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水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

北米で一番美しいと言われる都市、サヴァナ。
この街と奇妙な人々に魅せられたNY在住のジャーナリスト、ジョンは、ある富豪の殺人事件に出会う――


と書くとミステリー小説のようですが、これはサヴァナを取材したノンフィクション。
しかし、小説以上に面白い。
冒頭の、墓地のシーンで驚かせ、あっという間に読み手をサヴァナの妖しい夜へと誘いこみます。
ある殺人事件が縦軸となっていますが、それを抜きにしても、個々のエピソードが秀逸。
こんなにも奇妙な人々に、こんなにも親近感を持たせてしまう筆者の筆力が素晴しい。
明るいエピソードは無いのですが、筆者の観察者としての距離の取り方がうまいのか、不思議なほど読後感がさわやかです。

本書は、クリント・イーストウッド監督作品として、映画化もされています。
実は私もDVDを持っていますが……正直いって、かったるくて観てられないです……。
ぜひ、本でお読みください。
(評価★★★★★)


著者: ジョン ベレント, John Berendt, 真野 明裕
タイトル: 真夜中のサヴァナ―楽園に棲む妖しい人びと
旅人にはランクがあるのだと、友達が言ってました。

彼は元レーサーなバイク乗りで、年末に会った時には、
「正月、おれは国境を越える」
と言ってましたが、それはどこの国境だったのか、ぶじに帰ってきたのか、いまだ分かりません。

まあそれは置くとして、そうやって旅をしていると、旅人どうしで溜まってしまう場所があったりして、そんなところで一番身分が高いのが 「徒歩ラー」 なのだそうです。

オートバイでも自転車でもなく、徒歩の旅人。
確かに、旅人的な志が、いちばん高そうな……。

私は旅行へ行っても帰りたくて帰りたくて仕方のない人で、一人旅に出てしまう人の気持ちが、まったく分からないのですが、あれは登山みたいなものなんでしょうか。
フツーに考えれば、わざわざ登らなくていい山へ、ものすごく準備をして、過酷な環境へ立ち向かっていくわけで。

そういうギリギリな場面に立たないと、目覚めない何かがあるのでしょうか。

一人になってみないと、見えないものがあるのでしょうか。

いや、問いかけられても困ると思いますが(すみません)。




気難しい資産家の老婦人、マチルダは浴槽に横たわって死んでいた。
彼女の頭には中世の鉄の拘束具「スコウルズ・ブライドル」がかぶせられていた。
この死は自殺なのか、あるいは他殺なのか?



殺人そのものがミステリーなのではなく、マチルダという厳しく残酷な老女の生き様が、とても謎なのです。冒頭ですでに死者となっている彼女の人生を、読者は主人公である主治医セアラとともに、逆から読み解いていく、という物語。

マチルダの娘と孫娘も登場しますが、憎みあう彼女たち三人の関係――母と娘の相克がとても深刻で、ストーリーを追いながら、このテーマについて何度も考えさせられました。

ウォルターズの近作「蛇の形」では、もう少し身近な母と娘の姿が登場し、こちらにはある種の歩み寄りがあるのですが、本作ではひたすら相容れない母と娘が描かれていて、読後は一日中、憂鬱になれること間違いなしです。

ストーリー優先のウォルターズ作品には珍しく、登場人物が生き生きしています。
主人公セアラの夫である、ジャックという男性がとても魅力的。

完成度は「蛇の形」に一歩譲りますが、本作にはそれを上回るドラマがあると思います。

(評価★★★★)
買ったのです。

何故かエッセンシャルオイルをもらったのですが、使いみちが見つからなかったので。
アロマランプは火事の原因になりがちだと聞いていたので、火を使わないライトにしました!

