D-DST

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日記や、沢山の好きなことへの、
独り言。

『口上』

背景は松竹座も斧琴菊、
左右は音羽の滝と清水寺でした。

役者絵も斧琴菊🙌



松竹座では七代目が不在なので、
仁左衛門丈が進行をおつとめになりまして。

つい先ほど、戦を起こす人間社会の愚かさ、虚しさ、を渾身魅せていらした姿が嘘のような純真ど天然進行 。
無意識にあざといぞ、ニザえもん!
一気に会場は朗らかモードに。

そうこうしている間に、今月公演休演の情報が⋯。
我が国が誇る正真正銘国宝のお一人、
どうかご自愛いただき、復活をお待ちしております。


何度も申し上げているように、私の歌舞伎観劇はかなり偏っているので、


そういえば孝太郎丈観劇ってあまり記憶にないな、少ないよな、と思っていたのですけれど、
御本人談、やはり菊さんとのご共演自体は少なかった様です。

リズム良く心地良く、お話が止まらない。
客席も笑いが止まらない。

こんな楽しい方だったなんて。




今回の大阪公演の口上では、菊さんプロジェクト(NINAGAWA十二夜から始まる、菊さん発の一連の新作歌舞伎作品集を、勝手にこう呼んでいる)
に出演された方々も多く、

なんだかより「ホーム感」ある印象。


信二郎時代より、そういえば皆勤賞の錦之助丈。
誰よりもドヤ感アピールしてらしてかわいい。

当然なのですが、みなさま、トークスキルも高すぎて、
客席も全力で受け止めないと御利益逃すキブンです。


「まだまだ話足りない感の中、強制終了せねばならん感」も醸し出ていたり。

改めて歌舞伎俳優さんのスゴさを実感するのでありんあす。


7月までの観劇日記は8月中にはまとめよう目標でしたが、
地味に体調不良の波があり、遅れ、
ようやくココまでやってきました。

数日前より、山奥京都もいきなり涼しくなってきまして、
猛暑だったこの頃が既に懐かしいです。

六月 歌舞伎座公演より。





『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』


夜の部開幕。


直前にサプライズ事件がありまして!

