おだんご日和 -9ページ目

おだんご日和

Dango茶屋・いちのせの徒然記

 

 

とりあえず、私はその辺にあるCDをダンボール箱に詰めながら「とある人物」へ疑問をぶつけました。

Q「どうして引越し屋さんに頼まなかったの?」
A「見積もりがすごい金額になったから・・・」

Q「ブックオフに売れば?」
A「残したいのと売りたいのが混ざってる状態では、買い取れないって・・・」

Q「何で、もっと早くから取り掛からなかったの?」
A「1週間前から取り掛かってはいたんだよ・・・」

そう言いながら、彼はCD「と、そのジャケットが入った冊子状のクリアファイルを見せてくれた。ケースを捨てて、ファイリングするということだろう。

 

繰り返しになるけれど、この家は腰の高さまでCD、DVD、本が積み重なっている。それらを分類し、ケースから出して、ジャケットをクリアファイルに入れるのか。

たぶん、10年前から取り掛かってないと終わらないと思う。

 

っていうか、CDは1枚たりとも捨てたくないってことか。
CDのジャケットを取り出すのって、けっこう時間かかるよね。
ツッコミどころが多すぎて言葉が出ないでいると、私が納得したと思ったのか、彼は作業に戻って行った。

 

それにしても、これだけの荷物をたった数人で片付けるのはいくらなんでも大変すぎる。私は思い切って聞いてみた。
「あの・・・もう少し人を呼びません?」
「うん、そう思って1週間くらい前にフェースブックで呼びかけたんだけどね」
「あー、みんなに断られたんですか・・・」
「いや、断られたっていうか・・・みんなノーコメントで、それ以来、何を投稿しても『いいね』してもらえないんだよね」
ごめん、やっぱ聞いちゃいけないヤツだった。

 

それから延々とCD、DVD、本、マンガ、雑誌に分類して、ダンボール箱に詰め込み続けました。
ある程度、箱がたまったら、新居へワゴン車で運ぶのですが、夕方までやっても全然、減った気がしない。
きっと、この部屋はダンジョンだったのだ。倒しても倒しても、モンスターがわき出てくる地獄のダンジョンだったのだ。

 

新居は大きな道路から曲がりくねった住宅街に入り、その先の細い路地の向こうにあるので、途中でワゴン車を止めて家まで台車で荷物を運ばなければならない。ここでもむやみに体力を奪われる。

 

ちなみに、なんと2階建ての一軒家だった。
古そうではあるけれど、なかなか立派な家だ。2階に2部屋、1階は2部屋、広い台所とトイレ、風呂などの水回りは新しくリフォームされている。以前のボロアパートとは雲泥の差だ。


「すごい良い物件ですね。家賃いくらなんですか?」
「2万9千円」
「は?・・・前のボロアパートは?」
「3万2千円」
・・・新居、安すぎる。100%事故物件の予感がするけれど、さすがにそれは黙っていた。

 

やがて18時になり、私は言った。
「勇者よ。私は家に帰らなければならない。なぜなら、丸一日子どもと過ごして疲れ切った妻から『ホカ弁を買ってこい』というメールが来たからだ」
勇者は悲しそうな目で答える。
「・・・そうか、オマエもボクを見捨てるのか」
「おいおい勇者よ、手伝いに来た人間に対して、なんて言い草だ」

 

 

※これはフィクションであり、登場人物も出来事もすべて架空のものです(笑)

 

 

 

 

3月も終わろうという今日この頃、私は時々あの冒険を思い出す。

あれから、もう1年が経とうとしているのだ。

友人の引越しを手伝いに行っただけなのに、まさかあんなファンタジックな冒険をすることになるなんて思いもしなかった。

 

この記事に記録されていることは全て、確かに1年前に実際に起こったできごとなのです。

これから書くことは、文字では意味が解らない部分もあるかもしれませんが、それは私の文章力がアレだとか、あなたの読解力が足りないとか、そういうことではなく、人間の理解を超えるものをできるだけ正確に記録しようとすることで起こる、表現の齟齬とでも言うべきものではないかと思います。

 

その日、私は「とある人物」の引っ越しを手伝うために彼の住むアパートに初めて行きました。

午前中に用事があった私が、昼食の後に自転車でアパートに近付いて行くと、遠目からもすでにアパートの階段下に1メートル程度の高さに重なった荷物の山が見えました。

「ちょっと遅かったかな」と思いました。その荷物はアパートの側面をすでに埋め尽くして壁のようになっており、引っ越しは、おそらくほぼ完了しているだろうと思ったからです。

あとは、あの荷物を新居に運ぶだけだろうと・・・。

 

それから5分くらい、私は混乱し続けました。

 

まず「とある人物」は、独り暮らしなのに3K(6畳2間、4畳半1間、キッチンの4部屋)で暮らしていました。

私が、妻と子どもと3人で暮らしていたアパートと同じ広さです。

「ちょっと贅沢な暮らしをしているなぁ」と思いました。

2階にある彼の部屋に入ると、まだキッチンの半分くらいしか片付いていません。

「あれ?外の荷物は何だったんだろう?」

「そうか、残りの6畳と4畳半の荷物か!」

しかし、残りの部屋は全くの手つかずでした。よくわからないな。キッチンだけに、あれだけの荷物が入るはずがないじゃないか。

ちなみに、手つかずの部屋には、腰の高さまでCD、DVD、本がみっちりと積み上げられています。

比喩表現ではなく、本当に、レンガのように「みっちり」と積み上げられているのです。

 

私は、だんだん不安になり、「とある人物」と、手伝いに来ている男性(1名、人格者なので以下、賢者と呼びます)に尋ねました。

「外の荷物は、この部屋の?」

賢者が次のように答えました。

 

