無人のモグハウスで発見された手記 -31ページ目

狙った物は必ず貫く ― グングニル/ミョルニル

今回は、BUMP OF CHICKENの名曲でも有名な“グングニル”、そしてそれを語る上で外す事の出来ない“ミョルニル”についてです。


これらは、北欧神話の中でもとりわけ知名度の高い二人、大神オーディンと、雷神トールの得物として知られ、二神の名のみならず、武器そのものも詳細はともかくとして、名前は聞いた事がある、という人も多いのではないでしょうか(もっとも、ミョルニルの方は日本語の感覚からいくと語感がよくないせいか、“トールハンマー”とするケースも多いようですが)。


この二つの武器は、北欧神話ではもう御馴染みのドヴェルグの職人たちによって、ほぼ同時期に製作されています。
その発端は、これまた「またオマエか」と言いたくもなる、悪神ロキの悪戯でした。


トールの妻であるシヴは、その髪の美しさで知られる女神で、こと髪だけならば、美貌のフレイアをすら凌ぐと言われていました。
ある時ロキは、そのシヴの髪を丸刈りにしてしまいます。
理由はありません。強いて言うなら、ただの思いつきと言うか、単なる悪戯だったようです。つくづくロクデナシです。

当然ですが、シヴは嘆き悲しみ、トールは烈火の如く怒りました。
トールの剣幕に恐れをなしたロキは(トールの怒りを予想しなかったんでしょうか…この阿呆は)、元の髪にも劣らない美しさを持った代用品を用意する、と約束する事で、辛うじてその首をつなげます。


そしてロキが赴いたのは、ニダヴェリール。ドヴェルグたちが住まう小人族の国です。
ロキは、“イーヴァルディの息子達”と呼ばれる凄腕の職人一族に依頼し、黄金の髪を設えてもらいます。
これはただのヅラではなく、本物の髪のように頭に生え、ちゃんと伸びもするという優れものでした。さすがはドヴェルグ、いい仕事をします。


この時、炉の火がまだ残っていたので、じゃあついでにと作り出されたのが、魔法の船スキッドブラドニールと、魔法の槍グングニルでした。
……なんか悪戯に端を発したヅラのオマケと考えると、著しく威厳を損ないますが、とにかくこうしてグングニルは生み出されたのです。


グングニルは、穂先には力を生み出すルーン文字が刻まれ、その柄は北欧神話では聖なる木とされるトネリコ(人間の材料としても使われています)製。一度投げれば確実に標的を貫き、かつ持ち主の手に戻るという、極めて素晴らしい槍と描写されています。


首尾よく髪を作って貰い、更には二つもの素晴らしい宝も手に入れたロキは調子に乗って、ブロックとエイトという二人のドヴェルグに、この三つの宝を見せびらかし、それだけならまだしも、二人にこれだけの宝が作れるか? と挑発までします。

どう考えても、“イーヴァルディの息子達”が素晴らしいのであって、ロキが威張る筋合いはないのですが……。


これに職人としてのプライドを刺激された二人は、もしそれらを上回る品が出来たら、ロキの頭を貰う、という賭けをします。

賭けは受けたものの、そこはロキのする事、二人が作業に取り掛かるとロキはアブに姿を変え、早速二人を邪魔しにかかります。


しかし二人はそんな妨害もものともせずに、神速で駆ける黄金のイノシシ(鍛冶で作れるものか? それ)グリンブルスティと、黄金を生み出す腕輪ドラウプニルを次々に完成させます。
これはヤバいと、とロキは、三つ目の品が作られている最中に、手や首ではなく、ブロックの眼を刺します。
さすがにこれは効いたのか、ふいごを押すブロックの手は止まり、その為に火力が足りず、予定より柄が短くなってしまった槌、これがミョルニルです。


ミョルニルは、投げれば百発百中で手元に戻るという、グングニルと同じ特性を持った鉄槌で、使用しない時には小さくして持ち運ぶ事も出来ると言う優れもの。
圧倒的な破壊力を持ち、怪力のトールですら剛力の帯メギンギョルズと、鉄の手袋イルアン・グライベルなくしては自在に出来なかったとされています。


さて、こうして出揃った六つの宝物は、オーディン、トール、そしてフレイアの兄の豊穣神フレイに献上され、その優劣を競う事となりました。
オーディンはグングニルとドラウプニル、トールはミョルニルと黄金の髪、フレイはスキッドブラドニールとグリンブルスティをそれぞれ手にし、三人が下した評決は、ミョルニルこそが最も優れた宝である、というものでした。


こうして見事に打ち負かされたロキですが、「頭をやるとは言ったが、首を斬っていいとは言ってない」と屁理屈をこねてトンズラしてしまう辺りは、さすがと言うべきなのでしょうか。



両手槍:グングニル/D100/隔492/命中+20 ゲイルスコグル/追加効果:防御力ダウン/Lv75~/竜/Rare Ex
片手棍:ミョルニル/D57/隔308/攻+20 ランドグリース/追加効果:MP回復/Lv75~/白/Rare Ex



