何だかとても辛くなる歌です。しかし、旋律や歌詞が頭の隅っこにしっかり残っていて、時折、ほんの時折ですが頭に浮かんできて離れなくなることのある歌です。
蓬莱泰三作詩 南安雄作曲 『日曜日 ~ひとりぼっちの祈り~』
最初に聴いたのは高校生だった頃だと思います。全日本合唱コンクールで金賞を受賞した神戸中央合唱団の演奏でした。
お父ちゃん はよ起きや
ええ天気やで 青空やで
はよ起きなんだら こそばすで
ふとんめくるで 鼻つまむで
はよ はよ はよ起きいな
・・・・・・・・
お母ちゃん お化粧まだか
お弁当持ったで 服着たで
はよせなんだら おいとくで
何にもせんかて きれいやで
はよ はよ はようしてえな
・・・・・・・・
日曜のに朝、はしゃぎ回る少年とその両親。何処にでもありそうな幸せな景色です。
しかし、それは一瞬にして変化します。
あっという間に いっぺんに
車と一緒に死んでしもた
衝突事故で 崖から落ちて死んでしもた
最初の部分は両親を失った少年の回想だったのです。
その時は良い曲だと思いましたしちょっと哀しく耳に残る曲だなと思ったこと事ばかり記憶に残っています。
しかし、この曲「ちょっと哀しく」では全然済まない曲でした。
曲を聴き進むと状況が少しづつ分かってきます。哀しいでは済まないという理由も。
何だろう。このつらさ。なんだろう、この詩は・・・
一章 「朝」
お父ちゃん はよ起きや
ええ天気やで 青空やで
はよ起きなんだら こそばすで
ふとんめくるで 鼻つまむで
はよ はよ はよ起きいな
日曜日やで 休みやで
どっか連れてってえな
なあ なあ なあてお父ちゃん
お母ちゃん お化粧まだか
お弁当持ったで 服着たで
はよせなんだら おいとくで
何にもせんかて きれいやで
はよ はよ はようしてえな
どないしたかて いっしょやで
はよせな 昼になるやんか
なあ なあ なあてお母ちゃん
けど もう お父ちゃんいてへん
お母ちゃんもいてへん
けど やっぱり 日曜日の朝になったら繰り返す
ひとりぼっちの ひとりぼっちの
ぼくのひとりごと
あっという間に いっぺんに
車と一緒に死んでしもた
衝突事故で 崖から落ちて死んでしもた
ひとりぼっち ひとりぼっち
そやから そやから
ぼくは ひとりごと
お父ちゃん はよ起きや
お母ちゃん お化粧まだか
ええ天気やで 青空やで
お弁当持ったで 服着たで……
二章 「街で」
走る 走る 走る
車 車 車
日曜の交差点
ぼくのまわり
走る 走る 走る
車 車 車
乗ってるおっちゃん よそのおっちゃん
笑ろてる 笑ろてる 笑ろてる
探してるのやあらへんぞ
退屈やさかい 見てるだけやわい
食べてる 食べてる 食べてる
カレー うな丼 スパゲッティ
デパート8階 大食堂
みつ豆 お子さまランチ クリームパフェ
食べてるおばちゃん よそのおばちゃん
笑ろてる 笑ろてる 笑ろてる
探してるのやあらへんぞ
退屈やさかい 見てるだけやわい
回る 踊る 走る
回転木馬 ゴーカート モノレール
デパートの屋上の広場
回る 踊る 走る
マジックガン ミニロケット
乗ってる子 よその子
笑ろてる 笑ろてる 笑ろてる
前に乗ったわい なんぼでも前に乗ったわい
うらやましいことなんかあらへんわい
退屈やさかい 見てるだけやわい
ほっといてんか!
何でや 何でやねん
おったら いかんのか
見てたら いかんのか
何で 何でいかんのや!
