原田コーチのブログ -16ページ目

チッタ ブリッティ ニローダ

 SAN FORD DESIGN EBONY 14420


とある鉛筆。中学の時小笠原先生が、「これ一本でやれ」と言った4Bの


三菱鉛筆などとも比べ物にならない、芯の太いやつ。これを彫刻刀で削


っていたらやってしまった。左手の中指の腹をブサリ、じわじわと赤い物


が滲み出てくる。すこしテンションが上がったからか、他に有効利用のア


イデアが浮かばなかったからか、仕方なくスケッチブックに字を描いた。


その滲む血液で・・・今考えるとちょっと怖い。



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そもそも今日は風景でもスケッチしようか、などと思っていた。しかしたっ


たこれだけのことで心変わりしてしまった。



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 漢字で「心 彩 彩」と描いた。片岡鶴太郎さんの画集のタイトルを、昨


日古本屋で見つけた。「心 彩 彩」~片岡鶴太郎~の中に、僕、妻、亡き


母の名(心 彩 鶴)が連なっていて、本棚の横を通り過ぎる辺りで強力な


磁力が働いた。コメディアンだった彼が絵を描いているのは知っていたし、


その筆致がとても繊細であることにも好感を持っていた。しかしこの度は


タイトルの磁力も手伝って、パラパラとページを捲るうちに、体の奥に涙が


滲んでくるのを感じた。



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 そこで今日はちょっと風景のスケッチでも・・・となり、ブスっといってしま


った。しかしこう書いてみてはっきりしてきたことがある。僕は絵を描きた


かったのではなく、やはり字を連ねたかったのか・・・・。左手の中指には


申し訳ないが、お陰でベールが剥がれて本質が顔を覗かせるに至ったか。


うーむ血で風景を描くのは大変そうだから、三文字くらいならいけるかも、


の心理に始まったことなのだが・・・。



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 このような肉体に纏わる事故は時として人を謙虚にし、様々な欲望を無


力化することがある。今日も「あの人が身に付けている防水の手袋が欲


しい」「ジャズのライブですか・・・サックス、いいですねー~自分のバンド


あったら楽しいだろうなー」「何であの娘はあんなにスカートが短いのよ」


とかいったアレコレは、一陣の風と共に消え去り、指を舐めたりスケッチ


ブックに擦り付けたり、といった創作に全身全霊を集中していけるのだ。


ちなみにそれ程の傷ではなかったんですが・・・。


 チッタ ブリッティ 二ローダ。ヨガの師は、心の動き(作用)を抑止(コ


ントロール)して下さい、と説かれた。自力ではなく何者かの導きにより、


ほんの僅かながら心の揺れが静まっていくのを感じた・・・うん。

2008冬 ~神頼み~

 昨日、ちょっと嫌な予感はしていた。


今夜は熱にうなされて、頭がグワングワン揺れている。こんな時は


神頼み。神様、ようこそ僕の部屋へ、狭いところですがまあゆっくり


していって下さい。お願いですから悪者を退治して、普通の体に戻


して下さい。贅沢なことは一切考えません。何しろ真っ直ぐ立ってい


られないものですから、こんな時くらいは僕も謙虚になるわけです。



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 考えてみたら、くも膜下出血で他界した父の魂は、神に頼んでも


もとの体に戻れないことを、静かに受け止めていたのではないか。



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「もとの体に戻して下さい」なんてお願いは、とても脳天気で楽天的


