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今まで生きてきた57年間の中で
あんなに泣いたことはなかったと思います。
それは私の息子ボノ（仮名）が幼稚園児だった時のことです。
ある日突然、幼稚園から電話が入りました。
電話をかけてきたのは息子の担任の先生。
実は今日ボノくんがY君とケンカをしてしまいまして。
え！？
Y君のことを叩いてしまったんです。
ええ！？ウチのボノがですか！？
はい、そうなんです。
Y君は「自分は何もしてないのにボノくんにいきなり叩かれた」と言っているですけど
ボノくんに聞いても何も話してくれないんです。
それで、Yくんのお母さんにも連絡をしたんですが
お母さんが怒ってしまって「謝ってもらわないと納得できない」っておっしゃるんです。
先生。その話がもし本当ならもちろんYくんとお母さんにお詫びします。
でも私はボノが何の理由もなくお友達に暴力を振るうような子だとは思っていません。
お母さん、それは私も園長先生も十分わかっています。
ボノくんがお友達に乱暴なことをしたなんて今まで一度もないですし
逆に誰かがケンカをしているのを見ると
「お願いだからやめて」って泣きながら止めに入る子ですから。
それで申し訳ないんですがボノくんがお家に帰ってきたら
お母さんからも何があったのか聞いてみて頂けませんか？
ええ、もちろんです。
もし何か分かりましたら園の方にすぐ連絡させて頂くということでよろしいですか？
はい、よろしくお願いします。
お迎えの時間になったので近所に公園までお迎えに。
幼稚園バスのドアが開くと
うつむき加減で元気なく降りてくる息子。
「お帰り～」といつも通りに元気に声をかけてみましたが
息子は黙ってうつむいたままです。
「じゃお家に帰ろうか！」と息子の手を握って帰宅したのでした。
ボノくん、
今日Yくんのこと叩いちゃったってホント？
黙ったままコクリとうなずく息子。
どうしてYくんのこと叩いちゃったのかな？
お母さん絶対に怒らないから教えて欲しいんだ。
息子は何も言わずうつむいたままです。
お母さんはYくんと何かあったんじゃないかと思うんだけど違う？
ボノくんはケンカ嫌いでしょ？
お友達がケンカしてるのを見るのも嫌いだよね？
なのに何も理由がなくてお友達のことを叩くわけないと思うの。
だから何があったのかお母さんには教えて？
でも息子は私の言葉をうつむきながら聞いているだけで
やはり一言もしゃべってくれません。
「ここまで言わないという事は相当な理由があったはず」と思った私は
もう息子を問い詰めるのはやめました。
「もし言いたくなったらお母さんにそっと教えてね。
じゃ、おやつ食べようか！」
そういって一旦その話を中断したのでした。
ところが、その直後
ママ友Wさんからかかってきた電話で
なぜ息子がYくんを叩いたのか
なぜ本当の事を誰にも何も言わなかったのか
その全てを知ることとなるのです。
アキさん！
もしかして今日園から電話かかってきませんでした！？
ええ！かかってきました！〇〇先生から！
やっぱり！
先生何て言ってました！？
ウチのボノがYくんのことを叩いてしまったって
で、Yくんのお母さんが謝りに来いって怒ってるって
Yくんのお母さん、そんな事言ってるの！？
酷い！絶対に許せないわ！
どうしたの！？
さっき娘が幼稚園から帰ってきたんだけど
ボノくんとYくんがもめてるところをずっと見てたって言うのよ！
ホントっ！？
で、何だって！？
あのね、ちょっと言いにくいんだけど実は・・・
そう言ってママ友Wさんは子供から聞いたことを全部話してくれました。
Yくん：お前のお母さんって何であんなにデブなの？
ボノ：(無言)
Yくん：お前のお母さんブタだからだろ？
ボノ：違うよっ！
Yくん：だってブタじゃん！
ボノ：お母さんはブタじゃない！
Yくん：あんなデブは人間じゃないよ！ブタに決まってる！
ボノ：お母さんは人間だよ！ブタって言うのやめて！
Yくん：絶対ブタだよ！ブタ！ブタ！お前もブタの子供のくせに！
ブタの親子はもう幼稚園に来るな！
そう言いながらYくんがボノの頭を思い切り叩いたところ
ボノが「僕のお母さんをブタって言うな！」と言いながら叩き返した・・・・
というのが事の真相だったと知りました。
その当時、体重が110キロあった私。
自分が太っていることは十分過ぎるほど分かっていましたが
まさかそのせいで息子がそんな風にイジメられていて
そんなに嫌な思いをさせられていたとは夢にも思っていなかった私は
あまりのショックでしばらくの間口を開くことができませんでした。
何が「絶対に怒らないから教えて欲しい」だよ。
何が「理由もなくてお友達を叩くわけないと思う」だよ。
全部自分のせいだったのに。
ボノがこんな目に遭ったんじゃないの。
先生達にそのことを知られてしまうだけじゃなくて
私にも知られてしまうと思ったんじゃん。
だからどんなに聞いても何も言わなかったんじゃん。
たった4歳の子供が自分の名誉を犠牲にしてでも
母親の名誉を守ろうとしたなんて・・・
ごめんねボノ
こんなお母さんで本当にごめん。
この時ばかりは目が潰れてしまうのではないかと思うくらい号泣してしまったのでした。
でも聞いて、アキさん。
アキさんあまり知らなかったと思うけど。
私全然知らなかった・・・
お友達の悪口とかも絶対言わないからでしょ？
言われてみれば確かにそうかも・・・
Yくんが問題児だっていう事はウチの組だけじゃなくて他の組の先生も知ってるし
園長先生もご存じで、Yくんママいつも園から呼び出しされてるの。
でも先生が注意をしようとすると、その前に
「先生！私すごく悩んでるんです！ウチのYって大人し過ぎるし優し過ぎるので
もしかして幼稚園で誰かにイジメられてるんじゃないかってもう心配で心配で」
って言いながらワーワー泣いて先生に何も言わせなくして逃げるんですって。
でも今回のことはあまりに酷過ぎる！
こんなこともう絶対に許しちゃいけないと思って！
それでアキさんに全部お話することにしたの。
そうだったんだ・・・
でね、私今から娘連れて幼稚園に行ってこようと思うの！
娘に自分が見たことを先生にも話して貰うから！
で、先生に「アキさんとYくんママを呼んでください」って言うつもり！
だからすぐに出られるように用意しておいて。
分かった！ありがとう！
そこではらわたが煮えくり返るような新たな事実を知ることとなったのでした。
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