犬の仔 ― スキュラ
本日は、オデュッセイアより、メッシーナ海峡に棲む二大脅威の一、船乗り達の大敵、悲劇の女怪“スキュラ”をご紹介しましょう。
スキュラは、前述のとおり、ホメロスのオデュッセイアに登場するモンスターで、その名は「犬の仔」を意味します。
大分昔(4年以上前なのか…)に当blogでも軽く触れたことがありますね。
スキュラはいわゆるキマイラと呼ばれるタイプの怪物で、上半身は美しいニンフ(美女の姿をした妖精の類)のそれなのですが、下半身が六頭の魔犬――正確には、犬の首×6+犬の脚×12という姿をしています。
メッシーナ海峡(シシリア島と、イタリア本土の間の海峡)を挟んで、カリュブディス
の対岸に棲息し、そこを航行する船を襲って人を喰らうという、恐るべき魔物です。
カリュブディスがそうであった様に、スキュラも生来に邪悪な怪物として生まれてきた存在ではありません。
上半身にその面影を残すように、元々はニンフの一人でした。
スキュラは、非常に美しいことでその名を知られていました。
当然ながら引く手数多で、言い寄る男は数知れずといったところだったのですが、当のスキュラはどうしたわけか色恋沙汰にはとんと興味がなく、どんな好男子に求愛されても、それに応えることはありませんでした。
そんな彼女を見初め、愛報われなかった者達の一人に、グラウコスという男がいました。
グラウコスは海の神性の一柱です。髪も髭も肌も海の色の青、両脚の先は魚の尾という奇怪な姿をしてはいましたが、別に邪悪な存在ということもなく、むしろ朴訥で誠実な人柄でした。
想いも虚しく、グラウコスも、スキュラに振られた大勢の仲間入りをするのですが、彼はどうしてもスキュラを諦めることができません。
グラウコスは、アイエイア島に住む魔女、キルケーのもとを訪れ、スキュラの心を自分に向けさせるための助力を請います。
ところがどうした運命のいたずらか、当のキルケー自身がグラウコスを気に入ってしまい、スキュラではなく自分を選べとグラウコスに迫ります。
がしかしグラウコスの方はスキュラ一筋。
袖にされてしまったキルケーはスキュラを逆恨みし、秘薬の力で、スキュラを前述の怪物の姿へと変えてしまったのです。
スキュラにしてみれば、まったくもっていい迷惑なのですが、おぞましく変わり果てた己の姿に心を病みでもしたのでしょうか、スキュラの内面もやがて、怪物の外見に相応しい邪悪なものへと堕してしまい、いつしか人喰いの魔物としてその名を轟かせるようになったのでした(また一説には、スキュラ自身は醜い姿を見られるのを避けるため、海辺の洞窟に引きこもっているだけだが、六頭の魔犬たちは勝手に首を伸ばして、手当たり次第に生き物を襲って喰う、とも)。
カリュブディスのエントリーでも触れましたが、メッシーナ海峡を抜けるためには、カリュブディスかスキュラの、いずれかの生息域を通らなければなりません。
船を丸ごと沈めてしまうカリュブディスに比べれば、一度に首の数分、即ち六人しか襲えないスキュラの方が、まだ被害は軽微ということで、オデュッセウス一行はスキュラのテリトリー寄りに船を進め、六人の犠牲を出しつつも、どうにかこの危険域を抜けることに成功したのでした。
ヴァナ・ディールにおけるスキュラは、ボスディン氷河〔S〕に配置されたRuszor族NM、Scyllaとして採用されています。
このルスゾンというのは、私がヴァナを離れた後に追加された種族なので知らなかったのですが、何ですか? これ。セイウチ?
何でスキュラがセイウチになってしまったのかは解りませんが、とりあえずScyllaを倒すことで、パピリオキルパンという短剣をドロップするようです。
短剣:パピリオキルパン/D29/隔201/潜在能力:D35/Lv72~/コ踊/Rare Ex