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檸檬爆弾

純国産の英語教育を受けてきた人間が、洋書を読んで思ったことを述べる。
ライトで適当なツッコミ系感想が多い。洋書を快適に読むために必要なスキルは何なのか、自分の体験をもとに探っていく。
備忘録というよりは、すでに忘れたことを思い出しながら記録し直すのが目的。

by Khaled Hosseini

340ページ


ここ1週間ほど、最近読んだ本の記事をガシガシ更新してきたが、そろそろ「最近」読んだと言える本が減ってきた。「最近」ではなく読んだ本は、ある程度読み返さないとブログに書くほど憶えていない。ヒトの記憶って、何てあてにならないんでしょうねっ!

というわけで、めぼしい物をちょこちょこ読み返している間は、昔mixiにアップしたレビューを使いまわすことにする。


"The Kite Runner"は、「君のためなら千回でも」という邦題で、映画化もされている。

DVDをレンタルしたのに、観る前に返却日が来てしまい、泣く泣く返してしまった思い出の作品。また借りればいい話だが、すでに一度借りている事実があると、なんとなく食指が動かない。何なんだこの心理・・・?


アフガニスタンに生きる2人の少年のお話。
AmirとHassanは、いわゆる乳兄弟のような関係。Amirは裕福な家庭の一人息子、Hassanはその家の召使の息子。さらにHassanはHazaraと呼ばれるシーア派少数民族の子であり、人々の嘲りの対象でもあった。
作品はAmirの一人称で進んでいくけれど、Hassanに対する彼の心の葛藤は、実にリアルだなと感じた。
誰よりも自分を理解してくれる親友なのに、単純に愛することができない。どうしようもない身分の差を作り出した社会のせいでもある。しかし何よりも、AmirはHassanの勇気や清廉さに対して嫉妬や羨望の念を抱かずにはいられない。そしてそんな自分を、どこまでも穢れを知らないHassanと比較し、さらなる悪循環に陥っていく。

子供って(大人も?)そんなとこないですか?

結局2人は、ある事件をきっかけに別々の道を歩むことになる。Hassanは癒しがたい傷を、Amirは許されざる罪の意識を背負ったまま。

作者本人がアフガニスタン出身で、80年代にアメリカへ移住してきたそうなので、おそらくこの作品には、彼の体験談が多分に盛り込んであるのだと思う。
だからなのか、ストーリー自体はものすごくドラマチックなのに、「ああ、こんなことも本当にあったんだろうな」という気にさせられる。

この本を読んで、アフガニスタンの知識は皆無だった、そして恥ずかしながらたいして興味関心を持っていなかった自分でも、Googleで彼らのことを検索する気にさせられた。
こういうヒトがたぶん世界中にたくさんいるはず。
こんな作品がもっともっと増えれば、世界は今よりも平和になるんじゃないですか?

文学が世界を救う!なんて。

マジメに書いてしまったけれど、ひとつだけ突っ込みどころを…。
青年になったAmirが、未来の妻となる女性に一目ぼれしたシーンより。


"...She had thick black eyebrows that touched in the middle like the arched wings of a flying bird, and the gracefully hooked nose of a princess from old Persia..."


おいおい、眉毛つながってんのって美しいの!?
ところ変われば美も変わる?


英語の難易度は普通くらいだが、ストーリーの牽引力があるので、波に乗ってしまえば一気に読める。

英米が舞台でない話が好きなら、かなりおすすめ。


面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★★☆☆~★★★★☆

友情の美しさ:★★★★★

by Ron McLarty

405ページ


洋書ワゴンセールジャケ買いで見つけた掘り出し物。

こういうところで面白い本に出会うと、テンションが上がります。


主人公Smithson Ide(変な名前)、43歳独身、素人童貞、唯一のつながりは家族のみ。そして肥満体。

"I never looked at vegetables, because I didn't eat them anymore, unless it was a potato."

と言い切ってしまう男。イモは野菜に入れていいんですか?


