二十歳の頃、先輩から2万5千円で購入したフェンダージャパンのテレキャスターを持っている。当たり前のことだが楽器というものは、できるようになる人とできないで諦める人の2通りにわかれる。私の場合はめでたくできる方に進むことができた。だいたいがバレーコードといって人差し指などで1弦から6弦までを一気に押さえるコードを克服できるかできないかが分岐点と言っても過言ではないだろう。初心者にとって最初に訪れる最大の難関、Fコードがその代表である。これを押さえられずにあきらめる人が大半で、できた人はそのまま次のコードにチャレンジして好きなミュージシャンの曲をコピーなどできるようになるのだ。これは快感である。
今思い出したのだが私の身近には幼い頃からギターがあった。幼稚園の頃、父親の後輩がガットギター(クラシックギター)を我が家に持って来たのだ。父親は後輩と二人で焼酎を飲み、ご機嫌になって何か演歌のような同じフレーズを何度も繰り返し弾いていた記憶がある。ギターが弾けるとかそんな次元ではなく、ただそのワンフレーズだけをかろうじて弾いた、という方がふさわしいだろう。私がギターを貸してくれと言って、そのガットギターに触れようとすると、ものすごい剣幕で「コラッ」といって私を撃退したことが脳裏に焼き付いている。笑える良い思い出だ。
そして理由は分からないのだが、その後輩がそのガットギターを我が家に置いて帰ったのである。その後、何度かの引っ越しを経て九州にたどり着いたcorn家なのだが、そのガットギターも幸いなことに離れ離れになることなく自宅の物置にしまわれた。ギターが身近にあったからといって私がそれを弾けるようになったかというと、それは全くならなかった。ただ、なんとなくギターがあるな、と思っているだけで手に取ることはなかったのだ。父親も同様である。
中学二年生になった時、当時仲の良かった同じクラスのリーちゃん(ラグビーのリーチマイケル氏に似ている)に腕を引かれて音楽準備室に入った。ちょうど音楽の授業が始まる前だった気がする。準備室の中にはひとクラス分の生徒が弾けるだけの本数分、ガットギターが揃えてある。リーちゃんはその中の一本を手に取りチューニングを始めた。私はあっけに取られていたと同時に、これから何が始まるのだろう?と好奇心に駆られワクワクしていた。
準備室の机に腰掛けたリーちゃんの前に私がひとりの観客として椅子に座っている。チューニングを終えたリーちゃんはヨシッ、といって私の顔を見た。そしていきなり指さばき軽やかに当時私が知らなかった長渕剛の「俺らの旅はハイウェイ」という曲を弾き語り始めた。ピックを使わずにスリーフィンガーという弾き方で軽やかに唄うリーちゃんは非常に格好良かった。まさしく度肝を抜かれたという言葉以外の何物でもない衝撃を受けた私はしばらく声が出なかった。うっとり見とれていると曲が終わった。
「スゴイね、リーちゃん。どこで覚えたの?」
やっとこ落ち着いた私が質問するとリーちゃんはこう言った。
「姉ちゃんが長渕剛ファンでギターと楽譜を持ったから、それで練習した」
自慢するでもなく、ただそう言ってそのまま演奏を続けた。チャイムが鳴り音楽の授業が始まる時間になってしまった。二人は急ぎ教室に移動して授業を受けるのだが、私の心の中はもの凄い興奮に包まれていた。
「弾きたい、俺もギターが弾きたい」
その日、急いで帰宅すると物置にしまってあったガットギターを引っ張り出した。リーちゃんに教えてもらったEmというコードを押さえようとするのだがプツプツと音が途切れてうまく弾けないし、なんだか変な音しかしない。それもそのはず、家にあったガットギターはもちろんチューニングが合っていないのだ。
翌日、リーちゃんにチューニングの方法を聞いてから本屋に行ってヒットソング大全集を買った。そこにはチューニングのやり方も書いてあるし、流行りの曲のコードがたくさん載っている。帰宅すると物置から鍵盤ハーモニカを持ってきてギターのチューニングをした。昨日リーちゃんから教えてもらったEmの音がきちんと出たではないか。そこには何とも言えない感動があった。
その様にして覚えたギターなのだが、不思議なもので弾けるようになると新しいギターが欲しくなる。リーちゃんの家に遊びに行ったとき弾いてくれるギターはアコースティックだった。なんとも優しく奥深い響きの良い音が魅力的である。私はそれが欲しくてたまらなくなった。親に頼み込んで何とか手に入れたい。そう考えて、どう説明したか覚えていないが、母親から4万円を受け取った。その週末、天神にあるベスト電器に向かった。なんとあの大酒飲み悪友のT川氏を誘ってである。T川氏はマセガキだったので、当時すでにエレキギターを所有していた生意気な転校生だったのである。
話がそれた。どうせ買うならリーちゃんよりいい奴がいい。リーちゃんのギターはヤマハの入門者向けで3万円くらいだったので、私はモーリスの3万5千円のモノにした。ボディに少しだけ貝の装飾が入っている奴である。私は貝が入っていることが絶対に譲れなかったので、その中で一番安いモーリスにしたのだ。そのギターはもちろん令和の今でも手元に置いてある。置いてあるというかこれまた物置にしまってある。狭い我が家ではできるだけモノを出さないようにしないともっと狭くなるからである。
アコースティックギターで弾き方を覚えた私はそれに飽き足らず、今度はエレキギターが欲しくなるのは自然のなり行き。そこから友人や楽器店でエレキギターを何本も買い求めた。一番多い時で15本くらい所有していたと思うのだが、それも歳をとると共に減っていく。いい加減に思われるかもしれないがどこに行ったか分からないものが多い。もちろん人にあげたものもあるが、貸したまま返してもらわずそのままのモノもたくさんある。
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相当前置きが長くなったが、そして現在。我が家には4本のギターが生き残った。その中の一本が冒頭に書いたフェンダージャパンのテレキャスターだ。
やる事がなかった先週の土曜日。娘がクリスマスの日に3人の友達を呼ぶというので部屋の掃除を始めたのだが置いてあったギターがふと目に入った。数か月前に新しい弦を買って換えずにそのままになっていたことを思い出した。よし、では今日やろう。
6本の弦を緩め、ニッパでパチパチと切っているとこれまたふと目に入った。非常に汚れているパーツがである。娘の友達が来るとなると当然ギターも目に入るだろう。娘は全然うまくないのだが、なんとなく数曲だけ弾くことができるので友達から「弾いて弾いて」なんていう状況にならなくもないだろう。そんな時にタバコのヤニだらけのギターだと格好が悪い。
おーし、やるか!
ここね。
どうせならとことんやろう。ネジを緩めてとり外したらこんなんだった。あらら。
そう言えば昔、ピックアップも交換した気がする。音が全然鳴らなくなって焦った記憶がある。
ここもきれいにしよう。
イヤン、丸裸。
汚れといったらこれしかない。特に調べたわけではないが、たぶんこれで大丈夫だろう。
ほらね、ピッカピカ。
弦も新しくなって、良い音になった。
そしてもう一本の方もキレイにしておいた。
クリスマスが待ち遠しいのである。
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師走なのに今日はなんとなく暖かかった。
しかし、明日からは相当冷えるそうだ。
年末に向けてあっという間に時が過ぎてゆくだろう
寒かろうが暑かろうがそんなことは関係ない
ビールをこよなく愛する皆さま
そうそう、それ
であるからして
やっぱり今宵も
キンキンに冷えたビールで
乾杯ッ!
なのである。
ムフフフフ。
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リーちゃんと久しぶりに飲んだ話はこちら。
















































