all is full of beautiful love -20ページ目

all is full of beautiful love

beautiful days, beautiful life

一枚、一枚、より多くの木の葉を巻き込んで吹き荒れる嵐の夜に凛として立ち向かう大樹の様な彼女が涙を流している。

優しい子、お前は生きる為に生まれて来た子だよ。

意味など、然程考える必要も無いのだ。
何かを成す為に生まれてくる事なんて無いのだから。
選んだ事を自分自身の責任で魂を込めて成すこと。
命を大きな流れに委ねて、生きる事に懸命に、そうして成し得た事が結果として意味となる。

抗う事の出来ない数々の事象を抱き止めるかのように大きく手を広げて、脆くて儚く強い灯火を内側に見つめる。
涙は枯れるだろうか。
歌は途絶えることなく哀しみを迎えながら遠くまで響く。



静かな静かな水面に小さな小さな石が落ちた
最初は小さな輪を幾つも幾つも生み出し、其れは次第に大きな波紋となって波打ち際まで果てる事無きかの様に広がっていった

その水面が人だろうか
石を投げたのが人だろうか
石そのものが人だろうか

人は人と出会う時に心が揺れ、時に分かち合い、時に傷つけ合い、時に哀しみ憎しみ、そして愛を覚える

弱さ故にあなたを傷つけて、愚かさ故にあなたに嫉妬して、小さな魂にいっぱいの後悔を詰め込んで其れでも進んでいくんだろう

要らないものは自分で決めて、連れていく愛しく美しい灯火の数々

ぎゅっと抱えて小さな塊になったら飛び込むあの水面

飛び込む水面

揺れる水面が人だろうか
石そのものはなんだろうか




あの頃とは遠く離れていてもいまでも変わらずにここに有るものだってある。

生乾きのタオルが風に飛ばされて路地裏に落ちた。
塀と塀に囲まれた細いその道には三色の美しい色を纏った猫がいる。
寝る場所がないならここに置いで。
ここが嫌ならそのベッドでお眠り。

彼女は変わった。
変わる事が当たり前なのだから咎める事は一つも無いし、どちらかといえばかわった原因が何なのかを問いただしたい気持ちの方が強かった。

彼は変わった。
暫く見ないうちにまさかこの短期間でと思う様な変化を遂げた彼もまた、咎める事など考えもしなかった。

あなたは生きたい様に生きて、私は相変わらず道の真ん中だろうと何処だろうとかまわず歌うだけだ。

あなたの様に生まれたかった。

それでも私は、私の様に生きて生きている事にこの上なく満足しているよ。


月日が流れてその声が枯れたとしても決して枯渇する事無い魂の灯火。

私は確かに其処に居る。

私頭が悪いのって言う女の子を嬉しそうに眺めて笑う初老の男も悲しい目をしてあの丘を眺めるのだろうか。
安全な所から彼是議論するのは簡単だと言う彼も安全な所にいるのではないか。
なだらかな丘はそのまま地平線まで繋がっていてまるでどんな叫びも願いも無へと吸い込まれて、もしくは霧散してしまいそうだ。

一人では哀しみは増え募るばかり。
手を取り共にこの場所に立つ人々の尊さよ。
あなたが居て良かったと心から思うよ。

何も無い場所に何かを見つける様に
音の無い夜にリズムを探す様に

新しい眼をもって歩いていける人で有れますように。

風が体の中を吹き抜ける毎に少しづつ心が軽くなれば良いと思う。
平穏に近づいた心に新しい種を運んで来て。

誰かと居ても1人でいてそれでいて孤独でなんか無い感じが嬉しい。
一処に留まる様でいて何処にでもいける感じも嬉しい。

目を開けた、口を開けた体の彼方此方から行き来する内側と外側。
様々に形を変えてやってくる種が心に植えられて育って行くのを愛おしく楽しく眺めている日々。

交差し対峙するあれやそれらに立ち向かう為の準備期間に、今こそ沢山の種を。