そえだ信「アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~」 大猿との戦い | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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そえだ信「アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~」

 

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 21 着想と実践
4月1日公開。

ライナルトはイエッタの助言に従い、森の動物に対し火の魔法の飛ばし方をあれこれと試してみます。

不意に出てきた野兎。

「そこ」

『いきなり背中から小さな手が伸び、少し前方を指さした。

 胸の前、五百ミター(ミリメートル)先、という見当か。

「そこに、おもいきりとばしゅべし」』

『 やりとりの間に迫り寄り、野兎は二十ガータほど先まで来ていた。

 考える余裕もなく、ライナルトは力を込めて両手を振った。

 慌てた分狙いを外したか、という手応え。

 だが、放った炎は軌道修正したかのように真っ直ぐ、獣の頭部に突進していった。

 大きく弾け、頭に炎が上がる。転がって、野兎はのたうち始める。

 小走りによって、ライナルトは剣を振るった。』

 

「え、お前今、何かやったのか?」

「うん」


アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 22 助言してみよう
4月8日公開。

「かじぇ、のみち」

「え、何だ――風、の、道?」

イエッタは風魔法を使って父の火魔法の威力と命中度を上げる方法を考えついていたのです。

『風魔法で作り出されるのは、空気が少し周囲より手触りを持つ、何と言うか濃くなったような感じのもので、そっと手で探れば形を知る程度はできるんだ。

 数日練習して、あたしはそれをそこそこの薄さ、細長い感じに変形することができるようになっていた。』

イエッタとライナルトはその方法を何度か試し、それが効果的に使えることを確信したのでした。

イエッタはまた水魔法と火魔法を使える村の女たちに協力することで簡単に獲物を獲る方法を伝えます。


アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 23 鍛錬と提案
4月12日公開。

『ライナルトはイェッタの指示で女たちがつないだ野兎を仕留めるのを、離れて見ていた。

 ロミルダとフェーベのやりとりに、ライラも近寄り加わっている。

 ライラは水適性だったようで、改めてフェーベと組んでもう一羽の野兎を仕留めていた。』

「うまくいけそうじゃないか」

「ああ、うん、いけるよこれ」

「水を、何だ、口の中にぶち込んでやるわけか」

「そうさ。それで少しの間苦しんで、動けなくなる」

「その隙に、頭に火を点けてやる、と」

「そうそう」

「すごいよね、これ」

このような方法を赤ん坊のイエッタが考案し助言したことに皆驚きを隠せません。

「ライナルト、これどういうことさ? この赤ちゃん、こんなに話せるとも思わなかったけど、何でこんな意味のあること言い出してるのさ」

「いや俺もさっぱり分からないんだが、ここ数日、急にこういうことを話すようになっているんだ」

「そりゃあ――イェッタちゃん、とんでもなく賢いってことなのかねえ」

 

イエッタはまた火魔法の命中確率の低いコンラートと風適性を持つツァーラを組ませることを提案しました。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 24 指導してみよう
4月19日公開。

イエッタはツァーラに「風の道」を作ることを指導します。ツァーラは赤ん坊の言葉もよく理解しすぐにコツをつかんだようでした。「風の道」を使うツァーラと組むことでコンラートの火魔法は格段と威力を増しました。
『翌日の朝食後、父はあたしを抱いて家を出た。』

ライナルトはこの村にしばらく留まることを決心したのでした。

「考えたんだがな、もう数年ほどこの村にいさせてもらおうと思う」

ライナルトは村人たちにここまで来た理由、目指していたことを語り始めました。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 25 談話と確認
4月26日公開。

『数年間村に定住したいというライナルトの希望を、村長のホラーツは快く受け入れた。と言うよりも、本人以上に村の方が助かる話だろう。』

『これまでしてきたようにライナルトは村の警備と戦闘指導を行い、村人たちは父娘の生活を支援する。そんなことを、改めて確認した。』

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 26 迎撃してみよう
5月3日公開。

それから数日は同じような日々が続いた。いつものように剣と魔法の鍛錬。女たちの所に預けられたイエッタは前半は本を読んでもらったり家の中で遊び、後半外に出て魔法の練習を観察する、という日課を繰り返していた。

 

ある日、村の中の景色を見ながら父と森を目指していた時。

『村の方を振り返ると、木立の隙間から畑仕事をする人たちの姿が小さく見えている。

 こんな平和が続けばいい、と呑気に思ってしまうところだけど。

 山の方角を見て、父が「ん?」と低い声を漏らした。』

「おかしい。鳥の声も聞こえなくなっている」

「そだね」

「あそこ――やっぱり動いた」

「なに」

「木の上、大きさからして、猿魔獣だ。そこそこ数がいる」

「そなの?」

「増えている――近づいている、な。こりゃいかん」

『踵を返して、父は村方向へ戻り出した。

 今のところまだ距離はあるけど、群れは確実にこちらに近づいて、間もなく村に達するのではないかということだ。

 真っ直ぐ防護柵に駆け寄って、父は村の中を覗いた。出入口はまだしばらく横に進んだところだけど、柵の隙間から畑が見えている。少し離れて、何人か作業をしている。

 そちらに向けて、父は怒鳴った。

「おい、ケヴィン!」

「何だ、どうした?」

「猿魔獣が近づいている。みんなに報せて、打ち合わせ通り準備させろ!」』

 

