無人のモグハウスで発見された手記 -32ページ目
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Monkey magic ― 金箍棒

その知名度においては他の追随を許さないであろうこの一品、今回のテーマは“金箍棒”。通りのいい呼び名で言うところの如意棒です。
より正確には、如意金箍棒と言い、「意のままになる(如意)金のタガのはまった(金箍)棒」と言う意味で、名が体を表しています。


花果山の頂きの大岩から生まれた石猿が、仙道を学び、天界に仕えるも放逐され五行山に封じられる。やがて通りがかった玄奘三蔵によって解放され、その弟子となって天竺へと旅立つ。
もはや改めて説明するまでもないほどに有名な、ご存知西遊記の孫悟空が手にする、伸縮自在のこの鉄棒。彼の斉天大聖がそれを手にするエピソードを、抜き出してみましょう。


事の起こりは、悟空が仙道の師の下を去り、故郷である水簾洞へ戻った場面からです。
水簾洞は、彼の留守中に混世魔王という妖怪の脅威に晒されていました。
学んだ術で見事この妖怪を退治た悟空は、こうした事が二度と起こらないよう、配下の猿たちに武装させ、水簾洞の守りを固める事にします。
しかし、猿たちが調達してきた武器はどれも、仙道を学んだ悟空には軽すぎて、今一つ手に馴染みません。そこで配下の一頭がこう進言します。
水の底にある、東海青龍王敖広が住まう水晶宮には、数多の宝物があると聞きます、そこになら、美猴王(悟空の二つ名の一つです)の手に合う得物もあるのでは、と。
これを聞いた悟空は、早速に水晶宮へと赴きます。


突然現れ、厚かましい要求をする珍客に辟易しながらも、東海青龍王は秘蔵の品を次々に悟空に呈示します。ナリは猿でも相手は仙道、下手に機嫌を損ねるよりは、やるものやってさっさとお引取り願おう、という訳です。
しかしこの猿の仙道、どういう膂力をしているのか、出された品のどれもを「軽すぎる」と突っぱねます。ついには水晶宮にある中で最も重い、重さ七千二百斤の戟(げき、と読みます。中国のポールアームの一種です)にすら、ダメを出れてしまいました。


ほとほと困った龍王に、妃が助言します。天河鎮定神珍鉄ならばどうか、と。
天河鎮定神珍鉄とは、その昔天の河の治水に使われた重りで、その重量は実に一万三千五百斤(一斤は約600g、即ち約8tになります)。

案内された先にあるものは、柱と見紛うばかりの、そびえるが如き巨大な鉄塊。
重さはさて置き、大きさが……、もう少し細く小さくなれば、と悟空が呟くと、神珍鉄は見る間に言われた通りに縮みました。念じれば、棍として手頃なサイズにもなるではありませんか。
これには悟空もご満悦、重さも十分(とんでもないエテ公だ…)と、喜んでこれを譲り受けます。
更にものはついでと、鎧だ兜だ靴だと散々に要求し、悟空は水晶宮を後にしたのです。



両手棍:金箍棒/D68/隔412/クリティカルヒット+5%/潜在能力:隔329 命中+10/エンチャント:モクシャ 20/20 0:30/[30:00,0:30]/Lv73~/モ白ナ竜



金箍棒は、木工合成品の猿棍に、更に斉天朱を加えて作る合成品の両手棍です。
元々の名が示す通り、元ネタの如意金箍棒は鉄棒なんですが、ヴァナの金箍棒は木製のようです。ベースになる猿棍が鉄刀木(タガヤサン)製品なので、金箍棒も同様と考えていいでしょう。


さて、性能の方を見てみると……、原典とはまるきり関係のなさそうなものばかりですな。
まぁ、さすがに伸縮自在なんてのは再現のしようがありませんが(そもそも、“如意”もついてないただの金箍棒ですしね)。


ただ一つだけ、この“潜在能力”発動の条件が、ワイルドパママを食べる事なんです。
パママというのは、ヴァナにおけるバナナのことです。即ち、金箍棒と言えば孫悟空→孫悟空と言えば猿→猿と言えばバナナ。



……マジカルバナナ?




