したのですが、今回はベース生音で通すことにしました。前回のブログでメル.ルイスの功績について書きましたが、今回リハーサルをやっていて「スモールコンボと同じようなバランス感覚でセクションをアンサンブルさせることは可能」と気付けたからです。リハーサルの風景を映像でアップしましたが、誤解を恐れずに言うと本家のバランスに近いと感じました。ビッグバンドというと大編成で大音量、なイメージがありますが、音楽ってどんな編成でもピアニシモはピアニシモ、フォルテはフォルテなんですよね。クラシックのオケと同じようにできるはずなんです。ドラムはダイナミクスの司令塔なので、うるさく叩く必要なんてまるでないですし。先週のマリアも生音でやってたみたいですが、これ、普通にできるはずなんです。音量の押し付けではない繊細なアンサンブルを楽しんでもらえたら、と思っています。

レッスン系動画について思うこと。

これ、最近演奏家側からの発信でかなり盛り上がっていますよね。私はそういうのを10年以上前から作っているのですが、作り始めたのには理由があります。10年前くらいだと、ラッパ関係の動画は「ハイノート自慢映像」ばっかりだったんです。私はハイノートは今もそれほど得意ではないのですが、自慢映像ではなく、「どうやって吹いているか」を自分でモニターしながらプレゼンする、というスタイルの映像をいくつか作りました。自慢動画なんかつまらないし、こっちはどうやったらできるかを知りたいんだけどネットにはほとんど無いから自分で作って情報共有したら役に立つかなぁ、と考えたわけです。ちなみに近々もう一つ作るつもりです。ちなみに作る時にはエチュードなどの文献を当たったり、海外の友人(主にアメリカのトッププロ)から聴いた話と文献などに書いていることなどを考察したりしています。


今や誰でも発信できる時代なので玉石混交というか石がやたらと多い状態ですが、だからこそ学び手の人が注意して選ばないといけないと思います。これはオフライン時代からあった問題で、ネットが普及して激増した、と考えています。クラークにしてもゴードンにしてもコステロにしても、本人のちょっとした言葉遣いのアヤで誤解されて拡散してしまうようなことがあったことと大差ないようにも思えます。ことトランペットについて言えば、昭和の時代の日本には「気合いと根性」とか「フィンガーフックはオクターブキー」なんて凄いのもあったわけで、それがネットでせいぜいが自分の経験だけで語るような映像みたいなのに振り替わっただけのこと、とも見えなくはありません。


勉強、スポーツ、ゲームなどなど、凡そ全ての「習い事」というものには

①原則やルールを学び、

②練習して

③上達する

というパターンがあります。自戒を込めて書きますが、ネット動画では①のところがどれだけちゃんとしているかが判然としないものが大半です(これはオフライン時代も同じでした)。トランペットの奏法について言えば、大事なポイントはそんなに沢山あるわけではないので(分厚いエチュードは案外少ない)、アクセス稼ぐためにやたらとアップしてくるものとかはスルーで良いのではないかと思います。


「本当に凄いものはネットに出てこない」


とも言えるわけで、私の映像も含め、ネット動画を盲目的に過信しなければよいのではないかな、と(私としてはこんな考え方をしてるから良かったら参考にしてね、くらいの感じで作っています)。楽器を本気で学びたかったら対面じゃないとダメだし、ネット動画は先生選びの道具くらいに見ておいたらよいのかもしれないですね。


メル.ルイスの功績

メル.ルイスはジャズ史に大きな名前を残したドラマーで、その真価は「ビッグバンドのドラミングにスモールコンボのスタイルを持ち込んだ」ことと言われています。今日のリハーサルでその意味が分かりました。メルの金言で「もし全員の音が聴こえなければそれは君の問題であって君の責任なのだ。もし全員の音が聴こえなければそれはバンドスタンドでも客席でも同じで、それはカーネギーホールでも場末のレストランでも同じ」というのがあります。つまり、管楽器奏者の数が多いだけに過ぎず、スモールバンドとビッグバンドの違いはそれだけでしかない、と。リハーサルでビル.ホルマンがスタン.ケントンに提供したアレンジをさらっていてダイナミクスを譜面の指示通りにしたら本家の録音と同じようなサウンドが得られたんです。全員をよく聴いて譜面の指示に従ってやるとオリジナルに近い質感が得られるんです。カール.サーンダースがよく言ってた"charts speak in itself"ってこういうことか、と。

1955年にベイシーとケントンのダブルビルがあって、そこでサドとメルが意気投合したのが60年代後半にサドメルバンドとして結実したわけですが、その時サドが聴いたのはスモールバンドのドラミングをビッグバンドに持ち込んだメルのドラムとホルマンのアレンジでした。スモールバンドとビッグバンドがシームレスな感覚になることがサドを刺激したことはほぼ疑いなく、サドメルもコンボが巨大化したようなサウンドが魅力でした。カールがビルのことを「モダンビッグバンドの父」と形容したことも納得です。今日得た感覚は恐らくはそれに近いサウンドを実感できたということなのかな、という感じがしています。6日のライブが俄然楽しみになってきました。他のバンドとは明らかに違うビッグバンドの音を作れる気がしています(以前からその自負はあったけど確信になった気がしています)。昨日のリハーサルでリードトランペットを吹きながらiphoneで録画したのがこんな感じです。余計な人為的音量増幅はなくて良いんだ、と確信しました。