潮騒
あの日軍艦が水平線に並んでいた
鬼畜米英に犯されると聞いて
それくらいならば死にましょう
誰ともなく岸壁に列ができた
そしてひとりひとり飛び降りた
とがった石灰岩の上へ
あれから数十年もたち
意気地無しの私だけが生き残っている
肉も骨もない
断崖に打ちよせる潮騒
鬼畜米英に犯されると聞いて
それくらいならば死にましょう
誰ともなく岸壁に列ができた
そしてひとりひとり飛び降りた
とがった石灰岩の上へ
あれから数十年もたち
意気地無しの私だけが生き残っている
肉も骨もない
断崖に打ちよせる潮騒
別れた次の日の朝に
目覚めは残酷に
わたしの瞼をこじ開けた
今日が訪れた
望まない今日が
夢の続きを見ていたかった
あなたが傍にいたあのころの夢を
テレビでは虚ろでろくでもないニュースばかり
今日という日にまた投げ込まれて
そしてあなたはもう帰ってこない
夢の続きを見ていたかった
あなたが傍にいたあのころの夢を
わたしの瞼をこじ開けた
今日が訪れた
望まない今日が
夢の続きを見ていたかった
あなたが傍にいたあのころの夢を
テレビでは虚ろでろくでもないニュースばかり
今日という日にまた投げ込まれて
そしてあなたはもう帰ってこない
夢の続きを見ていたかった
あなたが傍にいたあのころの夢を
失望
失望に溺れ 希望にしがみ付き
大海原で真水も飲めず
浮かんでいると太陽が責める
その強烈な輝きで
魚たちが手足をつついている
そろそろ彼らの食料と化すだろう
思い出のかけらも鬱陶しく
運がよいのか悪いのか
砂浜にたどり着けば
金も何もなく
遠い道のりを
懺悔と後悔をつぶやきながら歩くのだ
大海原で真水も飲めず
浮かんでいると太陽が責める
その強烈な輝きで
魚たちが手足をつついている
そろそろ彼らの食料と化すだろう
思い出のかけらも鬱陶しく
運がよいのか悪いのか
砂浜にたどり着けば
金も何もなく
遠い道のりを
懺悔と後悔をつぶやきながら歩くのだ
鎮魂歌
交わしてきた盃を今宵も交わそう
月も見えない夜空だが街灯りが見える
お前が選んだ道や やってしまったこと
この一杯一杯の許しの酒で飲み干そう
雲の切れ間から幽かに月灯りが見えて
夜桜舞う空の下 俺はお前の笑顔を想う
獣
僕は君といて
君に叱咤される
涙が不意に流れ始めると
君は優しく抱きしめてくれる
僕はダメな男だ
まるで堕落した獣だ
いつか僕にがっかりして
そのドアを出て行ってしまうのかい
真っ白なスーツを着て
その日の空は美しく晴れて
君に叱咤される
涙が不意に流れ始めると
君は優しく抱きしめてくれる
僕はダメな男だ
まるで堕落した獣だ
いつか僕にがっかりして
そのドアを出て行ってしまうのかい
真っ白なスーツを着て
その日の空は美しく晴れて
白黒熊
竹を食み
転がって
体が火照ると
水辺に浸かり
ただじゃれあって
そしてまた
ひたすら竹を食む
白と黒の
混じった
不思議な毛並
鋭い牙も爪も
何者かを奪うものではない
白黒熊は夢を見る
月の下で 陽の下で
無邪気に生きる
悪戯に生きる
のろい
背中の後ろ
赤いランドセルが揺れてる
手に持っていた小銭を落として
しゃがんだらランドセルの中身が全部出てきた
その夜父親はこう言った
「うっかりしてちゃいかん、
明日神社に行ってうっかりを直してもらってこい」
翌日神社に向かう石段の上で
スリッパが脱げて右ひざをはげしく擦りむいた
泣きながら家に帰ると婆ちゃんが
「呪いって言葉の意味を知っているかい?」
と唐突に聞く
「のろのろとやってくるからのろいというのさ」
婆ちゃんはクスクスと笑ってる
ほら、オキシドールで殺菌しなさい
そして包帯巻いてなさい
母に「呪いってなあに?」と訊くと
おまじないと仲良くしてるやつさ
と微笑みながら言う
黒と白
ぼんやりと酔った目で
港のいくつかの明かりを見た
真っ黒な海面にゆらりと揺れ映っている
ジャックダニエルのラベルを
意味もなくはがしながら
まだ寒い夜風の中
一口ずつ口に含み飲み込む
あれは綺麗な姿だった
おしろいに紅をさして
失った恋の記憶など
飲み込んでも吐き出しても
どうしようもなく
ぼんやりと酔った目で
山の手のいくつかの明かりを見た
そこにはある程度の幸せがあるのだろう
ボトルが空になる頃には
瞳を焼くような強烈な白い陽ざしが
容赦なくあたりを照らし出す