クランの猛犬 ― ゲイボルグ

今回はケルト神話にまつわるお話なのですが、カテゴリをどこに分類するかで迷いました。
“ケルト神話”で新たにテーマを分けるほどには、FFXIに登場しませんし……。
とりあえず、“中世ヨーロッパ”に放り込んでおきましたが、こうして考えると、“中世ヨーロッパ”ってカテゴリは相当広い範囲をカバーしてますな。我ながら大雑把過ぎ。


閑話休題。
ともかく、ケルト神話はアルスター伝説郡より、今回は魔槍“ゲイボルグ(正しくはゲイ・ボルグ、またはガエ・ボルグ)”です。
ゲイボルグと言えば、北欧のオーディンの“グングニル ”と並び称される魔法の槍。数多のRPGに登場していると思うので、名前は聞いた事がある、という人も多いのではないでしょうか。
(もっとも、固有名詞を持った槍が少ないというのもありますが。この二本を除くと、あとはロンギヌスの槍くらいのモンです。強いて言えば、本多平八の蜻蛉斬 とか…)


さて、ゲイボルグの持ち主はと言うと、これまたそこそこには名の知れた英雄、クー・フーリン(またはク・ホリン)です。
このクー・フーリン、ケルト神話の主神級、光の神ルーの息子です。
幼名はセタンタと言い、クー・フーリン(“クランの猛犬”の意)の名は、とある館の番犬に襲われ、これを返り討ちにした際、館の主人(クラン)に、代わりの番犬が育つまで自分がこの館の番犬となろう、とした事から呼ばれるようになります。


ある時クー・フーリンは影の国の魔女、スカサハに武術や魔術を教わるため、彼女の城へ赴きます。
クー・フーリンの武勇に感嘆した彼女は、持てる全てを教えると共に、稀代の名槍とその使い方を伝授します。これこそがゲイボルグです。


ゲイボルグは、スカサハが海獣(鯨の事ではないか、と言われています)の骨から作り出した、極めて重厚な剛槍で、槍よりもむしろ銛に近い代物だったようです。
手に持って突くのではなく、投げて使う投擲槍の類(もっとも、この重い槍を投げる事が出来るのは、剛力無双のクー・フーリンくらいのものだったようですが)で、クー・フーリンの手を離れると、30もの鏃が飛び出し、敵軍を一人残らず貫くという、驚きのギミック付きでした(突き刺すと、体内で30の刺が生え、内臓をズタズタにする、という説もあります)。
何だかよくわからない造りをしていますが、この他にも「足を使って投げる」などという記述も見られる、正体不明の武器だったようです。

……足??


ゲイボルグを得たクー・フーリンはまさに無敵で、彼はこの槍を手に数多の戦いをくぐりぬけます。
しかし、そんな英雄にもやがて最期が訪れます。
ケルトの戦士は、“ゲッシュ”と呼ばれる自戒を守って生きており、これを破ると、破滅が訪れるとされていました。
謀略によってこれを破らされてしまったクー・フーリンは、身体の自由を失います。
取り落としたゲイボルグを敵に奪われた彼は、無残にも愛槍で貫かれる事になるのです。
しかし、驚くべき事に彼は零れ落ちた腸をかき集めて再び腹に収め、石柱に身体を縛り付けて尚も戦い続けたそうです。息果てて尚、膝を折らない……、まさに英雄の最期と呼ぶに相応しい死に様と言えるでしょう。



両手槍:ゲイボルグ/D92/隔551/HP+10 MP+10 耐水+7/Lv68~/竜/Rare Ex



ゲイボルグは、イフリートの釜のWyvern族NM、Vouivreから手に入ります。
余談になりますが、このヴィーヴルはフランス地方に言い伝えられる、炎をまとい、紅玉の瞳を持ったドラゴンです。


海獣の骨から出来ているから、耐水なんでしょうかね。

さすがに鏃が飛び出すのは表現出来なかったと見えます。……“ストック:骨の矢尻”とか? 要りませんけど(そもそも、この槍が実装された頃は、ストックの仕様自体ありませんでしたね)。


よく飛竜の頭骨取りがてらに狩られるという話を耳にした事がありますね。倒した、落とした……、でも誰も欲しがらない(誰も竜騎士を上げていない)という、切ない噂と共に。


アテナの怒り ― ハルパー/イージス

今回は、いわゆるギリシャ神話を含む、古代ギリシャのお話です。
お題は“ハルパー”。

数ある神話の中でも、ギリシャ神話はもっともポピュラーなものの一つです。私のような神話ヲタクでなくとも、触れる機会は多いのではないでしょうか。
そんなギリシャ神話の中でも、英雄ペルセウスのメドーサ退治の物語は、とりわけ知名度が高いものと思われます。