「猿魔獣だって?」

「まちがいないのか」

「ああ。森の向こう、山中に見つけた。まちがいなく群れを作って、こちらに近づいている」

 

打ち合わせに従って村人たちは戦闘態勢に入ります。

ライナルトたちと猿魔獣の群れの戦いは始まりました。


アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 27 追撃と驚嘆
5月10日公開。

『柵を越えて駆け寄る猿を、剣を構えて迎え討つ。相手の木の棒が振られるところを余裕で受け流し、ライナルトは一刀でその首を刎ね飛ばした。

 すぐに向き直り、仲間たちの迎撃を確かめる。ひっきりなしに魔法照射は続いているが、さらに何匹も柵を越える猿が出てきている。

 即座に、ライナルトはそちらへ走り出した。

 横並びの村人たちに近づく前に、続けざまにそれらの首を刎ね飛ばす。

 男たちも木刀を構えて、近づく魔獣を迎え討った。』

次第に数を増す猿魔獣。しかし、ライナルトと村人たちの連携は功を奏し次々と猿たちを仕留めていきました。

『そうして、三十ミーダ(分)ほども過ぎた頃。ようやく柵を越える猿はいなくなり、向こう側に残っていた数匹が木立の中に逃げ込んでいった。

「やった!」

「終わりか?」

 村人たちは、汗まみれの顔を見合わせた。』

 

「俺は、残った奴らの再進攻がないか見てくる。ケヴィンとイーヴォは一緒に来てくれ。残りは生きている奴の止めと、死骸の始末を頼む」

 

森に偵察に入ったライナルト達が見たのは、巨大な猿魔獣だった。

『ふつうの小鬼猿こおにざるの身長は一・五ガターあるなしだが、木の間から姿を現したそれは、三ガター近い高さに見える。見た目は小さい奴らとそれほど変わらないが、上半身から腕にかけてが筋肉隆々と形容できそうなほど発達しているようだ。

 加えて、他の奴らと同様に雑食で肉も食らうことを誇示するごとく、上顎から生えた大きな牙を覗かせている。

 その力強い外観の腕を振って生えていた木を倒し、目の前に広がる草地に足を入れてきた。見ると、その手に大人の脚よりも長さと太さのありそうな木の棒を握り、地面を叩いている。

 後ろに数匹、ふつうサイズの猿魔獣が従ってきていた。』



アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~ - 28 戦闘してみよう

5月17日公開。

『頷き合って、父と二人の男は木立の陰を出た。

 見上げるほどの大きさのボス猿が一匹と、それに従う小猿が――六匹、か。足並み揃えるようにして、着実にこちらに近づいてくる。もう、いろいろ考える暇もないんだ。

 ボス猿一匹だけでも、村は全滅しかねない。何としてもここで抑えなければ、と男三人は不退転の決意らしい。』

 

ボス猿との闘いは始まった。村人たちの魔法による攻撃は取りあえずボス猿の足を止めることはできた。しかし、ライナルトの剣による攻撃は軽く跳ね返されてしまう。

『ケヴィンが火を飛ばし、少し遅れてイーヴォが水をぶつける。すぐさまあたしが風の道を作り、父の大きな火が飛ばされる。』

うるさい小虫を払うように、猿は空いた手を振り回す。

 しきりと上体を揺らし、顔面に狙いをつけにくくしているようだ。』

 

『「もう一丁!」

「おお!」

 ケヴィンが火を飛ばし、遅れてイーヴォが水を飛ばす。

 猿が腕を横にして顔を守る。

 そこへ、父が素速く飛び出していった。

 注意が顔に集中して空いた下半身を狙う。

 一瞬で間を詰め、抜き放った大剣を毛むくじゃらの左臑に叩きつけていた。』

しかし。……

『斬りつけられた臑に血が見えることもなく、大きく蹴り上げて剣は払い除けられた。

 勢いでよろめき。父は横手へ向けてたたらを踏んでいた。』

 

何度か同じような攻撃を繰り返したがやはり状況は変えられない。

村人たちの近くまで大ざるが迫ってきた時、ライナルトは剣を投げつけてしまう。

 

『にやり、と猿が笑ったように見えた。

 今さっきまでてこずっていた敵が、武器を手放して地に膝をついているんだ。

 すぐにはこれまでのように、ちょこまか逃げ回ることができない姿勢だ。

 手ぶらで、残された火の攻撃だけならたいした痛手も受けない。

 この機を逃すまい、と思ったのだろう。

 手にした棒を握り直して。ゆっくり。こちらに向けて歩み寄ってくる。』

 

ボス猿はライナルトに向かって棍棒を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

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