最高1786万、最低236万!衝撃格差の実態【1】
高給・薄給ランキング:給料ベスト100社ランキング
プレジデント 2010年11.29号
リーマン・ショックによる景気後退で、各企業の業績悪化による広告宣伝費の削減の影響が大きいが、原因はそれだけにとどまらない。
リーマン・ショック以降、不況がサラリーマンの懐を直撃、給料が崩壊した。昇給ストップ、ボーナスカット……、実に上場企業の74%が平均年収を下げた。もはや給料アップは期待できない。非常事態だ。
平均給与総額はマイナス5.5%日本企業の給与水準が緩やかに地盤沈下し始めている。戦後最大のマイナス成長となった2009年3月を底に景気は上向き、アジア市場を牽引役に企業業績も回復しつつあるが、賃金はまったく逆の動きを示している。
象徴的な数値は国税庁の調査による民間給与総額の推移だ。09年の平均給与総額は前年比マイナス5.5%の405万9000円となり、1997年の467万3000円をピークに減少傾向にある。ただし、このなかにはパートを含む約3割の非正規労働者も含まれている。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、09年の一般労働者の所定内給与(月額)は約30万円。前年比1.5%減と4年連続のマイナスとなった。とくに男性は前年比2.1%減の約32万7000円(平均42歳、勤続13年)と下げ幅は大きく、こちらも4年連続のマイナスだ。年齢別では59歳以下の全階層で減少し、とくに下げ幅が大きいのが35~39歳の男性で、前年比マイナス3.6%と突出している。
この傾向は10年も変わらない。厚労省の民間主要企業(資本金10億円以上、従業員1000人以上)の賃上げ調査によると、09年の賃上げ額は6年ぶりに前年を下回ったが、10年は09年をさらに下回っている。具体的には09年の賃上げ額5630円を金額にして114円、率で0.01ポイント減少している。
では
ボーナスはどうか。09年の夏は前年比14.3%減、冬が同じく12.6%減と大幅に落ち込んだが、10年の夏はわずかに0.01%増加したにすぎない。業績好調時の07年の主要企業の夏のボーナスの平均は約84万4000円。08年以降、減少に転じ、09年は01年以降で最低額の約71万1000円となった。最悪期を脱し、10年3月期決算では業績回復に転じたが、それでも約71万2000円と1000円しか上がっていないのだ。
業績好調の頃、経営者は口を揃えて「企業業績の反映は賃上げではなく賞与で」と言ってきたが、たとえ業績が好転してもボーナスは上がらない。その理由は簡単だ。3月期決算は人件費などのコスト削減による“見せかけ”の黒字にすぎないからである。
テレビ局、総合商社も大幅なダウン09年の企業業績悪化の影響は年収上位企業にも顕著に表れている。年収1000万円以上の企業は、景気好調時の07年は70社だったが、08年は62社に減少し、09年はさらに少ない47社にとどまっている。しかもそのうち31社は年収減となっている。
とくに下げ幅が大きいのはトップグループのテレビ・メディア業界である。主要5局の10年3月期決算はフジ・メディア・ホールディングス(HD)を除いて軒並み減収となったが、その影響が如実に表れている。2位のフジ・メディアHDにしても、フジテレビ単体では減収を余儀なくされ、124万円のダウンとなっている。
東京放送HDをはじめ朝日放送、テレビ朝日、テレビ東京HDはいずれも100万円超と大幅に落ち込んでいる。業績不振の最大の原因は収益源である
CM広告収入の大幅な減少だ。
もちろんリーマン・ショックによる景気後退で、各企業の業績悪化による広告宣伝費の削減の影響が大きいが、原因はそれだけにとどまらない。フジテレビは直近3年間の合計で600億円近い減収となる一方、日本テレビも00年以降、横ばいから減収に転じるなど広告収入の低下傾向が続いている。大きな原因の一つは、日本企業の構造的変化による広告戦略の見直しとインターネットの台頭によるテレビ広告の相対的優位性の低下である。広告宣伝費を削減する一方で、広告効果をシビアに評価し、選別をしているという実態がある。