とは言え、「皆さんご存知ですね?」で済ませては、このコラムのボリュームに影響します。ここは、例によって薀蓄を垂れさせて頂く事にしましょう。


メドーサは、ゴーゴン三姉妹の末の妹として生まれました(ちなみに、妹に比べて知名度が極端に低い二人の姉の名はステノとエウリュアレ。彼女らも、メドーサが怪物化された時にアテナに抗議したため、一緒に怪物の姿に変えられています)。大地母神ガイアの孫に当たる彼女は、元々は美しい姿の女神でした。しかし、海神ポセイドンと恋に落ちた彼女は、あろうことかアテナの神殿でポセイドンと交わり、アテナの怒りを買います(これには、自慢の髪を「アテナよりも美しい」と吹聴したために不興を買った、とする説もあります。機織りのアラクネ――FFXI内でも、クフタルの洞門のNM、Arachne として登場――の話とごっちゃになってる気もしますが、まぁ神話なんてそんなモンでしょう)。
戦を司る、気性の荒いアテナの制裁は悲惨なものでした。メドーサは、蛇の髪、青銅の爪、そして、見るものを石に変えてしまう恐ろしい風貌を持つ怪物に変えられてしまいます。
そこまでしても尚、気が済まなかったのか、アテナは巡り合わせでメドーサの首をとる運びとなった英雄ペルセウスを、これでもか、というくらいに全面的にバックアップします。

アテナはペルセウスに、鏡の様に光る盾と切り落とした首を入れる、キビシスという魔法の袋を授け、更に伝令神ヘルメスの空飛ぶサンダル(おなじみの“エルメスの靴”です)と冥神ハデスの姿を消せる兜、そして、かつてクロノスが父ウラヌスを去勢する際に用い、またゼウスがティターン神族と戦う際に振るった剣(ゼウスらが用いたのは別の鎌で、ハルパーを持っていたのはヘルメスとも言われています。それによればハルパーが鎌状の剣であることから、この二つが混同された、とされています)を与えます。この剣こそがハルパーです。


ハルパーは、古代ギリシャで用いられていた小振りの剣の一種で、内側(刃のついている方)に湾曲しているという、独特のフォルムを持っています。用途も一般的な剣とは異なり、引っ掛けて掻き斬るという、鎌に近い使い方をしていたようです。

ハルパー



話が中断しましたが、ペルセウスはこれらの神々からの贈り物を用い、見事メドーサの首を取る事に成功します。首は全て事が済んだ後、助力への感謝の証として、アテナに献上されます。
アテナは、その首を自分の盾の中央に飾りました。もうお解りですね。この盾が、先頃実装されたばかりの新レリック最終形態、“イージス(またはアイギス)”の盾です。
解析されたグラフィックデータによれば、イージスにはちゃんとメドーサの顔がレリーフされています。

もっとも元ネタのイージスは、幼いゼウスに乳を与えたアマルテアという山羊の皮から作られた革の盾で、ヴァナのイージスのようにレリーフの施せる金属盾ではないのですが(ここのエピソードは、レリック第二段階への強化に、アマルテアのなめし皮を使うという事で表現されています。Amaltheia が雄羊なのはご愛嬌)。


さて、では最後にもう一本のハルパー、“ホプリテスハルパー”についてご説明しましょう。
ホプリテスというのは、古代ギリシャの一般的な歩兵の事です。雑兵用の廉価版ハルパーという意味合いでネーミングされたのでしょうか。
(余談になりますが、彼らホプリテスは、他に例を見ない特徴的な戦法で知られています。多列横隊で方陣形を取り、ホプロンという巨大な円形盾を、左右の兵士同士密接させ進撃する鉄壁の防御陣形。この陣形は、“ファランクス”と呼ばれていました。)



短剣:ホプリテスハルパー/D27/隔210/Lv68~/戦シ
短剣:ハルパー/D29/隔210/Lv68~/戦シ/Rare
短剣:ペルセウスハルパー/D31/隔210/レジストペトリ効果アップ/Lv73~/戦シ/Rare Ex
盾:イージス/防40/シールドバッシュ性能アップ/被魔法ダメージ-25%/Lv75~/ナ/Rare Ex
白魔法:ファランクス/赤Lv33/白魔法『ファランクス』を覚えます/Rare



ハルパー自体は、当時普通に使われていた剣の一種に過ぎないためか、取り立てて特徴はないようですね。ホプリテスの名を冠しても同様のようです。
ペルセウスハルパーはまさに一目瞭然ですね。メドーサ退治がレジストペトリ(石化耐性)の由来でしょう。……剣じゃなくて、盾の恩恵だったような気もしますが、ここはスルーで。