に過ぎるものだ。きっともとに戻れる、なんて勝手に思い込んでいる


のだから。ヨガの師匠は「私たちの体は常に変化し続けていて、留


まることはない。変わりゆく先に宇宙との合一がやってくる」と説いて


くださった。そうか、戻るのではなく変化するのか。新しく生まれ変わ


っていく細胞や血液。しかし今の僕は、自分の体に信頼が足りない。


「自力でいけるという内は、自力でお進み下さい。いけない時に祈る


のです」・・・僕も遅ればせながら祈りを捧げます。今の自分と宇宙の


状態、いや今はせいぜい部屋の状態、全てを真っ直ぐに受け止めま


す。次の瞬間がやってくることを、心密かに願っています・・・。



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成功と失敗

 今日の、テニスのクラスでいつも行うゲームが、とてもエラーの


少ない質の高い攻防となり、来られた皆様も自然な笑顔を残して


帰られた。いつもより満足していたように見てとれた。そこでちょっ


と、成功と失敗について考えた。テニスはとても失敗(エラー)の多


い競技で、得点の半分以上がミスによるものだ。練習中も頻繁にミ


スがでて、すみません、おっと、ソーリー(テニスをしない方からす


るとなんで急に英語なの?ってな独特のムード)など、様々なリア


クションが表現される。経験が長くなればこのエラーの経験も深ま


り、リアクションの質も洗練されていく。失敗に大きく動揺することな


く、時折ある成功に喜びを感じて歓喜する。



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 いつもは多くの失敗に笑顔で耐えていた皆様が、失敗よりも成功


の頻度が上回るゲーム展開に喜び、幸せを表現していたのだ。や


はり成功は嬉しい。では失敗は?・・・・・・かつて、まだ僕は20代で


シングルスの試合に拘り、それなりに練習をしていた頃。試合に負


けると、自分の存在そのものを疑われるような感覚、プロ選手でもな


い自分でありながら、そんなショックを覚えたものだ。そしてたとえ対


戦相手が途中棄権しようとも、勝つということは何にも変えがたい幸せ


であった。しかし今はちょっと異う。成功や失敗を重ねながら、最終的


なる成功、すなわち勝つことを最高の願望だとは言えない。願望はす


でにコートに立っている時点で達成されていて、そこで行われるすべ


ては、幸福な景色を彩る映画のように眼に映っている。



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 ヨガのクラスでお話しする時に「今日、こちらにお越しいただけたこと


で僕は幸せで、皆様は、ヨガを学ぼうと思った時点で、すでに成功して


います」などとのたまったことがある。今思うと随分不遜な物言いだった


とも言えるが、テニスのゲームがその感覚に近付いてきているようだ。


 「すでに成功しています」ではなく「すでに幸せです」と言いたいのかも


しれない。さらに不遜な発言なので、直ちに撤回すべきだが、今はそん


な気分。・・・・あっそうか・・・レッスンでみんなの笑顔を見たから・・・・・・


成功した、あの・・・・やっぱり成功した方が嬉しいのだ!とほほ・・・

大ちゃんへ

  コメントは控えます、なんてあったけどぜんぜん控えないでくれ!


思いのたけをぶつけておくれ、今日が今日らしくあるために。想えば


鶴見に一人暮らしの頃、夜中に公園に出てシャドウボクシング。想


いを形になんかできずに、ジョギングで古本屋へ。薄っぺらい文庫


のタイムセール、50円。薄っぺらい大人の恋愛物語。ロラン=バル


トやらモーツアルトやら、ちょっと偉そうな引用句と一緒にインテリジ


ェンスのうるさいこと。それでも読み進めるうちに、その二人の行方


が気になってゆく。お互いの手に触れ合うだけで感じあえる、愛の


行方が。やはりそうか、とてもせつない終局。せつなさに勇気をもら


って、帰り道もジョギング・・・・!



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アヌローマヴィローマ 2


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 朝日が昇り始める頃、公園や原っぱでアヌローマヴィローマ。


左右の鼻腔をつかって体内の、温度調節、湿度調節、神経、メンタル、


全部調節。楽な姿勢で座ります。背筋を伸ばし、リラックス。右手の親


指で右の鼻を塞ぎます。左から4カウント吸い入れたら、薬指か他の指


で左も塞いで16カウント、呼吸を止めます。右を開けて吐きます、8カウ


ント。そのまま右から4カウント吸い入れ、16カウント止めます。左を開け


て8カウント吐いて、これで1往復。3往復から始めて、気持ちがよければ


20往復くらい行う。目を閉じていても、辺りがだんだん明るく感じられるよ


うになり、胸から、眉間の間から、温かさが全身に伝わっていきます。



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ここのところは、時折冷たい北からの風。暖かい格好で、陽のあたるところ


を探しましょう。始めは沢山吸いたいし、止めてしばらくすると苦しいのは当


然です。僕の毎日を眺めてみても、沢山集めてがんじがらめになったり、静


かに止まって考えることをせずに、目先の興味に心を移してばかりいます。


仕方ありません、今の自分を受け入れて、マイペースで始めましょう。だんだ


ん気持ちよいタイミングが、自然にやって来るのです。なんて・・・・。方鼻づつ


呼吸した後で両鼻を使うと、何と気持ちの良いこと。自然呼吸の後に、再び止


めて、また自然に・・・。今日も一日、気持ちよくスタート!



