マイルチャンピオンシップ
マイルチャンピオンシップ
その名の通り、1600メートルのレースである
1マイルというと、通称「マイラー」が得意とするレース
でも、この1マイルというのが面白い
スプリンターにとっては、少し長い…
中距離型にはちょっと短い…
格言通りに、マイルはマイラーを狙え でよいのか…
春のマイラー決定戦の安田記念と同じく予想のしにくいレースであろう
また、京都競馬場には色々な定説や格言がある。
淀の坂は、ゆっくりと登り、ゆっくりと降りる とか…
京都芝外回り、コース変わりは内枠狙いが鉄則 とか…
記憶に残っているマイルチャンピオンシップがある
第6回マイルチャンピオンシップである
中段に位置する南井騎乗のオグリキャップ
それをぴったりとマークする、武豊騎乗のバンブメモリー
3コーナーで、前へ出ようとするオグリキャップ
しかし、4コーナーで前の馬がもたもたしていた
この隙に、バンブメモリーが前に出る
流石っ!天才武豊っ! 絶妙のタイミング
来れて決まったかと思った残り1ハロン
オグリがとんでもない足色で指して来る
ハナ差でオグリの勝利
この後の南井騎手と、武豊騎手のコメントがすべてを物語っていた
武豊騎手は…「オグリキャップには、どうしたら勝てるのかわからない」
南井騎手は、勝利騎手インタビューで
「なんて偉い馬なんだろうと思うと、どうしようもなく泣けてきた」
と、号泣している
南井騎手を「ファィター」と称号されるときがあるが
南井騎手を育てたのは、タマモクロスであり、オグリキャップでだったと思える
後に、南井騎手はナリタブライアンと出会い三冠馬の騎手となるのである
第38回 有馬記念(中山グランプリ)
1993年は当たり年であった
ウインニグチケット・ビワハヤヒデ・ナリタタイシンの3強
メジロマックイーンの天皇賞(春)の三連覇を阻止したライスシャワー
宝塚記念のメジロ三連覇
桜花賞・オークスと制したベガ
エリザベス女王杯を制したホクトベガ
「ベガはベガでも、ホクトベガ~っ!」と言う実況を今でも覚えている。
見応えのあるレースが続いて、ワクワクした。
さて、トウカイテイオーはどうしたかと言うと…
宝塚記念を目指していたが、またもや骨折…
もしかしたら、このまま引退してしまうかも知れないと思っていた
引退なら引退でも良い、パーソロンの血統を残せるのはわかっているし
ノーザンテーストの娘たちとも、ノーザンダンサー系の
インブリードだって期待できるかもしれない配合には困ることはないであろう。
などと、期待をしていたらプール調教をしているとのこと。
プール?たしか、オグリキャップもプール調教していたはず。
ダートなどで叩くだけ叩いて、放牧…という昔ながらの調教とは違い
坂路やプール調教など色々工夫されているのだなぁ~
坂路では、ミホノブルボンがメインでやっていて
あれだけのタイムが、逃げ馬として出してしまうからなぁ~
プール調教は確かに、心肺機能は上がるだろうとは思うのだが…
足の弱い馬に対しては有効なのかもしれない
1993年12月26日 中山競馬場にオイラはいた
去年作った、応援幕も一緒に…
一番人気は、菊花賞を勝ったビワハヤヒデ
名実ともに、4歳(旧)最強馬であろう
2番人気は、ジャパンカップを制してきたレガシーワールド
3番人気は、第60回ダービー馬ウイニングチケット
4番人気が、トウカイテイオー
5番人気が、関東の刺客ライスシャワー
6番人気が、桜花賞とオークスを制した ベガ
なんて豪華なメンバーがそろったのであろう
強い4歳馬(旧)に古馬が迎え撃つと言う感じ。
古馬と言っても、天皇賞馬やジャパンカップを勝っている馬たちである
これぞまさしく、有馬理事が望んだ姿ではないであろうか
今年活躍した競走馬たちのオールスターレース
年なんて関係ない、みんなまとめていったい誰が強いんだっ!
