Nature | Photography | Music | Art -4ページ目

Nature | Photography | Music | Art

日々好奇心の趣くまま

サイト内の写真の使用ならびに無断転用を禁じます。

随分と昔1990年代のこと、3ヶ月ほど休みを取ってずっと憧れだった南米縦断にトライしたことがある。とりあえず最小限のスペイン語だけ覚えて。

そのときはまずアルゼンチン最南端のパタゴニアまで飛んで、陸路を使ってひたすら北上するという体力勝負の旅。今ではとてもやる気力がないが。
結局そのときはブラジルが想定外に面白すぎたため(とりわけ音楽)時間がかかりすぎ、アルゼンチン→ブラジル→ボリビア→ペルーと進んだ時点で時間切れとなった。

そのときペルーに滞在できたのはほんの4~5日。多様な魅力満載のこの国を見て周るには余りにも短い。

後年、ペルーはネパールと双璧かそれ以上というトレッキング天国であることを知った。
インカ時代からのトレースがいたるところ無数に張り巡らされていて、アンデス山中も例外ではなく時には標高5000mを超えることもあり、その周辺には5000m~6000m峰がひしめき合っていている。

今回長期GWを利用して、その時の不完全燃焼を解消すべくこの国の山岳風景の一端を垣間見ようと少々長旅をしてきた。

まず目指したのは北ペルー。有名観光地満載の南ペルーと対照的にいささか地味な地域で、今回初めて足を踏み入れる地。
ここには世界遺産でもあるHuascaran国立公園があり、その名の元でもあるHuascaranはペルー最高峰。

主要道を外れると道路の状態も悪く、北海道や四国の林道レベルもしくはそれ以下。交通も予定通りいかない。
トレッキングルートも標識などはなく地図とGPS頼り。地元の人々に英語はもちろん通じない。下手するとローカル言語のケチュア語オンリーでスペイン語も通じないこともある。
標高も簡単に4000mを超えてしまうので空気が薄くて息が続かない。
とにかく一筋縄ではいかない。

この山域でテント泊をしながら4~5日間篭って撮影を思う存分行うつもり…だった。

しかしながらハプニングが、なんとLima到着時にまさかのロストバッゲージを食らってしまった。
バッグには必要な装備・機材がすべて入っていたので万事休す。

このとき利用したのはエアカナダなのだけれども、後からググるとこの航空会社はかなり悪名高いらしい。
ということで二度と利用しない航空会社がまた一つ増えてしまった >エアカナダ

荷物が戻るまでに最低数日ということで長期トレッキングは断念。航空会社とやりとりをしつつ、とりあえず様子見と高所順応を兼ねて日帰りトレッキングを数回、まともな機材がないのでスナップ程度しか撮れず。

その後ようやく荷物が届いてなんとか一泊二日のテント泊に出ることができたが、まだ雨季が明けきっておらず一日は降雨でほぼつぶれてしまった。


雲が晴れない中なんとか撮影できたものを何枚か。
とにかくスケールが違いすぎる。至る所パワースポットという感じ。

 

 



4700mでのテント泊は過去最高地点。



雲が多いがペルー最高峰近景。



ネパールではなかなか見ることが出来ない氷河由来の蒼い湖や巨大滝も至る所にある。

 

 


本来であれば今回、世界一美しい山と言われているAlpamayoを生で見たかったのだけれどもそれは前述のトラブルのため叶わなかった。
機会を見て乾季に改めて挑戦ですか。
 

史上最大級の寒波が来るという物騒な予報の中、東北某所の登山口で車中泊。
車内で冬山用の寝袋を使っているのだけれども、体感的には冬山テントで寝ているくらいの強烈な冷えが来る。
おそらく車内の気温は-10℃以下。


その異常低温のおかげなのか厳冬期の北海道の山に行かない限り出会えないだろうと半ば諦めていたものを東北の山中で撮ることができた。

 

 

 


この形は樹枝状と呼ばれる芸術性の高いもの。肉眼で詳細が見えるほど大きい。
敬愛する雪研究のパイオニア・中谷宇吉郎氏が作成した中谷ダイヤグラムによると-15℃あたりの湿度の高い時にこの形状になるらしい。
詳細は以下に。

http://wattandedison.com/Snow_Crystal.pdf

残念なのはマクロ撮影一式を持ち合わせていなかったこと。
TG5の顕微鏡モード+手持ちなのでこれが精一杯。
 

シーズンインしたので時間のあるときに北関東から東北にかけて氷瀑をメインに何箇所か巡っておりました。
今年は温度が一定しないとか雪が少ないとかでいずれも出来がイマイチなところも多いようで、何箇所は撮影せずに撤退したところも。

アクセスが簡単で人でごった返しているもの、しばらく人が侵入した形跡のないもの、凍っているもの、あまり凍っていないもの取り混ぜていろいろ。

 

 

 

 

 

 

 



氷瀑がなぜこんな形に生成されるのか、なぜ人が見て美しく感じられるのか、いろいろ興味は尽きない。
前者については詳細に研究している方がおられるようで、以下でいくつかの論文が見られる。

https://ci.nii.ac.jp/author?q=%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E6%9E%97+%E6%98%8E%E9%9B%84

読んでみると氷瀑はただのツララの集まりではなくもっと複雑な生成過程があることがわかる。
その複雑さが飽きない美しさの根源だとしたらなんとなく納得できる。

 

汎用性がありそうなので、先日の曲作りのために作成したPythonとmusic21ライブラリを使ったプログラムをGithub公開しました。
 

https://github.com/delphinus1024/voicing_explorer

 

