さようならと言えなかったあの日
あんなに走って
夕暮れの海へ向かい
下り坂を転びそうに
君の乗る船を追いかけた
もう多分君は
新しい希望を夢見てる頃だろう
僕は置き去りにされた捨て猫みたいだ
夕日も沈み
波音も静かで
僕は坂道を登っていく
ぜったいに泣くもんか
奥歯を噛みしめて歩く
夜景
本当の夜景を見たことがあるかい
いろんな色のライト
照らされた壁
夜空により明るく瞬く星
往き交う車のライト
本当の夜景を見たことがあるかい
遠くに救急車両が走っていて
終電が出る頃
本当の夜景を見たことがあるかい
月は大きさを変えない
意識だけが遠くなる
白いまばたき、5月の雨、苦みと香り
雪ではないのはわかる
私の目を覚まさせたのは
ひとひらの綿くず
白いまばたきが私を無理やり
五月の雨音の中へ放り込む
鬱陶しく不快な湿り気で
窓ガラスが曇っている
ゴミ回収車が窓の下で
難儀そうに作業している
私は目を覚まそうと
ブラックコーヒーを淹れる
その苦みと熱気
立ち上る香りが部屋を満たす
ゆうべ
母ちゃんは大根鍋を作っていた
父ちゃんはTVで中日巨人戦を観ていた
僕は明日までに出さなきゃならない宿題の山を前に
頭を抱えていた
いろんな窓から夕餉の匂いがしてくるよ
カバン下げてとぼとぼと帰路に就く背中の影
影がぞろぞろ駅から出てくる
やがて夜の帳は下りて
野球の延長戦が続き
さあ夜が昼を食べつくしたよ
宿題を何とか終わらせて
明日のために静かにおやすみ
父ちゃんはTVで中日巨人戦を観ていた
僕は明日までに出さなきゃならない宿題の山を前に
頭を抱えていた
いろんな窓から夕餉の匂いがしてくるよ
カバン下げてとぼとぼと帰路に就く背中の影
影がぞろぞろ駅から出てくる
やがて夜の帳は下りて
野球の延長戦が続き
さあ夜が昼を食べつくしたよ
宿題を何とか終わらせて
明日のために静かにおやすみ
歩み
何かが間違っていると
深く疑い
根拠なく犯される過ちが
ニュースを賑わせる
何も知らない動物が
特訓を受けて
芸を見せて喜ばせるのを
放送する番組が流行る
人は人を人とも思わないほど
人間性をどこかへ転嫁してしまった
そんな中で殺戮を喜んで観る者がいる
どこで間違ったんだろう
小気味良い道のりを願ったはずだったのに
ほらようやく立ち歩き始めた君は
そのありのままの歩みを忘れないで
ほらほら危ないよ
転ばないでね
深く疑い
根拠なく犯される過ちが
ニュースを賑わせる
何も知らない動物が
特訓を受けて
芸を見せて喜ばせるのを
放送する番組が流行る
人は人を人とも思わないほど
人間性をどこかへ転嫁してしまった
そんな中で殺戮を喜んで観る者がいる
どこで間違ったんだろう
小気味良い道のりを願ったはずだったのに
ほらようやく立ち歩き始めた君は
そのありのままの歩みを忘れないで
ほらほら危ないよ
転ばないでね
小さな生きもの
アメンボは雨の日には元気がないんだよって
近所の米山さんが教えてくれた
アメンボは雨が降ってくると元気がないんだ
米山さんはそう言う
ありんこは雨の日には巣に蓋をするんだよ
近所の米山さんが教えてくれた
ありんこは役割分担をしっかりして
死を覚悟してもその役割を果たすのだと
人間は小さな生き物でしょうか?
米山さんに言うと
もっと大きな動物もいるよ
と簡単にこたえる
僕らは小さな生き物なのかも
いや
それは大きな生き物でも当てはまるかもしれないな
と独り夕暮れに考える」
アメンボは雨の日には元気がないんだよって
近所の米山さんが教えてくれた
アメンボは雨が降ってくると元気がないんだ
米山さんはそう言う
ありんこは雨の日には巣に蓋をするんだよ
近所の米山さんが教えてくれた
ありんこは役割分担をしっかりして
死を覚悟してもその役割を果たすのだと
人間は小さな生き物でしょうか?
米山さんに言うと
もっと大きな動物もいるよ
と簡単にこたえる
僕らは小さな生き物なのかも
いや
それは大きな生き物でも当てはまるかもしれないな
と独り夕暮れに考える
連詩:渇き
「渇き」
どこまでも君を背負うよ
どんなに重く感じても
それが僕の君に対する
愛のすべてだろうから
いつまでも君を想うよ
どんなに薄く陰っていっても
それが僕の君に対する
気持ちのすべてだろうから
どんなに飢えても
どんなに体を病んでも
この渇きだけは
君なしでは癒せない
「渇き」
十代の渇き
は
激しく辛いものだった
二十代の渇き
は
目を曇らせるものだった
三十代の渇き
は
自分を湿らせる術を知るものだった
四十代で渇き
五十代で渇き
六十代で渇き
どの渇きもなにかを教えてくれるだろう
心に突き刺さるようなことを
「渇き」
さらさら さらさら
砂にも夜更けに霜が降りる
太陽が飛び出して
さらさら さらさら
風に吹かれ飛びゆく砂塵
「渇き」
人生の終盤を待たずに
私の一生は閉じる
誰でも似たようなものだ
そして死の懐に抱かれる
すべての水分は失われて
「渇き」
どこまでも続くビル街の中
集中できない僕はそこらで飲む
酒は百薬の長ってさ
そして二日酔いの朝が来る
蛇口をひねって
がぶがぶと水を飲み
便器に思い切り吐く
それを数回繰り返し
スーツを着て渇いた街を歩く
赤い目を目薬でごまかして
親のために・・・
俺を捨てた父と
俺をほったらかしにした母とが
俺の傍にいる
俺は頸椎を骨折し動けない
気管に管が刺されていてしゃべれない
俺は親のために生命保険をかけていた
俺が死ねば両親にお金が振り分けられるはずだった
しかしおれは死ぬことどころか
無様に生き続けている
声が出ないし体が動かない
両親は何事かを話あい
涙を流していた
お前をほっといてすまなかった
父はそう言って鼻水が出るほど泣いていた