言わないのは同情のせい
知ってる女がいる
黄色く塗られた二メートル四方の電車の中に
女はいた
相変わらず下劣な口紅と、汚いファンデーションで顔を塗りたくっている
髪の毛は痛み、元の色が何色なのかわからないどぶのような色をしている
そんな身なりだというのに、周りを見下したような姿勢で立っている
自信だろうか?
それとも、虚栄心だろうか?
周りの眼鏡をかけた会社員たちも、冷笑を浮かべている
女は、それに気付いていない
そういえば、いつだったか女は
「平等であるべきよね。格差社会も優劣も順位だっていらないわ」
なんて事を、血生臭い唇をぱくぱくと動かしながら言っていた
なんと、素晴らしい考えなんだと、私は拍手を送った
知ってる女がいる
その女は、タウンワークを両手一杯に広げて、読み耽っている
それで、見下したような姿勢をしているのだから
笑いを誘う
電車は混んでいる
どこも余分なスペースはなく、びっしりと人で埋め尽くされている
女の広げているタウンワークのスペースを除いて
平等ねぇ
私は、そう一人呟いて、目を閉じた
帰ったら、妻にこの哀れなヒューマンドラマを話そうと思いながら
黄色く塗られた二メートル四方の電車の中に
女はいた
相変わらず下劣な口紅と、汚いファンデーションで顔を塗りたくっている
髪の毛は痛み、元の色が何色なのかわからないどぶのような色をしている
そんな身なりだというのに、周りを見下したような姿勢で立っている
自信だろうか?
それとも、虚栄心だろうか?
周りの眼鏡をかけた会社員たちも、冷笑を浮かべている
女は、それに気付いていない
そういえば、いつだったか女は
「平等であるべきよね。格差社会も優劣も順位だっていらないわ」
なんて事を、血生臭い唇をぱくぱくと動かしながら言っていた
なんと、素晴らしい考えなんだと、私は拍手を送った
知ってる女がいる
その女は、タウンワークを両手一杯に広げて、読み耽っている
それで、見下したような姿勢をしているのだから
笑いを誘う
電車は混んでいる
どこも余分なスペースはなく、びっしりと人で埋め尽くされている
女の広げているタウンワークのスペースを除いて
平等ねぇ
私は、そう一人呟いて、目を閉じた
帰ったら、妻にこの哀れなヒューマンドラマを話そうと思いながら
定価1230 円の愛
首輪を買おうか悩んでいる
僕は猫を飼っている
大袈裟とかじゃなくて、凄く可愛らしい
毛並みが美しく、気取った目と、気の抜けた口が可愛らしい猫だ
もしかしたら、違うのかもしれないけど
僕からしたら、勿体ないほどに可愛らしく、優しい猫だ
その猫は、自由を好んでいるようには見えなかった
僕の周りを犬のようについてきた
別の野良猫とじゃれる僕を、恨めしそうに見ていた
隠そうとしているんだろうけど
バレバレだ
とにかく、僕はその猫が気に入っていた
離れたくないし、離れてほしくなかった
僕と猫は、ペットショップの前で立ちすくんでいる
店内には、たくさんの色鮮やかな首輪がディスプレイされている
それでも、猫に似合うような首輪は見当たらなかった
猫は、物欲しそうに首輪を見ている
僕は、首輪をつけたくなかった
離したくないんだけど、首輪なんていう汚ならしいものを猫につけたくなかった
猫は物欲しそうに首輪を見ている
僕は
首輪を買おうか悩んでいる
僕は猫を飼っている
大袈裟とかじゃなくて、凄く可愛らしい
毛並みが美しく、気取った目と、気の抜けた口が可愛らしい猫だ
もしかしたら、違うのかもしれないけど
僕からしたら、勿体ないほどに可愛らしく、優しい猫だ
その猫は、自由を好んでいるようには見えなかった
僕の周りを犬のようについてきた
別の野良猫とじゃれる僕を、恨めしそうに見ていた
隠そうとしているんだろうけど
バレバレだ
とにかく、僕はその猫が気に入っていた
離れたくないし、離れてほしくなかった
僕と猫は、ペットショップの前で立ちすくんでいる
店内には、たくさんの色鮮やかな首輪がディスプレイされている
それでも、猫に似合うような首輪は見当たらなかった
猫は、物欲しそうに首輪を見ている
僕は、首輪をつけたくなかった
離したくないんだけど、首輪なんていう汚ならしいものを猫につけたくなかった
猫は物欲しそうに首輪を見ている
僕は
首輪を買おうか悩んでいる
かくかくしかじか
潔癖症というものなんだろう
ひどく気に入らない
理路整然とした僕の性格によく似た部屋
テーブル、椅子、テレビ、エアコン
すべての家具は、レゴブロックのように四角の集合体のようなシルエット
それを倉庫番のように、緻密に、計画的に
四角い部屋の中に嵌め込んでいく
僕の部屋に無駄な余白は一切ない
それが、恋人から送られてきた花のせいで乱れた
花は、四角くない
どうにか、四角くしようと努力したけど、どうにもならなかった
ひどく気に入らない
その花だけが、四角くなく
無駄な余白を産み出している
捨てるわけにもいかない
それは、人徳を問われているような気がして、二の足を踏んでしまう
ひどく気に入らない
その花のせいで、僕は死にたくなる
頭を掻きむしっても、考えは浮かばず、途方に暮れる
僕は、この花のせいで、命を断つだろう
僕は、この花がひどく気に入らない
理由は、それだけで十分だ
ひどく気に入らない
理路整然とした僕の性格によく似た部屋
テーブル、椅子、テレビ、エアコン
すべての家具は、レゴブロックのように四角の集合体のようなシルエット
それを倉庫番のように、緻密に、計画的に
四角い部屋の中に嵌め込んでいく
僕の部屋に無駄な余白は一切ない
それが、恋人から送られてきた花のせいで乱れた
花は、四角くない
どうにか、四角くしようと努力したけど、どうにもならなかった
ひどく気に入らない
その花だけが、四角くなく
無駄な余白を産み出している
捨てるわけにもいかない
それは、人徳を問われているような気がして、二の足を踏んでしまう
ひどく気に入らない
その花のせいで、僕は死にたくなる
頭を掻きむしっても、考えは浮かばず、途方に暮れる
僕は、この花のせいで、命を断つだろう
僕は、この花がひどく気に入らない
理由は、それだけで十分だ