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大ちゃんへ

 ゴンさん、て大ちゃんだった?


まったく鈍感なものだ、もともと鈍いほうなんだよね。例えば誰と誰が


恋仲だとか、その手の鈍さもさることながら、流行に対してもかなり遅


れて反応するほうなのだ。そして遅れているせいか、かなりじっくりと


嵌っていく傾向で、体系的に本などを参考に、ある程度網羅しなけれ


ば気がすまないようだ。テクノポップに始まりニューウエーブ的なあれ


これ、ネオアコ、パンク、アンビエント、アシッドジャズ、やがて年を重ね


ソウル、ファンク等に馴染める頃には、やっとある種の執着から開放さ


れた。


 最近は金曜の朝、ジョン=カビラさんの声と、程好く洗練された、ある


意味凡庸で退屈な、しかしながら適度に刺激的なポップミュージックを、


100パーセント安心しながら楽しんでいる。大ちゃんが言っていた例の


やつ・・・「しんちゃん、うちら年とったんだよ」・・・ほんとだね・・・!



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長男と次男

 テニスの話が続きます。


利き腕側のショットをフォアハンド、反対側をバックハンドと言い、テニスを


始めて間もなくは、圧倒的にフォアハンドのショットの方がやりやすいもの


だ。そこで「コーチ、私、どうしてもバックが苦手なんです」てな発言を、と


ても頻繁に耳にする。そこで「それはとても自然で喜ばしい状態。フォアが


長男、バックが次男と考えて、何もかもが遅れをとっていることを当たり前


ととらえ、バックの歩みのペースに合わせて、成長を見守ってあげてくださ


い」などとアドバイスする。「長男と比べて同じように歩いて、同じように話を


するにはじっくり時間をかけてあげないと」僕にも長男次男がいるせいか、


舌はなめらかに調子をあげる。「長男ばかり相手にしているのに、いざ本番


で次男がミスをして~だから次男は駄目男なのよ~なんてあまりに酷いと


思いませんか」などなど・・・・。実際、世界で活躍するトッププロは皆、バッ


ク以上に強力なフォアハンドを武器に戦っている。



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 そしてやがて・・・「なんだか最近フォアが打てなくなっちゃって」となる。


「なるほど、OOさんも随分テニスが深まってきましたね」などと答え、「長男


ばかりを可愛がっていたのに、手のかかる次男に掛かりっきりなんだから、


今一度長男の立場に帰って考えましょう」なんて、まるで教育学の権威みた


いな語り口調だ。エスカレートし過ぎか・・・。運動の特性から言って、稼動範


囲の広く応用の幅もあるフォアハンドは、長男次男の域を超えて、バック以


上に難しい面がある。そのことを感じるまでテニスを続けたことが何よりだし、


フォアを克服することで、今度は勝ちの喜びなど(勝たないまでもショットを


克服する喜びはとても気持ちの良いものだ)を手にするようになる。何しろ


とっても自然で喜ぶべき道程なのだ・・・・!



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リアクション

 今日のテニスレッスンでの話。


テニスはとてもエラーの多い競技である。プロの試合も、6割がミスによる失点。


中でも、それほど難しくない状況でのミス(いわいる凡ミス)のことを、アンフォー


ストエラーと言ったりする。そしてこの手のミスに必ず付いてまわる問題が、悲観


的なりアクションなのだ。リアクションがほとんどないぐらいに、冷静でいられるプ


レイヤーはかなりのベテランで、試合慣れをしている。レッスン中に多いのは「うわ


ーっ」とか「ひゃー」、「きゃー」などの悲鳴系(主に女性)や、「何でだー」、「おいっ」


など自責系怒り表現(主に男性)だ。



 そこで、今日もつい指摘してしまった。「悲観的ではない、前向きなリアクション


のほうが次のプレイに集中していけますよ」「そのことはパートナー(ダブルスにお


ける)を意識したうえで、コントロールすべきテクニックです」・・・かなりレベルの高


いクラスということもあって、いきおいリクエストもハイレベルに・・・。前向きな声色


であれば「あれーっ」や「ほっほーっ」などと叫んでいるコーチや選手もいる話。お


勧めはできないが、ラケットを投げたり大声をあげることで、気持ちのリセットがで


きる選手もいる、などという話をした。  しかし・・・。



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 「きゃーっ」て悲鳴をあげるくらい必死に対処している生徒の方に、はたしてこの