と言う感じである。
しかも有馬記念は、最高でも16頭のところを今回は14頭
内も外も、どの枠でも、思ったほど損得はないであろう。
競馬新聞を見ているだけでワクワクしたぐらいである。
パドックでいつものように、カメラのファインダーごしに
写真を撮りながら見た覚えていることを書いてみる
まずは、ベガ すげー気合入っている この馬は好きだ
牝馬でなければクラッシックのひとつは持っていかれていたであろう
友達が言うには、ベガは相当の美人であるそうだ
こいつ…馬の顔がわかるのか?だったらブスな馬はいったいどいつなんだ
と、疑問に思ったことがある。
次に、ライスシャワー
仕上がり的には問題ないと思うが、天皇賞・春でマックイーンを倒すための
ギリギリの馬体が戻らないのであろうか凡走が続いている…
マックイーンを倒すと言うことは、それぐらいしないと駄目だったのであろうか
まさに、マックイーンは化け物であろう。
次に、ビワハヤヒデっ!
凄い仕上がり 菊花賞をレコード勝ちをして有馬一本に絞ってきたことはある
まさに勝つために、中山に来た と言っても過言ではないと思った。
しかも、岡部は今回テイオーではなく、ビワハヤヒデに騎乗している
次に、ウイニングチケット
なんと言っても、柴田騎手との名コンビっ!
大好きな馬の一頭である 単勝はもちろん100円買った。
しかし、なんとなく元気がない
ジャパンカップも使って、疲れがピークなのかな?
次に、レガシーワールド
鬼才、戸山調教師の忘れ形見っ!
戸山スパルタ調教についてきた1頭である
ジャパンカップでは、コタシャーンとの叩き合いを制し
勝負根性とスタミナは、奇跡でもなんでもない
実力は、世界に出しても恥ずかしくない1頭だと思う。
タマタマがないのが残念。
よいよ、トウカイテイオー
オイラの知っているトウカイテイオーではなかった
この馬が、トウカイテイオーなの?という感じ。
元気がないのか、落ち着いているのか…
1年ぶりのレースで、レースの感覚を忘れてしまっているのか…
闘気と言うのが感じなかった。
1年休んで、生気を抜かれちまったか?
プール調教では、併せ馬のように勝負根性が出なくなってしまったのか?
などと、考えているうちに「とまれ~!」の騎乗命令がかかる
田原成貴騎手が、トウカイテイオーに騎乗する
その瞬間、なにかが変わった気がした。
トウカイテイオーの雰囲気が変わったのを感じた気がした
この感覚は、ダービーのときと同じ感じ。
あっという間に、目の前を通り過ぎていく…
オイラは固まっていた、友達に「今年のテイオーはどうだ?」と聞かれる。
「わからない…でもなにかが違う」とだけ応えた。
返し馬を見て、疑惑が確信に変わる。
双眼鏡で見ていると、父のシンボリルドルフと同じように、
足の伸び方が凄い、体が凄く伸びている。
そして気持ちよさそうに、尾っぽを振っている
「勝つっ! トウカイテイオーが勝てる」と言った。
友達たちは、「1年ぶりに勝ったら、競馬の歴史に残るな」と言いながら
単勝を買いに走る
「トウカイテイオーだけは、お前の言葉を信じる」とのこと。
レースは、メジロパーマーが引っ張る。
ビワハヤヒデは、先頭集団にいる 岡部のいつもの作戦であり
勝つための騎乗方程式であろう。
トウカイテイオーは、中盤6~8番手であろうか そんなに前ではない。
ん?、ペースが早い感じがする。1000mを56~58秒ぐらい
60秒をきっているとなると、メジロパーマーは中山の坂では残れない
上がり、35秒台前半の勝負になると思った。
3分3厘で、岡部が仕掛ける まさに勝利の方程式
ハヤヒデなら、35秒代前半のタイムが出せれば
追いかけてくる馬は物理的に抜けないという騎乗方法。
流石は、何度もリーディングを取っているだけのことはある
しかし、リーディングを取っている天才はこのレースにはもう一人いたのである
その名は、田原成貴っ!