さあ、やるぞー。
ここの上についているお皿に、オイルを五滴ほど垂らせばいいのね。
それがライトの熱で揮発して、香りがするわけか。なるほどねー。
……ああっ。

エッセンシャルオイルの小瓶が……小さすぎてちょっと扱いにくく……ポロッと手から離れてしまいました。
あっという間に流れ出るオイル。

自分、不器用ですから(手先が)

今、とても不自然に部屋にラベンダー臭が満ちています。すぐに拭いたんですが、床の木に沁みてしまったのか、オイルくさい、重たい感じの芳香が漂っています。

癒やされねえ……癒やされねえよ。

というわけで、アロマライトは未使用のまま。


結婚にまつわる八つの風景、という副題のついた短編集。

結婚に、というよりは人間関係にまつわる八つの恐怖、と言ったほうが正しいかもしれません。その関係は、夫婦だったり親子だったり隣人だったりするわけですが、一作を除いては、すべて日常にひそむ落とし穴を描いていて、これがとても恐い。

巻末に桐野夏生が素晴しい解説を書いているので、それを参考にしてください(オイ)。いや、ホントに素晴しいのです。桐野夏生は読み手としても一流だなと感心したほど。

私が一番コワイな思ったのは、結婚を控えた女性が主人公の「見られる」ですね。
ストーカーの恐怖が去った後にくる、「全てがこの犯人の仕業だったのか?」という疑問。
終わらない恐怖に、ぞっとします。

貫井作品は、他に「慟哭」(最後の一行にしか意味のないところがどうにも……)、「迷宮遡行」(奥さんの動機がおかしすぎる)、「鬼流殺生祭」(伝奇好きな私が読んでさえトンデモ作品)しか読んだことがなかったのですが、なぜ人気のある作家なのか、やっと分かりました。

よかった。

(評価★★★)
口に入れられません。
おそろしい。これが二日酔いというものか……。

たいして飲んだわけではないのです。
それが、いきなり具合が悪くなって、帰宅するまでに三回は吐きました(キタナイ話で申し訳ない)。
醜態さらして恥かしいやら、迷惑かけた人に申し訳ないやらで、本気で落ち込みました。ああ。

3時間しか寝なくても平気で生きていけていたので、自分の丈夫さを、ちょっと過信していたようです。今週は献血して万華鏡(イカス記念品ですね。携帯ストラップになるという)もらったりしてたのになー。
というわけで、ダウンしております。

こんな時こそ、ひとさまのブログが心の安らぎ……。


母はスゴイ人だ。

サスペンスドラマの最初の五分で犯人を当てるとか(私の知るかぎり100%的中する)、知りもしない歌手のレコード大賞受賞にもらい泣きできるとか(ほんの五秒でよく感情移入できるよな……)、そういうことではない。

飼い犬がまだ子犬で、私がしつけに口うるさかった頃のことだ。
今では生後三ヶ月は親犬と一緒に育てるというのが、わりと一般的だと思うが、うちの犬は生後50日で我が家へやって来た。
生後50日と言えば、まだ赤ちゃんのようなもの。叱られてるのか誉められてるのかさえ分からないらしく、意思の疎通が出来ず、毎日ぐったりさせられていた。
私がヘンに読書家であったために、しつけの本を6冊も読んでいたのもよくなかった。
6冊は多い。しかも全部傾向の違う内容で、それらの内容が適当に脳でミックスされてしまい、私はとんでもなく口やかましい飼主になっていた。

ある日のこと、家族で会話をしていたら、犬が空いているイスに座りたがった。
鬼教官である私には、それはとんでもないことだった。
犬は床にいるべし!!
怒りかけた私に、母が言った。

「別にいいじゃない。だって、いつも下のほうしか見えなくて、つまらないのよねえ? 家族のなかでひとりだけ犬って、大変なことだわよ。みんなの言ってることも分からないし、ね?」

と話しかけながら子犬を持ち上げて、イスに座らせてやった。

私は衝撃を受けた。

こ、このひと、犬目線で話をしている……!!