三章 「かえり道」
遊んでる みんなが一緒に遊んでる かえり道
見て見ぬふりして まわり道
そやのに みんなが追ってくる
みんなの声が追ってくる
「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」
違うわい 違うわい 違うわい
ぼくのお父ちゃん ええ人やったわい
違うわい 違うわい 違うわい
なんぼなと言え へっちゃらやわい
「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」
走りとないのに 走ってしまう
耳おさえ 目をつぶって 走ってしまう
ああ・・・
「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」
あほ ばか まぬけ 柿のへた
あほ ばか まぬけ 柿のへた
前にビー玉やったのに
チューインガムもやったのに
マンガの本かてやったのに
薄情もん! 裏切りもん!
「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」「人殺しの子」
走るな 走るな ぼくの足
歩け 歩け ぼくの足
プロレスみたいに 横綱みたいに 歩け 歩け 歩け
走るな 走るな 走るな
止まれ 止まれ 止まれ ぼくの足
走るな 走るな 走るな
止まれ 止まれ 止まれ 止まれ
お父ちゃん なんで
なんでお酒飲んで運転したんや!
四章 「てがみ」
拝啓 こんにちは
足のおけがはどうですか
ぼくは君とこの車に衝突さした人の子供です
君はきっと怒ってはるやろと思います
ぼくのお父ちゃんのこと
ものすご 怒ってはるやろと思います
お父ちゃんが お酒を飲んで 追い越しなんか せなんだら
君もひとりぼっちにならんで すんだんです
足も怪我せんで すんだんです
かんにん したげてください
ぼくのお父ちゃんを
かんにん したげてください
もし君が一生びっこになって働けんようになったら
ぼくが弁償します
うんと働いて お金をためて
お金もあげます
家もあげます
ごちそうもあげます
きっと誓います
そやから どうか ぼくのお父ちゃんを
かんにんしたげてください
お願いします お願いします お願いします
さようなら
五章 「おやすみ」
ねんねころいち
お父ちゃん寝たか 星からぼくが見えてるか
お酒飲みなや おとなしいにしいや
天の神さんに怒られるで
ねんねころいち
お母ちゃん寝たか あんまりお父ちゃんいじめなや
けんかしいなや 仲ようしいや
天の神さんに笑われるで
ねんねころいち お父ちゃんおやすみ お母ちゃんおやすみ
仲ようしいや 仲ようしいや
そいで天国へ行かしてもらいや
ねんねころいち おやすみなさい
またあした……またあした……
哀しすぎる辛すぎる詩と歌。しかし、やはり心から離れてくれない歌なのです。
そえだ信「臼月【うすづき】トウコは援護【まも】りたい」
「掃除機探偵の推理と冒険」に続きこちらもよろしくお願いします。
4編の倒叙ミステリーからなる連作中短編集。ユニークなキャラクターが魅力的です!
ツイッターに感想がよせられています!
「昨日の予告通り、そえだ信 さんの『臼月トウコは援護りたい』の感想を、ブログにアップしました。 もうちょっと素直に読んでも良かったかも、という気もしないでも無いですが、私のようなヒネクレ者にも楽しめる、良い作品です。」
昨日の予告通り、そえだ信 さんの『臼月トウコは援護りたい』の感想を、ブログにアップしました。
— tap (@tap48647575) July 1, 2022
もうちょっと素直に読んでも良かったかも、という気もしないでも無いですが、私のようなヒネクレ者にも楽しめる、良い作品です。https://t.co/FSgVzXuqi3
https://t.co/ZaH6nfqFwY
そえだ信「臼月トウコは援護りたい」面白かった。
— Kenji Kimura/木村憲司 (@Kenji_Kimura_) June 28, 2022
被疑者の無実を証明しようと証言を剃ればするほど、被疑者のアリバイを崩していくキャラクターにまつわる、すっきりするミステリ短編集! pic.twitter.com/wnz6zKrsLq
「掃除機探偵面白かったので購入。 完璧なアリバイを用意して犯行に及んだ犯人たち。雇ったばかりの臼月トウコの援護によって追い込まれていく連作倒叙ミステリ。 風変わりのキャラと独創的なトリックの面白さが際立っていて、楽しめました。」
臼月トウコは援護りたい/そえだ信
— 濃緑ノ茶@読書垢 (@bookkk_7902) June 25, 2022
掃除機探偵面白かったので購入。
完璧なアリバイを用意して犯行に及んだ犯人たち。雇ったばかりの臼月トウコの援護によって追い込まれていく連作倒叙ミステリ。
風変わりのキャラと独創的なトリックの面白さが際立っていて、楽しめました。#読了 pic.twitter.com/onhd2OxvLh
「「臼月トウコは擁護りたい」、読了!倒叙モノの醍醐味の一つに犯人の焦燥感があると思うのですが、本作はこれが思う存分に楽しめて良いですね。使えないバイトとして犯人の目の前に出現する上に、自分の犯罪の弱点はきっちり刺してきて、クビだ!!!にいたる様式美が好き。ドラマにも向くのでは?」
「臼月トウコは擁護りたい」、読了!倒叙モノの醍醐味の一つに犯人の焦燥感があると思うのですが、本作はこれが思う存分に楽しめて良いですね。使えないバイトとして犯人の目の前に出現する上に、自分の犯罪の弱点はきっちり刺してきて、クビだ!!!にいたる様式美が好き。ドラマにも向くのでは?