心臓ドキドキばくばく、顔は表情筋の緩みが止まらず。

正直、半分くらい心此処に有らず状態でしたすみません。


浄瑠璃とお三味と付け打ちと、
直実の芝居との絶妙なグルーヴを感じながら、

必死にクールダウン、
集中力を高めておりました。



熊谷陣屋は、決して狙っているわけではなくとも結構何度か観劇しており、

今まで観てきたキャスティングの役者さん方は鬼籍に入られている方も多く、
至極当たり前のことなのですが、

舞台観劇も一期一会、
毎度毎度が奇跡の巡り合わせだったのだなぁと。

今回も、直実役は仁左衛門丈。
夜の部お席は花道真横、
涙しながらの三重送りの場面を真下から観劇出来、
その迫真の直実像の造詣と、

改めてこの作品に込められているメッセージ性に、
大変心痛みました、
後日(当日は、上記しました様に半ばそれどころではなかったので)。

個人的に、平家物語は一種の反戦もの(かなりの広義でですが)ではないかと捉えております。


それでも、

桜の枝の注意看板に真意を込めるだとか、
皇胤を護るだとか恩義に報いるだとか。

きれいな台詞や所作、音楽、色彩、様式美に則って堪能する「心」。

改めて美しい文化、世界だなあと、
やはり痛いくらい感じます。



藤の方は壱太郎丈。

午前中、浮かれながら大根切ってた娘とは思えないほどの、

皇族出身やんごとなきオーラが凄かった。

怒れる母親。
体格まで異なって見える。役者って凄い。

壱太郎丈は、十年前の新橋演舞場公演で初めて観劇、
この時は若手で出番も少なく、綺麗な子が出てきて嬉しいなあくらいの感想でしたが、

今回の一連の襲名公演で割とたくさん拝見出来、
もう、すっかり主力若手でなんて頼もしい。


主力若手と言えば、同じく今回襲名公演でご活躍隼人丈も、立ち姿、声も綺麗で(←重要)今後も期待大です。

幕間にて、わたくしの前のお席の、私より少しお若いくらいの殿方御一行様、
「隼人、イケメンやなあ」
「隼人はイケメンや」
「ええよなあ隼人」

男性から大人気の隼人丈。


お二人とも、続く『土蜘』にも登場するので楽しみ。



『ゴースト&レディ』

@名古屋四季劇場


いきなり8分の6拍子という大好物攻撃で一気に惹き込まれる。

今回もご一緒、チケット手配くださったMさんは東京公演千穐楽配信をご観劇、萩原グレイにどハマりなさったが、
そのお気持ちが一曲目からよく分かる。

コレはハマる。

…しかし、わたくしの大本命はやっぱり岡村デオンでした。


昨年春。新作ミュージカル開幕、とのことで。

四季のグッズオンラインショップを覗くと、なんだか好きな雰囲気の世界観ぽい。

一気に気になり始める。

漫画が原作、とのこと。
タイトルからして、ミュージカル化からして、そしてグッズの雰囲気からして、
トートとシシィ的なアレか、夢夢しい女子好み然としているのか、と思いきや。

絵のタッチは少年マンガ寄りの劇画調、
クリミア戦争が舞台の、戦場は勿論、戦場外でも繰り広げられる激闘、
何やら人間の負感情を具現化した〈生霊〉がゴロゴロしている。
え、コレを舞台化!?ミュージカル化!?
全く想像できない、という、
原作を手にした時点での観劇前感想でした。

開幕後。
お気に入りの岡村美南さんがデオン役で、その扮装写真が美しく、
当初は正直、それだけが観たい一心でした。

デオン。
川島芳子みたいだなーと思っていたら実在人物だった。
シュバリエ・デオン。
猛烈に知りたくなった。


実際観劇してみると。
〈生霊〉はどう表現されるのか、気になっていたのですが。

あのくだりはほぼ完全にカットされていまして、
キュレーターも登場しなくて、
舞台化に際しての整理整頓は見事でした。


原作を読んだ印象からは、グレイは次元大介風味の感想だったのですが、

一曲目『奇跡の夜に』美しくも物悲しいアリアで一気に客席を鷲掴みしておきながら、
時々謎のべらんめえ調だったり、ボケもスマートで、
次元大介をよりコミカルにした感じ。

あと、原作読んだときから思いましたが、

「死後は劇場に住みつきずっと観劇している」

よくも私の将来の夢をバラしてくれたわね。
私は一ヶ所に留まらず、世界中の劇場をまわるわよ。


ゴースト観と自己紹介の楽曲『俺は違う』では、
そんな芝居大好きグレイさんらしく、ゴーストたちがギリシア劇の仮面の様なマスク装備だったのが佳い。

それから、全編通して照明効果が見事。
『絶望のどん底で』で、グレイが当面の生き甲斐?を見つけ、
意気揚々と俺様が主役だあ言うてる、最前まで青ざめ真っ白だった顔色に赤みが差す。

ちょっと人間くさいこと言っている場面では、暖色系の照明を当てているのではないかとおもう。知らんけど。


作品を象徴する楽曲、場面でもある『不思議な絆』での、
あの二つの階段のフォーメーションも素晴らしかった。

階段の動き見ているだけで感動した。


『走る雲を追いかけて』は、これから戦場へ赴くという勇ましい楽曲で、曲調もマーチなのに、

女声のみの和音が美しくて讃美歌の様だ。


吾輩、腹立ちます。
超ーーー嫌い、こういうおっさん。

で、あの棒読み感がまた、絶妙に神経を逆撫でしてくる。

瀧山久志氏、巧いわ。巧妙すぎるわ。
客が、芝居観ていて登場人物に腹が立ってくる。
悪役冥利に尽きるのではないでしょうか。

正論、正義感、倫理観がブレず、真っ当に仕事しようとしている若者を、
セコくて心卑しい、年功序列という魔法に乗っかってきただけの小物おっさんが邪魔をする。

本当、よくあるけど、
本当、腹立つ。

既視感と憎悪しかなかった。
ああ、きっといま、私の〈生霊〉が暴れているんだわ。
フローに呆れられてグレイがつまらぬものを斬りにくるんだわ(どあほう)。

正直、デオンにはあんなおっさんに憑いていて欲しくなかった。

『偽善者と呼ばれても』
フローとグレイとデオンと吾輩の迫真の四重奏は、
正直、歌詞が総て聴き取れなかったので、
あの迫力だけひとまず堪能し、
CD買ったし、後ほど確認しよう。


