Life of Pi | 檸檬爆弾

檸檬爆弾

純国産の英語教育を受けてきた人間が、洋書を読んで思ったことを述べる。
ライトで適当なツッコミ系感想が多い。洋書を快適に読むために必要なスキルは何なのか、自分の体験をもとに探っていく。
備忘録というよりは、すでに忘れたことを思い出しながら記録し直すのが目的。

by Yann Martel

428ページ


自分の中では相当上位にランクインする、超オススメ作品。


インドからカナダへ向かう船が沈み、救命ボートに残された生存者は、16歳の少年Piと、ハイエナ、足の折れたシマウマ、雌のオランウータン、そしてベンガル虎だった・・・。


いわゆる漂流モノなのだが、はじめの3分の1はPi少年の子ども時代がつづられる。

しょっぱなから大冒険を期待して読むと、「あれ?」ということになるので注意。

それと、この話は大人になったPi自身が、作者に自分の体験を語るという形式を取っている。

だから、Piは漂流した後、確実に助かって文明世界に戻っているんですね。

生存前提で話が進む漂流モノは、少し珍しいのかもしれない。


Piは大学で動物学と宗教学のdouble degreeを取得している。

その背景となるエピソードが、Part1の子ども時代編に描かれている。


Piの父親は、インドの東海岸に位置するポンディシェリで動物園を経営していた。

だからPiは、動物たちに囲まれながら子ども時代を過ごすことになる。

父が息子に、動物の本質を教える場面は印象深かった。

子どもの前で、生きた山羊が虎に喰われるさまを見せてから、動物がいかに危険なのかを説いてゆく。

どんなにかわいくても、なついていても、動物は動物だ。

「人間愛情を込めて接していけば、動物も必ず答えてくれる」などという幻想を抱かせないのが目的なのだろう。

この辺の考え方は、上橋菜穂子の「獣の奏者」に通じるものがあると思った。


スポーツと女の子にしか興味がなさそうなフツーの男の子である兄と違って、Piは幼い頃からいろいろな宗教にのめりこむ変わった子だった。

彼は自分が、ヒンズー教徒でキリスト教徒でイスラム教徒だと思っている。

寺院へ行き、教会へ行き、コーランを習うのが、ごく自然なことだった。しかもすごいのは、どの宗教に対しても、敬虔で真摯な態度を貫いている。

宗教の寛容は、それほど信仰心が厚くない人が唱えるものかと思っていたが、こういう寛容さもありなのですね。

しかし、周りの大人たちは当然理解を示さない。

信じる宗教をひとつ選べと迫られ、Piは顔を赤らめながら、

"Bapu Ghandi said, 'All religions are true.' I just want to love God."

と反論する。

ガンジー、いいこと言うぜ。



Part2に入り、ようやくPiの漂流記が始まる。

普通に漂流しただけでも大変だというのに、虎をはじめとする動物達がいっしょのボートに乗り込んでいく。

わずかな食料だけで、いったいどうやって生き延びるというのか?


やや冗長なPart1から一転して、Part2はがんがんページをめくってしまう。

ここはもう、何も言わずにとにかく読もう!という感じ。



そして、最後の数十ページがPart3である。

実は、沈んだ船は日本の貨物船で、安い運賃で人間も運んでいたらしい。

唯一の生存者であるPiに沈没の詳しい経緯を聞こうと、オカモトさんとチバさんが助かったばかりのPiの元を訪れるという場面。



最後まで読み終えたとき、

「わぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」

と叫びたくなった。


叫びにどんな感情をこめるのかは、読者次第?



英語の読みやすさは、易しくもなく難しくもなくといったところ。

舟の部位を示す細かい単語などがわからないと、情景を正確に思い浮かべられないので、その辺は辞書が欲しかった。

でも、テンポよく読み進めたいときに単語調べは億劫だ。

「あ、この単語また出てきたよ・・・。だから何なのさ、一体!?」

という気持ちになったら辞書を引く、くらいがちょうどいい。


ところでこの作品、何年か前に映画化の話が出ていたはずなのだが、どうなったんでしょう?

たしか、「シックスセンス」の監督が作るとかって、平積みになっていた本の帯に書いてあったような・・・。

観たいような気もするし、映画にするとショボくなりそうな気もするし。



面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★★☆☆

読んだ人はネタばれ厳禁度:★★★★★