— えぬびい/ n.bringer (@nightmareb) June 25, 2022
「『臼月トウコは擁護りたい』読んだぜ。 北海道(主に札幌)を舞台にした連作倒叙。犯人が上手く警察の追及を避けられたかな、ってところにふらりと「そうですよーこの人が犯人なワケないじゃないですかー」と加勢しに来たかと思ったらスーパー余計なことを言って急転直下事件を解決しちゃう臼月さんは」
『臼月トウコは擁護りたい』読んだぜ。
— 白樺香澄 (@kasumishirakaba) June 24, 2022
北海道(主に札幌)を舞台にした連作倒叙。犯人が上手く警察の追及を避けられたかな、ってところにふらりと「そうですよーこの人が犯人なワケないじゃないですかー」と加勢しに来たかと思ったらスーパー余計なことを言って急転直下事件を解決しちゃう臼月さんは
こちらで第一話全文無料で読めます。
↓
二月の苫小牧。完全犯罪をもくろむ男が用意した完璧なはずのアリバイは、意外な人物によって崩される。人を【援護/まも】るつもりが、いつも必ず容疑者にしてしまう――史上最も不器用な「探偵」が活躍する、デビュー作『掃除機探偵の推理と冒険』に続く新感覚ミステリ
文庫版「掃除機探偵の推理と冒険」発売中
今朝のCBCラジオ「朝PON」で紹介したのは、そえだ信『掃除機探偵の推理と冒険』(ハヤカワ文庫JA)でした。目が覚めると円盤型お掃除ロボットになっていた、しかも部屋には死体が...というカフカもびっくりの設定。そして彼は札幌から小樽まで30kmの旅に出る。充電は?人目は?とにかく素っ頓狂で爽快!
? 大矢博子 (@ohyeah1101) June 9, 2022
本書は『地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険』というタイトルで2020年に刊行されたアガサ・クリスティー賞受賞作の改題文庫化。AI搭載お掃除ロボットのロードノベルってだけで斬新じゃん? 決死の覚悟で階段を降りたり側溝にハマったりという冒険がいちいち楽しい。あと肉じゃが食べたい。
? 大矢博子 (@ohyeah1101) June 9, 2022
刑事の鈴木は、目覚めるとロボット掃除機になっていた! しかも眼前には男の死体が……。『地べたを旅立つ』改題。解説/辻真先
解説者は、辻真先さん。とても素敵な解説でした。ぜひご一読下さい。
クリスティー賞受賞作が文庫化されて、どうやらぼくに作者からお声がかかったらしい。解説を書かせていただきました。カフカじゃないが、なぜか主人公は掃除機になったのです。そこからはじまる汗と涙のロードミステリ。このじれったくてスリリングな奇想にハラハラして、最後はスカッとしてください。 pic.twitter.com/yvc2qgZVFm
? 辻 真先 (@mtsujiji) May 15, 2022
そえだ信、いよいよ国際的作家に?(笑)
クリスタルウインド 添田@cwind7065
「地べたを旅立つ」タイで出版されたようです。 https://t.co/3z50OBCvBc
2022年03月16日 18:32
タイの次は、台湾、でした。