大本命・デオン・ド・ボーモン。

名古屋で開幕後、毎日のようにキャストをチェックし、
観劇日当日まで確認しておりました。
岡村デオン❤️なかなか出てこなくて、やっと出てきたー!ら、幕間になっちゃって泣いた(涙)。

原作では語られない複雑な生い立ちがハバネラでのダンスシーンで語られる演出が刺さりました。

生前デオンがまた、想像以上に美しかった。
原作終盤の方は、もう、モンスターの様になっていたが、
ミュージカルでは最後の最後まで美しいままで救われた。


Mさんは「デオンの目的、信念の先が何故ああなるのかが分からない。私には、デオンは難しい…。」
と仰っていまして。

え、や、私もそんなところまで考えていません、
シンプルに単純に岡村さんのデオンのカッコよさ、美しさを讃えているだけなんです。

キャラがどうとかすらも、気にしていません。
例えただのど変態だったとしても、
あの姿が好きなだけなんです。


Mさん、相変わらず洞察力深くて作品にも大真面目に向き合っていらして、
片やわたくしただのミーハーで、
もう、なんか本当にすみません(恥)。





『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』
↑2018年公演より。

主人公はワルいやつだ、という認識しかありませんでしたが。

や、基本ワルいんですけれど、

大変人間味溢れる、魅力溢れる主人公でした。

人外菊さんがお似合いになる(個人の感想です)し好きだし、と書いておりますが、
こんな、俗のカタマリ、ザ・人間もとても愉しい。


終盤での大家さん(彌十郎丈)と、
モメてキレて、
罵り合い、怒鳴り合い、
ヒートアップし見合って見合って、

最後ちゅう❤️する(←ダチョウ)のかと思った。

あのリズム感、グルーヴ、テンション、最高。


場面の転換も多いので、
世話物の醍醐味、お江戸の生活風俗あれこれをめぐる所作やらファッションやらのチェック事項も都度盛り込んであり、
毎場面が観どころ。

そういえば、祖母は美容室のこと「かみいさん」と言っていた。
幼少時から美容室のこと、と何となく理解していたし、特に何もツッコむこともありませんでしたが、

今になって語源、所以を知りました。


菊さんの新三役は三度目とのこと。

嘗ては、初役をおつとめの際は可能な限り観劇していたものですが。

初演は観られませんでしたが、漸く新三観劇が出来ることに感謝。

菊さんはご結婚されてから一層芸幅が広がり、
挑戦されるお役も一気に多彩になられた(個人の感想です)。

が、その頃、私自身生活基盤が変わり、歌舞伎に拘らず観劇から離れてしまい、
菊さんの1番おもしろい時代を体験できなかったことが悔やまれていたので。


前回2023年公演時の勝奴役は菊次丈だったそうで、今回も続投。
私にとっては、音一朗丈、のときの方が馴染みがありますが。
今や劇団の筆頭立師。

歌舞伎を観始め、少しずつ色々わかるようになってきた二十代はじめ頃の感想として、

主に菊五郎劇団、澤瀉屋さん一門(二十一世紀歌舞伎組。中日劇場(わたし生まれ育ち名古屋)にて毎年確実に公演があったので。)を観劇しておりますと特に、

お弟子さん方、名題、名題下さん方々による立回り、アクション、アクロバット(?)のご活躍が多く、
でも割とさらっとしか紹介もされず、
早変わり等の吹替などおつとめになっても、その場合パンフレットに絶対お名前が載らない(←コレにはちゃんと理由、意図があるのでしょうけれど。分かっているけど、やっぱりなんだかさびしい)。

無論、メインキャストの役者さん方々あってこそなのですが、
個人的には特に役名のないお役、群舞や大勢の立回り、後見などで活躍していらっしゃる役者さん方々⋯

何なら役者さんに留まらずお衣裳や演奏、小道具、照明などの造り手さん方々のスピリットに至るまで、
舞台観劇では可能な限り隅々まで楽しみたい質なので、

メイン以外にももっとスポットを当ててほしい!と思っていて。


そんな中、
菊さんは、お弟子さん筋も適材適所でどんどん抜擢なさっていて、好き。

お弟子さん方々をお誕生日に姫抱っこしたり、
「遊び仲間でもあります(笑)」と仰る彦さま、好き。


私が記憶している限り、
ナウシカでの庭の主に始まり、ユウナレスカ様、急遽の代役でしたが先代萩の八汐(通常は立役の役者さんがお勤めになる)にキャスティングの芝のぶ嬢、違、芝のぶ丈はその最たる適材適所だった!