絶妙のタイミングで仕掛けていた
中山の直線330mの叩き合いっ!
凄いっ!の一言…
トウカイテイオーは、田原成貴に応えている
しかし、ビワハヤヒデも勝負根性では負けていない
流石に、3強の一角 菊を制したのは伊達ではない
強いっ!春の今年のクラッシックを2着までに入っているのはハヤヒデだけである。
これぞ名勝負だと思ったぐらいである
しかし、勝負は中山の坂で決まる
坂を上りきった、残り100メートルでトウカイテイオーがビワハヤヒデを差す
そして、半馬身差をつけてゴールっ!
勝ったっ!トウカイテイオー勝ったっ! 涙でた。
友達とみんなで、旗を振ったっ!
そして、「田原コールっ!」
大声で叫んだっ!
なんと言っても、今回は友達みんながトウカイテイオーを買っている
馬連まで取っている友達もいた
単勝、940円 馬連 3290円 買っている友達は大儲けである。
声を出して、気力も体力も使い切った
そんな時… また、警備員に捕まってしまった
「お前ら、去年もいなかったか? その旗は見覚えある」と言われ確保される
去年と同じように、お説教を1時間ほどされる
そして、またもや、おけら街道を歩いて帰る…
友達の一人が…「俺らって、勝っても負けてもこの道を歩いているな」と
みんなで大笑いした記憶がある。
家に帰ってから、留守録のビデオを見る
「トウカイテイオー、奇跡の復活」とアナウンサーが叫んでいる
その通りですっ!
よくビデオを見ると…旗を振っているオイラたちが映っている
これは捕まるな…と思った。
トウカイテイオーは、翌年も現役を勤めるが4度目の骨折をして引退する
田原成貴騎手は、引退後、調教師となるが
銃刀法違反と、覚醒剤取締法違反で逮捕され、調教師免許を剥奪される。
競馬会からは事実上の追放。
田原成貴騎手の、インタビューのときに流した涙で感動した
競馬ファンは沢山いるはずだし、オイラもその一人である。
薬なんかに手を出さないで欲しかった。
トウカイテイオーと有馬記念
今年の最後のGⅠレース、中山グランプリ
有馬記念とも呼ぶが、あえて中山グランプリと呼びたい…
今まで、数多くの名勝負を残してきた中山グランプリである。
トウカイテイオーは、ジャパンカップを制して戦うメンバーで
これといった敵はいない。
唯一、戦っていない馬で実力があるといえば、ライスシャワーぐらいなものだ
この年、ライスシャワーは、戸山調教師が作り出した
逃げ馬の化け物ミホノブルボンの三冠を阻止している。
ミホノブルボンに唯一、勝った馬がこのライスシャワーだけである。
オイラは、このライスシャワーも好きである。
当日は、7時30分に中山競馬場に到着。
開門と同時に、パドックに陣取る
なぜかと言えば、垂れ幕を張るためである。
この垂れ幕は、ジャパンカップで取ったお金で作ったものである。
もちろん応援団旗も作ったっ!
これで応援は、万全だっ!
この頃は、中山競馬場の近くに実家があったためホームである。
ジャパンカップのときは、完全にアウェイだったのを覚えている
今度は間違えなく、トウカイテイオーは1番人気 当然である
2番人気が、ライスシャワー
トウカイテイオーを差せる馬は、このレースではライスシャワーぐらいであろう
ライスは、リアルシャダイの子供。母の父はマルゼンスキー
血統的には申し分なしっ!だかライスは完全にステイヤー的であると思えた。
スタミナも、スピードもあるメジロマックイーンと比べると
やはりスピード的には、またまだ4歳(旧)であるから古馬には勝てない部分かあると思えた。
でも不安もあった…
なんと、岡部騎手が騎乗停止、乗り代わりで田原成貴。
田原成貴といえば、「天才」「競馬界の玉三郎」と呼ばれていて腕には申し分なしっ!