すっかり忘れていたが、母は犬が苦手で、飼うことに反対していたのだった。
それなのに私が実家を出てしまったせいで、今は犬の世話係となってしまっている。

母はやっぱりスゴイ人だと思う。
以前、一緒に仕事をしていた人が
「これはフランスのことわざなんだけど」
と教えてくれた言葉があります。酒の席での、世間話。

ふと思い出して「アレなんだったっけ~?」と検索してみたら、イギリスのことわざだった(オイ……)。

諸説あるようですが、だいたいこんなカンジ。


一週間、幸せでいたいなら、理容店に行きなさい。

一ヶ月、幸せでいたいなら、車を買いなさい。

一年間、幸せでいたいなら、家を建てなさい。

一生幸せでいたいなら、正直に生きなさい。



この「正直に」は本来の意味においては道徳的なことを言ってるのかもしれませんが、これを教えてくれた人の解釈はそうではなくて、
「だから俺は自分に正直に生きてるんだ!!」と言ってました。
まあ、そう宣言するだけあって相当メチャクチャな人でしたが、彼の解釈のほうが断然イイ。

自分に正直に生きろ、か。

しかし自分が本当に何を望んでいるのかなんて、分かっているひとのほうが少ないんじゃないかな。


【ちなみに写真はフランスでもイギリスでもなく、ハワイ島(の火山)←なぜだ自分……】
亡くなった耽美派小説の巨匠・重松時子に縁のある五人の女が、今年もまた「うぐいす館」へと集まった。
それぞれに秘密を抱えた彼女たちが、少しずつ作家との関係を語り始める。
作家の死は、自殺なのか、それとも他殺なのか?



ほぼ全編が、この館の中での五人の語りを中心に展開されていく形式は、まるで演劇の舞台を観ているよう。

少しずつほどけていく謎は、軽快な会話とは裏腹に、それぞれが持つ「物書きとしての業」とエゴイズムが感じられて、背筋が寒くなります。
それを救っているのは、おいしそうな食事の描写と、彼女たちの世間話。
おいしそうと言っても、食べているところの描写ではなく、状況に合わせた献立が、とってもイメージ豊かで素晴しい。こういう時はこういうメニューだよなあ、と頷きたくなるような。

作家の死は、謎がとけた後も、二転三転してエンディングを迎えるわけですが、ちょっとひねりが多すぎて、読者としては興ざめしてしまうところも。

あと、これは話の本筋とは無関係な感想なのですが、会話の調子がどうも古くて苦手。登場人物が30代40代なので、こんなものなのかなあという気もするのですが、ちょっとクセのある会話ですね。全員が物書きと編集者という共通点はあるにせよ、それぞれ別の人生を送っている、まったく別の人生観を持つ女性たちのはずなのですが、そういう感じが全くしない。

そういった細かい部分に引っかかりを感じなければ、ドラマとしてもっと楽しませてもらえたように思います。

(評価★★★)

遺跡調査チームが発掘したものは、行方不明の教授によって600年前から送られたSOSだった。
クリスたち調査チームは、スポンサー会社ITCの思惑によって、教授を連れ戻すために14世紀フランスへ送りこまれるが――。



最新の科学によって、ワクワクするような夢を見せるのが、クライトン作品の魅力ですが、本作は実に古典的なタイムトラベル物
量子力学を使った理論が展開されるものの、やっていることは他の時間旅行モノと同じような……。
過去における滞在時間が限られていてハラハラしたり、最後に過去にとどまる人物がいたりと、お約束な展開です。
中世マニアのマレクのキャラクターも、ちょっとゴーインすぎやしないかと(フツーあんな奴いないだろ……)。

ただし、おとぎの世界のように思っていた中世フランスの描き方が目新しく、混沌とした14世紀の風俗が生き生きと描かれています。
SFだ、と思って手に取るとがっかりしてしまうかもしれませんが、本作のキモはやはり
「中世ハラハラドキドキ体験」
でしょう。
主人公たちは過去に着くなり、いきなり命の危険にさらされ、逃げまくり追われまくり反撃し、ボロボロになって走り続けます。

おそらくは、映画化を意識して書かれた作品なのではないでしょうか。
映画版は残念ながら観ていませんが、映像で本作の中世の世界を体験すると、かなりの迫力だろう思います。

というわけで、残念ながら、小説としての楽しみは薄い作品ですね。

(評価★)