雨降る土地にうたが生きる -18ページ目

爆弾


爆弾が雨あられ
ばちばちと降ってくる
そこらで誰かが泣いてる
それはもしかしたら
俺かもしれなかった

それはもしかしたら
俺かもしれなかった

爆弾が雨あられ
ドカドカと落ちてくる
そこらで誰かが死んでる
それはもしかしたら
俺かもしれなかった

フルートの音色


音楽室には
奇妙な外国人の肖像画
音楽家だという
みんな二重あごで
まるで権威の象徴のようだ

脱水症状で音楽室から
保健室まで運ばれたあなたは
まるで今にも折れて壊れてしまいそうだった
そんなあなたをいつも気にしていた

でも大事な言葉が
言うべき言葉が見つからず
あなたはどこかへ転校してしまった


大学であなたの姿を見つけた
あなたは背筋を伸ばし学内を涼しげに歩く
そっと追いかけて行くとそこは
ゼミの行われる小さな部屋だった

ドアの隙間からあなたを見ている

横笛にそっと唇をあてて
あなたは風のように音を奏でる
それは本当の風のように
木々を揺らし
花弁を散らした
素敵な音色が
あなたの生き方を語っているように
聴こえた

ポピポポ


今朝も眠りが浅いせいか
悪戯にしか聴こえない目覚まし時計を止める
瞼の半分も開かず
ただまぶしい朝日に眩暈しながら

デスクワークを少し遅めに終わらせ
ご褒美のようにビールを飲み干す
明日は休み のんびりできる

朝早くまた聴こえてくる
ポピポポ ポピピポポ ピピポポ
こいつには休日がないのか
頭痛の中目覚まし時計を放り投げる

ポピポポ ポピピポポ ピピポポ
ポピポポ ポピピポポ ピピポポ
いいかげんにしてくれ

目を覚まし目覚まし機能をオフにする
律儀なリズムで時は刻まれる
頭から布団をかぶって寝る


翌日会社に遅刻して
あいつを投げ飛ばしたことを
少しだけ反省した

鏡の中に映る自分


ある日
自分の声をカセットテープに録音して
聴いてみた
まるで他人のようで気持悪かった

ある日
自分が映っているビデオ画像を見た
まるで醜く
これが僕なのかと思うとがっかりした

ある日
鏡を見ながら髭を剃っていた
何かの加減で皮膚を切り血が流れ落ちる
鏡に映った血を
僕はただ見つめ
これこそ僕なのだと悟った

鏡の中に映る自分


あなたとふたりで鏡の前に立つ
左右逆のわたしと
左右逆のあなた
右のほくろが左に見えて
右の薬指の指輪が
結婚指輪のように見える
ただそれは鏡の中の物語
正反対の美しい姿

電車の中の風景


隣の車両が少し揺れていて
線路の繋ぎ目でがたんと音がする
向かいに座っている身なりの良い老人は
杖を両手で支えにしてうつろうつろ

騒ぐ子供をたしなめる母親
大きなバッグを持ったスーツ姿の男性
携帯でメールに夢中な若者
DSに夢中な子供

冷たい雨の中を
ひたすら電車は走る
窓に当てた手の平
その冷たさの向こうで
街はひたすら濡れている

街は冷たくただ濡れている

恋愛


雨の日にスニーカーの中まで
濡れたままで
傘もなく立ち尽くす
約束の公園で

君が来ることはない
それが事実なんだ

いつも君の背中を見ていた
君の笑い声を聞いていた
もう遠くへ行ってしまう君よ
二度と会えないかもしれない

 こころが熱くなって
 夜もなかなか眠れず
 手紙を何度も失敗しながら一生懸命書いて
 君の郵便箱に入れた


雨の日の公園は
人の姿もなく静かで
雨の音だけが聴こえる

雨が降る音だけが聴こえる

きのこの山


誰も知らない場所から捕ってきた
とじじいは言う
これは坊主が舞い踊るような貴重なきのこ
天然の舞茸

じじいは今際の際で
あの場所を教えるという
山の岩場近く
苔の生えている裏側

わたしはそこへ行ってみた
しかしそこにはきのこどころか何も生えていない
じじいは嘘を言ったのか
じじいは本当を言ったのか

あれからわたしは子を産み
その子が成長した頃
あの話を思い出した
子を連れて山を登る
苔むした岩場の影
そこには大量の舞茸があった

子は小躍りして
今日はこれ食べようね

無邪気に微笑んだ

本当の祈り・緑


樹齢を重ねた古木に
春の青葉が揺れている
そこに留まる生命の力
それがこの星に根をはっている

いつでも自分だけが
幸せであればいいと
こころのどこかで思っていた
それが恥ずかしくて
わたしはわたしを無にしたがる

祈りは何のためでもなく
ただの祈りだった
それ以上でもそれ以下でもなく

ハイボール


隣の隣にあった空き地に
突貫工事で得体のしれないビルが建った
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帰りに一杯のつもりで
立ち寄った
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それとさんまの塩焼きを注文した

いい気分になり
家に帰ると
夜食はさんまの塩焼きだった
妻が今日のは特別よと言う

はい、晩酌付き合ってあげる
出てきたのはハイボール

出来は妻のほうが断然よかった
家の味は家の味だ

妻のいびきを除くと
妻は100点満点だ
幸せな人生を
味わって飲み干す