贔屓目120%は重々承知しておりますが、
八代目はプロデューサーとしても冴えていると思う。


お熊(米吉丈)にはモデルとなった実在した人物がいるそうで、
それが、え、モデル…?と信じ難い、首飾り事件のド・ラモット夫人を彷彿させるような悪女だそうで、
それはそれで実話、実録側も調べてみたくなったり。

その後、そのお熊と忠七(萬太郎丈)がどうなったとか、
大家さん、人助けに来たのに(なかなかセコかったが)災難に遭ってかわいそう(涙)とか気がかりが残りつつも、


新三と対を成す様な正義のカタマリ・源七親分(錦之助丈)のオトナ対応したのにやっぱり逆襲に来る熱血振りがカッコ良く、

いい感じに口上で結んでしまう歌舞伎の清々しさに丸め込まれた感もあるが(笑。良い意味で)、

結局は気持ちよく劇場を出ることが出来る不思議。


次々にイベントが発生してなかなか忙しくて楽しいので、
是非またリピートしたい作品。





菊さん、菊之助さん襲名披露演目!

先ずは舞踊。


『うかれ坊主』


躍動感があるが重力を全く感じさせない、
ブレない体幹が美しく、プリエの行き届いた、本当に綺麗な舞踊。

小道具も多彩、
ユーモアもあって、観応えたっぷりの舞踊なのですが。

のハズなのですが。


目のやり場に大変困るんです。

もう、ヘルベルト(ダンス・オブ・ヴァンパイア)なんです。

あの、シアー上着といい、もう、完全なる和製ヘルベルト。
日本初演、吉野圭吾さんの。

スポンジ持っているのがヘルベルト。
桶持って来るのが源八。
二人ともくるくるまわって楽しそう。
まさかの温泉コラボ(←源八坊主の桶は風呂桶に非ず)が結成された私の脳内(←もう黙れ小僧)。

本日お昼のお席は五列目どセンター。

なので、ほぼ全編真正面で踊られているという最強席なのですけれど、
前のお席の方が結構おおきな方で、足元が若干見辛く、

見えないなーと顔や身体を移動させると、もれなく真正面に菊さんのお褌が。


うん、今回ばかりは最前列でなくて良かったです。

夫のお褌だってまず見ないのに
(うちの旦那様、家の中でも絶対上下服着てますので。実父はぷりけつで家庭内行脚していたが)。

や、菊さんのお褌は見たことありますよ、
本水使いの迫力満点の殺陣、
殺陣まわりのスピード感と外連とアクションが物凄くて、そちらに圧倒されていて、
お褌一枚姿でもそんなに気にならなかった。


ヘルベルトは、いかん。
あの、シアー上着が、いかん。
いっそお褌のみ、パンイチのみの方が自然かもしれん。

その昔スタイリング(わたくし服飾出身)とか心理学でやったぞ、
ダイレクトに完全に見えるよりも透かして見える方がミステリアスを強調する視覚効果がうまれるだのなんだの。

うかれ坊主ならぬミステリアス坊主。

洋式お褌のヘルベルトも相当うかれている場面だった。
なにこのシンクロ。

観劇後はのぼせた様な、
平衡感覚を失いそうになっていた。


ダンスで身体のラインが見えるのは寧ろ嬉しいことなのだけれど、
えっと、もう少々、布、多くなりませんかね(涙目)。


『羽根の禿』

正真正銘子供の踊りなので、等身大で無理なく、
首をふりふり、下駄をカラカラ鳴らして実に愛らしい。

お一人で丸一曲踊られるのは初めてではないでしょうか。


禿ちゃんとミステリアスという、
その全く異なるキャラクターでの組み合わせは、嘗て六代目菊五郎丈が演じ分けて人気を博していたそうで。

それも是非観てみたい。

禿ちゃんを大人が踊る際は、セットや後見さんのキャスティングなどを工夫するそうで。

アナログ舞台ならではの先人たちの知恵盛りだくさん。


⋯⋯


ごめんなさい、菊之助さん。

この幕はお父上のミステリアスに持っていかれてしまいました。

名古屋の二人花子さんで挽回させてください(土下座)。