たとえば日本テレビの06年の平均年収は1427万円だが、07年1405万円、08年1321万円と減少傾向にある。収益の最大の柱であるCM収入が落ち込むなか、各社はeコマースや動画配信事業をはじめインターネット、携帯、CSなど各種メディアを駆使した新たなビジネスモデルの創造に取り組んでいるが、今後の収益の柱となるかは未知数といえる。
同様にトップグループの総合商社も落ち込んだ。三井物産の181万円減を筆頭に各社50万円前後減少している。リーマン・ショックまでは原油高、資源高に支えられて業績好調が続き、年収も大きく伸びた。しかし、資源バブルが崩壊、10年3月期決算はいずれも減収減益に転じた。
商社の多くは業績好調期に年功色を払拭する賃金制度改革を実施しているが、月給が下がっても資源バブルの影響による賞与高騰で、給与が下がったことを自覚できない社員もいた。総合商社の人事担当者は「業績低下により、年収を支えていた高い賞与が減り、年収の大幅減に直面する社員もいる」と指摘する。
メガバンクをはじめとする銀行は公的資金注入後、賃上げできないまま相対的に給与の減少傾向が続いていた。メガバンクを中心に公的資金完済後から年収も上がりつつあったが、企業の設備投資の抑制や株安などの影響を受けて減益となり、一転、年収減となった。
また、市況の影響を直接受ける海運業界も軒並みダウンしている。08年までは業績拡大を受けて年収は上昇していたが、商船三井は59万円減となり、日本郵船、飯野海運、川崎汽船は前年度の1000万円台を割り込んだ。とくに川崎汽船は162万円減の886万円に落ち込んでいる。
かつては年収トップグループに位置していた石油業界はエネルギー革命の途上にあり、先行きも厳しい。原油の需給に左右される一方、代替エネルギー分野で成長を確保できるかが鍵を握るが、近年は年収の地盤沈下が続いている。辛うじて1000万円を超えるのは東燃ゼネラル石油のみであり、昭和シェル石油、コスモ石油ともに落ち込み、コスモ石油は801万円と800万円割れが目前に迫っている。
唯一、堅調なのが製薬業界である。医薬品の特許切れ続出という、いわゆる“2010年問題”を抱えるが、医療費高騰や診療報酬制度を背景に年収もそれほど変化はなかった。エーザイ、アステラス製薬は1000万円を超え、第13共、武田薬品工業も若干の増減はあるが他業界と比べると安定している。
※すべて雑誌掲載当時
最高1786万、最低236万!衝撃格差の実態【2】
高給・薄給ランキング:給料ベスト100社ランキング
プレジデント 2010年11.29号
月給低迷、年収減少を促しているもう一つの要因が近年の人事制度の動向である。
ジャーナリスト 溝上憲文=文
リーマン・ショック以降、不況がサラリーマンの懐を直撃、給料が崩壊した。昇給ストップ、ボーナスカット……、実に上場企業の74%が平均年収を下げた。もはや給料アップは期待できない。非常事態だ。
管理職に厳しい人事制度の変更年収の増減は企業業績というマクロ的要因に大きく左右されるが、月給低迷、年収減少を促しているもう一つの要因が近年の人事制度の動向である。日本企業の賃金制度は従来の「職能給制度」から「役割・職務給制度」に大きく舵を切っている。
職能給とは新入社員から一人前になるまでどのような職務遂行能力が求められるかを段階的に定義し、社員がその基準に合致すれば賃金を支払う仕組みだ。役割給とは簡単にいえば、職能給制度が本人の能力など「人」を基準に決定されているのに対し、「仕事」を基準にする。
つまり、年齢や能力に関係なく本人が従事している職務や役割に着目し、同一の役割であれば給与も同じにする。つまり、ポスト(椅子)で給与が決定し、ポストが変われば給与も変わり、当然ながら降格・降給が発生する。
厚労省の就労条件総合調査(09年)によると、管理職の基本給を役割・職務給型にしている企業は約41%、従業員1000人以上の企業では64%に上る。じつは07年5月に日本経団連は従来の職能給に代わる役割給制度の導入を呼びかける提言を発表している。
最大の狙いは「職能給制度でも能力評価が客観的にできるような形で運用されていれば問題はないが、評価の基準があいまいだ。役割給により年功色を払拭できる」(当時の経団連幹部)ことにある。
