3 プロローグ | 南域結界☆ ジェルソミーナ

3 プロローグ

 何人もの教師がふらつきながら、壁に頭をぶつけて倒れている学院長を助け起こした。
「今のは一体……」
 予想を全く裏切った出来事に、呆然と教師たちが立ち尽くしている。
「……レシングちゃん……」
 弾き飛ばされたテーブルの下で、少女の肩がぴくりと動いた。
「レシングちゃん……」
 二度目の声で、彼らが見守る中、茶色い目がゆっくりと開いた。学院長は他の手を借りながら立ちあがり、うつ伏せに倒れている少女の傍へ寄った。
「大丈夫かい……?」
 そして小さな肩を引き上げた。
 少女は抱きかかえられても、逃げようとも、うつむこうともしない。頬を叩かれても、肩を荒く揺さぶられても、魂が弾け飛んでしまったかのように瞳を宙に漂わせるだけだった。
 しかし少女の瞳に、やがて小さな暗い光が戻った。
 学院長はそれを見て、ようやくほっとした顔になり、
「よしっ、よしっ」
 と小さな学院生を抱きしめて言った。
「レシングちゃん、君はね、本当にすごい力を持っているんだよ。自信をもったらいい。間違いないよ。ただそれがね、他の人より、ちょっと外に出るのが遅いだけなんだ」
 学院長はその横顔をのぞきこんだ。暗い瞳が微妙に、不安そうにまたたいた。
「おそらく魔力が大きすぎて、君の中から出てこれないんだ。口の小さな壷を考えてごらん。中には大きな物が入っている。でも入り口が小さすぎて、外へはなかなか出ることができない」
 君は今、そういう状態なんだよ、と学院長は言った。
「もっともっと勉強しなさい。そのうちにきっと、君はいい魔術師になれるからね」


>INDEX