第一、レリック最終段階にまでいった成果がレジストペトリじゃあ、誰も強化なんかしないでしょうしね。


イージスに関しては現段階未知数と言うよりありません。
と言うか、普通のナイトは仮に最終段階までレリックを強化する事が出来ても、エクスカリバーか…変り種でもラグナロクを選ぶでしょう(盾じゃ専用WSも修得出来ませんし…)。
FFXIのサービス終了までに、この盾を手にする人間が、一体何人いるんでしょうか……。


入手先は、ホプリテスハルパーが獣神印章30枚BC、「龍円舞曲」「模倣魔」「四季悪日」。ハルパーがNM“Citipati”、ペルセウスハルパーが“Xolotl”。NMは共にアットワ地溝に出現する、Corse族です。


イージスは、デュナミス-ジュノでドロップするレリックシールドを、手順に従って強化することで手に入ります。……理論上は。


追記:

また、いつの間にやらアラパゴ暗礁域にLamia族NMとして、Medusa (FFXI表記ではメドゥーサ)が実装されていたようです。

撃破時のメッセージからすると、他の姉妹(FFXI表記ではステンノとエウリュアレー)も追加予定と思われます。


女神と首飾り ― ダインスレイフ

今回は北欧神話からの出典です。
北欧神話というやつは、他のどの神話よりもファンタジーRPGに流用しやすい物語が多く、まさしくこの手のネタの宝庫です。
FFXIにおいてもそれは同様で、実に多くのアイテム・モンスターが引用されています。
その中から、魔性の首飾り“ブリシンガメン(ブリーシンガメン)”と、呪われた魔剣“ダインスレイフ”の物語をご紹介しましょう。


ブリシンガメンは、アルフリッグ、ドヴァリン、ベーリング、グレールという、四人のドヴェルグ(英語圏に伝わると、ドワーフと呼ばれる事になる種族、と言えばお分かりでしょう)が造り出した、世にも稀なる輝きを持った黄金の首飾りです。

ある日このブリシンガメンを目にした女神フレイアは、一目でその魅力に取り憑かれ、ドヴェルグたちにどうか譲って欲しいと申し出ます。
ドヴェルグたちはその申し出を受けるのですが、代価として持ち出したのは、神族随一の美貌を誇る彼女の身体でした。
フレイアは躊躇うものの、ブリシンガメンの魅力には逆らえず、一人一晩ずつ、四夜を共にしてこの首飾りを譲り受けます。


これを見ていたのが、某デジタルデビルストーリーで一部の人には有名な、悪神ロキ。
ロキは、北欧神話の主神たるオーディンに、この件を密告します。
烈火の如くに怒ったオーディンはロキに命じ、件の首飾りをフレイアから取り上げるように命じました。
ロキはフレイアが眠っている隙に、彼女の寝所に侵入し、ブリシンガメンを盗み出したのです。
ブリシンガメンがなくなっている事に気付いたフレイアは、すぐにこれがロキの仕業であり、オーディンの差し金である事を悟り、必死になって返却を嘆願します。
それを受けてオーディンが言う事には、返して欲しくば二人の人間の王、デンマーク王ホグニと、サラセンの王子ヘジンを互いに争わせ、ミッドガルド(要は人間界の事です。ちなみに神界はアースガルド)に戦乱を巻き起こせ、と。
ちなみに、何故オーディンがこんな事をさせたのかはよく解かりません。この人(…ってか神ですが)は時々理解不能な行動をとります。あるいは原典を隅から隅まで読めば理由が書いてあるのかも知れませんが、さすがに私もそれはやったことがないんです……。


まぁさて置き(置くのか…)、フレイアはこれを承諾し、早速二人をそそのかし、互いに憎しみ合うように仕向けます。
しかし、この企みは成功せず、一度は諍いはしたものの、逆に二人は互いを認め合い、友情を深める始末(「オマエやるな」「へへ、オマエもな…」ってやつですか)。
困ったフレイアは、ついに魔法をもってヘジンを狂わせ、ホグニの妃の殺害と、娘のヒルドの誘拐を実行させます。更にタチの悪い事に、全てが終わった後に彼を正気に戻すというオマケつき。…ひでぇ話。
ヘジンが操られていたとは知らず、怒り心頭でヘジンを追うホグニ王に、ダメ押しとばかりにフレイアが与えたのが、一度抜かれれば血を見るまで鞘に収まらない魔剣ダインスレイフです。
とある島にヘジンを追い詰めたホグニに、ヘジンは全てを話して許しを乞います。ヒルドも証言し、ホグニは事情を理解してその怒りを静めたのですが、時既に遅し、凶悪なる魔剣は、既に抜刀された後だったのです……。