役割給にすれば、若くても優秀な人材を抜擢できる一方、職責を全うできない社員は随時降格できる。つまり、会社にとっては年功で自動的に給与が上がることがないために、総人件費の枠内で人件費を操作することが容易になる。従来の固定費の流動費化の実現だ。
この制度の影響はすでに出ている。前述したように厚労省の調査では大企業(資本金10億円以上、従業員1000人以上)の年齢階層別の賃金は09年度は30~59歳で前年比マイナスになっている。ここにも役割給による管理職の人件費管理の効果が出ていると見てとれなくもない。
また、周知のように管理職にはラインの管理職もいれば、肩書だけの部下なしのスタッフ管理職もいる。厚労省の役職別賃金調査によると、08年以降、部長級、課長級の給与は減少している。
具体的には09年の
部長級(51.6歳)の平均年間賃金は前年比マイナス2.2%の1025万円、課長級(47.3歳)はマイナス1.5%の832万円となっている。業績低迷と人事制度のダブルパンチの影響が出ている。
昇格年齢に達しても昇格できない
役割給を導入している企業でも一部職能給を残し、二本立てで運用しているところも少なくない。この場合の職能は、いわば“生活保障給”の意味合いを帯びている。しかし、業績低迷が続けば、いずれ職能給を廃止する企業も出てくるだろう。
加えて、業績低迷による人件費原資の縮小により、昇進適齢期を迎えても昇進できないという現象も生まれている。大手不動産業の人事課長は「各部門から推薦された昇格候補者のうち、実際に課長に昇格したのはわずか2割。2009年の3割からさらに下がっており、落胆している人も多い」と指摘する。
同社の平均的な課長昇格年齢は30代後半であるが、今では昇格できない社員が大量に滞留しているという。通常なら昇進・昇格させてもいい成績であっても、昇格原資を絞り込んでいるために昇格できない人が増えている。会社で最も活躍が期待される世代が、昇格年齢に達しても昇格できずに、給与が減少し続けている。企業業績の低迷が給与や昇進システムに大きな矛盾を引き起こしている。
平均給与総額はマイナス5.5%日本企業の給与水準が緩やかに地盤沈下し始めている。戦後最大のマイナス成長となった2009年3月を底に景気は上向き、アジア市場を牽引役に企業業績も回復しつつあるが、賃金はまったく逆の動きを示している。
象徴的な数値は国税庁の調査による
民間給与総額の推移だ。09年の平均給与総額は前年比マイナス5.5%の405万9000円となり、1997年の467万3000円をピークに減少傾向にある。ただし、このなかにはパートを含む約3割の非正規労働者も含まれている。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、0
9年の一般労働者の所定内給与(月額)は約30万円。前年比1.5%減と4年連続のマイナスとなった。とくに
男性は前年比2.1%減の約32万7000円(平均42歳、勤続13年)と下げ幅は大きく、こちらも4年連続のマイナスだ。年齢別では59歳以下の全階層で減少し、とくに下げ幅が大きいのが35~39歳の男性で、前年比マイナス3.6%と突出している。
この傾向は10年も変わらない。厚労省の民間主要企業(資本金10億円以上、従業員1000人以上)の賃上げ調査によると、09年の賃上げ額は6年ぶりに前年を下回ったが、10年は09年をさらに下回っている。具体的には09年の賃上げ額5630円を金額にして114円、率で0.01ポイント減少している。
では
ボーナスはどうか。09年の夏は前年比14.3%減、冬が同じく12.6%減と大幅に落ち込んだが、10年の夏はわずかに0.01%増加したにすぎない。業績好調時の07年の主要企業の夏のボーナスの平均は約84万4000円。08年以降、減少に転じ、09年は01年以降で最低額の約71万1000円となった。最悪期を脱し、10年3月期決算では業績回復に転じたが、それでも約71万2000円と1000円しか上がっていないのだ。
業績好調の頃、経営者は口を揃えて「企業業績の反映は賃上げではなく賞与で」と言ってきたが、たとえ業績が好転してもボーナスは上がらない。その理由は簡単だ。
3月期決算は人件費などのコスト削減による“見せかけ”の黒字にすぎないからである。
テレビ局、総合商社も大幅なダウン
