by Jonathan Safran Foer
326ページ
たまたまやっていた洋書ワゴンセールにて、500円で購入。
9.11のテロ事件で父親を亡くした、9歳の少年が主人公の話。
少年視点の語り口なので、全体的に平易な文章だった。
さらに、写真や図などがふんだんに盛り込まれているのもとっつきやすかった。
とはいえ、内容は決して児童文学ではない。少なくとも9歳の子どもが読むものではない。
主人公のOscarは、9歳にしてはとんでもなく行動力がある。
基本的には良い子なんだけど、何というかいろいろ難しい性格。
賢すぎて、クラスのお友達や理解のない大人とはなかなかうまくやっていけない系?
"Toothpaste"(どんな由来だよ)とかいう友達がいるらしいが、基本的に同年代の子どもは本筋に絡まない。
Oscarは父親の死後、偶然壊したつぼの中から、封筒に入った鍵を見つける。
封筒には、赤い文字で"Black"と書いてある。
そして、彼はBlackという赤い文字だけを頼りに、ニューヨーク中の鍵穴から正解を見つけ出そうとする。
はじめは文房具屋さんで、色のエキスパート(?)である店員のお姉さんにアドバイスを仰ぐ。
すると、Blackは色ではなく名字なのではないかと指摘される。
そこでOscarは、電話帳に載っているニューヨーク中のBlackさんをアルファベット順に訪ねて、鍵のことを聞いて回ることを決意する。
おかしなウンチクをたくさん知っていたり、ぶっとんだ想像力を働かせたりする一方で、目的に達する手段は全く効率的ではない。
効率的でない方法を取ることで、できるだけ長く生前の父親とつながっていたいと願うところが泣かせる。
あまり感情の起伏が表に出た描写はないが、ユーモアの中に織り込まれたペーソスがピリッと効いている。
Oscar視点の話の流れとは別に、断章的に祖父母の語りが入る。
手紙形式で書かれるのだが、最初は全く話が読めずけっこう戸惑う。
読み進めていくうちに、祖父母がドイツ人で、第二次大戦中に空爆で家族を失い、アメリカに亡命してきたということが判明する。
語り手がどこの誰なのかわかってからは、わりとスムーズに理解できた。
Oscarの話にせよ祖父母の話にせよ、テロや戦争で肉親を失う悲劇が背景になっている。
そして、本人達はそのような逆境に負けず前向きに生きている、というわけでは決してなく、いつまでもいつまでも癒えない傷を抱え続けている。
そんな絶望的な状況を描いているのに、全体としては軽妙でユーモア溢れる小説に仕上がっているのがとても上手だと思った。
あと、1単語で1ページ使ったり、語り手の混乱っぷりを表すために徐々に文字幅を狭めていったりと、本自体にも仕掛けがたくさん施されているのが、ページをめくる原動力になった。
しかし、だんだん文字幅が狭くなり、1ページに詰め込まれた文字数が多くなっていく本なんて初めて読んだ。
普通に読んでいても全然気づかず、「なんかえらい目がチカチカするなー」と思っていたら、最後にはページが真っ黒になってしまった(笑)。
次章に入って仕様が元に戻ったときに、なんて目に優しい本なのかと感動した。
英語の読みやすさ:★★★★☆
話の面白さ:★★★★☆
本そのものの面白さ:★★★★★