これがブリシンガメンにまつわるお話ですが、何とも理不尽なストーリーです。
欲に目が眩んだフレイアが悪いのか、要らん事チクったロキか、はたまた無茶言い出したオーディンか……。
兎にも角にも、全くのとばっちりで悲劇のドン底に叩き落された二人の王と、その家族に合掌。



首:ブリシンガメン/防3/時間/曜日:能力値が変化/Lv71~/All Jobs
首:ブリシンガメン+1/防4/時間/曜日:能力値が変化/Lv71~/All Jobs
片手剣:ダインスレイフ/D43/隔264/追加効果:HP吸収/Lv67~/戦ナ暗/Rare Ex



ブリシンガメンは、日中はHPが、夜間はMPがわずかに増え、曜日によって各種ステータスが+5されるという代物。ゴールド板と高級宝石を馬鹿みたいに使って作ったジュエルドカラーに、更に金とプラチナを足し、NMドロップのフレイアの涙を加えて作る合成品の首装備です。別にドヴェルグでなくても作れます。
フレイアの涙は、彼女が旅に出た夫(ってアンタ既婚かよ…)の身を案じて流した涙が大地に染み込み、黄金となったという伝説からアイテム化されたんでしょうか。
泣くほど嫌でも欲しかった、てところでしょうかねぇ……。もっとも、首装備を視認出来ない我々ヴァナの冒険者からすれば、これは恐ろしく高価なゴミでしかありませんが。


ダインスレイフは、流砂洞のAntica族NM、Proconsul XIIが稀に落とす片手剣で、攻撃Hit時に時々、HPを吸収する追加効果が発動する事があります。
レベリング対象となる相手には期待出来ない追加効果ですが、素材狩りのように明らかに格下の相手には、結構いい感じに発動します。
マイケル・ムアコック「エルリックサーガ」のストームブリンガー以降、悪しき魔剣と言えば血を啜るものというのがお約束になっている気がしますね。由来からすると、常時バーサクとかの方がイメージに合いそうなもんですが。

ダインスレイフ



最後に余談を一つ。ダインスレイフは、悪竜ファーヴニルの財宝から見つかった剣である、とする説もあったりします。ただ、これは出典がかなり怪しい(私見ですが、フロッティと勘違いしてるくさい)ので、ここでは除外しました。


両手刀を避けたら、今度は片手剣に偏重してきたな……。次辺りは片手剣もネタ候補から外そうかな…ってなところで、今回はこの辺で。

慈悲の剣 ― クルタナ

今回は、前回 からの続きになります。
「ローランの歌」に登場しはしないものの、デュランダルに縁のある剣。
それが、イギリス王家に伝わる実在の剣、クルタナです。

“慈悲の剣”の別名を持つクルタナには、人を傷つけるための切っ先がなく、象徴として剣の形態をとっているものの、戴冠の儀に使用される儀礼的なものでした(もっとも、この理屈でいけば、同じく切っ先のない斬首刑執行専用の剣、エグゼキュショナーズソードも慈悲の剣になりますが。こちらは単に、用途が据えもの斬りに限定されているから、刺す必要がないだけですけど…)。


前回、最後を悟ったローランが、デュランダルを敵に渡す事をよしとせず、折らんと岩に叩きつけたが果たせなかった、という話について書きましたが、実はこれにはもう一つの、異聞とでも呼ぶべきエピソードが存在します。
曰く、それによってデュランダルは切っ先の部分が欠けてしまった、と。
その展開では、切っ先を失ったその剣は、コールタン(短い剣、という意味)と呼ばれるようになったとされています。

で、これとは全く関係のないところ、上述の通りイギリス王家に、ですが、同じく切っ先のない剣が存在しました。
その剣は、先の折れたデュランダル即ちコールタンの名にちなんで、“クルタナ”と呼ばれるようになったという事です。


この剣は実際に現存しているが実は二代目で、元のクルタナは清教徒革命の折に王権の象徴として廃棄されてしまったということです。



片手剣:クルタナ/D1/隔236/CHR+7/Lv75~/シ/Rare



「D1」のところは、間違いなく“慈悲”を表しているものと思われますね。
「CHR+7」は、王家の伝宝のイメージからでしょうか。
入手方法は、ヴェ・ルガノン宮殿に出現する???をタゲる事で、バッカニアナイフを盗む事が出来るEvil Weapon族NM、Brigandish BladeをPOPさせるのに使用するトリガーアイテムです。


