Monkey magic ― 金箍棒
その知名度においては他の追随を許さないであろうこの一品、今回のテーマは“金箍棒”。通りのいい呼び名で言うところの如意棒です。
より正確には、如意金箍棒と言い、「意のままになる(如意)金のタガのはまった(金箍)棒」と言う意味で、名が体を表しています。
花果山の頂きの大岩から生まれた石猿が、仙道を学び、天界に仕えるも放逐され五行山に封じられる。やがて通りがかった玄奘三蔵によって解放され、その弟子となって天竺へと旅立つ。
もはや改めて説明するまでもないほどに有名な、ご存知西遊記の孫悟空が手にする、伸縮自在のこの鉄棒。彼の斉天大聖がそれを手にするエピソードを、抜き出してみましょう。
事の起こりは、悟空が仙道の師の下を去り、故郷である水簾洞へ戻った場面からです。
水簾洞は、彼の留守中に混世魔王という妖怪の脅威に晒されていました。
学んだ術で見事この妖怪を退治た悟空は、こうした事が二度と起こらないよう、配下の猿たちに武装させ、水簾洞の守りを固める事にします。
しかし、猿たちが調達してきた武器はどれも、仙道を学んだ悟空には軽すぎて、今一つ手に馴染みません。そこで配下の一頭がこう進言します。
水の底にある、東海青龍王敖広が住まう水晶宮には、数多の宝物があると聞きます、そこになら、美猴王(悟空の二つ名の一つです)の手に合う得物もあるのでは、と。
これを聞いた悟空は、早速に水晶宮へと赴きます。
突然現れ、厚かましい要求をする珍客に辟易しながらも、東海青龍王は秘蔵の品を次々に悟空に呈示します。ナリは猿でも相手は仙道、下手に機嫌を損ねるよりは、やるものやってさっさとお引取り願おう、という訳です。
しかしこの猿の仙道、どういう膂力をしているのか、出された品のどれもを「軽すぎる」と突っぱねます。ついには水晶宮にある中で最も重い、重さ七千二百斤の戟(げき、と読みます。中国のポールアームの一種です)にすら、ダメを出れてしまいました。
ほとほと困った龍王に、妃が助言します。天河鎮定神珍鉄ならばどうか、と。
天河鎮定神珍鉄とは、その昔天の河の治水に使われた重りで、その重量は実に一万三千五百斤(一斤は約600g、即ち約8tになります)。
案内された先にあるものは、柱と見紛うばかりの、そびえるが如き巨大な鉄塊。
重さはさて置き、大きさが……、もう少し細く小さくなれば、と悟空が呟くと、神珍鉄は見る間に言われた通りに縮みました。念じれば、棍として手頃なサイズにもなるではありませんか。
これには悟空もご満悦、重さも十分(とんでもないエテ公だ…)と、喜んでこれを譲り受けます。
更にものはついでと、鎧だ兜だ靴だと散々に要求し、悟空は水晶宮を後にしたのです。
両手棍:金箍棒/D68/隔412/クリティカルヒット+5%/潜在能力:隔329 命中+10/エンチャント:モクシャ 20/20 0:30/[30:00,0:30]/Lv73~/モ白ナ竜
金箍棒は、木工合成品の猿棍に、更に斉天朱を加えて作る合成品の両手棍です。
元々の名が示す通り、元ネタの如意金箍棒は鉄棒なんですが、ヴァナの金箍棒は木製のようです。ベースになる猿棍が鉄刀木(タガヤサン)製品なので、金箍棒も同様と考えていいでしょう。
さて、性能の方を見てみると……、原典とはまるきり関係のなさそうなものばかりですな。
まぁ、さすがに伸縮自在なんてのは再現のしようがありませんが(そもそも、“如意”もついてないただの金箍棒ですしね)。
ただ一つだけ、この“潜在能力”発動の条件が、ワイルドパママを食べる事なんです。
パママというのは、ヴァナにおけるバナナのことです。即ち、金箍棒と言えば孫悟空→孫悟空と言えば猿→猿と言えばバナナ。
……マジカルバナナ?