岡部がいなくてもトウカイテイオーの能力を十分に出してくれると思っていた
パドックで、トウカイテイオーをカメラのファインダーごしに見る
あれ?ジャパンカップのときと違って元気がない…と感じる
気合はある程度は入っているが、なんか元気がない…
とりあえずは、出走メンバーの写真を全部撮った
トウカイテイオーをずっと見てきたけど、こんなに元気がないのは初めてだった。
落ち着いているから元気がないように見えるのだろうか…
色々なことを考えているうちに「とまれ~」と騎乗命令がかかる
田原成貴騎手は、落ち着いている 流石はベテランである
初めての騎乗、1番人気、GⅠ…この状態で落ち着ける
任せて大丈夫という気持ちがこみ上げてくる
返し馬を双眼鏡で見ていると、いつもと違うという違和感があった
「今回はテイオーは負けるかもしれない…」とボソッと言ったら
友達たちが「なんだとっ!買ってしまったぞっ!」
オイラも買っている と言ってもいつもの通り100円の単勝だが…
「応援しようぜっ!応援っ!」と友達たち…
不安な気持ちがどんどんこみ上げてくる
そんな時に、GⅠのファンファーレが聞こえる
この時点で考えていたことは、無事にレースを終えて欲しいと言うこと
無理して、レース中に骨折でもして予後不良にならないで欲しいと言うことを考えていた。
もう、勝ち負けなんてどうでもよかったかもしれない。
ゲートが開くっ!
メジロパーマーが、予定通り逃げる
トウカイテイオーは、中盤にいる
みんな、トウカイテイオーをマークしているのかペースが上がらない
見ている状態で、オイラでもスローペースだとわかる
こんなスローペースは、オグリキャップのときと同じだ
前を走っている馬が残る…
中盤にいる、トウカイテイオーは勝つためには、
上がりが32秒台以上のタイムを出しても届くかどうかわからない
今の状態で、上がり32秒は無理だろう…
後は無事にゴールをしてくれれば良い
残り600っ!友達は必死に旗を降り始める
買っている金額がでかいのか必死である
レースを見ると叩き合いが始まっている
そんなスローペースなのに中盤以下にいた馬が届くわけない
メジロパーマー・レガシーワールドで決まって万馬券である。
タイムは、2分33秒5
前年の、「これはびっくり、ダイユウサク」の時が2分30秒6
3秒近く違う… いかにスローだったかがわかる。
スタンドでは、田原に対してのブーイングが始まる
友達たちも、一緒にブーイング
いくらなんでも酷いと言うような言葉が飛び交う
でも、オイラから言えば田原成貴は名騎乗だったと思う
途中で気がついたのか、乗ってから気がついたのかはわからないが
トウカイテイオーに無理をさせないように騎乗していたと思う。
無事にゴールをさせるという一点に絞っていたのかもしれない
初めての騎乗、1番人気、GⅠなのに馬を優先した。
オイラが騎手だったら絶対にできないことである。
ブーイングは、覚悟していたのであろうか…
着順は11着 16頭で11着 トウカイテイオーの生涯最低着順。
田原が、どれだけ無理をさせなかったかわかる着順…
天才と称されたのは伊達じゃないっ!
オイラが田原騎手に対しての評価は上がった。
まさに「漢」を見た感じがした。
旗を振っていたことが、いけなかったみたいで
オイラたちは、警備員に捕まってしまった
1時間ほど文句を言われ、解放された
友達と、おけら街道を歩いて帰路についた
次は、1993年、第38回有馬記念(中山グランプリ)について書く予定。