傘泥棒
産まれてこのかた
いくつもの雨を見た
そのいくつかは激しく叩きつけた
そのいくつかは切なく静かだった
雨は容赦なく降り注ぐ
槍のような雨も
絹糸のような雨も
産まれてこのかた
確かな愛情に飢えていた
そんな渇きの中で
希望は薄汚れて
雨が流してくれる
いろんな涙も全て
向かい風が生活を蹂躙し
起き上がれない程の絶望さえも
いったい傘はどこへ行ったのか
誰かの安らぎに吐く息も白く
まっさらになっていくのか
誰かのこころに染みた傘を掲げて
惑星
今夜も星を見上げることなく
ただ地面を見て
惑い歩くこころがある
足元もおぼつかない
遠い夢の
最終地点すら選べずに
あなたは少し振り向いて
そっと微笑む
大丈夫だ
大丈夫だこのまま進め
今夜の空に希望は見えない
たどたどしい言葉を反芻しながら
夜道は続く
日付だけ変わり
何も変わらないまま
生活は続く
産まれた
多分母は
僕が産まれるまで
いろいろ苦労もあったろう
産まれた後も
僕のことで
いろいろ苦心しただろう
産まれるその時に
涙も流しただろう
その傍らには父がいて
日焼けした手で母を慰めただろう
今更ながら言うよ
父よ母よ
ありがとう
木漏れ日
水晶の海に 青い陽は輝き
爪先をそっと 泳がせていた
思い出を オカリナの音に変えて
目を閉じそっと 吹いていた
風は前髪を さらりと揺らすよ
音色はどこまでも たおやかで
幼かった日々の 木漏れ陽のように
ただ静かに眠らせた あの日々の
花びらのように 飛んでいく