この二つの武器は、共にレリックの最終段階です。
言うまでもなく、手にするためには人生を賭ける必要があり、全サーバを見渡してみても、所有者は現時点一人いるかいないか、というレベルでしょう。


デュナミス-サンドリアで手に入るレリックランスと、デュナミス-ウィンダスのレリックモールがこれらのベースとなっています。

これらを、数多のレアアイテムと、膨大な旧貨幣を用いて強化を繰り返した果てに、上記の二つが完成するわけなのですが……。

俯く者(?) ― カトブレパス

前回のハベトロットが、ちょいとばかり書いてて楽しかったので、続けてモンスターについていこうと思います。

本日のテーマは、ギリシャ語で「俯く者」という意の名を持つ生物、“カトブレパス”です。


カトブレパスは、エチオピアの近く、ナイル川流域に生息しているとされています。
プリニウスの記した“博物誌”によれば、その姿は身体は水牛、頭は豚に似ており、その頭からは、足を覆うほどの長いたてがみが生えています。
そして彼の最大の特徴は、まるで空っぽの腸のようと描写がされる、頭部を支えきれない細長い首で、カトブレパスはその頭を持ち上げる事が出来ず、常に地面に引きずるようにしています。

一見ユーモラスとも言える風貌を持ち、草を食もうとして、うっかり自分の前足を食べてしまったことがある(本人談)ほどに愚鈍なカトブレパスですが、これでなかなかに凶悪な能力を有しています。

彼の視線は、目を合わせただけで生物を死に至らしめる(石化という説もある)という恐るべき代物です。
アフリカへ遠征に出たローマ軍の一団がこの怪物に遭遇し、一瞬で全滅させられた、という記録も残っているそうです。


さて、ではここでヴァナ・ディールのCatoblepasにご登場願うことにしましょう。


キリンじゃないか…



……。
え~と……、どこからツッコンでいいものやら。


世にカトブレパスを描いた物は数あれど、多分これほどに頑健な首を持った形で描かれた例は過去なかったでしょうし、きっとこれからもないでしょう。

どこから見てもキリン以外の何者でもありません。


もはや、“首が長い”以外の全ての要素が残っていません。
“頭を持ち上げる事が出来ずに、地面に引きずっている”というファクターを持たないカトブレパスなど、まさに前代未聞です。と言うか、持ち上がらないどころか、接近するとカメラに収まりきらないほどに高々と掲げられています。


更にこのCatoblepasは、特に固有性を持ったモンスターではありません。
ただのDhalmel族の一種。早い話がmobです。
ただのDhalmel故に、死の視線なんてイカした芸当は持ち合わせていません。その点も、普通のDhalmelと全く同じ事しか出来ないモンスターです。


FFの過去作では、召喚獣として登場したタイトルももあったというのに、XIにおいては笑えるほどの零落振りを見せてくれています。
初めてこのモンスターを見たとき、■eのセンスの凄まじさに絶句したのを覚えています。
Buffalo族に命名するならまだしも、いくらなんでもこれはないよなぁ……。

紡ぎ車の精 ― ハベトロット

今回はモンスターについての話題にしましょうか。
スコットランドのフェアリーテイルより、糸紡ぎの妖精、ハベトロットについてです。
ハベトロットは、紡ぎ車の精と呼ばれ、極めて上質な糸を紡ぐ腕前を持っています。
ハベトロットの糸で作ったシャツを着れば、万病を避ける事が出来ると言われています。


フェアリーテイルとか妖精とか書くと、ピクシーやフェアリーのような美しい風貌を連想するかも知れませんが、ハベトロットは分厚く垂れた唇と、豆だらけの指を持つ醜悪な老婆の姿をしています。
しかし、そんな醜い外見とは裏腹にこのハベトロットは、極めて―もしかしたら全て妖精の中で最も―善良な性質をした、優しい妖精です。


昔々あるところに……いや、あるところってかスコットランドなのか、兎に角、糸紡ぎの下手な娘がいました。
この娘、下手だけならまだしも、そうして糸を紡いだりして家の手伝いをするよりも、野原で遊ぶ方が好きという、怠け者でもありました。


あまりに働かないこの娘に腹を立てた母親は、七つの麻玉(綿花とも言われています)を渡し、それを全て三日で紡ぐように厳命しました(この辺りの描写はまちまちなのですが、要はとても間に合うはずのない期限を切られた訳です)。


娘の方も、最初のうちは泣く泣く言われた通りに紡ぎ車を回していたのですが、何せ下手な上に怠け者なので、やがて仕事を放り出し、野原へ遊びに出てしまいました。

とは言え、遊んでてノルマがこなせるはずもありません。
どうしたものかと困っているときに現れたのが、紡ぎ車の精である、ハベトロットでした。
何を悩むと聞かれて答えると、ハベトロットは「それならここへ持っておいで、代わりに紡いであげよう」と言ってくれるではありませんか。
さすがに専門の妖精だけあって、ハベトロットの仕事は速い上に素晴らしい出来上がりでした。
娘は喜んでそれを母親へ渡します。
出来るはずがないと思っていた量が、しかも極めて上質に仕上がった事に、母親は驚きます。