彼には、両親と姉Bethanyがいた。しかし、Bethanyは20年前から行方不明。そして今、Smithsonは交通事故で両親までも失ってしまう。


全てを失った彼は、偶然父に宛てた1通の手紙を見つける。

そこには、Bethanyが最近亡くなったこと、ロサンゼルスの遺体安置所にいることが記されていた。

アルコールまみれのSmithsonは決意する。ガレージに眠っていた古い自転車に乗って、Bethanyを迎えに行くことを。


物語は、現在と過去が交互に描かれる。

過去の話は、Smithsonの子どもの頃から、Bethanyが失踪するまでの様子。


姉Bethanyは、この小説の最重要人物である。

美しくて、優しくて、狂ったBethany。

彼女だけが聞こえる「声」に命じられると、どんなことでもやってしまう。

給水塔の下、裸で何時間も同じポーズを取っていたり、橋から飛び降りたり。

姉がどこかへ行ってしまうたびに、Smithson少年(この頃はやせっぽちだった)は、愛チャリのRaleighに乗って辺りを探し回る。

だから、姉の死を知った今も、東海岸から西海岸までチャリで横断し、Bethanyを迎えに行こうと決意したのだ。

SmithsonのBethanyに対する深い愛情は、本当に切ないくらいで泣ける。


はじめは肥満体だったSmithsonだが、旅が進むにつれて徐々に体重が減っていく。食事も、果物やヘルシーなサンドイッチなどに変わった。特にバナナを食べるシーンがやけにおいしそう。


ぜい肉と共に、長年溜まっていた膿のようなものも落ちていったのだろう。

読後感はさわやかで、前向きな気持ちになれる。



面白いのだが、英語の読解はけっこう大変だった。

過去と現在が入り乱れているし、唐突に全く知らない人物の名前が出てきたりするので、話の流れについていけないことがしばしばある。

しかも、現在のSmithsonの周りにBethanyの亡霊みたいなのが出てきて、普通に会話してるし(笑)。

油断していると、すぐに置いていかれてしまうが、その分、もう一度読み返したいと思わせる作品だった。


面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★☆☆☆~★★★☆☆

ダイエッターにおすすめ度:★★★★★



by Kazuo Ishiguro

282ページ


邦題は「わたしを離さないで」。つい最近映画化されたばかりなので、知っているひとも多いはず。映画観たかったのに、結局タイミングが合わず逃してしまった。早くDVDにならないかな。


有名になってしまったがゆえに、読む前にある程度予備知識が入ってしまうこともあるかもしれない。けれども、本当は何も知らずに読み始めた方が絶対に面白いと思う。

幸い自分は、何となく本を手に取ったというだけだったので、余計な情報を全く入れずに読むことができた。



話は、31歳のKathy H.が、寄宿学校Hailshamで過ごした少女時代を回想するという形で始まる。

緑に囲まれた郊外にひっそりとたたずむ静かな学校。

一見、ごく普通の学園生活を送る子どもたち。

しかしHailshamには、ある秘密が隠されていた・・・。


淡々とした語り口の中にひそむ、そこはかとない不気味さを感じながらの読書は、例えて言うなら「放課後の誰もいない廊下を歩いて、音楽室に向かう」ようなものだろうか? 盛り上げて盛り上げて、後からドーンと真相を明かすというのではなく、常温を保ちつつさりげなく核心に触れるのが逆に怖い。

「え? あんた今サラっととんでもないこと言ったよね!?」みたいな。


そういえば、何年か前に「エコール」というフランス映画があった。

内容は全く異なるのだが、現実感のない綺麗で不気味な学校の雰囲気が、何となくこの作品を彷彿とさせた。



ストーリーについては、あまり余計なことを語るべきではないと思うので、英語の話を。ひとことで言うと、「きちんとした英語」。スラングなどを使用しない、学校で習う教科書的な英語。語り手であるKathyの、温室育ちっぽい雰囲気がよく出ている。邦訳は「ですます調」になっていたが、確かにそんな感じだ。


試験には間違っても出てこないお下品な単語やマニアックな単語がないので、洋書をあまり読んだことがなくてもとっつきやすい文章ではある。

ただ、アップダウンの少ない話は、流れに乗りにくい分根性がないときついかもしれない。起承転結のはっきりしたテンポのよい話だと、細かい単語がわからなくてもどんどん読み進めてしまえるのだが、イシグロ作品はじっくりかみしめるように読まざるをえない。

そういう意味では、ちょっとハードルが高いのではないかと思う。


洋書を読む上で、流れというか、ノリというか、そういうのってけっこう大事だ。

洋書デビューしたばかりの頃、四苦八苦しながら「外国語を読んでいた」のが、あるときお話に夢中になるあまり外国語であることを忘れてしまう瞬間があった。

母国語の小説を読んでいる感覚とはまた一味違う、「洋書ハイ」みたいな状態、けっこう快感なのです。



面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★★☆☆~★★★★☆

なんとなく涼しくなるので夏の夜にオススメ度:★★★★★