檸檬爆弾 -4ページ目

檸檬爆弾

純国産の英語教育を受けてきた人間が、洋書を読んで思ったことを述べる。
ライトで適当なツッコミ系感想が多い。洋書を快適に読むために必要なスキルは何なのか、自分の体験をもとに探っていく。
備忘録というよりは、すでに忘れたことを思い出しながら記録し直すのが目的。

by John Hart

469ページ


わりと最近、NHKの「週刊ブックレビュー」で翻訳本が紹介されていた。

けっこう有名作品?


13歳の少年Johnnyには、双子の妹がいた。しかし、妹は1年前から行方不明になっている。

誘拐事件として捜査が行われていたが、依然として手がかりはなく、警察ももはや諦めかけている状況。


父親は、車で娘を迎えに行くのを忘れていた自分を責め、現実に耐え切れず蒸発。母親は、精神的に限界まで追い詰められている。

しかも、まだ若くて美しい母親に目をつけたのは、町のちょっとした権力者。これがまた最低な男で、母親が無気力状態なのをいいことに、DVで母子を支配しようとする。


そんな最悪な環境の中、自分で車を運転し、食料を買出し、食事を作り、何もできない母親の世話をしながら生活するJohnny。それでも彼は、過酷な現状を誰にも知られないように細心の注意を払っていた。なぜなら、母親と引き離されて児童福祉施設に入れられると、妹を捜すことができなくなってしまうから。


警察も諦めかけている妹の捜索を、Johnnyは一人でやろうとしていた。

学校をサボり、夜な夜な町を徘徊し、誘拐犯の疑いがある前科者をひとりひとりつけ回す日々。

そんなある日、Johnnyは偶然ひき逃げ事件を目撃し、被害者の最期の言葉を聞く。


"I found her..."

"You found who?"

"The girl that was taken."


被害者の言っていた少女とは、妹に違いない。妹を見つけたから、犯人にひき殺されたのだ。

Johnnyはそう信じて、被害者の手がかりを追うことにするが・・・。



利発な少年が数々の苦難に立ち向かっていくさまや、「ジョニー」という古きよき響きが、どことなくハウス名作劇場を彷彿とさせる。が、とにかく暗いし厳しい! R15くらいになりそうなので、やっぱりハウス名作劇場は無理ですね。


妹がどこかで無事に生きていて、お兄ちゃんと一緒にうちに帰ってほしいなぁ、でも、そんなハッピーエンドにはならないかなぁ、と思いながら最後まで読むと、結末はかなり意外だった。

良い方に意外なのか、悪いほうに意外なのかはさておき、このオチは予想していなかった。

まさかあのヒトがこんなところで関係しているなんてっ!!

犯罪モノはそれほど読まないのでわからないが、よくできた話なのだと思う。



英語はどちらかというと読みにくかった。

犯罪捜査なんかに出てくる専門用語が苦手なので、意味の取れない単語が多かったからか。あとは、物語全体にただよう重苦しい雰囲気に、読書エネルギーを吸い取られていたのかも。

それでもやっぱり続きが気になるので、いっしょうけんめい読んでしまった。途中で止めると、Johnnyがかわいそうなままだし・・・。


面白さ:★★★★☆

英語の読みやすさ:★★☆☆☆~★★★☆☆

いたいけな少年萌え:★★★★★



by Yann Martel

428ページ


自分の中では相当上位にランクインする、超オススメ作品。


インドからカナダへ向かう船が沈み、救命ボートに残された生存者は、16歳の少年Piと、ハイエナ、足の折れたシマウマ、雌のオランウータン、そしてベンガル虎だった・・・。


いわゆる漂流モノなのだが、はじめの3分の1はPi少年の子ども時代がつづられる。

しょっぱなから大冒険を期待して読むと、「あれ?」ということになるので注意。

それと、この話は大人になったPi自身が、作者に自分の体験を語るという形式を取っている。

だから、Piは漂流した後、確実に助かって文明世界に戻っているんですね。

生存前提で話が進む漂流モノは、少し珍しいのかもしれない。


Piは大学で動物学と宗教学のdouble degreeを取得している。

その背景となるエピソードが、Part1の子ども時代編に描かれている。


Piの父親は、インドの東海岸に位置するポンディシェリで動物園を経営していた。

だからPiは、動物たちに囲まれながら子ども時代を過ごすことになる。

父が息子に、動物の本質を教える場面は印象深かった。

子どもの前で、生きた山羊が虎に喰われるさまを見せてから、動物がいかに危険なのかを説いてゆく。

どんなにかわいくても、なついていても、動物は動物だ。

「人間愛情を込めて接していけば、動物も必ず答えてくれる」などという幻想を抱かせないのが目的なのだろう。

この辺の考え方は、上橋菜穂子の「獣の奏者」に通じるものがあると思った。


スポーツと女の子にしか興味がなさそうなフツーの男の子である兄と違って、Piは幼い頃からいろいろな宗教にのめりこむ変わった子だった。

彼は自分が、ヒンズー教徒でキリスト教徒でイスラム教徒だと思っている。

寺院へ行き、教会へ行き、コーランを習うのが、ごく自然なことだった。しかもすごいのは、どの宗教に対しても、敬虔で真摯な態度を貫いている。

宗教の寛容は、それほど信仰心が厚くない人が唱えるものかと思っていたが、こういう寛容さもありなのですね。

しかし、周りの大人たちは当然理解を示さない。

信じる宗教をひとつ選べと迫られ、Piは顔を赤らめながら、

"Bapu Ghandi said, 'All religions are true.' I just want to love God."