その話が巡り巡って、その地を治める領主の耳に届きました。
それほど糸紡ぎの上手い女性なら是非とも妻にと、領主は娘を娶ります。
そして言う事には、これからは毎日糸を紡いでおくれ、と。
これに困った娘は、再びハベトロットに相談します。
「何も心配はいらないよ。明日旦那を連れてまたここへおいで」と言われるままに娘は領主を連れて、ハベトロットの元をたずねます。
そのあまりに醜悪な姿に、驚いた領主は尋ねます。「何故オマエはそんなに醜いのだ」と(直球だな領主…)。
ハベトロットは答えます。「毎日毎日紡ぎ車を回しているから、糸を引く手は豆だらけになり、糸を舐める唇は腫れ上がるのです」と。
妻がこんな姿になっては堪らないと、肝を潰した領主は、娘に金輪際紡ぎ車に触れることを禁じ、娘は幸せに暮らしましたとさ。


さて、パっと見はどこにでもありそうなお伽噺に見えますが、このお話、実は数あるフェアリーテイルの中でも異彩を放つ代物なのです。
何故ならば、“怠け者が幸せになっている”のですから。


世界中どこの話であろうと、こうした生活に根差したところから出てくる話には、何らかの訓戒が含まれているのが常です。

特に、ヨーロッパに伝わる妖精譚では誠実で勤勉な者が妖精から好かれるのが普通です。少なくとも私は、怠け者がハッピーエンドを迎えた例をこの他に知りません。

ハベトロットのように、無条件で人間に良くしてくれる妖精というのは、実は極めて稀です(大概は悪戯癖があったり、報酬を求めたりします)。


“子供部屋のボギー”というのがあります。
ボギー(FFXIでは、Ghost族モンスターの一種Bogyとして登場)というのは、人間に害を成す妖精の総称で、上記は、してはいけない事をした者、あるいはしなければいけない事をしない者に制裁的に(時には命にかかわる)災いをもたらす、躾に使われる悪い妖精を指す言葉です(我が国のなまはげも、この“子供部屋のボギー”の一種と言えるでしょう)。
この“子供部屋のボギー”たちも、元から教育的な側面を持ったものばかりではなく、躾のために暮らしに取り込まれ、変質してしまったものも多いのです。


そんな中で、何故このハベトロットはそうした変化を免れ、教育上あまり良くない展開のままで語り継がれているのか……。
この辺は突っ込んで考察してみると、何か新しい発見があるかも知れませんね。



ハベトロットの玉繭/「ハベトロット」がクロウラーと共に作ったマユ。 通常のクロウラーのマユより大きい。



さて、ヴァナ・ディールのHabetrotはCrawler族…平たく言うと芋虫型のNMです。
まぁこれは、原典のハベトロットとは関係のない、ただその名を付けられただけのクロウラーと見るべきでしょうね。


ウガレピ寺院の???に、ラテーヌキャベツをトレードすると出現する、いわゆるトリガーPOPタイプで、このキャベツで誘き寄せる仕様も、元ネタとは関係のない、芋虫のモンスターであることからの着想でしょう。


ハベトロットの玉繭は、オパーラインシリーズの合成素材として使用されます。
ドレスが実装された直後は、一部の人は目の色を変えてポイントに張り込んでいたようですね。競売価格の方も、一時はかなり高騰していました。
しかし、冷静に見るとオパーラインドレスはそう見目の良い装備でもなく、性能面でも何の役にも立たないため、現在ではその熱も下火になっています。



オイカリヤの王 ― エウリュトスボウ

今回は、現在のヴァナのインフレ具合を最も端的に実感する事の出来るアイテムの一つ、当該LVの狩人垂涎の弓、“エウリュトスボウ”です。


エウリュトスは、オイカリヤの王であり、ギリシャ一の弓の使い手として、幾度となく神話中にその名が登場します。
とは言え、自身がその弓を持って何かをなす場面はなく、むしろ英雄たちの物語を彩るバイプレイヤーとしての役割を果たしました。
生前は英雄ヘラクレスと浅からぬ因縁を持ち、死後はオデュッセイアにおいてその遺品である弓が、重要な役割を果たしています。


さて、まずはヘラクレスとの絡みから、いってみましょう。

エウリュトスは、ヘラクレスの波乱に満ちた生涯の冒頭と終盤にその名が見られます。
ヘラクレスと言えば、怪力や棍棒のイメージが先行しがちですが、実は彼は弓の名手でもあり、その冒険の多くの場面で、その腕前を振るう事がありました。
若かりし彼にその弓術を教えたのが、誰であろうこのエウリュトスだったのです。


これだけならば、英雄を育てた先達としてのみその名は語られたのですが、この後、ヘラクレスが有名な十二の冒険を終えた後に、エウリュトスの名は再び極めて不幸な形でヘラクレス伝説に再登場します。


その時エウリュトスは娘イオレの婿選びのために弓術大会を開いていました。その勝者に娘を与える、として。
ヘラクレスはイオレを気に入り、この大会に名を連ねます(この時彼は妻帯の身ですが、妾にするつもりで)。

