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ジョン.ファディスを生で見て驚いたこと

ジョン.ファディス。トランペット史上屈指のハイノートプレイヤーの1人です。今までに何度も見たことがありますし、トリプルハイCを吹いたのも生で見ました。ハイノート吹いてるのが普通なので、それには慣れちゃって感動しないんです。
 
彼のプレイで1番驚いたのはピアニシモの音の小さいことでした。Tokyo TUCで生音で見てたんですが、真ん中のC、つまりチューニングする時のCをめっちゃピアニシモで吹いたのですが、それが本当に小さな音だったんです。ものすごくびっくりしました。ああ、キャット.アンダーソンのsilent Gってそういうことか、と。
これ、マイク通されてたら絶対にわからないんです。あそこまで押さえて吹けるのか、と。
翻って、先週くらいからやってる4TPのコンサートツアーがあるんですが、残念なことにみんなマイク通して吹いてて足元にモニターのコロガシが置いてあるんです。どんなに凄くても、マイクを通されるとどれくらいの音量であれを吹いているのかとか、楽器本来の鳴りの感じが見えなくなるんです。見に行かなくて良かったとさえ思いました。
ブラスアンサンブルとかだったら普通に生音でやるのに、リズム隊を入れたら問答無用で生音でやらないという感覚がよくわかりません。ミュージシャン側からそういう提案しなかったのか、与えられたセッティングに乗って吹いただけなのかよくわかりませんが(それもまたプロ的ではあるとも言える)、なんだか残念なのでした。

ダイナミクスを味方につけよう。

日本の非クラシックの音楽の現場では「ダイナミクス」のことが忘れられているような気がします。なんだかマイクで音を拾ってPAなどで拡大するのが当たり前みたいな雰囲気があるように思えます。電気的な増幅をするとピアニシモのボトムが上がるのでピアニシモができなくなります。ブレイキーもベイシーもダイナミクスの幅は広いんです。サウンドの「迫力」ばかりを追いかけてて、「繊細さ」がお留守になっている気がします。音楽に限らず、日本にある演出って足し算しかないような気がするのです。だから自分の仕切る音楽では「引き」を大事にしています。

ウエストコースジャズの中間派、Dave Pell

日本ではジャズ評論家によって「中間派」なるスタイルが認知されています。つまりはビバップ前のスイングジャズなスタイルをビバップ後も継続して演奏してる人で、その多くはベイシーやエリントンなど有名ビッグバンドのメンバーだったりします。ラッパで言えばバック.クレイトン、ハリー.スゥイーツ.エディソン、ジョー.ニューマン(ここまで全員ベイシーのメンバー)、チャーリー.シェイヴァースあたりでしょうか。中間派とはいうけれど、英語表記はmainstreamすなわちこちらが本流で、1950年代にメジャーレーベルから出てくるジャズの大半はこれでした。ブルーノートやプレスティッジなどはマイナーレーベルですし、マイルスがメジャーのCBSと契約するのが1956年です。日本のジャズ評論家はビバップ以降の流れをメインに追っていたようで、この辺りは軽く扱われますが、それはどうも違うようなのです。

ウエストコーストにはテナーサックス吹きのDave Pellがいました。この人はレス.ブラウンのビッグバンドの花形ソリストとして名を挙げた人ですが、1953年にそのメンバーを軸としたオクテットを立ち上げました。アレンジは当時のトップのアレンジャーを贅沢に使ったもので、当時非常に人気が出たそうなのですが、いわゆるジャズ評論家からはアレンジがヘビーすぎるとか商売に走りすぎなどと叩かれてジャズ扱いされてなかったようなのです。レス.ブラウンというスイングダンスバンド(つまりベイシーやエリントンとは微妙に違う立ち位置で、レス.エルガートみたいなバンドと括られていたのかも)出自なので、いわゆるウエストコーストジャズの紳士録に入ってないんです。だから日本でもほとんど知られていません。知っていたのは瀬川先生とか前田先生など、往時をリアルタイムで知っている人くらいでした。

 

Dave Pellを知ったのは多分2000年頃で、たまたま買ったオクテットのアルバムのトランペッターのドン.ファガークィストが素晴らしく、彼を追いかけていくうちに枚数が増え、当時Daveも健在で自分のHPで譜面を売ってたのでそれを買って演奏するようになっていったのですが、その後しばらくしてジョー.ニューマンのオクテットのアルバムを手に入れました。これも実に良いアルバムで、録音した時代とある.コーンがメンバー兼アレンジャーであったことで、ベイシーライクな音をベースにしながらもウエストの音が聞こえるのです。ペルのオクテットは当時非常に人気があったそうなので、それがニューマンのアルバムのサウンドに反映されているのだろうと長年感じていたのですが、最近別の考え方を始めました。それは「Dave Pellはウエストコーストジャズの中間派」ではないかということです。スイングビッグバンド出身でビバップ前のスタイルでやってる東海岸の中間派と対応しているように見えるんです。

 

今年はDave Pellの生誕100年で、彼のオクテットのアレンジをたくさん提供したMarty Paichも同い年なので生誕100年です。今年はこの二人の音楽だけを演奏するライブというのも何度かやってみようと思います。レコードコンサートを企画して回顧するよりも生音のバンドの方が良いに決まってるのです。まず初回を7月にやるつもりです。