しかし、よりにもよって王家所蔵の剣なんか拝借しちゃっていいんですかね? さすがに許可なんかとってないと思いますが……。
まあ、イギリス王家の関係者がFFXIプレイするとは考えにくいし、バレやしないでしょうけどね。

ローランの歌 ― デュランダル/ジュワユース

余り日本刀にばかり偏向してても、ここは両手刀専門か? と思われそうなので、ここいらで洋モノの伝説も紹介しておきましょうか。

今回は、有名な英雄譚「ローランの歌」からデュランダル、そしてジュワユースについてです。


さて、このデュランダル、日本では余り馴染みがない名前かも知れませんが、ファンタジーフリークにとってはアーサー王の“エクスカリバー”、シグルドの“グラム(FFXIでは“バルムンク”)”級の、ビッグネームの聖剣です。
「ローランの歌」は、かつてヨーロッパを支配していたフランク王国の物語です。
頃は8世紀、時の王はシャルルマーニュ(ちなみに、この人が父王ピピンから受け継いだのがジュワユースです。愛用してらっしゃる赤魔の方々には申し訳ありませんが、はっきり言ってデュランダルに比べて影薄いです…)。
その配下に、名だたる英雄ぞろいの12人の騎士がいました。その筆頭が、デュランダルの担い手、ローランです。
デュランダルは、シャルルマーニュ王が天使から授けられ、ローランに下賜した聖剣で、ローランはこの剣を片手に数多の功をなすわけですが、ここではその中でも最も有名なエピソードをご紹介しましょう。ローランの最期、ロンスヴァル峠の戦いでのエピソードです。


遠征に出たフランク軍が、自国領での不穏な動きを知り、交戦中の相手と休戦し、帰還の途上での事です。
休戦に応じると見せかけた敵国に後背から追撃され、フランク軍は窮地に立たされます。
次々と押し寄せる敵兵の前に、殿を務める12騎士は一人、また一人と倒れていき、ついにはローラン自身も、その死を覚悟する時が来ました。
王より賜りしこの聖剣、敵の手に渡してなるものかと、ローランはデュランダルを叩き折る決意をします。
眼前の黒ずんだ岩に叩きつける事十回ほど、何とデュランダルは折れるどころか刃毀れ一つしなかったと言います(打ち付けたのは大理石であり、逆に石の方が真っ二つになったとする説もあり)。
名剣過ぎるのも考えものです。


この頃の聖剣と呼ばれたものの様式として、デュランダルジュワユースも柄が中空になっており、そこに聖遺物(聖者の髪とか歯とか、服の切れっ端とかのことです)が収められています。
ちなみに、デュランタルの中には聖ペトロの歯、聖バジルの血、聖ドゥニの毛髪、聖母マリアの衣片。ジュワユースにはキリストの脇腹を突いた槍の欠片(ロンギヌスの槍じゃん!)が入っていたとされています。



片手剣:デュランダル/D40/隔240/VIT+7 敵対心+1/Lv71~/ナ
片手剣:ジュワユース/D35/隔224/耐闇+14 時々2回攻撃/Lv70~/戦赤ナ吟竜/Rare Ex



デュランダルは獣神印章30枚のBCNM、「龍円舞曲」「模倣魔」「四季悪日」。ジュワユースは、 海蛇の岩窟のSea Monk族NMCharybdisのドロップです。
やたらと頑丈だったのが、「VIT+7」の根拠でしょうか。敵対心は……あれかな、実はローランは身内の逆恨みから最期を迎える事になるんですが、それを表現してるのかも。…でもそれはローランの側の話であって、デュランダル自体の性能じゃあないような気がしますが。
ジュワユースは……、何だろう? 特に意味はないと思います。「時々2回攻撃」には。


しかし、ホントにジュワユースに関する記述が弱いな……。え~と、ジュワユースは、フランス語で「喜ばしき」とか「めでたきかな」という意味で、フランス軍の鬨の声の由来になったそうです。
……やっぱデュランダルに比べるとイマイチ華がないなぁ。ヴァナでは華形武器なんですけどねぇ、ジュワも。

ジュワユース



実は、「ローランの歌」には直接関係ないが、デュランダルには縁があるという剣が存在します。
それの紹介は次回に回すとして、今回はここまでにしておきましょう。


伊藤一刀流 ― 瓶割

もう一丁両手刀でいっときますか。
ジョブの人口分布とか考慮すれば、片手剣や両手剣の方がネタとして適してるような気もしますが、どちらかと言うと、日本刀の方が得意分野なんですよね、私。ご覧の通りジョブも侍メインですし。