そこはさすがに音に聞こえし英雄、並み居る参加者をものともせず、見事ヘラクレスは大会に優勝します。
しかし、エウリュトスは娘を渡す事を拒んだのです。


この背景には、かつてヘラクレスがヘラの呪い(ヘラクレスは大神ゼウスの浮気の末の子のため、ゼウスの妻の女神ヘラからは盛大に憎まれていました)によって狂気に陥り、最初の妻と子を殺してしまっている事件があったからです。エウリュトスはヘラクレスがいつまた狂気に囚われるとも知れない、と警戒したのです。


これにヘラクレスは怒りました。
エウリュトスの息子にしてヘラクレスの親友でもあるイピトスも、ヘラクレスを擁護し、父の翻心を責めます。
間の悪い事に…というか、狙っていたんでしょうかね。この時再びヘラの呪いがヘラクレスを狂気へと駆り立てました。
哀れエウリュトスは、そのイピトスもろともに、狂える英雄の手にかかり、命を落とす事になるのです。


さて、次にオデュセウスの物語である、オデュッセイアにおけるエウリュトスの役どころです。
上記の通り、既に故人なので当人は登場しないものの、ヘラクレスの物語には出てこなかった、エウリュトスの弓、すなわち“エウリュトスボウ”そのものがキーアイテムとして配置されています。


まぁ、オデュッセイアを全部語るのはさすがに長すぎるんで割愛しますが、故あって故郷を追われたオデュッセウスが身分を隠して妻の下へ帰りついた際、妻ペーネロペーは幾人もの求婚者に言い寄られていました。
これに対しペーネロペーは、自分の夫は何人も引く事の出来ない、エウリュトスの強弓を引ける男だけだ、と答えます。
彼女の名誉のために付け加えておくと、ペーネロペーは貞女の鑑として描かれています。上記のシーンはエウリュトスの弓はオデュッセウスにしか引けない、というのが前提としてあります。
結局のところ、求婚者全員が失敗した後に、物乞いの姿をとって正体を隠していたオデュッセウスが見事にこの弓を引き、ついでに求婚者全員を射殺してハッピーエンドとなるわけですが。

弓を引ける豪傑が混じってたらどうするつもりだったんだ? とか、何も殺さなくても…とは思ってしまいますがね。



弓術:エウリュトスボウ/D71/隔490/STR+3 AGI+3 飛命+2 飛攻+23/Lv55~/狩



そもそも弓の描写が、誰にも引く事すら出来ない強弓、くらいしかないので、特色も出しようがありませんね。
装備可能になった頃のLVでは頭抜けた性能を誇り、その入手難度(24hPOP、ドロップ激悪、常駐張り込みありの争奪戦と、考えられる悪条件は全部満たしています。サーバによってはツール使いや業者に独占されていることでしょう)から、競売価格はかなり暴騰しています。
フェ・インの東西南北四体セットのShadow族NMの一体、その名の通り東に出現するEastern Shadowが落としますが、上記の通り極稀です。


余談ですが、ギリシャ神話にはもう一人(一体? 一匹?)、ウラノスから生まれてきたギガース(巨人)族にもエウリュトスの名を持つ者がいますが、上述のオイカリヤ王とは別人です。
こちらのEurytosも、デルクフの塔のGigas族NMとしてFFXIには登場しています。
デルクフの塔にいるGigas族NMは、全てこちらのエウリュトスと同時に生まれてきた兄弟の名がつけられています。

古今鍛治備考 最上大業物 ― 孫六兼元

“刃物の3S”というのをご存知でしょうか。世界に冠たる三大刃物メーカー(産地)を指して使われる言葉です。
即ち、ドイツのゾーリンゲン(Solingen)、イギリスのシェフィールド(Sheffield)、そして日本の関(Seki)です。
今回はその関の刀、高名な“関の孫六”こと“孫六兼元”についてお話ししましょうか。


孫六兼元は、関兼元の二代目の作のものが有名です。
古くから「関は千軒鍛冶屋の名所」と唄われ、刀工を多く輩出した土地の一門で、孫六兼元は特徴的な鋸歯状の“三本杉”という刀紋を持つことから、“関の孫六三本杉”と呼ばれ名刀として重宝されてきました。


斬られた者が念仏を二度唱え終えるまで絶命しなかったという“二念仏”、地蔵の石仏を両断したと伝えられる“地蔵斬り”、姉川の戦いにおいて豪傑 真柄十郎左衛門直隆を斬った“真柄斬り”等、この二代孫六兼元の作の名刀伝は数知られています。

関の孫六



で、ですね。ここでちょっと話が飛んで、江戸時代の高名な刀の鑑定士が登場します。
彼の人物の名は山田浅右衛門。
山田浅右衛門は、代々刀の鑑定を行ってきた一門で、この浅右衛門の五代目(山田一門当主は名を継いでおり、常に浅右衛門《後に朝右衛門》を名乗っていました)が、「懐宝剣尺」という刀の番付を編纂しなおした「古今鍛治備考」という書の中で、二代孫六兼元はその分類の最高ランク“最上大業物”の十二工の一つに数えられました。これは全二百二十八工の中の十二ですから、いかに高い評価かうかがえるというものです(ちなみに分類は、“最上大業物”→“大業物”→“良業物”→“業物”の順で、その他に大業物~業物がごっちゃに混ざった“混合”というものがあります)。

