これは今から43年前

私の姉が高校生の時に経験したお話です。

 

 

当時仲が良かった友達から

「パン工場のバイト一緒にやってみない?」

「パンに砂糖を塗るだけでいいんだって」

と誘われた姉。

 

 

単純な姉は

「やる!面白そう!」

「それにパンに砂糖塗るだけでお金貰えるなんてラッキー!」と即OK。

 

 

バイト初日

「行ってきま~す!」と張り切って出かけたのに

帰宅した姉は真っ青な顔をして

玄関に倒れこんでしまったので

 

「どうしたの!?」と聞いたところ

「バイトもう辞める・・・・」

と言うんです。

 

 

「根性持ちの姉なのにあせる」と

ビックリしてしまったのですが

そんな姉の口からとんでもない話を聞かされることに。

 

 

 

 

姉たちの仕事はベルトコンベアから次々に流れてくるパンの表面に

ハケでアイシング(ペースト状の砂糖)を塗る・・・というものだったそうですが

楽しかったのは最初の30分ぐらいだけ。

 

ずっと同じ場所に立ち続け

すっと同じ姿勢で

凄い速さで流れてくるパンに

ずっとずっと砂糖を塗っている内に

目がグルグルと回ってきてしまい

しかも足や肩はパンパン!

 

その内に吐き気までしてきて

もう最悪の状態になってしまったんだとか。

 

 

 

 

そして眩暈を起こした姉が

ふらついてベルトコンベアに手をついてしまったはずみで

パンがひとつ床に落ちてしまったと言います。

 

 

仕事中、パンになにか問題があった場合は

足元に置いてあるアルミ缶(ゴミ箱)の中に捨てる・・・

というマニュアルだったので

姉は床に落ちたパンを拾ってアルミ缶の中に入れたら

その瞬間、姉の隣で作業をしていた

ベテランのパート主婦が

 

「ちょっとアンタ何やってんのよ!」

 

と姉を怒鳴ったかと思うと

アルミ缶の中から姉が捨てたパンを拾い上げ

手でパンの表面をサッサッとはらって

 

「そんな事ぐらいでいちいち捨ててたらたまったもんじゃないわよ!」

 

と言ってベルトコンベアに戻し

何事もなかったように砂糖を塗って

そのまま流したというんです。

 

その間わずか5秒ぐらいのことだったそうです。

 

きっと長い間そういう事をずっとしてきたんでしょうね。

 

 

それを見た姉はあまりのショックで

「すみません・・・眩暈がひどいので帰らせてください」

といって帰ってきた・・・ということ。

 

 

それ以来、姉も私も

その会社のパンは一切食べていませんパー

 

 

 

この話、

今からもう半世紀近く前の事だったから

何事もなく済んでいたんでしょうけど

もし今だったら間違いなく誰かに

「〇〇会社のパン食べたらダメ!ゼッタイ!」

って呟かれているはず。