09年の企業業績悪化の影響は年収上位企業にも顕著に表れている。年収1000万円以上の企業は、景気好調時の07年は70社だったが、08年は62社に減少し、09年はさらに少ない47社にとどまっている。しかもそのうち31社は年収減となっている。
とくに下げ幅が大きいのはトップグループのテレビ・メディア業界である。主要5局の10年3月期決算は
フジ・メディア・ホールディングス(HD)を除いて軒並み減収となったが、その影響が如実に表れている。2位のフジ・メディアHDにしても、フジテレビ単体では減収を余儀なくされ、124万円のダウンとなっている。
東京放送HDをはじめ朝日放送、テレビ朝日、テレビ東京HDはいずれも100万円超と大幅に落ち込んでいる。業績不振の最大の原因は収益源であるCM広告収入の大幅な減少だ。
もちろんリーマン・ショックによる景気後退で、各企業の業績悪化による広告宣伝費の削減の影響が大きいが、原因はそれだけにとどまらない。フジテレビは直近3年間の合計で600億円近い減収となる一方、日本テレビも00年以降、横ばいから減収に転じるなど広告収入の低下傾向が続いている。大きな原因の一つは、日本企業の構造的変化による広告戦略の見直しとインターネットの台頭によるテレビ広告の相対的優位性の低下である。広告宣伝費を削減する一方で、広告効果をシビアに評価し、選別をしているという実態がある。
たとえば日本テレビの06年の平均年収は1427万円だが、07年1405万円、08年1321万円と減少傾向にある。収益の最大の柱であるCM収入が落ち込むなか、各社はeコマースや動画配信事業をはじめインターネット、携帯、CSなど各種メディアを駆使した新たなビジネスモデルの創造に取り組んでいるが、今後の収益の柱となるかは未知数といえる。
同様にトップグループの総合商社も落ち込んだ。三井物産の181万円減を筆頭に各社50万円前後減少している。リーマン・ショックまでは原油高、資源高に支えられて業績好調が続き、年収も大きく伸びた。しかし、資源バブルが崩壊、10年3月期決算はいずれも減収減益に転じた。
商社の多くは業績好調期に年功色を払拭する賃金制度改革を実施しているが、月給が下がっても資源バブルの影響による賞与高騰で、給与が下がったことを自覚できない社員もいた。総合商社の人事担当者は「業績低下により、年収を支えていた高い賞与が減り、年収の大幅減に直面する社員もいる」と指摘する。
メガバンクをはじめとする銀行は公的資金注入後、賃上げできないまま相対的に給与の減少傾向が続いていた。メガバンクを中心に公的資金完済後から年収も上がりつつあったが、企業の設備投資の抑制や株安などの影響を受けて減益となり、一転、年収減となった。
また、市況の影響を直接受ける海運業界も軒並みダウンしている。08年までは業績拡大を受けて年収は上昇していたが、商船三井は59万円減となり、日本郵船、飯野海運、川崎汽船は前年度の1000万円台を割り込んだ。とくに川崎汽船は162万円減の886万円に落ち込んでいる。
かつては年収トップグループに位置していた石油業界はエネルギー革命の途上にあり、先行きも厳しい。原油の需給に左右される一方、代替エネルギー分野で成長を確保できるかが鍵を握るが、近年は年収の地盤沈下が続いている。辛うじて1000万円を超えるのは東燃ゼネラル石油のみであり、昭和シェル石油、コスモ石油ともに落ち込み、コスモ石油は801万円と800万円割れが目前に迫っている。
唯一、堅調なのが製薬業界である。医薬品の特許切れ続出という、いわゆる“2010年問題”を抱えるが、医療費高騰や診療報酬制度を背景に年収もそれほど変化はなかった。エーザイ、アステラス製薬は1000万円を超え、第13共、武田薬品工業も若干の増減はあるが他業界と比べると安定している。
溝上 憲文
ジャーナリスト
みぞうえ・のりふみ●1958年、鹿児島県生まれ。明治大学政経学部卒業。経済誌記者などを経て独立。経営、ビジネス、人事、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍中。著書に『「いらない社員」はこう決まる』『年金革命』『隣りの成果主義』などがある。
これから、もっときびしくなるってわけね・・