この他の「古今鍛治備考」に記載されたFFXI登場の刀は、長曾弥興里(いわゆる虎徹 )が最上大業物、 和泉守兼定 や上作の祐定 が大業物や良業物として記されています。

(追記:2005.7.19 Ver.upで追加された両手刀 ソボロ助広 が、上記書物に最上大業物として記されています)


毎度の余談ですが、沙村広明の「無限の住人」に、何代目のかは知りませんが、この山田浅右衛門が登場しています。彼を知っている人は、思わずニヤリと…って、一体何人の読者が知ってたっていうんだ、そんなの。


浅右衛門式の刀の鑑定法は、首を落とされた罪人の死体を束ねたり重ねたりして実際に斬るという、極めて実践的な代物で、孫六兼元は四つ胴、即ち死体四つ分の厚みの骨肉を斬る事が出来た、という記録が残っています。


また、余談になりますが、こうした人体(別に死体に限ったものではなかったそうです…)を用いた試し斬りは、土壇と呼ばれる盛り土の上で行われていました。この土壇が、「土壇場」の語源です。



両手刀:孫六兼元/D56/隔450/STR+1 AGI+1/Lv42~/侍/Rare Ex



FFXIにおける孫六兼元は、侍のアーティファクト武器です。
ノーグの侍アーティファクトクエスト“神刀”の報酬として手に入ります。
この時に無銘刀をJaucribaix爺さんに渡す必要があるために勘違いしている人も多いのですが、無銘刀孫六兼元ではありません。
孫六兼元無銘刀の代用にもらった別の刀で、無銘刀は“黄泉平坂”というだいじなもの扱いの刀に打ち直されています。


この孫六兼元、決して悪い武器ではなのですが、その42~という中途半端な装備可能LVが災いして(LV40制限時に装備できない)、今一つ使い勝手がよろしくありません。
一体何を考えてデザインされたんでしようか。……いや、まぁFFXIバトルチームの事だから、多分何も考えてないんでしょうね。賭けてもいいです。

名刀奇談 ― にっかり青江

世に名刀数ある中には、何とも奇抜な名のつけられたものも多々存在します。
有名どころの“髭切り”なんかも、よくよく考えれば他になかったのかというような名ですし、“鉄砲斬り”やら“手水鉢斬り”辺りは、どうしてその名がついたのか察しはつくものの、ちょっとは捻れよと言いたくなります。

まんまの上に珍妙な名前には、“八丁念仏団子刺し(斬られた人間が即死せず、八丁―約900m弱ほど念仏を唱えながら歩いた。その後を刀を杖代わりにしてついて行ったら、気付いたら小石が団子状に刀身に刺さって並んでいた、という講談)”なんてものもあったりします。この名前、人に名乗れるのでしょうか。「今宵の八丁念仏団子刺しは血に飢えておるわ」。なんとも締まりません。斬られる方も、そんな名前の刀では死んでも死にきれませんよ、実際。


しかし、名前の奇天烈さ加減では、この一振りこそ他の追随を許さない至高の品ではないでしょうか。本日は片手刀“にっかり青江”についてです。


本当にあるんですよ、これが。というか、現存します。香川県の丸亀城資料館に保管されています。

重美(重要美術品)指定を受けているため、イベントか何かでもなければ拝観は多分出来ないでしょうが、刀拓は常展されているはずです。


この“にっかり青江”は、備中の青江という一門の作とされていますが、個人名の方は伝わっていません。

元々は二尺五寸(一尺は約30cm、一寸はその1/10)あったそうなのですが、一尺九寸九分(一分は一寸の1/10)に仕立て直されています。
これによって刀身の中心(なかご)にあった銘が途切れてしまっており、末尾が読めなくなっていますが、“羽柴”の部分が残っている事から、秀吉の縁者の誰かの名が彫られていたのではないか、とされています。


さて、何故この備中青江に“にっかり”なんてヘンテコな名がつけられたのでしょう。
これには諸説あるのですが、そのいずれにも共通しているのが、にっかり(要は「にっこり」微笑の擬音語に使われてるやつです)笑う妖怪を退治た刀であるから、“にっかり青江”となったという事です。


夜半にっこりと微笑む怪しげな女(あるいは母子)を斬り捨てて翌日見てみれば、そこには首の辺りで切断された石塔があるばかり……という感じの、いわゆる妖怪退治譚です。
俗に言う岩赤子(おんぶお化けとか、子泣き爺とかの、実態は岩だったというアレです)の類の亜種でしょうか。


しかし……、石塔斬りとか、岩斬りとか、他に手頃そうな名前もすぐに思い浮かぶのに、何故に“にっかり”なんてアヴァンギャルドな名前を採用したんでしょうかねぇ?



