南域結界☆ ジェルソミーナ -47ページ目

1 すべてのはじまり

   第一章


      ――それから三年後――

「この子はもう見込みがないですね」
 会議の席で最右端の教師が言った。二番目の教師も言った。
「そうですよ。五年もここで修行して、初歩の初歩も出来ないんじゃあ、もう無理でしょう。このレシングという生徒は、そよ風ちょっとどころか、ピンの先さえ動かせないんですからねえ。無理ですね、退学を勧めましょう」
「まあ皆さん、もうちょっと待ってやりませんか」
 そう言ったのは三年前より老け込んだ、白い髭の学院長だった。
「学院長。確かにこの生徒が、魔法の素晴らしい片鱗を見せたのは事実ですよ。昔ね。けれど、今になっても出来ないというのでは、全く話になりませんよ」
 三番目の教師も好意的な表情は崩さず、しかし鋭い口調で言った。
「才能を持っていても、その才能を出しきれずに退学する生徒は、今までにもたくさんいました。この子だけを特別扱いするのはどうかと思いますがね」
「特に魔術師にならなければならない理由が、あるわけでもないでしょうし。ここで無駄に時間を潰すよりも、退学させて、他の道を選ばせる方が賢明だと、わたしなんぞは思いますがね」
 第四、第五の教師達も立て続けにうなずいた。学院長はじっと何かを考えているようだった。
「学院長、あなたの気持ちも分からないでもないですが。他の生徒達への手前もありますから」
「ですな。退学させましょう」
「この子にだけ時間を割いている暇はないんですよ」
 成績表をペンで叩きつける、固い音が会議室内に響いた。
「退学させましょう、学院長!」
 学院長はこぶしをテーブルに置き、それでも何かを考えていたが、
「……フランドル君はどう思う」
 と、一人会議室の隅で背もたれに頭をもたせかけ、高く足を組み座っていた、どこかしら冷酷そうな、かなり態度の悪い男へ声をかけた。
 男は黒い目を開けて、目の端で学院長を一瞥すると、まったくやる気がなさそうに背もたれから両肘を下ろした。
「そうだ、君はずっと黙ったままじゃないか。なにか言いたまえ!」
 右端の教師が苛立たしそうに叫んだ。フランドルは意に介しないといった表情で、痩せ細った横顔をさらしている。学院長はそんな彼を見ながら、じっと息を殺して、
「……どうだね」
 と促した。
 その促しでようやくフランドルは、初めて机の資料を取り上げ目を通し始めた。
「退学が一番いい」
 二番目の教師が、力強くうなずきながらそう言った。三番目の教師も、
「この生徒の同期生ではなかったですか。例の、三年飛び級をした生徒は」
 世間話をするように四番目の教師に話しかけた。
「そうそう。あと、一年飛び級した奴もいるよ。三年飛び級のあいつは今年卒業のはずだ。優秀な奴は多いよ。だがやっぱり、落ちこぼれも多いんだな」
「いやまったく」
「普通ここまで長引くこともないんですがねえ」
 学院長はただじっと、フランドルの様子を窺っていた。囁き声の中に、フランドルの成績表をめくる紙の音だけが響いている。
「この生徒の担当をしたことがないので分かりませんが……」
「そりゃあそうだろう。とてもじゃないけど、そんなレベルじゃないからな」
 フランドルの言葉に、一人が吐き捨てるような横槍を入れた。
「……それで……?」
 抑揚のない声で学院長が続きを促した。フランドルは目を上げた。
「学院長はなぜ、この生徒を退学にはなさらないんですか」


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3 プロローグ

 何人もの教師がふらつきながら、壁に頭をぶつけて倒れている学院長を助け起こした。
「今のは一体……」
 予想を全く裏切った出来事に、呆然と教師たちが立ち尽くしている。
「……レシングちゃん……」
 弾き飛ばされたテーブルの下で、少女の肩がぴくりと動いた。
「レシングちゃん……」
 二度目の声で、彼らが見守る中、茶色い目がゆっくりと開いた。学院長は他の手を借りながら立ちあがり、うつ伏せに倒れている少女の傍へ寄った。
「大丈夫かい……?」
 そして小さな肩を引き上げた。
 少女は抱きかかえられても、逃げようとも、うつむこうともしない。頬を叩かれても、肩を荒く揺さぶられても、魂が弾け飛んでしまったかのように瞳を宙に漂わせるだけだった。
 しかし少女の瞳に、やがて小さな暗い光が戻った。
 学院長はそれを見て、ようやくほっとした顔になり、
「よしっ、よしっ」
 と小さな学院生を抱きしめて言った。
「レシングちゃん、君はね、本当にすごい力を持っているんだよ。自信をもったらいい。間違いないよ。ただそれがね、他の人より、ちょっと外に出るのが遅いだけなんだ」
 学院長はその横顔をのぞきこんだ。暗い瞳が微妙に、不安そうにまたたいた。
「おそらく魔力が大きすぎて、君の中から出てこれないんだ。口の小さな壷を考えてごらん。中には大きな物が入っている。でも入り口が小さすぎて、外へはなかなか出ることができない」
 君は今、そういう状態なんだよ、と学院長は言った。
「もっともっと勉強しなさい。そのうちにきっと、君はいい魔術師になれるからね」


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(/TДT)/

 台風、すごかったですね!( ̄□ ̄;)!! みなさまのお住まいの地域は、だいじょうぶだったでしょうか!? わたしの住んでるとこは、兵庫県南部なので……ぜんぜん、ちーとも、台風が進んでくれなくて……めちゃくちゃ、雨が降りましたー(/TДT)/ 家のご近所で、避難勧告がでたのは、はじめてじゃないかしら? ケータイで、市から、「避難の準備をしてください」メールを受け取るのも、はじめて!(@_@)
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