簡単に書くと、パラメータで与えられたルート音とスケールから音数とルールに適うすべてのボイシングの可能性を列挙、その結果を与えられた条件でソートして譜面表示するもの。
内容は上の記事で書いたLine Writingに準拠しているが、普通にボイシング探索に使えるので名前をVoicing Explorerと銘々。
使用方法はGithub参照。

Pythonのライブラリにitertoolsという要素を渡すと順列・組み合わせを自動的に計算してくれる非常に便利なものがあってこれをありがたく使用。
今回に限らずmusic21とitertoolsを組み合わせてすべての可能性を自動計算させる技は普段からよく使っているが、吐き出された膨大な生成物の中から思いがけないアイデアを時折投げかけてくれる。

例えばE Combination of Augumentという一風変わったスケール(Chick Coreaがよく使っているが…)で試してみると。
 

 

上は冒頭抜粋だけれども、これだけでも180ほどのボイシングができて10ページほどになってしまう。
膨大な生成物からいい響きのものを取り出していく作業が必要だが、人手で全部やるよりずっと時間短縮になると思う。

ちなみに探索対象をスケールからPitch Class Setに変えるともっと刺激的なことになりますが、その辺はまた気が向いたら書きます。
 

 

先日公開した動画につけた音楽について。
 

 

 

滝映像につける音楽を考えた際に、最もインスピレーションを得たのが以前から好きだった北斎のこの絵。
 

from Wikimedia Commons

 

滝をモチーフにした作品はメディアを問わず無数にあるけれども、この絵のインパクトを超えるものはまだ出合っていない。
セルフビレイが要りそうな危うい崖の縁で寛いでいる人々が飲み食いしながら何をやっているのかは分からないが、自分には滝を愛でながら一句詠んでいるように見えて仕方がない。

ということで、今回は滝前で句を詠んでいるような音楽にしようと単純に決めてしまった。
たゆたうように五七五のリズムを概ね刻んでいるのがおわかりになるかと。

5音構成のボイシングをゆったり並べていっているだけだが、単純なようで難しい。
教科書どおりのボイシングを使っていると  終始凡庸になってしまう。
それを避けるためにあえて歪なボイシングを選んでいるのだけれども、そのよりどころとなった技法が表題のもの。

元々Duke Ellingtonが自身のビッグバンドのアレンジに編み出した秘伝技をHerb Pomeroyという人が定式化してBerkleeのコースで教えていたもの。

この技法、シングルラインのボイシングを行う際に古典的なBerklee式の「Spread」や「Dropなにがし」などの技法だと誰でも使っているために決まりきった無個性な響きになってしまうので、それから脱却すべく面白いボイシングを編み出すために考案されたらしい。
以下、幸い以前にこの理論を教えてもらう機会があったので、自分の理解している範囲でこの技法を把握する取っ掛かりなどを備忘録を兼ねて。

実際ビッグバンドだけでなく色々な場面で使えるし個人的にもかなり影響を受けている技法なのだけれども、技法の詳細な情報がなかなか入手しづらい。
しかしながらBerkleeでの講義ノートのスキャンらしきものが時折Webで転がっている。 今現在だとこのあたりだけれどもたぶんそのうちなくなってしまうだろう。
 

https://bit.ly/2FwOtEU
 

https://bit.ly/2RLEEt3
 

内容は未整理で状態の悪いスキャンで落書きが多い上に、謎の符牒のような用語もあって独学で解読するのも結構難しいが、逆に言えば謎の用語の意味を押さえていて基本的なBerklee理論を知っていればかなりの部分を理解できると思う。

このドキュメントの中で躓きそうな用語はだいたい以下のあたりだと思う。

・PD,SD
    
    Page13の"INTERVAL CHART"に説明があって
    PD=Primary Dissonant= 短2度 or 長7度
    SD=Secondary Dissonant=長2度 or 短7度 or P4 or P5
    Consonants=それ以外
    
    上に行くほど不協和で、ボイシング中にいくつこれらのインターバルがあるかで不協和の度合いを数値化できる。
    
・PC,SC
    PC=Primary Climax
    SC=Secondary Climax
    つまり処理するフレーズの中から強調するノートを2つ選ぶということ。通常は高い音とか長い音などを選ぶ。
    
・ATBATその他大文字5つの暗号
    Alto Tenor Baritone Alto Tenorの略。その他CATBTのCはClarinetなどなど。
    つまりボイシングを各楽器にアサインする際、普通ではない並び方にすることで変わった響きになるようにする目的があるらしい。

・Small,Medium,Large
    Page16に記述があるが、外声のインターバルの大きさによる分類。音楽にメリハリをつけるために意識しておくべきもの。
    Small=0~10度
    Medium=10度~2oct
    Large=それ以上
    

さて、このドキュメントの中では色々な技が例と共に列挙されているが、その中でもこの技法の根幹となる手順がPage13のVoicing Rulesとして手順や制約が細かく列挙されている。
上の用語とBerklee理論があればある程度理解できると思うが、個人的には以下のように大雑把に把握していて日頃ボイシングを作るときに思い出すようにしている。

・まずラインの中から重要なPCとSCの2音を選択。実務上では2音より前後することもある。
・選択した音のBottom NoteをAvailable Noteから選ぶ。その際Small~Largeを常に考えながらなるべくメロディと反行になるように。
・選択した音の残りの内声をAvailable NoteからVoicing Rulesの規則に違反しないように選んで作る。その際、PC,SCは残りの音より多くのPDを入れるように配慮する。
・つまりPC,SCのボイシングは他の音より不協和になってメリハリがつくことになる。
・次にPCとSCを補間するように残り音のボイシングを行う。各ラインが歌うように。PD,SDは控えめに。
・内声を作るときにはBerklee理論のように3度や7度に固執する必要はない。これらを外したほうが却って面白い音になることが多い。

広く役に立つ技法なので廃れずにもっと周知が広まればよいのだけれども…