片手刀:にっかり青江/D19/隔232/詠唱中断率25%ダウン/Lv30~/忍/Rare



元ネタとはまるで関係のない性能になっています。
対アルカナ属効果は、“瓶割”で使ってしまったからやらなかったんでしょうか。
クリティカル率upじゃなくて、攻撃力とか別のものにボーナスをつけるとか、他に手はありそうなもんなのですが……。


ギルド桟橋のFlytrap族NM、Orctrapが落とす、NMドロップ系なのですが、せめてこっちだけでも由来に合わせて、Doll族かGolem族辺りにしとけばいいような気がするんですが……。何で空飛ぶハエトリ草に持たせたんでしょうか。
相変わらずの、■eの仕事のテキトーさがうかがえる一品です。



屍に鞭打つ ― 伍子胥の戈

“ごししょのほこ”と読みます。
“戈”は、“金箍棒 ”の時の“戟”と同じく、中国の戦乱の時代に用いられた長柄の武器の一種です。
FFXIでは両手鎌に分類されていますが、厳密には鎌のように“斬る”武器ではなく、柄に対して直角についた短い刀身で横薙ぎに刺したり払ったりする武器だったのですが……、まぁ、FFXIの16の武器カテゴリの中でどこに入れるかとしたら、鎌になりますかねぇ。


さて、伍子胥は中国の春秋時代、呉の国の武将です。
伍子胥は、元々は楚の国に生まれ楚の平王に仕えていたのですが、父である伍奢が平王と不仲になり、伍奢と兄である伍尚が平王に殺された際に鄭を経て呉に下り、呉の公子光(後の闔閭)に仕えるようになります。


伍子胥は呉で頭角を現し、後に呉は楚を打ち破るのですが、伍子胥はその際に既に故人となっていた平王の墓を暴き、引きずり出した死体を打ち据える事で父と兄の無念を晴らしています(これが「屍に鞭打つ」の語源です)。

屍に鎌振る


やがて隣国である越が力をつけてくると、呉はこれを討つべく出兵しますが大敗、この時闔閭も討ち死にしてしまいます。


伍子胥は闔閭の息子である夫差を助け、越を破るのですが、この時越王を殺すべきだと主張する伍子胥は、生かしておいて越を属国としようと考える夫差と対立します。
結局、伍子胥の進言は聞き入れられなかったのですが、この対立につけ込んだ越の謀略によって伍子胥は夫差の信頼を失い、ついには自害するように命じられます。


この時伍子胥は「我が墓の上に梓の木を植えよ、それをもって夫差の棺を作れ。我が眼をくり貫き東門の上に置け、越が攻め入るのを見届けよう」と言い遺し、自刃して果てます。
これに怒った夫差は、伍子胥の死体を皮袋に詰め、長江に沈めるように命じました。


しかしこの後、伍子胥が懸念した通り呉は越によって滅ぼされます。
追い詰められた夫差は、自害するに当たって部下にこう命じました。
「埋葬の際には顔を布で覆ってくれ。あの世で伍子胥に合わせる顔がないのだ」と。



両手鎌:伍子胥の戈/D80/隔480/対アンデッド:命中+7/Lv70~/戦暗獣



これまた解かり易い性能をしていますね。「屍に鞭打つ」から対アンデッド効用がついています。
伍子胥の戈”と呼ばれる武器があって、それにまつわる逸話が残っているわけではないので、伍子胥本人に起因するデザインですね(そりゃまぁ、伍子胥が戈を使っていても別に不思議はないのですが)。


余談ですが、これとは別口に伍子胥にまつわる武器の話もあります。噡台湖という湖の底に、伍子胥の名を刻まれた剣が沈んでおり、これを手にした者は病に見舞われる、というものです。


伍子胥の戈は、ズヴァール城内郭のDemon族NM、Count Bifronsのドロップアイテムです。
ちなみにこのビフロンス伯爵というのは、“ソロモンの鍵”に記された72柱の魔神の一つで、占星術や数学、薬草や宝石の知識を司り、死者の墓標に青白い火を灯すと言われている悪魔です。


聖ジョージの剣 ― アスカロン

またしても、カテゴリに悩ませてくれる物語です。
例によって非常に便利な“中世ヨーロッパ”に入れはしたものの、3世紀頃の物語なので、厳密に分けると“中世”より僅かに昔なんですよね……。


今回は、ドラゴンスレイヤー“アスカロン”、その名も高き“聖ジョージの剣”です。聞くところによれば、世界一高名なドラゴンスレイヤーということです。まぁ、キリスト教圏からはずれている我が国では、今一つパっとしない知名度ですが。
せいぜいがとこ、からくりサーカス@藤田和日郎で名前を見た事がある程度ではないでしょうか。


聖ジョージ(地域によってゲオルギウスだったり、ジョルジュだったりはしますが)は、キリスト教の7英雄に数えられる聖者の一人です。


彼がまだ聖者と呼ばれる前、ただのジョージだった頃のお話になります。
とある異教徒の村を訪れたジョージは、村の雰囲気がひどく暗い事に気付きます。
聞けば、その近隣には邪悪なドラゴンが棲みついており、彼らはその脅威に晒されているとの事。
ドラゴンは最初のうちは、生贄として牛や羊を要求していたのですが、やがてそれらを食い尽くし、ついには人間を差し出すように言い出したのです。
無茶な要求とは言え逆らう事も出来ず、生贄を差し出す事になったのだが、その生贄を決めるくじが、何と王の娘クレオドリンダに当たってしまったらしいのです。
ならばとドラゴン退治を引き受けたジョージは、愛剣のアスカロンを携えて出発し、何と件のドラゴンを生け捕りにして村に戻ってきます。


