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檸檬爆弾

純国産の英語教育を受けてきた人間が、洋書を読んで思ったことを述べる。
ライトで適当なツッコミ系感想が多い。洋書を快適に読むために必要なスキルは何なのか、自分の体験をもとに探っていく。
備忘録というよりは、すでに忘れたことを思い出しながら記録し直すのが目的。

by Elizabeth Kostova

561ページ


同じ作者の"Historian"は日本でもけっこう売られていたが、そっちは途中で放ってしまった。

面白くなかったというよりは、タイミング悪くもっと読みたい本を手に入れたか何かだと思うのだけど。


この"Swan Thieves"は、最後まで楽しく読ませていただきました。


精神科医の主人公Marlowの元に、美術館の絵に刃物で切りつけようとした男Robert Oliverが患者としてやってくる。

しかし、Oliverは何も語ろうとせず、ひたすら同じ女の絵を描き続けるばかり。


ただの患者だった男に、Marlowはだんだん個人的な興味を抱き始める(性的な意味じゃないですよもちろん)。

Oliverが器物破損未遂事件を起こした美術館の絵を見に行ったり、有給まで取ってOliverの元妻に詳しい話を聞きに行ったりと、医者の領分を越えた行動に走り出す。


Oliverがひたすら描く女性はいったい誰なのか?

なぜ美術館の絵に切りつけようとしたのか?

謎を解く鍵は、Oliverが持っていた古いフランス語の手紙の束にある!


といった謎解き要素と並行して、Oliverという男自身の内面を周りの人間がMarlowに語ってゆく部分がまたドラマチック。

Oliverは才能のある絵描きで、決して悪人ではないのだが、芸術家にありがちな困ったちゃん的性質を持ち合わせている。

男くさくて魅力的なので女子にもてるが、実際につき合うのはかなり大変、みたいな。

「そうそう、こういう男っているよね~」「ちょっとこれはあり得ないわ~」といった視点で読めるので、どちらかというと女性向けなのかもしれない。


けっこう長い話だし、ペーパーバックは文字が小さいので、読み終わるまでにけっこう時間がかかった。

1ページに小さい文字がぎゅうぎゅう詰めだと、それだけでハードルが上がってしまう。


とはいっても、基本的に一人称形式で進んでいくので、英語は読みやすい方だと思う。

そう、今気づいたが、一人称って読みやすいのだ。

ひとりの人間の目で見たことや考えたことしか書かれないので、情景描写にせよ心理描写にせよ、大きく飛躍することがないからだろう。


平易な洋書を探すときには、単語数なんかよりも人称を気にしてみるとよいかもしれない。


面白さ:★★★★★

英語の読みやすさ:★★★★☆

才能あるダメンズに酔いしれる度:★★★★★








by Paul Auster

308ページ


オースターの新作(2010年)。


28歳のMilesは、高校生のときに血のつながらない兄を事故で亡くす。

二人で口論をしていて、カッとなり思わず兄を突き飛ばしたところにタイミング悪く車がやってきた、という運の悪い展開。

自責の念にかられたMilesは、大学を中退だか休学だかして、両親のいるニューヨークから逃げ出してしまう。

しかし、ひょんなこと(女関係)からニューヨークへ戻ることになり、友人の誘いでSunset Parkというさえない地域にある空き家で、無断シェアリングを始める。

なんだかんだで両親と再会し、和解に至る。

無断シェアリングは、結局市にばれて追い出される。


物語の中で起きた主要な事件は、大体こんなもん。

大筋だけ書くと、たいしてドラマチックでもなんでもない。


面白さは9割がた、個々のキャラの濃さでもっている。

主要登場人物は、


主人公

主人公実父

主人公実母(離婚済み)

主人公継母


恋人(未成年)


同居人の男友達

同居人の女1

同居人の女2


セクションごとに、ひとりの人物に焦点を当てて話が進んでいくのだが、細かすぎる変なエピソードが盛りだくさんなので、読んでいて飽きない。

こんなに変なことばかり考えられる作者は本当にすごい。

しかしそういえば、オースターが実話を集めて編集した"True Tales of American Life"というのがあった。

実際の世界にも変な人や変な出来事はわんさか存在するということか。

要は、変なモノ発掘が上手だということ?