と反論する。

ガンジー、いいこと言うぜ。



Part2に入り、ようやくPiの漂流記が始まる。

普通に漂流しただけでも大変だというのに、虎をはじめとする動物達がいっしょのボートに乗り込んでいく。

わずかな食料だけで、いったいどうやって生き延びるというのか?


やや冗長なPart1から一転して、Part2はがんがんページをめくってしまう。

ここはもう、何も言わずにとにかく読もう!という感じ。



そして、最後の数十ページがPart3である。

実は、沈んだ船は日本の貨物船で、安い運賃で人間も運んでいたらしい。

唯一の生存者であるPiに沈没の詳しい経緯を聞こうと、オカモトさんとチバさんが助かったばかりのPiの元を訪れるという場面。



最後まで読み終えたとき、

「わぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」

と叫びたくなった。


叫びにどんな感情をこめるのかは、読者次第?



英語の読みやすさは、易しくもなく難しくもなくといったところ。

舟の部位を示す細かい単語などがわからないと、情景を正確に思い浮かべられないので、その辺は辞書が欲しかった。

でも、テンポよく読み進めたいときに単語調べは億劫だ。

「あ、この単語また出てきたよ・・・。だから何なのさ、一体!?」

という気持ちになったら辞書を引く、くらいがちょうどいい。


ところでこの作品、何年か前に映画化の話が出ていたはずなのだが、どうなったんでしょう?

たしか、「シックスセンス」の監督が作るとかって、平積みになっていた本の帯に書いてあったような・・・。

観たいような気もするし、映画にするとショボくなりそうな気もするし。



面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★★☆☆

読んだ人はネタばれ厳禁度:★★★★★





by Dan Brown

671ページ


有名なRobert Langdonシリーズの最新刊。

パリ、バチカンに続いて、本作はワシントンD.C.が舞台だ。

何だか地味だなという印象を受けるが、Prof. Langdonいわく


"Washington, D.C., has some of the world's finest architecture, art, and symbolism. Why would you go overseas before visiting your own capital?"


だそうで。

確かに、政治の中心地くらいのイメージしかなかったワシントンD.C.が、ちょっと面白そうに思えてきた。

この本の影響で、観光客ちょっとは増えたのかな?


相変わらずLangdonは、何だかよくわからんまますごい事件に引きずり込まれていく。別に望んでもいないのに、これだけ修羅場くぐっている大学教授なんていねーよ(笑)。


余談だが、映画版「天使と悪魔」でトム・ハンクスが演じていたLangdonは、無理やり事件に巻き込まれた感があまりなく、ちょっと偉そうだった。

個人的には、原作の消極的ヒーローっぽいキャラの方が好みだ。


今回は、友人にして師匠(?)であるPeter Solomonに請われ、講演を行うためにD.C.を訪れるところから始まる。

しかし、それは実は罠で、Peterは謎の人物に誘拐されていた。

「Peterを助けたければ、ancient portal(古えの扉みたいな感じ?)を見つけて開けろ」と要求する犯人。


で、何が何だかわからないながらも、一生懸命謎解きを進めるLangdon。

本当に、追い詰められて初めて実力を発揮する人ですね。


物語の鍵を握るのは、フリーメイソンという組織で、Peterもその一員。

この話を読むまで、フリーメイソンなんて名前を聞いたことがあるくらいで何も知らなかったが、ちょっと興味がわいた。

主人公が教授なだけあって、読者に「へぇ~」と思わせながらストーリーが進んでゆく。読後、ウンチクが増えてちょっとお得感がある。


しかし、小説として面白いかというと、ちょっと微妙だった。

まず、プロットが細かすぎて、読んでて疲れる。

ワクワクしてページをめくる手が止められないということがなく、「ふぅ。よし今日はここまで!」みたいな。次は気になるけどめんどくさいというのが正直な感想。(まぁ、英語の読解力が足りていないからなのかもしれないが。日本語で読めばもっと面白かったかな?)


謎解きも、引っ張って引っ張って引っ張って、最後に「え? そんなオチ・・・?」という印象。

犯人は犯人で、えらく崇高な目的があるのかと思いきや、動機はけっこうショボい。


そして何よりもつらいのは、主要登場人物がほとんどアラウンド50もしくはそれ以上ということ!

Langdonはおっさんだし、唯一ヒロイン的ポジションにいるPeterの妹も50代だし、日系っぽい名前の捜査官もおばちゃん(てかばーさん?)だし。

皆それぞれ、何かしらの第一人者なわけだから、普通に考えればそれくらいの年代なのは当然だ。

しかし、アクションエンターテインメント要素の強いフィクションなんだから、どうせならイケメン捜査官とかうら若きセクシー美女とかが登場してもいいんじゃないですか?


おっさんが誘拐されて、おっさんとおばさんが助けに行くって、枯れ専じゃなきゃ萌えません(笑)。



英語自体は、会話文が多いのでまぁまぁ読みやすい。

ただ、人文系(特に歴史)単語に弱いと話がわかりにくいと思う。

ある程度フリーメイソンの知識を入れてから読むと、サクサクいけるかも。


面白さ:★★★☆☆

英語の読みやすさ:★★★☆☆~★★★★☆

紳士熟女の活躍:★★★★★