ようなアドバイスが有効なのであろうか。いいではないか、ありのまま、自然に沸き


起こる表現にまかせても。コントロール?コントロールできていないことにこそ、リア


ルな輝きがあるのだ。うーむ、また今日も過剰なアドバイスを・・・。これもコントロー


ルしきれていない自分のリアル。自省が慈愛に移り変わるまで、ちょっと時間がか


かったりするのです・・・・!



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1986秋

 アオキ、出席番号はいつも一番だった。中学一年の時だけ三番目。


相、相沢、自分の順でとても新鮮だった。いや、正直にいうと悔しかっ


た。一番が当たり前で、整列すればいつも先頭。面倒だから、とか適


当な理由で学級委員になり、ホームルームを仕切っていた。そのうち


リーダーやキャプテンと呼ばれ、責任のようなものを負わされても、嫌


ではなかった。そしてハラダとなって高2の秋、51人中44番目。我こそ


は、誰よりも先んじて、がんばって一番を目指すぞー。知らず知らず、


一番を維持するために奔走していた10年間。なんだ、ただ名前が”あ”


から始まっていただけではないか。4月生まれだったことも勘違いを助


長した。幼稚園の年長の秋、母親が自身の誕生日に再婚して”あ”に


変身した。当時は巨人と呼ばれる程、同級生に較べ長身だったせいで、


かけっこ、腕相撲も、負けは許せなかった。それが・・・・・・・・・・・・・・



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 どう逆立ちしても一番にはなれない44番の”は”。もう、がんばらなく


ていいよ、無理しないでいいよ、ゆっくり後からついて行くのも素敵だよ。


 

 

 素敵だった。不思議なほど肩の力が抜けて、リラックスできるのだ。


教室のすべてが見渡せる、最後尾からの眺めの気持ちよいこと!人


と較べる人生とは金輪際おさらば。晴れて自由の身になったのだ!



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 17歳の男が、晴れて自由を謳歌。それは糸の切れた凧そのもの。


無断欠席、遅刻は当たり前、弓道部を急遽退部しバンドに走る。ライブ


の後の打ち上げで飲み会を主催、メンバーが警察官と居酒屋内で口論、


次の日前代未聞の100人職員室呼び出し、念入りな聞き込み調査の


後、主催の僕らを含め60人が停学処分となった。名前の変更は、大い


なる意識の変革をもたらした。以前であれば、まずいかな、と思われる


事件を、面白くなってきたぞ、なんてワクワクしながら恍惚を楽しんでい


る。周りの人に、たっぷりと迷惑をかけながら、意気揚々、ポケットには


坂口安吾、少し気に入らないことがあれば通学路変更、入館料のいらな


い美術館のロビーで半日読書、それに飽きると景観のよい公園を探して


都内を歩く歩く・・・。自由とは、かくも無残な退廃を意味したのでした・・・。



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1986夏

 六月も終わろうとしていた。ここのところ一週間、一日おきに雨が降った。


今日は全校集会、僕は文化祭実行委員とやらで、二千人の生徒の前で報


告しなければいけないことがあった。一つは文化祭での各委員の仕事内容


について。もう一つは僕の名前が変わったこと。



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「今日から青木ではなく、原田と呼んでください」十年の間慣れ親しんだ青木


は卒業、小学校にあがる前まで名乗っていて、かなり愛着の大きな原田に


帰ってきた。ちょっと受けるかなってな具合に、あえて目立つ状況を選んで


発表し、しめしめクールに言えたぜ、なんて悦に入っていた。しかしみんなの


リアクションは、ほんの少しどよめいた程度だった。


当たり前だ。今考えれば、自意識過剰ともとれる自分の行為がとても恥ずか


しい。



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