総評↓

読んでいるときは楽しいけれど、読み終えたときに「これで終わるんかい!?」とつっこみたくなる本。

最近のオースター作品って、こういうのが多いような気がする・・・。

"Man in the Dark"とか"Invisible"とか。


ところで、オースター作品の英語はおおかた読みやすく、この作品も例外ではなかった。

どうして読みやすいのか改めて考えてみると、難しい単語をほとんど使っていないからだ。

単語だけ見ると、大学受験レベルでカバーできてしまう。

とはいっても、自分現役の受験生だった頃に読めたかというと、そんなことはない。


結局、読める読めないの境界線は何で決まるのだろうか?

そこのところ、どうにかしてはっきりさせていこうと思う。いつか・・・。


面白さ:★★★★☆

英語の読みやすさ:★★★★★

「本筋そっちのけでサブクエストに熱中してしまうゲーム」っぽさ:★★★★★



by Jonathan Safran Foer

326ページ


たまたまやっていた洋書ワゴンセールにて、500円で購入。


9.11のテロ事件で父親を亡くした、9歳の少年が主人公の話。

少年視点の語り口なので、全体的に平易な文章だった。

さらに、写真や図などがふんだんに盛り込まれているのもとっつきやすかった。

とはいえ、内容は決して児童文学ではない。少なくとも9歳の子どもが読むものではない。



主人公のOscarは、9歳にしてはとんでもなく行動力がある。

基本的には良い子なんだけど、何というかいろいろ難しい性格。

賢すぎて、クラスのお友達や理解のない大人とはなかなかうまくやっていけない系?

"Toothpaste"(どんな由来だよ)とかいう友達がいるらしいが、基本的に同年代の子どもは本筋に絡まない。


Oscarは父親の死後、偶然壊したつぼの中から、封筒に入った鍵を見つける。

封筒には、赤い文字で"Black"と書いてある。

そして、彼はBlackという赤い文字だけを頼りに、ニューヨーク中の鍵穴から正解を見つけ出そうとする。


はじめは文房具屋さんで、色のエキスパート(?)である店員のお姉さんにアドバイスを仰ぐ。

すると、Blackは色ではなく名字なのではないかと指摘される。


そこでOscarは、電話帳に載っているニューヨーク中のBlackさんをアルファベット順に訪ねて、鍵のことを聞いて回ることを決意する。


おかしなウンチクをたくさん知っていたり、ぶっとんだ想像力を働かせたりする一方で、目的に達する手段は全く効率的ではない。

効率的でない方法を取ることで、できるだけ長く生前の父親とつながっていたいと願うところが泣かせる。

あまり感情の起伏が表に出た描写はないが、ユーモアの中に織り込まれたペーソスがピリッと効いている。



Oscar視点の話の流れとは別に、断章的に祖父母の語りが入る。

手紙形式で書かれるのだが、最初は全く話が読めずけっこう戸惑う。

読み進めていくうちに、祖父母がドイツ人で、第二次大戦中に空爆で家族を失い、アメリカに亡命してきたということが判明する。

語り手がどこの誰なのかわかってからは、わりとスムーズに理解できた。


Oscarの話にせよ祖父母の話にせよ、テロや戦争で肉親を失う悲劇が背景になっている。

そして、本人達はそのような逆境に負けず前向きに生きている、というわけでは決してなく、いつまでもいつまでも癒えない傷を抱え続けている。

そんな絶望的な状況を描いているのに、全体としては軽妙でユーモア溢れる小説に仕上がっているのがとても上手だと思った。


あと、1単語で1ページ使ったり、語り手の混乱っぷりを表すために徐々に文字幅を狭めていったりと、本自体にも仕掛けがたくさん施されているのが、ページをめくる原動力になった。


しかし、だんだん文字幅が狭くなり、1ページに詰め込まれた文字数が多くなっていく本なんて初めて読んだ。

普通に読んでいても全然気づかず、「なんかえらい目がチカチカするなー」と思っていたら、最後にはページが真っ黒になってしまった(笑)。

次章に入って仕様が元に戻ったときに、なんて目に優しい本なのかと感動した。



英語の読みやすさ:★★★★☆

話の面白さ:★★★★☆

本そのものの面白さ:★★★★★