その凶悪な風貌に恐れ戦き、早く殺してくれと懇願する村人たちに対し、ジョージは厳かに返します。
キリスト教徒になるなら始末しよう、と。

事実上の生殺与奪権を握られてしまった村人たちは、信徒になるより他に道はなく、この功績によってジョージは晴れて聖者の称号を……ってアンタ、それじゃ脅迫じゃあないか。


まぁ何と言いますか、これは英雄伝説や叙事詩の類ではなく、信者獲得のためのアピールでしかないような気がしますな。
キリスト教の聖者の前には、さしものドラゴンもほらこのとうり。どうだい、キリスト教は最高だろ? ってなとこですか。



両手剣:アスカロン/D76/隔458/STR+3 VIT+3 MND+3 対ドラゴン追加効果:光ダメージ/Lv68~/戦ナ暗/Rare Ex



当然のごとくな性能ですね。ステータスへの+はともかくとして、ドラゴンに対して有効な武器に設計されています。
何だか、当たり前過ぎてこれ以上コメントもつけようがないくらいです。


ボストーニュ監獄のShadow族NM、通称“工藤兄弟”の片割れ、Phanduron the Condemnedのレアドロップアイテムです。


戦士が装備可能な唯一のギザ剣(フランベルジュ系)ですが、何で聖者の剣にこういう禍々しい形状のグラフィックを当てたんでしょうか。クレイモアタイプの方がそれっぽいような気がしますが……。



魔狼 ― フェンリル

今回は少々趣向を変えて、武器などのアイテムではなくモンスター、正確には召喚獣についてです。
現時点実装されている召喚獣の最上位、お題は“フェンリル”です。


ヴァナ・ディールにおいては、ウィンダスの守護獣ととして崇められ、ヴァナの神にも等しい五霊獣の一つに数えられていますが、原典である北欧神話では、フェンリルはアースガルドの神々を滅ぼす恐るべき魔獣として登場します。


フェンリル狼は、悪神ロキが巨人族のアングルボザとの間にもうけた三子の長兄で、大蛇ヨルムンガンド(ウルガラン山脈の真竜Jormungand として登場。また、“ミッドガルドの蛇”の意のミドガルズオウムという別名も持つ。こちらは、サーバの名前の一つに使われている)と、死の女神ヘルの兄として誕生しました。

この三子が、ゆくゆくアースガルドの災いとなる事を恐れた神々は、ミドガルズオウムを海へ、ヘルをニヴルヘイム(要は地獄みたいなもの。凍った霧と暗闇の王国とされています)へと投げ捨て、フェンリルをアースガルドで監視下に置く事にします。


しかしフェンリルは驚異的な成長を見せ、日に日に巨大になっていきます。このままでは、制御できなくなるのも、そう遠い話ではない、そう考えた神々は、フェンリルを拘束する事にします。

まず用意されたのは頑丈な鎖であるレージング。しかし、フェンリルは容易にこれを断ち切ってしまいます。
続いて、レージングよりも強固なドローミという鎖を試しますが、これもすぐに引き千切られてしまいます。


困った神々は、ドヴェルグたちに、何よりも強靭な拘束用の品を発注しました。
それに応じてドヴェルグたちは、猫の足音、魚の息、女の髭、熊の腱、山の根、鳥の唾液を用いて、グレイプニルという魔法の紐を作り上げます。腱とか根はいいとしても、足音や息でどうやって紐を作るのかは甚だ疑問ですが……(ちなみにこれらの品は、グレイプニルの材料に用いられてしまったため、今日では存在しない、ということになっています。…するとアレですかね、昔は猫もドタバタ走って、女の人も毎朝髭剃ってたんでしょうか)。


この時点でとうにフェンリルの方も、神々が自分を拘束しようとしている事には気付いていました。

鎖は切る自信があったので好きにさせたものの、今度用意されたのはただの紐。これは逆に怪しいとフェンリルも考え、その紐で自分をつなぐ際に条件をつけます。
自分の口の中に、誰か腕を入れておけ、と。
これには神々もさすがに困りました。つないだが最後、解放などするはずもない。つまり、この条件を飲むという事は、即ち腕を失う事と同義なのですから。
ただ一人だけその犠牲に怯えなかった誓約の神のテュールが、その右腕と引き換えにする事で、フェンリルは縛につくことになります。


ラグナロクの際にフェンリルはこの戒めから解き放たれ、巨人族や兄妹たち、そして父であるロキと共に、神々を滅ぼすべくアースガルドに攻め入る事になります。
この時その身体は、下顎を大地につけて、上顎が天に届くばかりに巨大な物になっていたとされています。