さて、瓶割です。瓶割刀とか、瓶割の太刀とかも呼ばれている逸品です。
これは、稀代の剣豪にして一刀流の開祖、伊藤一刀斎影久の愛刀です。
謎の多い人物で、伊豆の生まれで永禄(西暦で言うと1500年代半ばくらい)の頃の人とされていますが、その生国生年すら諸説紛々。
前名は伊藤弥五郎。佐々木小次郎も師事した、かの鐘捲自斎について剣を学び、後に自ら研鑚を続け、自分の流派、一刀流を興します(井上 雄彦の「バガボンド」佐々木小次郎編にも、この辺の名は見る事が出来ますね)。

この一刀流は、後に数多くの亜流・分派を生んでいきます。有名どころでは、坂本竜馬が江戸で学んだ北辰一刀流も、某トンデモ明治剣客浪漫譚でも知られる新撰組の斎藤一の小野派一刀流も、全て源流はこの一刀斎の一刀流にあります。


では、瓶割そのもののエピソードにいってみましょうか。
ある夜、一刀斎は賊を追っていました。
賊は一つの大瓶の後ろに逃げ込み、瓶を挟んで一刀斎と対峙します。
一刀斎が右から回り込もうとすれば賊も右手へ、左から踏み込もうとすれば左へと逃げ回り、一向に埒が明きません。
業を煮やした一刀斎、ならばと瓶ごとに剛刀一閃、何ともろともに賊を斬って捨てたと言います。
この時、瓶はしばし内に湛えた水を漏らす事を忘れ、賊も自分が斬られた事に気付くのに数瞬を要したと言いますから、その切れ味、そして斬撃の鋭さたるや想像を絶するものがあります。
これにより、一刀斎の愛刀(備前伝の一派である大一文字助宗の作刀だったと、一刀流の伝書にあるそうです)は“瓶割”と号され、一刀流の皆伝書とともに、後継へと受け継がれていく事になります。
(ちなみに、賊は瓶の中に隠れていた、という説もあり)

瓶割


両手刀:瓶割/D79/隔450/命中+5 対アルカナ:クリティカルヒット+7%/Lv70~/侍/Rare Ex



「対アルカナ:クリティカルヒット+7%」の特性は、上記のエピソードを表現するためでしようか。
まぁ、Magic Pot族がアルカナ属だからなんでしょうが、なんとも安直です。
人気の狩場、ロ・メーヴとかで威力を発揮してくれる便利な刀で、私も随分と長い間愛用していました。…ちゃんとした日本刀の体をしている高LV両手刀が、これしかないというのも大きな理由ですが(斬馬刀のグラフィック嫌いなんです、私)。
入手先はグスタフの洞門のScorpion族NM、Amikiri
網切り……、網切りがサソリかぁ。う~む……。

大般若経六百巻 ― 大般若

記念すべき(ほどのこともないような気もするが…)第一投目は、名物大般若からいくとしましょう。
私のような刀剣マニアなら、知らないはずもないくらいに有名な一振りですが、そういう特殊な嗜好をしていない限り、普通知りませんよね。
しかし、この名前なら聞いた事があるって人も多いのではないでしょうか。即ち“備前長船”。
はい、実はこの大般若、備前長船の一振りなんです。正確には、長船長光の作です。

長船長光は初代順慶長光と、その子、二代左近将監長光の二人いるのですが、大般若は父の順慶長光の手によるものであるという説が有力です。


この“大般若”という号には、こんな由来があります。
頃は室町、この長船長光は桁外れの高値で取引されていました。
その額、何と六百貫!
……と言われてもピンと来ませんよね。私だって当時の貨幣価値なんか知りゃしません。そこで、解かり易い比較対象と比べてみましょう。
当時は、正宗が五十貫ほどだったそうです。あの正宗がです。当時、どんな上物の刀でも、百貫を超える物はなかったと言いますから、どれほどにこの大般若が高額だったかがうかがえます。
で、この六百貫という破格の値段を、大長編の経文、大般若経六百巻にかけて、ついたあだ名が“大般若”というわけです。


