哀しむ隙もない
ただなみだが止まらないだけ
旦那から届いたエア・メールも
冷蔵庫横にたまった空き缶も
肌に浮いたファンデーションも
ただなみだが止まらないだけ
ざあざあと奏でるテレビも
埃臭い絨毯も
青々と茂る観葉植物も
ただなみだが止まらないだけ
真っ白なソファも
その上に置かれたランドセルも
割れた四角いだて眼鏡も
ただなみだが止まらないだけ
ぎっしり詰まった貯金箱も
からからと音をたてるオルゴールも
水垢で濁った姿見も
ただなみだが止まらないだけ
黒と白が混じってきた髪の毛も
動かすと痛む指の関節も
鈍くなった婚約指輪も
ただ、
とにかく、
私のなみだが止まらないだけ
そして、また私は
玄関のチャイムの音で、正気を取り戻す
山田さんが鳴らす
玄関のチャイムの音で
旦那から届いたエア・メールも
冷蔵庫横にたまった空き缶も
肌に浮いたファンデーションも
ただなみだが止まらないだけ
ざあざあと奏でるテレビも
埃臭い絨毯も
青々と茂る観葉植物も
ただなみだが止まらないだけ
真っ白なソファも
その上に置かれたランドセルも
割れた四角いだて眼鏡も
ただなみだが止まらないだけ
ぎっしり詰まった貯金箱も
からからと音をたてるオルゴールも
水垢で濁った姿見も
ただなみだが止まらないだけ
黒と白が混じってきた髪の毛も
動かすと痛む指の関節も
鈍くなった婚約指輪も
ただ、
とにかく、
私のなみだが止まらないだけ
そして、また私は
玄関のチャイムの音で、正気を取り戻す
山田さんが鳴らす
玄関のチャイムの音で
息を飲む反射光
机の上に、今日作った万華鏡がころりと寝転んでいる
特に理由もなく
呼吸するように
また万華鏡を作ってしまった
ぱんぱんに膨れた本棚の横に
雑然と放り捨てられた万華鏡
いくつあるのか数えるのも
億劫でしょうがない
とりあえず、作ったばかりの万華鏡を使ってみようと
万華鏡を手にとり、穴に目を当てた
からからと乾いた音を出しながら
万華鏡は僕にきらびやかな景色を見せる
ぼぅっと、頭が痺れた
ぴりぴりと電気の走る頭を振って、万華鏡を回す
なんて綺麗な世界なんだろう
僕は生まれた事を感謝した
そして、万華鏡から体を離して
部屋にある万華鏡を捨てなきゃいけないと思い
燃えないゴミの日は、明日だったと思い至り
片付けは明日でいいかと、高をくくる
特に理由もなく
呼吸するように
また万華鏡を作ってしまった
ぱんぱんに膨れた本棚の横に
雑然と放り捨てられた万華鏡
いくつあるのか数えるのも
億劫でしょうがない
とりあえず、作ったばかりの万華鏡を使ってみようと
万華鏡を手にとり、穴に目を当てた
からからと乾いた音を出しながら
万華鏡は僕にきらびやかな景色を見せる
ぼぅっと、頭が痺れた
ぴりぴりと電気の走る頭を振って、万華鏡を回す
なんて綺麗な世界なんだろう
僕は生まれた事を感謝した
そして、万華鏡から体を離して
部屋にある万華鏡を捨てなきゃいけないと思い
燃えないゴミの日は、明日だったと思い至り
片付けは明日でいいかと、高をくくる
素晴らしき規則正しい1日
ベルトコンベアーは黙って人を運ぶ
ガァガァと歯切れの悪い物音
僕はたまらず目を醒ました
なんて耳障りな音をたてるんだと、内心訴えながら
左手首にはめたままの薄黒い腕時計に目を落とす
午前8時
そういえば、眠りにつく前より暖かいような気もする
ガァガァと歯切れの悪い物音
ダッダッと足並み揃った足音
そうか、もうそんな時間か
僕はぼんやりと
体を横にしたまま
そう思った
ベルトコンベアーは黙って人を運ぶ
これぐらいの時間になるといつもそうだ
ガァガァとダッダッが交ざった騒々しい物音がする
ベルトコンベアーに運ばれている人間は
何を焦っているのか
決まって早足で歩いている
僕は彼らがどこに運ばれているのか
まったく知らない
知る必要もなく
知りたいとも思わない
ベルトコンベアーは黙って人を運ぶ
そして、僕はコーヒーを淹れようと立ち上がる
ガァガァと歯切れの悪い物音
僕はたまらず目を醒ました
なんて耳障りな音をたてるんだと、内心訴えながら
左手首にはめたままの薄黒い腕時計に目を落とす
午前8時
そういえば、眠りにつく前より暖かいような気もする
ガァガァと歯切れの悪い物音
ダッダッと足並み揃った足音
そうか、もうそんな時間か
僕はぼんやりと
体を横にしたまま
そう思った
ベルトコンベアーは黙って人を運ぶ
これぐらいの時間になるといつもそうだ
ガァガァとダッダッが交ざった騒々しい物音がする
ベルトコンベアーに運ばれている人間は
何を焦っているのか
決まって早足で歩いている
僕は彼らがどこに運ばれているのか
まったく知らない
知る必要もなく
知りたいとも思わない
ベルトコンベアーは黙って人を運ぶ
そして、僕はコーヒーを淹れようと立ち上がる