フェンリルトルク/日中:MP+30 夜間:敵対心-3/Lv70~/All Jobs/Rare Ex
フェンリルピアス/日中:攻+10/夜間:飛攻+10/Lv70~/All Jobs/Rare Ex
フェンリルケープ/日中:防+10 夜間:敵対心+3/Lv70~ All Jobs/Rare Ex
フェンリルストーン/D30/隔999/日中:HP+30 夜間:回避+10/Lv70~/All Jobs/Rare Ex



フェンリルは、ウィンダス水の区で発生するクエスト“月の導き”の報酬として、召喚が可能になります。


今回は特に載せておくアイテムデータがなかったので、フェンリル戦の報酬として手に入るアイテム群を掲載しましたが、言うまでもなく原典のフェンリルとは一切関係ありません。
また、クエスト名や、その履行からもうかがえるように、何かと月と関連付けられていますが、月と深い関わりを持っているのはむしろケルトの狼で、北欧の狼であるフェンリルには、本来月との接点はありません。

(追記:↑上記はいささか正確を欠きます。北欧にも、月と極めて密接な関わりを持つ狼、ハティ ―FFXIでは、竜王ランペールの墓のHound族モンスターHatiとして登場― というのがいます。早い話がド忘れしてました。まぁ、フェンリルが月と関係ないことに変わりはないのですが。)


……何かこうして改めて比較してみると、見る影もないと言うか、全くの別物ですね。


西のヤドリギ ― ミステルテイン

ここ数回、武器カテゴリを散らしてるので、また別の物、片手棍でもいってみましょうか。
……これが手頃かな? 今回は“ミステルテイン(ミストルティン)”についてです。


この名に聞き覚えのある方は、これが片手棍なのに驚いたのではないでしょうか。
私も最初聞いたときは、首を傾げたものですが、ものの成り立ちをみれば、斬新な解釈ではあるものの、それ程不自然ではないのです。
と言うのも、原典のミステルテインは、ただのヤドリギの枝なのですから。


オーディンの息子の一人バルドルは、知に優れ、万人から愛される光の神でした。
そのバルドルは、ある時不吉な悪夢を見ます。
これを凶兆と見たバルドルの母のフリッグは、世界にある全ての物に、バルドルを傷つけないという誓いを立ててもらいました。
この誓いによって、バルドルは事実上不死身の存在となります。なにものも彼に傷を負わせる事が出来ないのですから。


これを面白く思わないのが、悪神のロキ。
何とかバルドルに痛い目見せてやる事は出来ないものかと、老婆の姿をとり、フリッグに近づき尋ねます。本当に世界中の全てが誓いを立てたのか、と。
実は、誓いを立てるにはまだ若すぎるという理由から、ヴァルハラ(北欧神話でいうところの天国みたいなものです)の西のはずれに生えているヤドリギの若木、ミステルテインだけは、その誓いを立てさせていなかったのです。
まさか老婆に悪意があろうとは思わないフリッグは、この話を漏らしてしまいます。
ロキはすぐにこのヤドリギを折り取り、それを手にバルドルの元へ向かいます(この時、削って剣にした、槍にした等の説もあります。ミステルテインを武器として採用しているものは、そちらの説をとっているのでしょう。そういえば、ARMES@皆川亮二では、槍型の兵器にこの名がついていましたね)。


バルドルの周りには神々が集まっており、その手に様々な武器を持ち、それをバルドルに投げつけて遊んでいました。不死身っぷりを試していたんですな。
そんな中でロキが目をつけたのは、バルドルの盲目の弟ホズ。
ロキはホズに尋ねます。何故、あの遊びに加わらないのだ、と。
盲目の自分にはバルドルのいる場所は判らないし、投げつける武器もない。そう答えたホズに、ロキは手にしたミステルテインの枝を渡し、バルドルのいる場所を教えます。
ホズは、まさかその手にしているのが、この世でただ一つの兄を殺せる代物とは夢にも思わず、言われるままにそれをバルドルへと投げつけたのです。


こうしてバルドルは死に、世界は光を失います。
そしてこの悲劇こそが、ラグナロク(北欧神話における終末伝説。聖書に言う黙示録――アポカリプスに当たります。ワーグナーはこれを「神々の黄昏」と訳しています)の序章となるのです。
(ちなみにこの後、バルドルには復活のチャンスが与えられますが、ご丁寧にロキはそれも邪魔してしまいます。さすがは北欧神話一の悪玉、相変わらずロクな事しません)



片手棍:ミステルテイン/D22/隔216/INT+10 MND+10/潜在能力:リフレシュ/Lv70~/白黒赤召



殺せぬはずのものを殺した……、FFXIルールで再現するなら、“追加効果:ディスペル”辺りでしょうか。まぁ、片手棍、しかもメイスやハンマーではなく、ワンドのカテゴリに入っている代物にそんな性能つけられても、何の役にも立ちませんが。
装備可能ジョブを見る限り、まぁ妥当な性能なのでしょうか? 入手難度の割には微妙、とも聞きますが。


潜在発動条件は、TPの消費。……いやだから、ワンドで敵を殴るケース自体がまずありえないんだってば。


入手経路は、Quadav族の王、Za'Dha Adamantkingのドロップです。