雨降る土地にうたが生きる -8ページ目

傘泥棒


産まれてこのかた
いくつもの雨を見た
そのいくつかは激しく叩きつけた
そのいくつかは切なく静かだった

雨は容赦なく降り注ぐ
槍のような雨も
絹糸のような雨も

産まれてこのかた
確かな愛情に飢えていた
そんな渇きの中で
希望は薄汚れて

雨が流してくれる
いろんな涙も全て
向かい風が生活を蹂躙し
起き上がれない程の絶望さえも

いったい傘はどこへ行ったのか
誰かの安らぎに吐く息も白く
まっさらになっていくのか
誰かのこころに染みた傘を掲げて

惑星


今夜も星を見上げることなく
ただ地面を見て
惑い歩くこころがある
足元もおぼつかない

遠い夢の
最終地点すら選べずに

あなたは少し振り向いて
そっと微笑む
大丈夫だ
大丈夫だこのまま進め

今夜の空に希望は見えない
たどたどしい言葉を反芻しながら
夜道は続く

日付だけ変わり
何も変わらないまま
生活は続く

恋情


忘れられない恋がある
胸を痛めた日々がある

君はあまりにも遠く
月の方が大きく夜空に輝く

忘れられない恋を抱き
胸を痛めたまま眠る

465m


君を見ていたんだ
どこまでも透明な空
宇宙と世界の神秘

いつまでも
僕の誕生日は忘れない
僕が死んだ日は覚えていてくれ

秒速で測れる愛

産まれた


多分母は
僕が産まれるまで
いろいろ苦労もあったろう

産まれた後も
僕のことで
いろいろ苦心しただろう

産まれるその時に
涙も流しただろう

その傍らには父がいて
日焼けした手で母を慰めただろう


今更ながら言うよ
父よ母よ
ありがとう

木漏れ日


水晶の海に 青い陽は輝き
爪先をそっと 泳がせていた
思い出を オカリナの音に変えて
目を閉じそっと 吹いていた
風は前髪を さらりと揺らすよ

音色はどこまでも たおやかで
幼かった日々の 木漏れ陽のように
ただ静かに眠らせた あの日々の
花びらのように 飛んでいく 

6月に祝日を

自転車について

NEWS

また死体が発見された
どこかの山奥と
どこかの入り江で
それらはみな
ほとんど
腐っている

彼らや彼女らは
まるで電車が運行するように
まるで人為的に当たり前に
手慣れた調子で処理されている

天国か地獄があったとしても
それでも今まさに
人は死に
人は産まれ続ける

留まることのない
時の流れと
風化と共に

内腿


あたしが死んでも
体がバラバラになっても
あなたはあたしだってわかるでしょう?
あたしの内ももにある大きな黒いアザ
あなただったらわかるでしょう

彼女はそう言いながら煙草をふかす
行為の後の気だるさの中で俺はそれを聞く

そうだなおまえだってことはわかるだろうな
そう俺が言うと
彼女は悪戯そうに微笑む