この刀は、足利義輝が愛用していたとか、徳川家康が長篠の戦いで功を立てた家臣に下賜したとか伝えられています。

ヴァナにおける大般若のデータは以下の通り。



両手刀:大般若/D72/隔450/STR+3/Lv59~/侍



聖地ジ・タのKeeper of Halidom、もしくはボヤーダ樹のAncient Goobbueがドロップします。共にGoobbue族ですね。NMドロップのアイテムにしては珍しく、複数のモンスターが所持しています。
その昔、まだ侍が箸にも棒にもかからなかった頃は、たいした額ではなかったのですが、一部のHNM相手にはそれなりのダメージソース足り得る現在は、サーバにもよるでしょうが、かなりの額で取引されています(さすがに600万Gとかではありませんが)。
入手先が二つあるとはいえ、Ancient Goobbueの方は事実上獣使いの群れでもなければ勝てない相手であり、Keeper of Halidomは中国人RMTerが24時間体制で挿し木取りするついでに狩っている事も、高騰の一因でしょう。

用語集

・シーリー・コート
アンシーリー・コートの対義語。
人間に恩恵をもたらす、善良な妖精を意味するカテゴリー。


・アンシーリー・コート
シーリー・コートの対義語。
人間に仇を成す、邪悪な妖精を意味するカテゴリー。


・子供部屋のボギー
子供を躾るために使われる、アンシーリー・コート。
「早く寝ないと~が来るよ」「残さず食べないと~にさらわれてしまうよ」etc...
要するに“なまはげ”のこと。


・ハッグ

英語の古語で、「魔女」を意味する語で、魔女・妖婆の類の妖精の総称。


・キマイラ
元はギリシャ神話に登場した、獅子・山羊・蛇の特徴を併せ持つ怪物の名だが、同様に複数の動物の要因が混在するタイプのモンスターの総称として使われている。



・グリモワール
フランス語で「呪文書」の意で、中世に出版されていた魔導書の総称。
「レメゲドン」や「金枝篇」などがその代表として知られている他、「エノク書」などの偽典とされた一部の聖書まで含まれることもある。


・レメゲトン
グリモワールの中でも、もっとも有名と思われる魔導書のタイトル。
全四部構成で、当blogで扱っている七十二柱の悪霊については、第一部の「ゴエティア(またはゲーティアとも)」に記載されている。


・ソロモンの小鍵
「レメゲトン」の別名。


・博物誌

原題「Historia Naturalis」。

一世紀のローマの学者、ガイウス・プリニウス・セクンドゥスによって記された、動植物などを始めとした全37巻に及ぶ百科事典。当時は実在が信じられていたのか、幻獣の類も多数収録されている。



・護拳

その名の通り、手を保護する用途で設えられているパーツ。

カップ状になっている物、鉤爪状のもの、篭のように拳を覆う物、円盤状の物(要は「鍔」)、棒状の物(一般的な「キヨン」の形状)と、その形状は様々である。


・ポメル
「柄頭」。剣のグリップの先端部分の飾りを指す。


・キヨン
西洋の剣の護拳用のパーツ。日本刀でいう「鍔」に当たる部分。他にも「コー」、または単に「ガード」とも呼ぶ。


・リカッソ
「羽根元」。剣の刀身と柄を連結している部分。


・ヒルト
ポメルからグリップ、キヨンまで含めた、柄全体を指す語。


・擬似刃
片刃の剣の刀身の、切っ先部分にのみ峰側にも設けられた両刃を指す。峰両刃作(きっさきもろはづくり)。



・ポールアーム
槍などの長柄武器のこと。
代表的なものに、ハルバードやグレイブなどが挙げられる。

はじめに

“FINAL FANTASY XI -Online-”をご存知でしょうか。

FINAL FANTASYシリーズの第11作目のタイトルにして、事実上初となる、コンシューマ機による国産MMORPGです。


FINAL FANTASY XIの世界、ヴァナ・ディールは、いわゆるヒロイックファンタジーの王道に沿った世界観を持っています。

ご多分に漏れることなく、このヴァナ・ディールにも、現実世界に伝わる逸話や伝承、神話をモチーフとしたアイテムや、モンスターが多数存在します。


ここの趣旨は、ヴァナにあるそれらのものが、現実ではどんなエピソードを持ち、語られているかに照らし、紹介していこうというもので、実際にこのゲームに参加している方でないと、見ても余り面白くないかも知れません(もっとも、ヴァナの住人であれば確実に楽しめると言えるほど、私の筆力は高くありませんが)。


おそらくはここには、生きていく上で全く何の役にも立たない知識しか、記される事はないと思います。それでも、訪れてくれた貴方の暇潰しの一助にでもなったなら、それはとても幸いな事です。

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