「そうです。朝から片づけ続けて、今やっと通路が確保できたところです。そして私は、仕事の都合でどうしても15時に帰らなければいけません。後はがんばってください」

 

私は心の中で「無理です」と即答しつつ、別の疑問が次々と思い浮かび、1秒ほど黙ってしまいました。

「これをたった二人でやってたの?」

「彼は普段、どこで寝ているの?」

「案外、床って抜けないものなんだなぁ」

「なんで、アパートの他の部屋は、すべて無人なんだろう」

1秒後、混乱しながらも私の口は勝手に答えていました。

 

「あはは、こりゃ大変だ。ま、何とかしますよ」

何とかなるワケない。

 

この後、友人に電話をして応援をお願いしました。

「荷物の量がすごいんだけど、もしも時間あったら手伝ってくれない?」

「こんな時だけ呼びやがって(苦笑)、でもいいよ。終わったら、ひさしぶりにメシ食いに行こうぜ」

たぶん終わらないよ。

(この男気あふれる友人を以下、戦士と呼びます)

戦士は、明日(日曜日)の朝から来てくれると言います。ありがたい。

 

こんな大変な仕事に戦士を巻き込んでしまい(そして、そのことに戦士が気付いてもいないことに)心苦しさはあったけれど、この時はまだ「大変だけれど、まぁ何とかなるだろう」という、甘い見通しも持っていました。

 

 

 

※これはフィクションであり、登場人物も出来事もすべて架空のものです。

 

 

 

 

 

長編ストップモーションアニメに、少年を登場させようと思って、いろいろと試行錯誤をしました。

その記録です。

 

 

 

 

↑「高橋宗太郎・・・」シリーズのノウハウを使って試作した少年です。(手に持っているのは、バケツの柄です)

「高橋・・・」の人形より大きめに作り、手足の針金も太めのものを使いました。

しかし、針金が太いため、動かす時にペンチを使わざるを得ず、塗料の剥がれや人形の痛みがひどくなり、長期の撮影では使えないことがわかりました。また、動きの精密さもイマイチでした。

デザイン的にも満足できず、「今までのやり方では前進できない」と感じました。

この少年は、後に「帰れない日々」という短編に出演してもらい、佐賀大学コンテンツデザインコンテストで優秀賞をいただきました。

下記から映像を見られるようです。(リンク切れしていたら、ごめんなさい)

https://www.facebook.com/condeconsaga/videos/871601556205586/

 

 

 

 

↑「出前少年 おとどけ物語」という短編のために作った少年です。

すべて、PC上で合成することを前提にした作品だったので、自立することができません。ガラス瓶にもたれています)

手足や髪の毛など、細かく動く部分は差し替え式にしてあります。

ゴーグルやジェットパックは、撮影に合わせて両面テープで貼り付けます。

しかし、関節や差し込み部分はヨレヨレで、撮影中にポロリと落ちることがあり、両面テープを剥がす時に塗料も剥がれました。

佐賀市映像コンテストで最終週をいただき、作品としては面白くできたと思いますが、人形の表現としてはたくさんの課題が残りました。

映像も見れます。

https://www.youtube.com/watch?v=mD0EGcLNM2k

 

 

 

佐賀市映像コンテストに出品した縁で、佐賀市から依頼されて作ったPR映像です。

少年は小麦ねんどで作りました。

かわいいけれど、精密な動きや長時間の撮影、細かい造形には向いていないことがわかりました。

しかし、大胆な動きやカメラワークなど、PC上で作る利点を確認できました。

映像も見れます。

https://www.youtube.com/watch?v=Q2AlZo1eCII

 

 

 

 

 

↑「あまり細かく造形せず、絵の具で詳細を描いたり、色をぼかしたりしてみては?」と思い、試作した少年です。

私の技術不足、構想力の不足で中途半端なものになってしまいました。

 

 

 

今でも試行錯誤の途中です。

 

 

 

 

 

世間の評判はあまり高くないけれど、私は割と好きです。

 

次々に出てくる未来の道具が楽しいし、映像はキレイで面白いし、いろいろすっ飛ばしながら進んで行く物語はテンポが良く、気楽に見れます。
公開当時は「レオンの監督が作った大作SF」という触れ込みだったので期待ハズレという評価になっているけれど、最初から「ポップなSFアクション」と思っていれば、こんなに楽しい作品はないです。
この後、「TAXⅰ」とか「トランスポーター」をプロデュースしたり、「WASABI」を撮ったりして、実はB級アクションの名手であることが認知されていったのだろうと思います。

 

再鑑賞して、意外と上品なことに感心しました。

お下劣シーンもちょっとあったりして、いやらしい感じはするけれど、汚らしい感じはしません。画面が明るくてキレイなせいか、それともこれがフランスの明朗さなのか。

 

あと、こんなに未来なのに携帯電話がないのが時代を感じさせて面白い。

当時も携帯電話はあったと思うけれど、今のような生活必需品ではなく「最先端だけれど、ちょっとしゃらくさいもの」だったと記憶しています。

 

 

 

 

2016年に公開されヒットした「この世界の片隅に」の片渕監督によるアニメーション映画です。

 

ストーリーも作画も丁寧で好感の持てる作品です。こういう積み重ねがあっての「この世界・・・」のヒットだったんだなぁと思いました。
おおげさなドラマはないけれど、登場人物たちの気持ちと人生がちゃんと伝わってきます。

最初は蛇足に感じていた千年前の描写が、後半のストーリーとリンクして「日々の生活や社会の変化」、そして「変化の中でも続いて行く普遍的な人間性」につながって行く流れは素晴らしいです。

 

ネットでインタビュー記事を探したら、「高畑勲監督の作品に関わることで映画作りを学んだ」との発言があり、さもありなんでした。
片渕監督の他の作品も、見てみたいと思いました。